不動産仲介手数料の相場と計算方法|無料・半額のカラクリと注意点

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

仲介手数料の基本と法定上限の仕組み

不動産売買における仲介手数料は、不動産会社が売買を仲介した際に受け取る成功報酬です。法律で上限額が定められており、契約が成立した場合にのみ支払います。

(1) 仲介手数料とは何か(成功報酬型の定義)

仲介手数料は、不動産会社が売主と買主の間に入り、契約成立に向けて活動した対価として受け取る報酬です。

成功報酬型のため、契約が成立しない限り支払う必要はありません。また、媒介契約締結時に報酬額について説明・合意が必要です。

国土交通省の告示により、受領できる報酬額の上限が定められています。

(2) 法定上限の3段階構造(200万円以下5%、200万円超~400万円以下4%、400万円超3%)

仲介手数料の法定上限は、物件価格に応じて3段階に分かれています。

物件価格 仲介手数料の上限(税抜)
200万円以下 物件価格 × 5%
200万円超~400万円以下 物件価格 × 4%
400万円超 物件価格 × 3%

(出典: 国土交通省

ただし、実務では次項の「速算式」を使用して計算するのが一般的です。

(3) 2024年7月の法改正(800万円以下の物件の特例)

2024年7月1日から、宅地建物取引業法の報酬規定が改正され、800万円以下の物件の仲介手数料上限が拡大されました。

  • 改正前: 800万円の物件の場合、上限は30万円(税抜)
  • 改正後: 800万円以下の物件は、一律で上限33万円(税込)

これは空き家対策推進プログラムの一環として実施されたもので、低価格物件の流通促進が目的です。

この記事のポイント

  • 仲介手数料の法定上限は物件価格400万円超の場合「物件価格×3%+6万円+消費税」
  • 2024年7月から800万円以下の物件は最大33万円(税込)に変更
  • 無料・半額のカラクリは両手仲介、広告費収入、業務効率化などで実現可能
  • 安い業者を選ぶリスク(別名目請求、サービス品質低下等)を理解することが重要

不動産売買の仲介手数料の計算方法と実例

仲介手数料の具体的な計算方法と、物件種別ごとの相場を解説します。

(1) 速算式(物件価格×3%+6万円+消費税)の使い方

物件価格が400万円を超える場合、以下の速算式で上限額を簡単に計算できます。

速算式: 物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税

計算例(物件価格3,000万円の場合):

  1. 3,000万円 × 3% = 90万円
  2. 90万円 + 6万円 = 96万円(税抜)
  3. 96万円 × 1.10(消費税10%)= 105.6万円(税込)

計算例(物件価格4,000万円の場合):

  1. 4,000万円 × 3% = 120万円
  2. 120万円 + 6万円 = 126万円(税抜)
  3. 126万円 × 1.10 = 138.6万円(税込)

この速算式は、3段階の上限を一度に計算できる便利な方法です。

(2) 物件種別ごとの相場(マンション・戸建て・土地)

物件種別ごとの仲介手数料の相場感です。

物件種別 平均価格帯 仲介手数料上限(税込)
新築マンション 3,000~5,000万円 105.6~171.6万円
中古マンション 2,000~3,000万円 72.6~105.6万円
新築戸建て 3,500~5,000万円 121.6~171.6万円
中古戸建て 2,500~4,000万円 88.6~138.6万円
土地 1,500~3,000万円 55.6~105.6万円

※平均価格帯はエリアにより大きく異なります。

売主物件(不動産デベロッパーやハウスメーカーが直接販売)の場合は、仲介手数料がかかりません。

(3) 支払いタイミング(契約締結時と引渡時の2回払い)

仲介手数料の支払いは、一般的に以下の2回に分けて行われます。

  1. 契約締結時: 上限額の50%
  2. 物件引渡時: 上限額の50%

ただし、不動産会社により異なる場合があるため、媒介契約書で確認してください。

契約が白紙撤回された場合、支払った仲介手数料は返還されることが一般的です。ただし、買主の都合による解約の場合は手付金放棄となり、仲介手数料も返還されないことがあります。

仲介手数料無料・半額のからくりと収益構造

近年、「仲介手数料無料」「半額」をうたう不動産会社が増加しています。その仕組みとカラクリを解説します。

(1) 両手仲介による無料化(売主・買主双方から受領)

最も一般的なのが「両手仲介」による無料化です。

両手仲介とは: 1つの不動産会社が売主・買主双方の仲介を行い、双方から仲介手数料を受領すること

例えば、3,000万円の物件の場合、売主から105.6万円、買主から105.6万円、合計211.2万円の仲介手数料を受け取れます。このため、買主側を無料にしても、売主から十分な報酬を得られる仕組みです。

(2) 広告費収入・自社所有物件による無料化

他の無料化の仕組みです。

  • 広告費収入: 物件オーナーから広告費として家賃の0.5~1ヶ月分相当を受け取る(賃貸の場合)
  • 自社所有物件: 不動産会社が自社で所有する物件は、家賃収入があるため仲介手数料を無料にできる

これらの仕組みにより、買主や借主からの仲介手数料を無料にしても収益を確保できます。

(3) オンライン特化型の業務効率化による低価格化

2025年現在、オンライン特化型の不動産会社が増加しています。

  • 店舗を持たず、オンライン内覧・契約を推進
  • 広告費・人件費を削減し、低価格を実現
  • バーチャルツアー、オンライン商談などを活用

こうした業務効率化により、仲介手数料を半額や無料にできる場合があります。

ただし、対面での相談が難しい、サポート体制が薄いなどのデメリットもあるため、自分の状況に合った業者を選ぶことが重要です。

安い仲介会社を選ぶリスクと注意点

仲介手数料が安い業者には、いくつかのリスクがあります。契約前に必ず確認してください。

(1) 別名目での請求(交渉費、諸費用等)

「仲介手数料無料」でも、別名目で費用を請求されるケースがあります。

  • 交渉費: 価格交渉や条件調整の費用として請求
  • 諸費用: 書類作成費、事務手数料などの名目で請求
  • 調査費: 物件調査費、重要事項説明書作成費などの名目で請求

媒介契約書で報酬額を確認し、別途費用が発生しないか明確にしておくことが重要です。

(2) オプションサービスの実質強制(消臭・害虫駆除等)

無料業者では、オプションサービスを実質的に強制されるケースがあります。

  • 消臭・害虫駆除: 数万円~10万円
  • ハウスクリーニング: 5万円~20万円
  • リフォーム: 数十万円~数百万円

これらのサービスが「必須」とされ、結果的に仲介手数料相当の費用を支払うことになる場合があります。

オプションサービスの内容と費用を事前に確認し、不要なサービスは断ることが大切です。

(3) サービス品質の低下(広告費・人件費削減の影響)

仲介手数料が安い業者は、広告費や人件費を削減している場合があります。

サービス品質低下の例:

  • 広告露出が少なく、買い手が見つかりにくい
  • 担当者の経験が浅く、交渉力が低い
  • 契約後のアフターフォローが不十分
  • 物件調査が不十分で、トラブルが発生しやすい

仲介手数料が安いことだけでなく、サービス内容や担当者の経験・実績も確認することが重要です。

仲介手数料の税務処理と勘定科目

仲介手数料の税務処理は、売却時と購入時で異なります。確定申告時の参考にしてください。

(1) 不動産売却時の譲渡費用(確定申告での計上方法)

不動産売却時の仲介手数料は、「譲渡費用」として計上できます。

譲渡費用とは: 不動産売却時に支出した費用で、譲渡所得税の計算時に控除できる

譲渡所得の計算式: 譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)

仲介手数料を譲渡費用として計上することで、譲渡所得が減少し、譲渡所得税を抑えられます。

詳細は国税庁「譲渡費用となるもの」を参照してください。

(2) 不動産購入時の取得費(賃貸用と自宅用の違い)

不動産購入時の仲介手数料の税務処理は、用途により異なります。

賃貸用不動産の場合:

  • 仲介手数料は「取得費」に算入
  • その年の必要経費にはできない
  • 売却時の譲渡所得計算で取得費として控除

自宅用不動産の場合:

  • 仲介手数料は資産として計上
  • 経費にはできない
  • 売却時の譲渡所得計算で取得費として控除

事業用不動産の場合は、減価償却を通じて経費化されます。

(3) 土地・建物の按分と消費税の取扱い

不動産売買では、土地と建物を一括で取引することが一般的です。仲介手数料の消費税計算では、土地と建物を按分する必要があります。

消費税の取扱い:

  • 土地: 非課税(消費税の対象外)
  • 建物: 課税(消費税の対象)

仲介手数料の消費税は、物件価格全体(土地+建物)に対して計算されます。ただし、土地のみの取引の場合は、土地価格に対して消費税が課税されます。

まとめ:状況別の適正な仲介手数料の考え方

仲介手数料は、不動産取引において重要なコストです。法定上限を理解し、無料・半額のカラクリを知ることで、適切な業者選びができます。

状況別の考え方:

  • 高額物件の売却: サービス品質重視、上限額でも実績のある業者を選ぶ
  • 低額物件の売却: 800万円以下の特例を活用、33万円(税込)以内の業者を選ぶ
  • 初めての購入: サポート体制が充実した業者を選ぶ、無料にこだわらない
  • 投資用不動産: 税務処理に詳しい業者を選ぶ、譲渡費用・取得費の計上を確実に

仲介手数料が安いことだけでなく、サービス内容、担当者の経験・実績、アフターフォローの充実度を総合的に判断してください。

詳細は不動産会社や税理士への相談を推奨します。

よくある質問

Q1仲介手数料の法定上限はいくらですか?

A1物件価格400万円超の場合「物件価格×3%+6万円+消費税」が上限です。2024年7月から800万円以下の物件は最大33万円(税込)に変更されました。例えば、3,000万円の物件の場合、上限は105.6万円(税込)です。この上限額を超える請求は法律違反となります。

Q2仲介手数料無料は本当に安全なのですか?

A2両手仲介や広告費収入により実現可能です。ただし、別名目での請求(交渉費、諸費用等)やサービス品質低下のリスクがあります。契約前に媒介契約書で報酬額を確認し、別途費用が発生しないか明確にすることが重要です。オプションサービスの実質強制にも注意が必要です。

Q3売却と購入で仲介手数料は違いますか?

A3法定上限の計算式は同じですが、税務処理が異なります。売却時は譲渡費用として計上可能で、譲渡所得税を抑えられます。購入時は取得費に算入され、売却時の譲渡所得計算で控除されます。賃貸用不動産の場合は減価償却を通じて経費化されます。

Q4仲介手数料の値引き交渉はできますか?

A4法定上限はあるが下限規定はないため理論上は可能です。ただし、業者が拒否する可能性もあります。値引き交渉により、広告費削減や担当者の工数削減などでサービス品質が低下するリスクがあるため、サービス内容とのバランスを考慮すべきです。

Q5仲介手数料の勘定科目は何ですか?

A5売却時は譲渡費用、購入時は取得費(賃貸用)または資産計上(自宅用)です。確定申告時に適切な科目で計上することで、税金を抑えられる場合があります。詳細は税理士への相談を推奨します。土地と建物の按分が必要な場合もあります。

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Room Match編集部

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