不動産買取とは?基本的な仕組みを理解する
不動産を早く売却したい、でも仲介で売れるか不安という方にとって、「買取」は有力な選択肢の一つです。
この記事では、不動産買取の基本的な仕組み、仲介との違い、買取のメリット・デメリット、買取が向いているケース、業者選びのポイントを、国土交通省等の公式情報を元に詳しく解説します。
不動産買取とは、不動産会社が売主から直接物件を買い取り、リフォーム後に転売するビジネスモデルです。最短1週間で現金化できる一方、買取価格は市場価格の70-80%程度になります。仲介は買い手を探すため3-6ヶ月かかりますが、市場価格での売却が期待できます。どちらを選ぶかは、時間的余裕と価格優先度によって異なります。
この記事のポイント
- 不動産買取は不動産会社が直接買い取り、最短1週間で現金化できる
- 買取価格は市場価格の70-80%程度で、業者の転売利益・リフォーム費用が差し引かれる
- 契約不適合責任が免責され、内覧・リフォームが不要
- 買取が向くケース:相続・離婚・資金繰りで急ぐ、築古・事故物件等
- 複数社見積もり(最低3社以上)が必須で、1社のみだと安値買い叩きのリスク
不動産買取の仕組みとビジネスモデル
不動産買取の基本的な仕組みを理解しましょう。
買取業者のビジネスモデル
国土交通省の買取再販制度によると、買取業者は以下の流れでビジネスを行います。
1. 物件の買取:
- 売主から直接物件を買い取る
- 買取価格は市場価格の70-80%程度
2. リフォーム・リノベーション:
- 内装・設備を更新し、再販可能な状態にする
- リフォーム費用を投資
3. 再販売:
- 仲介や自社販売で買い手を探す
- 転売利益を得る
買取業者は、取得価格を抑え、リフォーム費用を投資し、転売利益を得る必要があるため、買取価格は市場価格より低くなります。
税制優遇措置(令和9年3月31日まで)
買取再販業者が既存住宅を取得・リフォーム後に再販する場合、登録免許税・不動産取得税の軽減措置があります(令和9年3月31日までの時限措置)。これにより、買取業者のコストが削減され、買取価格に反映される可能性があります。
買取と仲介の違いを徹底比較
買取と仲介の主要な違いを表形式で整理します。
売却価格・期間の比較
| 項目 | 買取 | 仲介 | 
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の70-80%程度 | 市場価格 | 
| 売却期間 | 最短1週間~1ヶ月 | 3-6ヶ月程度 | 
| 買い手探し | 不要(不動産会社が買取) | 必要 | 
買取は即金化できる一方、価格は市場より低くなります。仲介は時間がかかりますが、高値売却が期待できます。
契約不適合責任・手数料・内覧の比較
| 項目 | 買取 | 仲介 | 
|---|---|---|
| 契約不適合責任 | 免責が一般的 | 売主負担(引渡し後2-3ヶ月) | 
| 仲介手数料 | 不要 | 成約価格×3%+6万円+消費税 | 
| 内覧 | 不要 | 必要(複数回) | 
| リフォーム | 不要 | 状態により必要な場合あり | 
| 周囲への告知 | 不要(広告掲載なし) | 必要(広告掲載・看板設置) | 
(出典: 訳あり物件買取ナビ)
買取は契約不適合責任が免責され、仲介手数料不要、内覧不要等のメリットがあります。
不動産買取のメリット:速さと手間の削減
買取の主要なメリットを具体的に解説します。
最短1週間で現金化できる
買取の最大のメリットは、現金化のスピードです。
一般的な流れ:
- 査定依頼(即日~数日)
- 現地調査(1週間程度)
- 契約締結(1週間程度)
- 決済・引渡し(契約から2週間~1ヶ月)
HOME4Uによると、即時買取を選べば、査定から決済まで最短1週間~1ヶ月で完了します。相続・離婚・資金繰り等で急いで現金化したいケースに有効です。
契約不適合責任が免責される
契約不適合責任とは、引き渡した不動産が契約内容に適合しない場合、売主が買主に負う責任です。仲介では売主がこの責任を負いますが、買取では免責されることが一般的です。
空き家パスの解説によると、宅建業者が買主の場合、民法572条により契約不適合責任が免責される法的根拠があります。ただし、故意に隠蔽した瑕疵は免責されません。契約書に免責条項を明記することが重要です。
免責されるケース例:
- 土壌汚染
- 地中埋設物
- 雨漏り・シロアリ被害(故意の隠蔽を除く)
内覧・リフォーム不要で周囲に知られにくい
仲介では、購入検討者が複数回内覧に訪れるため、日程調整や室内の片付けが必要です。買取では内覧が不要で、リフォームもそのままの状態で売却できます。
その他のメリット:
- 売却活動が周囲に知られにくい(仲介では広告掲載・看板設置等で周知される)
- 仲介手数料(成約価格×3%+6万円+消費税)が不要
- 仕事や介護で時間が取れない方に有効
不動産買取のデメリット:価格と業者選びの重要性
買取にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
買取価格は市場価格の70-80%程度
買取価格は、仲介の成約価格(市場価格)の70-80%程度が相場です。
価格例:
| 市場価格 | 買取価格(70-80%) | 差額 | 
|---|---|---|
| 3,000万円 | 2,100-2,400万円 | 600-900万円 | 
| 5,000万円 | 3,500-4,000万円 | 1,000-1,500万円 | 
時間的余裕があれば、仲介の方が高値売却できる可能性があります。
業者の転売利益・リフォーム費用が差し引かれる理由
買取価格が市場価格より低い理由は、買取業者が以下を考慮して価格を算出するためです。
- 転売利益: 業者が再販時に得る利益
- リフォーム費用: 物件を再販可能な状態にする費用
- 維持管理費: 再販までの固定資産税・管理費等
- リスク負担: 売れ残りや価格下落のリスク
買取価格が安いからといって、悪質な業者とは限りません。業者がビジネスとして成立させるために必要な価格設定です。
買取不可の物件もある
以下のような物件は、買取業者が買取を断るケースがあります。
- 転売益が見込めない: 立地が悪く再販が困難
- 解体費用が土地価格を上回る: 建物解体が必要だが費用が高額
- 権利関係が複雑: 共有名義、抵当権設定、借地権等
買取を検討する際は、複数社に見積もりを依頼し、買取可能か確認することが重要です。
買取が向いているケース・仲介が向いているケース
買取と仲介の使い分けを、具体的な状況例で示します。
買取が向くケース:相続・離婚・資金繰り・築古物件等
以下のような状況では、買取が向いている場合があります。
時間的制約があるケース:
- 相続で急いで現金化したい: 相続税納付期限(10ヶ月)までに売却したい
- 離婚・資金繰りで即金化が必要: 財産分与や債務返済で早く現金が必要
物件条件が厳しいケース:
- 築古・事故物件で仲介が難しい: 仲介では買い手がつきにくい
- 再建築不可物件: 建築基準法により再建築できない
手間を避けたいケース:
- 内覧対応やリフォームの手間を避けたい: 仕事や介護で時間が取れない
- 周囲に売却を知られたくない: 広告掲載や看板設置を避けたい
仲介が向くケース:時間的余裕があり高値売却優先
以下のような状況では、仲介が向いている場合があります。
- 時間的余裕がある(3-6ヶ月以上): 急ぎでない
- 高値売却を優先したい: 市場価格での売却を目指す
- 築浅で条件の良い物件: 買い手がつきやすい
- 住宅ローン残債が多い: 買取価格では完済できない
即時買取と買取保証の使い分け
買取には「即時買取」と「買取保証」の2種類があります。
| 項目 | 即時買取 | 買取保証 | 
|---|---|---|
| 概要 | すぐに不動産会社が買い取る | 一定期間は仲介で売却活動、売れなければ買取 | 
| 期間 | 最短1週間~1ヶ月 | 仲介期間3-6ヶ月 + 買取 | 
| 価格 | 市場価格の70-80%程度 | 仲介で売れれば市場価格、売れなければ事前提示価格 | 
| メリット | 即金化 | 高値売却を狙いつつ、売れなくても確実に売却 | 
(出典: HOME4U)
時間的余裕が多少あり、高値売却も狙いたい場合は買取保証を検討する価値があります。
買取業者の選び方と注意点:複数社見積もりが必須
買取業者選びを誤ると、相場より安値で買い叩かれるリスクがあります。
複数社見積もりが必須(最低3社以上)
最低3社以上に見積もりを依頼することが重要です。1社のみだと、以下のリスクがあります。
- 相場が分からない: 提示価格が妥当か判断できない
- 安値買い叩きのリスク: 悪質業者に安く買い叩かれる
- 業者の得意分野が異なる: A社は築古物件、B社は区分マンション等、得意分野が異なる
複数社見積もりで相場を把握し、最も高い価格を提示する業者を選びましょう。極端に安い価格を提示する業者は避けることが重要です。
悪質な買取業者の手口と対処法
不動産売却マスターによると、悪質業者の手口には以下があります。
注意すべき手口:
- 安値で買い叩く: 相場より大幅に安い価格を提示
- 契約後の追加費用請求: 契約後に「想定外の修繕費」「追加調査費」等を請求
- 強引な契約: 査定時に契約を急かす、説明が不十分、重要事項説明を省略
対処法:
- 宅建業免許の確認: 国土交通省のネガティブ情報検索システムで照会可能
- 重要事項説明の徹底: 説明を省略する業者は要注意
- 契約書の確認: 追加費用の有無、免責条項等を確認
- 複数社比較: 極端に安い価格を提示する業者は避ける
宅地建物取引業法により、買取業者は宅建業免許が必要で、重要事項説明義務があります。これらを怠る業者は信頼性に欠けます。
住宅ローン残債がある場合の注意点
買取代金でローンを完済できれば買取可能です。売却代金でローン残債を完済し、金融機関から抵当権を抹消してもらう必要があります。
買取価格でローン完済できない場合:
- 自己資金で補填する
- 買取業者に任意売却として相談する
複数社に見積もりを依頼し、最も高い価格を提示する業者を選ぶことで、ローン完済の可能性が高まります。
まとめ:状況に応じて買取と仲介を使い分けよう
不動産買取は、不動産会社が直接買い取り、リフォーム後に転売するビジネスモデルです。最短1週間で現金化でき、契約不適合責任が免責され、内覧・リフォームが不要というメリットがあります。一方、買取価格は市場価格の70-80%程度になり、業者の転売利益・リフォーム費用が差し引かれます。
買取が絶対お得とは限りません。時間的余裕があれば、仲介の方が高値売却できる可能性があります。買取を選ぶ場合は、複数社見積もり(最低3社以上)が必須です。1社のみだと、相場が分からず安値買い叩きのリスクが高まります。
相続・離婚・資金繰りで急ぐケースや、築古・事故物件で仲介が難しいケースでは、買取が有効な選択肢となる場合があります。状況に応じて買取と仲介を使い分け、信頼できる不動産会社に相談しながら進めることをおすすめします。宅建業免許の確認、重要事項説明の徹底、契約書の確認を行い、トラブルを避けて売却しましょう。
