中古物件購入ガイド|メリット・注意点・リフォーム費用を解説

公開日: 2025/11/4

中古物件の不動産購入とは

不動産購入を検討する際、「新築と中古、どちらが自分に合っているか」「中古物件のメリット・デメリットは何か」と迷う方は少なくありません。

この記事では、中古物件の不動産購入について、新築との違い、メリット・デメリット、購入時の注意点、リフォーム・リノベーション費用を解説します。国土交通省不動産流通推進センターの公式情報を元に、中古物件購入の判断材料を提供します。

中古物件の購入を検討している方が、自分のライフスタイルに合った選択ができるようになります。

この記事のポイント

  • 中古物件は新築より価格が20-30%安く、立地条件が良い物件が多いため、希望エリアで購入しやすい
  • 築年数により住宅ローン控除の対象外になる場合があり、築20年超(マンション25年超)は耐震基準適合証明が必要
  • 購入前にホームインスペクション(住宅診断)を受けることで、建物の劣化状況を把握しリスクを軽減できる
  • リフォーム・リノベーション費用は内容により100万〜1,000万円以上かかるため、購入価格と合わせた総予算の検討が必要
  • 契約不適合責任が免責される場合が多く、引渡し後の不具合に対して売主に責任を追及できないリスクがある

中古物件と新築物件の違い

中古物件と新築物件では、価格、築年数、設備の状態、購入手続きが異なります。

新築物件の定義

新築物件とは、建築後1年未満で、かつ未入居の住宅を指します(住宅品質確保促進法)。建築後1年を経過した場合、または一度でも入居歴がある場合は「中古物件」として扱われます。

価格の違い

中古物件は新築物件と比べて、一般的に20-30%安く購入できます。

項目 新築マンション 中古マンション
平均価格(首都圏) 約6,000万円 約4,200万円
価格差 基準 約30%安い

(出典: 不動産経済研究所東日本不動産流通機構の2024年データを元に算出)

同じ予算で、より広い物件や立地条件の良い物件を購入できる可能性があります。

立地条件の違い

新築物件は郊外や駅から離れた場所に建設されることが多く、都心や駅近の物件は限られます。一方、中古物件は既に開発された地域に多く存在するため、以下のメリットがあります。

  • 駅近・都心の物件が豊富: 通勤・通学に便利な立地を選びやすい
  • 周辺環境が確立: スーパー、学校、病院等の生活施設が揃っている
  • 実際の住環境を確認できる: 日当たり、騒音、隣人の様子等を購入前に把握できる

中古物件のメリットとデメリット

中古物件には、価格面や立地面でのメリットがある一方、築年数による設備の劣化や税制面でのデメリットもあります。

中古物件のメリット

中古物件の主なメリットは以下の通りです。

メリット 詳細
価格が安い 新築より20-30%安く、同じ予算でより広い物件を購入できる
立地条件が良い 駅近・都心の物件が多く、通勤・通学に便利
実物を確認できる 日当たり、眺望、騒音等を購入前に確認できる
周辺環境が確立 スーパー、学校、病院等の生活施設が揃っている
リフォームで自分好みに 間取り変更や設備更新で、自分のライフスタイルに合わせられる

(出典: 国土交通省

中古物件のデメリット

一方、中古物件には以下のデメリットがあります。

デメリット 詳細 対策
設備が古い 給湯器、水回り等の設備が劣化している ホームインスペクションで状態確認、リフォーム費用を予算に含める
耐震性能が低い 1981年以前の旧耐震基準は地震リスクが高い 耐震基準適合証明を取得、または耐震補強工事を実施
住宅ローン控除の対象外 築20年超(マンション25年超)は原則対象外 耐震基準適合証明を取得すれば対象になる
契約不適合責任が免責 売主が個人の場合、引渡し後の不具合に責任を負わない ホームインスペクション、既存住宅売買瑕疵保険の利用
管理状態が不明 マンションの修繕積立金が不足している場合、大規模修繕時に追加負担 重要事項説明書で修繕積立金の残高を確認

(出典: 国土交通省

中古物件購入時の注意点

中古物件を購入する際は、以下の点を重点的に確認してください。

築年数と耐震基準

建築年により適用される耐震基準が異なります。

建築年 耐震基準 特徴
1981年5月以前 旧耐震基準 震度5強程度を想定、地震リスクが高い
1981年6月以降 新耐震基準 震度6強〜7程度を想定、耐震性能が向上
2000年6月以降 現行基準 木造住宅の基準強化、さらに耐震性能が向上

(出典: 国土交通省

旧耐震基準の物件を購入する場合、耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強工事(費用100万〜300万円程度)を実施することをおすすめします。

ホームインスペクション(住宅診断)

ホームインスペクションとは、建築士等の専門家が建物の劣化状況を診断するサービスです。2018年の宅地建物取引業法改正により、売主・買主にホームインスペクションの利用意向確認が義務化されました。

項目 内容
診断内容 構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、設備の劣化状況
費用 5万〜10万円程度
実施タイミング 契約前(購入判断の材料として)

(出典: 国土交通省

ホームインスペクションにより、以下のリスクを軽減できます。

  • 隠れた劣化の発見: 外観からは分からない構造的な問題を把握
  • リフォーム費用の見積もり: 修繕が必要な箇所を事前に把握し、総予算を算出
  • 交渉材料: 診断結果を元に、売買価格の値下げ交渉が可能

住宅ローン控除の適用条件

中古物件の住宅ローン控除は、築年数により適用条件が異なります。

項目 内容
原則 築20年以内(マンション等の耐火建築物は25年以内)
例外 築年数に関わらず、以下のいずれかを満たせば対象

例外の条件:

  • 耐震基準適合証明書: 建築士等が新耐震基準に適合していることを証明
  • 既存住宅性能評価書: 耐震等級1以上の評価
  • 既存住宅売買瑕疵保険: 保険法人の検査に合格

(出典: 国税庁

築年数が超過している場合でも、これらの証明書を取得すれば住宅ローン控除を受けられます。

契約不適合責任の免責特約

中古物件で売主が個人の場合、「契約不適合責任を負わない」とする免責特約が付されることが多くあります。この場合、引渡し後に不具合が見つかっても売主に責任を追及できません。

対策:

  • ホームインスペクションの実施: 購入前に建物の状態を把握
  • 既存住宅売買瑕疵保険の加入: 引渡し後の不具合を保険でカバー(保険料5万〜15万円程度、保証期間1〜5年)

既存住宅売買瑕疵保険は、構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分の瑕疵を補償します。保険加入には、保険法人の検査に合格する必要があります。

リフォーム・リノベーション費用

中古物件を購入する場合、リフォームやリノベーションを前提とするケースが多くあります。

リフォームとリノベーションの違い

項目 リフォーム リノベーション
目的 老朽化した設備・内装を修繕 間取り変更や性能向上で価値を高める
費用 100万〜500万円程度 500万〜1,000万円以上
工期 1ヶ月〜3ヶ月 3ヶ月〜6ヶ月

(出典: 国土交通省

リフォーム費用の内訳

主なリフォーム箇所と費用の目安は以下の通りです。

箇所 内容 費用目安
水回り キッチン、浴室、トイレ、洗面所の設備更新 100万〜300万円
内装 壁紙、床材の張替え 50万〜150万円
外壁・屋根 外壁塗装、屋根修繕 100万〜200万円
断熱 断熱材の追加、窓の二重サッシ化 100万〜300万円
耐震補強 耐震診断後の補強工事 100万〜300万円

(出典: 国土交通省

リノベーション費用の内訳

フルリノベーション(スケルトンリフォーム)の場合、以下の費用がかかります。

  • 間取り変更: 壁の撤去・新設、配管・配線の移動(300万〜600万円)
  • 設備一式更新: キッチン、浴室、トイレ、洗面所、給湯器等(200万〜400万円)
  • 内装一式: 壁紙、床材、建具等(100万〜200万円)
  • 断熱・耐震: 断熱材追加、耐震補強(100万〜300万円)

合計: 700万〜1,500万円程度

購入価格とリフォーム費用の総予算

中古物件を購入する際は、購入価格とリフォーム費用を合わせた総予算を検討してください。

:

  • 中古マンション購入価格: 3,000万円
  • リフォーム費用: 500万円
  • 総予算: 3,500万円

同じ3,500万円の予算で新築マンションを購入する場合と、中古マンション+リフォームの場合を比較し、立地条件・広さ・設備を総合的に判断することが重要です。

マンションの管理状態の確認

中古マンションを購入する場合、管理組合の運営状況と修繕積立金の残高を確認してください。

修繕積立金の残高

修繕積立金が不足している場合、大規模修繕時に追加負担(数十万〜数百万円)が発生する可能性があります。

確認項目 内容
修繕積立金の残高 戸数 × 100万円以上が目安
修繕履歴 過去の大規模修繕の実施状況
長期修繕計画 今後10-30年の修繕計画と積立金の見通し

(出典: 国土交通省

管理組合の運営状況

管理組合の運営が適切でない場合、以下のリスクがあります。

  • 管理費の滞納: 一部の区分所有者が管理費を滞納している場合、修繕費用が不足
  • 理事会の機能不全: 理事会が開催されていない、意思決定が遅い等の問題

重要事項説明書で管理組合の議事録、管理費・修繕積立金の滞納状況を確認してください。

中古物件購入のまとめと次のアクション

中古物件は、新築より20-30%安く、立地条件が良い物件が多いため、希望エリアで購入しやすいメリットがあります。一方、築年数により住宅ローン控除の対象外になる場合があり、耐震基準適合証明の取得が必要です。

購入前にホームインスペクション(住宅診断)を受けることで、建物の劣化状況を把握し、リスクを軽減できます。リフォーム・リノベーション費用は内容により100万〜1,000万円以上かかるため、購入価格と合わせた総予算の検討が必要です。

契約不適合責任が免責される場合が多いため、既存住宅売買瑕疵保険の加入を検討してください。マンションの場合は、管理組合の運営状況と修繕積立金の残高を重要事項説明書で確認することが重要です。

次のアクションとして、信頼できる不動産会社に相談し、希望条件に合う中古物件を探してください。物件が見つかったら、ホームインスペクションを依頼し、建物の状態を専門家に診断してもらいましょう。リフォーム会社にも相談し、総予算を算出した上で購入判断を行うことをおすすめします。

よくある質問

Q1中古物件は新築よりどれくらい安いですか?

A1一般的に中古物件は新築物件より20-30%安く購入できます。例えば、首都圏の新築マンション平均価格が約6,000万円に対し、中古マンションは約4,200万円で、約30%安くなります。同じ予算で、より広い物件や立地条件の良い物件を購入できる可能性があります。ただし、築年数により設備の劣化やリフォーム費用が必要になる点に注意してください。

Q2築何年までなら住宅ローン控除を受けられますか?

A2原則として築20年以内(マンション等の耐火建築物は25年以内)が対象です。ただし、築年数に関わらず、耐震基準適合証明書、既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)、既存住宅売買瑕疵保険のいずれかを取得すれば対象になります。築年数が超過している場合でも、これらの証明書を取得することで住宅ローン控除を受けられます。

Q3ホームインスペクションは必ず受けるべきですか?

A3法的義務ではありませんが、中古物件購入時には強く推奨されます。費用は5万〜10万円程度で、建築士等の専門家が構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、設備の劣化状況を診断します。外観からは分からない構造的な問題を把握でき、リフォーム費用の見積もりや売買価格の交渉材料としても活用できます。特に契約不適合責任が免責される場合は、ホームインスペクションが重要です。

Q4旧耐震基準の物件は購入しない方がいいですか?

A41981年5月以前の旧耐震基準の物件は、震度5強程度を想定した設計で、地震リスクが高いとされています。購入する場合は、耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強工事(費用100万〜300万円程度)を実施することをおすすめします。耐震基準適合証明を取得すれば、住宅ローン控除の対象にもなります。立地や価格が魅力的でも、耐震性能を最優先に判断してください。

Q5リフォーム費用はどれくらいかかりますか?

A5リフォーム内容により異なりますが、水回りのみなら100万〜300万円、内装全体なら200万〜500万円、フルリノベーション(間取り変更含む)なら700万〜1,500万円程度が目安です。購入価格とリフォーム費用を合わせた総予算を検討し、新築物件との比較を行ってください。リフォーム会社に事前見積もりを依頼し、総予算を把握した上で購入判断を行うことをおすすめします。