不動産売買契約書の印紙税額一覧|軽減措置と電子契約で節税する方法

公開日: 2025/10/27

不動産売買契約書の印紙税を正しく理解したい方へ

不動産の売買契約を控えている方にとって、「売買契約書に貼る印紙がいくら必要なのか」「軽減措置で安くなると聞いたが詳細が不明」「電子契約なら印紙不要と聞いたが本当か」といった疑問は少なくありません。

この記事では、不動産売買契約書の印紙税額を契約金額別に一覧表で提示し、軽減措置の適用期限と要件、電子契約による節税方法、印紙の貼り方と消印の方法、貼り忘れた場合のペナルティを解説します。

国税庁の公式情報を元に、実務上の注意点も含めて網羅的に説明します。

この記事のポイント

  • 不動産売買契約書の印紙税は契約金額に応じて400円~60万円、軽減措置で2027年3月31日まで半額
  • 契約金額3000万円の場合、本則2万円→軽減1万円に減額される
  • 電子契約なら印紙税が完全に不要(印紙税法は「文書」に課税、電子データは文書に該当しない)
  • 印紙を貼り忘れた場合は本来の税額×3倍の過怠税、自主申告なら1.1倍に軽減

不動産売買契約書と印紙税の関係

不動産売買契約書は、印紙税法の第1号文書「不動産の譲渡に関する契約書」に該当し、契約金額に応じて400円~60万円の印紙税が課されます。

印紙税は紙の契約書に課される税金であり、契約書に印紙を貼付・消印することで納税します。売買契約書は売主・買主双方が保管するため、通常は2部分の印紙が必要です(各自が負担)。

誰が印紙税を負担するのか

法律では売主・買主双方が納税義務者ですが、慣習では各自が保管する契約書分の印紙を負担するのが一般的です。ただし、契約書に明記するか話し合いで決定することもできます。

印紙税の税額一覧|本則と軽減措置

不動産売買契約書の印紙税額は、契約金額(物件価格)に応じて以下のように定められています。

軽減措置の適用期限と要件

租税特別措置法により、2014年4月1日~2027年3月31日に作成される不動産譲渡契約書(記載金額10万円超)は本則税額の半額に軽減されます。

軽減措置の適用要件:

  • 作成日が2014年4月1日~2027年3月31日
  • 不動産の譲渡に関する契約書(第1号文書)
  • 記載金額が10万円超

契約金額別の税額表

以下は、契約金額別の印紙税額(本則と軽減税額)の一覧です。

契約金額 本則税額 軽減税額(2027年3月31日まで)
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上10万円以下 200円 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円

(出典: 国税庁三井のリハウス

例えば、契約金額3,000万円の場合、本則税額は2万円ですが、軽減措置により1万円に減額されます。

印紙の貼り方と消印の方法

印紙税を納めるには、契約書に印紙を貼付し、消印を行う必要があります。

正しい消印の方法

消印は、印紙の再使用を防ぐため、印紙の彩紋(模様部分)と文書にかけて印章または署名で消すことです。売主・買主のどちらか一方(または代理人)が行えばよく、両者が押す必要はありません。

認められる消印方法:

  • 印章(実印・認印どちらでも可)
  • 署名(ペンで氏名を記入)

認められない消印方法:

  • 斜線のみ
  • 鉛筆での署名
  • スタンプが不鮮明

(出典: 国税庁鳥飼総合法律事務所

消印がない場合のペナルティ

消印がない場合、印紙税法違反ですが契約自体は有効です。ただし、税務調査で指摘されると、印紙額と同額の過怠税が課されます。

例:印紙1万円分を貼ったが消印なし→過怠税1万円(合計2万円の負担)

印紙を貼り忘れた場合のペナルティ

印紙を貼り忘れた場合、本来の税額×3倍の過怠税が徴収されます。

過怠税の計算と軽減措置

通常の過怠税:

  • 本来の税額×3倍
  • 例:本来1万円なら3万円

自主申告時の軽減:

  • 本来の税額×1.1倍
  • 例:本来1万円なら1.1万円

印紙を貼り忘れても契約は有効ですが、税務調査で指摘されるリスクがあります。納税義務者は契約書作成者(売主・買主双方)で、どちらが負担するかは契約書に明記するか話し合いで決定します。

電子契約なら印紙税が完全に不要

電子データで契約書を作成・締結する電子契約は、印紙税が完全に不要になります。

電子契約が印紙税不要となる理由

印紙税法は「文書」に課税するため、電子データで作成された契約書は課税対象外です(国税庁見解)。

これは法的根拠に基づくものであり、電子契約書は電子署名法により法的効力が認められています。

電子契約のメリット・デメリット

メリット:

  • 印紙税が完全に不要(例:3,000万円の契約なら1万円節約)
  • 契約書の郵送・保管コスト削減
  • 契約締結のスピード向上

デメリット:

  • 電子署名法に基づく電子証明書が必要
  • 不動産会社・金融機関が電子契約に対応していない場合あり
  • 高齢者等、デジタルに不慣れな方には操作が難しい

不動産売買で電子契約は使えるか

法的には有効ですが、不動産会社・金融機関が電子契約に対応していない場合があります。事前に確認が必要です。

まとめ:印紙税を正しく理解して節税を

不動産売買契約書には印紙税が必要ですが、軽減措置(2027年3月31日まで)で税額が半額になります。契約金額3,000万円の場合、本則2万円→軽減1万円です。

印紙は必ず消印し、貼り忘れた場合は3倍の過怠税(自主申告なら1.1倍)が課されます。消印がない場合も印紙額と同額の過怠税が課されるため注意が必要です。

電子契約なら印紙税が完全に不要で、コスト削減・スピード向上のメリットがあります。契約前に不動産会社と相談し、印紙税の負担を明確にすることが重要です。

信頼できる不動産会社や税理士に相談しながら、正しい手続きを行いましょう。

よくある質問

Q1売買契約書の印紙は誰が負担しますか?

A1法律では売主・買主双方が納税義務者ですが、慣習では各自が保管する契約書分の印紙を負担(通常は2部分)します。契約書に明記するか話し合いで決定することもできます。例えば、売主が両方の印紙を負担する、または折半する等の取り決めも可能です。事前に不動産会社や双方の当事者間で確認しておくことをおすすめします。

Q2契約金額1万円未満でも印紙は必要ですか?

A21万円未満は非課税のため印紙不要です。ただし、契約金額が記載されていない場合は200円の印紙が必要になります。また、契約金額が10万円以下(1万円以上)の場合も200円の印紙が必要ですが、軽減措置の対象外です。契約書には必ず契約金額を明記しましょう。

Q3軽減措置は2027年3月31日以降も延長されますか?

A3延長の可能性はありますが、現時点(2025年10月)では不明です。過去にも複数回延長されてきた経緯がありますが、政府の税制改正により変更される可能性もあります。契約時点の最新情報を[国税庁サイト](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm)で確認することを推奨します。

Q4電子契約は不動産売買で使えますか?

A4法的には有効ですが、不動産会社・金融機関が電子契約に対応していない場合があります。特に、住宅ローンを利用する場合、金融機関が電子契約を認めていない可能性もあるため、事前に確認が必要です。また、高齢者等、デジタルに不慣れな方には操作が難しい場合もあります。まずは不動産会社に電子契約の対応可否を確認しましょう。