なぜ35年住宅ローンを選ぶのか:月々返済額と総返済額のトレードオフ
住宅購入を検討する際、「35年住宅ローンは本当にお得なのか」「総返済額がどれくらい増えるのか」「繰り上げ返済は効果的なのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、35年住宅ローンの仕組み、メリット・デメリット、返済期間別のシミュレーション、繰り上げ返済の効果を、auじぶん銀行やイオン銀行などの公式情報を元に解説します。
客観的なデータに基づいて、35年住宅ローンが自分に適しているかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 35年ローンは月々返済額を抑え、借入可能額を増やせるメリットがある
- 20年と35年では総返済額に371万円〜440万円もの差が生じる
- 繰り上げ返済は早い時期ほど効果が大きく、257万円もの利息軽減が可能
- 住宅ローン控除は金利0.7%以上なら繰り上げ返済を優先すべき
- 35年ローンを組める上限年齢は一般的に44歳(完済80歳未満の場合)
35年住宅ローンの基礎知識:仕組み・年齢制限・返済期間の選択肢
35年住宅ローンは、日本で最も一般的な返済期間の一つです。
(1) 35年住宅ローンとは:最長返済期間の住宅ローン
35年住宅ローンは、返済期間を35年(420カ月)とする住宅ローンです。
住まいの情報館によると、住宅ローン利用者の50.8%が30年超〜35年以内の返済期間を選択しており(2024年4月調査)、最も一般的な選択肢です。
(2) 何歳まで組めるか:完済時年齢制限と平均借入年齢
みずほ銀行によると、35年ローンを組める上限年齢は以下の通りです。
- 完済時年齢が80歳未満の場合: 44歳が上限
- フラット35の場合: 45歳が上限(完済時年齢80歳未満)
2025年の実際の借入者の平均年齢は42.8歳で、完済時は76.5歳と後期高齢者になる計算です。
(3) 返済期間の選択肢:20年・25年・30年・35年の違い
住宅ローンの返済期間は、一般的に以下の選択肢があります。
| 返済期間 | 月々返済額 | 総返済額 | 完済時年齢(40歳借入) |
|---|---|---|---|
| 20年 | 高い | 最も低い | 60歳 |
| 25年 | やや高い | 低い | 65歳 |
| 30年 | やや低い | やや高い | 70歳 |
| 35年 | 最も低い | 最も高い | 75歳 |
返済期間が長いほど月々の返済額は低くなりますが、総返済額は増加します。
35年住宅ローンのメリット:月々返済額軽減と借入可能額増加
35年住宅ローンのメリットは、月々の返済額を抑えられることです。
(1) 月々返済額を抑えられる:家計への負担軽減
auじぶん銀行によると、返済期間を長くすることで月々の返済額を抑えられます。
例(3,000万円借入、金利1.0%):
| 返済期間 | 月々返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 20年 | 約13.8万円 | 約3,312万円 |
| 35年 | 約8.5万円 | 約3,557万円 |
月々の返済額が約5.3万円も抑えられ、家計への負担が軽減されます。
(2) 借入可能額を増やせる:返済負担率の計算方法
返済期間を長くすることで、借入可能額を増やせます。
返済負担率:
- 年収に対する年間返済額の割合
- 多くの金融機関は35%以下を基準とする
月々の返済額が低ければ、返済負担率の基準内でより高額な物件を購入できる可能性があります。
(3) 手元資金に余裕を持たせやすい:教育費・老後資金との両立
月々の返済額が低い分、手元資金に余裕を持たせやすくなります。
- 教育費(子供の進学費用)
- 老後資金(年金・貯蓄)
- 緊急時の備え(医療費・修繕費)
これらの支出とローン返済を両立しやすくなる点がメリットです。
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35年住宅ローンのデメリット:総返済額増加と定年後返済リスク
35年住宅ローンのデメリットは、総返済額が大幅に増加することです。
(1) 総返済額が大幅に増加する:25年・30年との比較
住まいの情報館によると、返済期間が長いほど総返済額が増加します。
3,000万円借入、金利1.0%の場合:
| 返済期間 | 総返済額 | 20年との差 |
|---|---|---|
| 20年 | 3,312万円 | - |
| 25年 | 3,421万円 | +109万円 |
| 30年 | 3,490万円 | +178万円 |
| 35年 | 3,557万円 | +245万円 |
4,000万円借入の場合、30年と35年で約240万円の差が生じます。
(2) 定年退職後もローン返済が続く可能性:老後資金への影響
40歳で35年ローンを組むと、完済時は75歳です。定年退職後(65歳以降)も10年間、住宅ローン返済が続くことになります。
老後資金への影響:
- 年金収入だけで返済できるか
- 退職金を充当する必要があるか
- 老後の生活費とのバランス
これらを慎重に検討する必要があります。
(3) 収入変動リスク:長期返済のリスク
35年という長期間、安定した収入を維持できるかは不確実です。
- 転職・失業のリスク
- 病気・ケガによる収入減少
- 子供の教育費などの臨時支出
長期返済のリスクを考慮して、余裕を持った返済計画を立てることが重要です。
返済期間別シミュレーションと繰り上げ返済の効果
返済期間別のシミュレーションと繰り上げ返済の効果を確認しましょう。
(1) 返済期間別の総返済額比較:3,000万円・4,000万円の例
住まいの情報館によると、返済期間別の総返済額は以下の通りです(金利1.0%)。
3,000万円借入の場合:
| 返済期間 | 月々返済額 | 総返済額 | 総利息 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 約13.8万円 | 3,312万円 | 312万円 |
| 25年 | 約11.3万円 | 3,421万円 | 421万円 |
| 30年 | 約9.7万円 | 3,490万円 | 490万円 |
| 35年 | 約8.5万円 | 3,557万円 | 557万円 |
4,000万円借入の場合:
| 返済期間 | 総返済額 | 20年との差 |
|---|---|---|
| 20年 | 4,416万円 | - |
| 35年 | 4,743万円 | +327万円 |
(2) 繰り上げ返済の効果:期間短縮型と返済額軽減型
イオン銀行によると、繰り上げ返済には2種類あります。
期間短縮型:
- 月々の返済額を変えずに返済期間を短縮
- 利息軽減効果が大きい
返済額軽減型:
- 返済期間を変えずに月々の返済額を減らす
- 利息軽減効果は小さい
効果の例(3,000万円借入、金利1.0%、35年ローン):
35年間繰上返済なしと、早期に繰り上げ返済して20年に縮めた場合で257万円の差が生じます。
イオン銀行によると、繰り上げ返済は早い時期ほど効果が大きくなります。
(3) 住宅ローン控除と繰り上げ返済のバランス
全国銀行協会によると、住宅ローン控除と繰り上げ返済のバランスが重要です。
住宅ローン控除:
- 年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除される(最大13年間)
判断基準:
- 金利0.7%未満: 住宅ローン控除期間後に繰り上げ返済
- 金利0.7%以上: 控除期間中でも繰り上げ返済を優先
ただし、手元の貯蓄が減ると、金利の高いカードローンを利用する本末転倒なケースもあるため、注意が必要です。
まとめ:35年住宅ローンが適している人・避けるべき人
35年住宅ローンは月々返済額を抑えられ、借入可能額を増やせるメリットがあります。手元資金に余裕を持たせやすく、教育費・老後資金との両立がしやすい点も魅力です。
一方、20年と35年では総返済額に371万円〜440万円もの差が生じ、定年退職後もローン返済が続く可能性があります。長期返済のリスク(収入変動・老後資金への影響)も慎重に検討する必要があります。
繰り上げ返済は早い時期ほど効果が大きく、期間短縮型で257万円もの利息軽減が可能です。ただし、住宅ローン控除と繰り上げ返済のバランスを考慮し、金利0.7%以上なら繰り上げ返済優先、金利0.7%未満なら控除期間後に繰り上げ返済が基本です。
35年ローンが適している人は、月々の返済額を抑えたい人、手元資金に余裕を持たせたい人、借入可能額を増やしたい人です。一方、総返済額を抑えたい人、早期完済を目指す人には25年・30年の短期ローンが推奨されます。
35年ローンを組める上限年齢は一般的に44歳(完済80歳未満の場合)で、フラット35なら45歳が上限です。ファイナンシャルプランナーや銀行担当者に相談しながら、自分に適した返済計画を立てましょう。
