サラリーマンが不動産投資で「カモ」にされる3つの理由
「不動産投資で失敗した」「営業マンの言葉を信じて大損した」という話を聞いたことはありませんか。
この記事では、サラリーマンが不動産投資で「カモ」にされる理由、悪質業者の典型的な手口、失敗事例、そして自衛するための対策を、国民生活センターや消費者庁の公式情報を元に解説します。
不動産投資を検討している方が、リスクを正しく理解し、適切な判断ができるようになります。
この記事のポイント
- サラリーマンは「属性が良い(ローンが組みやすい)」ため狙われやすい
- 悪質業者の手口:節税効果の誇大宣伝、サブリース詐欺、断定表現、住宅ローン不正利用、満室偽装
- 失敗事例:想定利回りと実際の収支の乖離、空室リスクの軽視、修繕費の想定外、売却困難
- 対策:複数社比較、保守的な再計算、専門家への相談、即決しない
理由1: 属性が良い(ローンが組みやすい)
ゴールドオンラインの専門家解説によると、サラリーマンは「融資属性が良い」ため、不動産投資営業のターゲットにされやすいとされています。
融資属性とは、銀行がローン審査で評価する信用力のことです。サラリーマンは安定した収入があるため、銀行から多額の借入が可能です。この「多額のローンが組める」という特性が、悪質業者にとって魅力的なのです。
理由2: 投資知識が乏しい
不動産投資には、以下のような専門知識が必要です。
- 利回り: 表面利回りと実質利回りの違い
- キャッシュフロー: 家賃収入からローン返済・管理費等を差し引いた実質的な収支
- 出口戦略: 売却時の価格予測、ローン残債との関係
これらの知識が不足していると、営業トークを鵜呑みにしてしまい、不利な契約を結ぶリスクが高まります。
理由3: 忙しくて精査する時間がない
国民生活センターの注意喚起では、20代の若手サラリーマンが狙われやすいとされています。本業が忙しく、営業マンの提案を十分に検証する時間がないため、「この物件は人気で今日中に決めないと他の人に取られる」等の強引な契約迫りに屈しやすいのです。
悪質業者の5つの典型的手口
手口1: 「節税効果」の誇大宣伝
不動産投資の赤字を給与所得と損益通算することで、所得税を減らせる仕組みがあります。しかし、東急リバブルの解説によると、実際の節税効果は数万円〜20-30万円程度です。
「年間100万円節税できる」等の誇大広告には注意が必要です。そもそも赤字を出すこと自体が投資の本来の目的に反しています。
手口2: サブリース詐欺(「30年家賃保証」の罠)
消費者庁は、サブリース契約のトラブルについて公式に注意喚起しています。
サブリース契約とは、賃貸物件を不動産会社が一括借り上げし、家賃を保証する契約です。「30年保証」と謳っても、実際には2年ごとの賃料見直しで減額されるケースが多く、保証会社の経営破綻リスクもあります。
かぼちゃの馬車事件(2018年)では、「賃料30年保証」「利回り8%」で多数のサラリーマンを勧誘した後、運営会社が経営破綻し、多くの投資家が自己破産に追い込まれました。
手口3: 「ほぼ確実に儲かる」等の断定表現
「必ず儲かる」「ほぼ確実に値上がりする」等の断定表現は、金融商品取引法で禁止されています。このような表現を使う営業マンには注意が必要です。
手口4: 住宅ローン不正利用
投資物件を自己居住用と偽り、低金利の住宅ローンを不正に利用させる手口です。武蔵コーポレーションによると、これは違法行為であり、発覚した場合は一括返済を求められるリスクがあります。
手口5: 満室偽装
実際には空室が多いのに、サクラを入室させて「満室」と虚偽の情報を提供し、高利回りを演出する詐欺手口です。内覧時に多くの入居者がいるように見せかけますが、契約後に一斉に退去するケースがあります。
失敗事例:想定と現実の乖離
失敗1: 想定利回りと実際の収支の乖離
不動産投資の利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」があります。
- 表面利回り: 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
- 実質利回り: (年間家賃収入 - 諸経費)÷ 物件価格 × 100
営業資料には表面利回りのみが記載されることが多く、管理費・修繕費・固定資産税等を含めると実質利回りは大幅に低下します。
失敗2: 空室リスクの軽視
想定稼働率95%で計算されていても、実際には80%程度になるケースが多くあります。空室が続くと、ローン返済が家賃収入を上回り、持ち出しが発生します。
失敗3: 修繕費・管理費の想定外
築年数が経過すると、以下の費用が急増します。
- 日常修繕: エアコン、給湯器、水回り等の故障
- 大規模修繕: 外壁塗装、屋根修理等(数百万円)
築年数×1-2万円/年の修繕費を想定しておくことが推奨されます。
失敗4: 出口戦略の欠如(売却困難)
不動産投資は、最終的に売却して利益を確定します(出口戦略)。しかし、以下の理由で売却が困難になるケースがあります。
- 売却価格が買値を大幅に下回る(築年数経過による価値下落)
- ローン残債が売却価格を上回る(オーバーローン状態)
出口戦略を事前に検討しないまま購入すると、売却時に大損するリスクがあります。
カモにされないための5つの対策
対策1: 複数社の提案を比較する
1社だけの提案で判断するのは危険です。3-5社の査定・提案を比較し、以下の点を確認しましょう。
- 想定利回りの根拠(表面か実質か)
- 空室率の想定
- 修繕費の見積もり
- 売却時の想定価格
対策2: 想定利回りを保守的に再計算
営業資料の想定利回りを鵜呑みにせず、以下のように保守的に再計算しましょう。
- 稼働率: 95% → 85-90%に調整
- 管理費・修繕費: 年間家賃収入の15-20%を想定
- 固定資産税: 固定資産税評価額の1.4%
対策3: 空室率・修繕費を厳しめに見積もる
- 空室率: 稼働率90%以下を想定
- 修繕費: 築年数×1-2万円/年を想定
- 大規模修繕: 10-15年ごとに数百万円の支出を想定
対策4: 契約前に専門家(税理士・FP)に相談
不動産会社の提携税理士は中立性に欠ける可能性があります。以下の専門家に相談することを推奨します。
- 税理士: 節税効果の実効性を確認
- ファイナンシャルプランナー: キャッシュフロー、ライフプランとの整合性を確認
- 不動産鑑定士: 物件の適正価格を評価
対策5: 即決しない(クーリングオフは原則不可)
GRANDVANによると、不動産投資のクーリングオフは原則不可です。ただし、以下の条件を満たす場合は可能です。
- 事務所外契約(自宅や喫茶店等)
- 書面交付後8日以内
- 引渡・決済前
事務所で契約した場合や引渡後は適用外です。「今日中に決めないと」と迫られても、即決せず、十分に検討しましょう。
まとめ:不動産投資は「楽して儲かる」ものではない
サラリーマンは属性が良く投資知識が乏しいため、不動産投資営業のターゲットにされやすい立場にあります。悪質業者の手口(節税効果の誇大宣伝、サブリース詐欺、断定表現、住宅ローン不正利用、満室偽装)を知り、自衛することが重要です。
複数社比較・保守的な再計算・専門家相談・即決しないという対策を実践しましょう。不明点は国民生活センター(消費者ホットライン188)や金融庁に相談できます。
不動産投資は適切に行えば有効な投資手段ですが、「楽して儲かる」ものではありません。リスクを理解した上で、慎重に判断しましょう。
