土地賃貸借契約書の印紙税とは?基本的な仕組み
土地の賃貸借契約を結ぶ際、契約書に印紙を貼る必要があるのか、貼るとしたらいくらの印紙が必要なのか、疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、国税庁の公式情報を元に、土地賃貸借契約書の印紙税の仕組み、金額の決め方、貼り方と注意点を解説します。
この記事のポイント
- 土地賃貸借契約書は原則として印紙税が必要(建物賃貸借は不要)
- 印紙税額は契約内容(権利金・契約期間)により200円~数十万円まで変動
- 契約金額の判定は権利金・更新料のみ(敷金・月額賃料は対象外)
- 貼り忘れ時は過怠税(本来の印紙税額の3倍)が課される
- 電子契約なら印紙不要
土地賃貸借と建物賃貸借の違い(土地は必要、建物は不要)
土地賃貸借契約書は、印紙税法の課税文書(第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」)に該当し、原則として印紙税が必要です。
一方、国税庁によると、建物賃貸借契約書は課税文書に当たらず、印紙不要です。この違いを理解しておくことが重要です。
印紙税法の第1号の2文書に該当
土地賃貸借契約書は、印紙税法の第1号の2文書に該当します。印紙税額は契約内容により異なり、200円から数十万円まで幅広い設定となっています。
契約書作成者が納税義務者であり、契約の有効性とは別に納税義務があることを理解しておく必要があります。
印紙税額の決め方(契約金額の判定方法)
印紙税額は「契約金額(記載金額)」により決定します。契約金額の定義を正しく理解することが重要です。
権利金・更新料は課税対象(返還されない金額)
国税庁によると、契約金額の定義は「後日返還されない金額のみ」が対象です。
以下が課税対象となります。
- 権利金: 土地の賃借権設定の対価として支払う金銭で後日返還されないもの
- 更新料: 賃貸借契約を更新する際に支払う金銭で後日返還されないもの
- 礼金: 返還されない金銭
敷金・保証金・月額賃料は対象外(返還される金額)
一方、以下は契約金額に含まれません。
- 敷金・保証金: 契約終了時に返還されることが予定されている金銭
- 月額賃料: 毎月の賃料は契約金額に含まれない
具体例を示します。
例: 権利金1,000万円+敷金500万円+月額賃料10万円の場合 → 契約金額は1,000万円のみ(敷金・月額賃料は対象外)
金額記載がない契約書でも200円の印紙が必要であり、「金額記載なし=印紙不要」ではないことに注意が必要です。
契約パターン別の印紙税額一覧
印紙税額は契約内容により3つのパターンに分類されます。
パターン1:権利金あり(200円~60万円)
権利金がある場合、契約金額に応じて印紙税額が決まります。
| 契約金額 | 印紙税額 | 
|---|---|
| 10万円以下 | 200円 | 
| 10万円超~50万円以下 | 400円 | 
| 100万円超~500万円以下 | 2,000円 | 
| 500万円超~1,000万円以下 | 1万円 | 
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 
| 5,000万円超~1億円以下 | 6万円 | 
| 1億円超~5億円以下 | 10万円 | 
(出典: 国税庁)
パターン2:権利金なし・契約期間あり(200円~8万円)
権利金がなく契約期間が定められている場合、契約期間に応じて印紙税額が決まります。
| 契約期間 | 印紙税額 | 
|---|---|
| 3年以下 | 200円 | 
| 3年超~5年以下 | 1,000円 | 
| 5年超~10年以下 | 1万円 | 
| 10年超~30年以下 | 2万円 | 
| 30年超~ | 6万円 | 
パターン3:権利金なし・契約期間なし(印紙不要)
権利金がなく契約期間が定められていない場合(月額地代のみで更新時期が定められていない)、印紙不要です。
印紙の貼り方と消印の正しい方法
印紙を正しく貼付・消印することで、納税義務を果たすことができます。
印紙は契約書1通ごとに貼付
印紙は、郵便局・コンビニ・法務局で購入できます。契約書1通ごとに必要な金額の印紙を貼付します(コピーには不要)。
契約書を2通作成し各自1通保管する場合、それぞれが自分の契約書に印紙を貼付する必要があります。
消印の方法(再使用を防ぐ)
消印は、印紙の再使用を防ぐために行います。契約当事者の印鑑または署名で、印紙と契約書にまたがって押します。
貼付位置は通常、契約書の冒頭です。剥がれないよう確実に貼ることが重要です。
印紙を貼り忘れた場合のペナルティ(過怠税)
印紙を貼り忘れた場合、または金額が不足している場合、過怠税が課されます。
過怠税は、本来の印紙税額の3倍(印紙税額×2+本来の印紙税額)です。
例: 本来2万円の印紙が必要だったのに貼らなかった場合 → 6万円の過怠税
税務調査で発見された場合に課されます。印紙を貼らなくても契約自体は有効ですが、納税義務は別に存在します。
自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減される制度もあります。早めの対応が重要です。
印紙税が不要になるケースと電子契約の活用
印紙税が不要になるケースが2つあります。
- 権利金なし・契約期間なし: 月額地代のみで更新時期が定められていない場合
- 電子契約の場合: 2022年5月18日以降、電子署名法により書面契約と同等の効力
クラウドサインによると、電子契約のメリットは印紙代節約と契約締結の迅速化です。ただし、相手方の同意が必要であり、システム導入コストも考慮する必要があります。
本記事の主旨は印紙税の正確な理解であり、電子契約は補足程度に留めます。
まとめ:土地賃貸借契約書の印紙税を正しく理解する
土地賃貸借契約書は原則として印紙税が必要です(建物は不要)。契約金額の判定は権利金・更新料のみで、敷金・月額賃料は対象外です。
印紙税額は契約内容により200円~数十万円まで変動します。貼り忘れ時の過怠税(3倍)に注意が必要です。電子契約なら印紙不要ですが、相手方の同意とシステム導入が必要です。
契約書作成前に国税庁の印紙税額一覧表で金額を確認し、不明点があれば税務署に相談することをおすすめします。
