サラリーマンが不動産投資で「カモ」にされる理由と対策

公開日: 2025/10/27

サラリーマンが不動産投資で「カモ」にされる3つの理由

「不動産投資で失敗した」「営業マンの言葉を信じて大損した」という話を聞いたことはありませんか。

この記事では、サラリーマンが不動産投資で「カモ」にされる理由、悪質業者の典型的な手口、失敗事例、そして自衛するための対策を、国民生活センター消費者庁の公式情報を元に解説します。

不動産投資を検討している方が、リスクを正しく理解し、適切な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • サラリーマンは「属性が良い(ローンが組みやすい)」ため狙われやすい
  • 悪質業者の手口:節税効果の誇大宣伝、サブリース詐欺、断定表現、住宅ローン不正利用、満室偽装
  • 失敗事例:想定利回りと実際の収支の乖離、空室リスクの軽視、修繕費の想定外、売却困難
  • 対策:複数社比較、保守的な再計算、専門家への相談、即決しない

理由1: 属性が良い(ローンが組みやすい)

ゴールドオンラインの専門家解説によると、サラリーマンは「融資属性が良い」ため、不動産投資営業のターゲットにされやすいとされています。

融資属性とは、銀行がローン審査で評価する信用力のことです。サラリーマンは安定した収入があるため、銀行から多額の借入が可能です。この「多額のローンが組める」という特性が、悪質業者にとって魅力的なのです。

理由2: 投資知識が乏しい

不動産投資には、以下のような専門知識が必要です。

  • 利回り: 表面利回りと実質利回りの違い
  • キャッシュフロー: 家賃収入からローン返済・管理費等を差し引いた実質的な収支
  • 出口戦略: 売却時の価格予測、ローン残債との関係

これらの知識が不足していると、営業トークを鵜呑みにしてしまい、不利な契約を結ぶリスクが高まります。

理由3: 忙しくて精査する時間がない

国民生活センターの注意喚起では、20代の若手サラリーマンが狙われやすいとされています。本業が忙しく、営業マンの提案を十分に検証する時間がないため、「この物件は人気で今日中に決めないと他の人に取られる」等の強引な契約迫りに屈しやすいのです。

悪質業者の5つの典型的手口

手口1: 「節税効果」の誇大宣伝

不動産投資の赤字を給与所得と損益通算することで、所得税を減らせる仕組みがあります。しかし、東急リバブルの解説によると、実際の節税効果は数万円〜20-30万円程度です。

「年間100万円節税できる」等の誇大広告には注意が必要です。そもそも赤字を出すこと自体が投資の本来の目的に反しています。

手口2: サブリース詐欺(「30年家賃保証」の罠)

消費者庁は、サブリース契約のトラブルについて公式に注意喚起しています。

サブリース契約とは、賃貸物件を不動産会社が一括借り上げし、家賃を保証する契約です。「30年保証」と謳っても、実際には2年ごとの賃料見直しで減額されるケースが多く、保証会社の経営破綻リスクもあります。

かぼちゃの馬車事件(2018年)では、「賃料30年保証」「利回り8%」で多数のサラリーマンを勧誘した後、運営会社が経営破綻し、多くの投資家が自己破産に追い込まれました。

手口3: 「ほぼ確実に儲かる」等の断定表現

「必ず儲かる」「ほぼ確実に値上がりする」等の断定表現は、金融商品取引法で禁止されています。このような表現を使う営業マンには注意が必要です。

手口4: 住宅ローン不正利用

投資物件を自己居住用と偽り、低金利の住宅ローンを不正に利用させる手口です。武蔵コーポレーションによると、これは違法行為であり、発覚した場合は一括返済を求められるリスクがあります。

手口5: 満室偽装

実際には空室が多いのに、サクラを入室させて「満室」と虚偽の情報を提供し、高利回りを演出する詐欺手口です。内覧時に多くの入居者がいるように見せかけますが、契約後に一斉に退去するケースがあります。

失敗事例:想定と現実の乖離

失敗1: 想定利回りと実際の収支の乖離

不動産投資の利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」があります。

  • 表面利回り: 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
  • 実質利回り: (年間家賃収入 - 諸経費)÷ 物件価格 × 100

営業資料には表面利回りのみが記載されることが多く、管理費・修繕費・固定資産税等を含めると実質利回りは大幅に低下します。

失敗2: 空室リスクの軽視

想定稼働率95%で計算されていても、実際には80%程度になるケースが多くあります。空室が続くと、ローン返済が家賃収入を上回り、持ち出しが発生します。

失敗3: 修繕費・管理費の想定外

築年数が経過すると、以下の費用が急増します。

  • 日常修繕: エアコン、給湯器、水回り等の故障
  • 大規模修繕: 外壁塗装、屋根修理等(数百万円)

築年数×1-2万円/年の修繕費を想定しておくことが推奨されます。

失敗4: 出口戦略の欠如(売却困難)

不動産投資は、最終的に売却して利益を確定します(出口戦略)。しかし、以下の理由で売却が困難になるケースがあります。

  • 売却価格が買値を大幅に下回る(築年数経過による価値下落)
  • ローン残債が売却価格を上回る(オーバーローン状態)

出口戦略を事前に検討しないまま購入すると、売却時に大損するリスクがあります。

カモにされないための5つの対策

対策1: 複数社の提案を比較する

1社だけの提案で判断するのは危険です。3-5社の査定・提案を比較し、以下の点を確認しましょう。

  • 想定利回りの根拠(表面か実質か)
  • 空室率の想定
  • 修繕費の見積もり
  • 売却時の想定価格

対策2: 想定利回りを保守的に再計算

営業資料の想定利回りを鵜呑みにせず、以下のように保守的に再計算しましょう。

  • 稼働率: 95% → 85-90%に調整
  • 管理費・修繕費: 年間家賃収入の15-20%を想定
  • 固定資産税: 固定資産税評価額の1.4%

対策3: 空室率・修繕費を厳しめに見積もる

  • 空室率: 稼働率90%以下を想定
  • 修繕費: 築年数×1-2万円/年を想定
  • 大規模修繕: 10-15年ごとに数百万円の支出を想定

対策4: 契約前に専門家(税理士・FP)に相談

不動産会社の提携税理士は中立性に欠ける可能性があります。以下の専門家に相談することを推奨します。

  • 税理士: 節税効果の実効性を確認
  • ファイナンシャルプランナー: キャッシュフロー、ライフプランとの整合性を確認
  • 不動産鑑定士: 物件の適正価格を評価

対策5: 即決しない(クーリングオフは原則不可)

GRANDVANによると、不動産投資のクーリングオフは原則不可です。ただし、以下の条件を満たす場合は可能です。

  • 事務所外契約(自宅や喫茶店等)
  • 書面交付後8日以内
  • 引渡・決済前

事務所で契約した場合や引渡後は適用外です。「今日中に決めないと」と迫られても、即決せず、十分に検討しましょう。

まとめ:不動産投資は「楽して儲かる」ものではない

サラリーマンは属性が良く投資知識が乏しいため、不動産投資営業のターゲットにされやすい立場にあります。悪質業者の手口(節税効果の誇大宣伝、サブリース詐欺、断定表現、住宅ローン不正利用、満室偽装)を知り、自衛することが重要です。

複数社比較・保守的な再計算・専門家相談・即決しないという対策を実践しましょう。不明点は国民生活センター(消費者ホットライン188)金融庁に相談できます。

不動産投資は適切に行えば有効な投資手段ですが、「楽して儲かる」ものではありません。リスクを理解した上で、慎重に判断しましょう。

よくある質問

Q1不動産投資の節税効果は本当にないのですか?

A1完全にないわけではありません。不動産所得の赤字を給与所得と損益通算して所得税を減らせますが、実効性は数万円〜20-30万円程度です。「年間100万円節税」等の誇大広告には注意が必要です。そもそも赤字を出すこと自体が投資の本来の目的に反しています。

Q2サブリース契約は避けるべきですか?

A2一概に否定はできませんが、「30年保証」等の甘い言葉に注意が必要です。賃料は2年ごとの見直しで減額される可能性が高く、保証会社の経営破綻リスクもあります。契約内容(賃料見直し条件、解約条件等)を必ず確認しましょう。

Q3不動産投資のクーリングオフはできますか?

A3原則不可です。ただし、事務所外契約(自宅や喫茶店等)で書面交付後8日以内、かつ引渡・決済前ならクーリングオフ可能です。事務所で契約した場合や引渡後は適用外です。「今日中に決めないと」と迫られても即決せず、十分に検討しましょう。

Q4不動産投資の相談先はどこが良いですか?

A4中立的な専門家(税理士、ファイナンシャルプランナー、不動産鑑定士等)に相談することを推奨します。不動産会社の提携税理士は中立性に欠ける可能性があります。トラブル時は国民生活センター(消費者ホットライン188)や金融庁に相談できます。