不動産取得税を払わなくて良いケース:免税・軽減措置を解説

公開日: 2025/11/6

不動産取得税を払わなくて良いケースとは

不動産を購入・相続した際、「不動産取得税がどれくらいかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。不動産取得税は原則として不動産を取得した際に課税されますが、一定のケースでは「払わなくて良い」状況が生じます。

この記事では、不動産取得税を払わなくて良い主要なケース(①相続、②免税点未満、③軽減措置による実質ゼロ)を、総務省国税庁の公式情報を元に解説します。執筆時点(2025年10月)の最新制度に基づき、読者が自分の状況を正しく判断できることを目指します。

この記事のポイント

  • 相続による不動産取得は原則非課税(相続人以外への特定遺贈は課税)
  • 免税点未満(土地10万円・新築家屋23万円・中古家屋12万円未満)は課税されない
  • 軽減措置により実質ゼロになる場合がある(新築住宅1,200万円控除、中古住宅築年数別控除)
  • 軽減措置は自動適用ではなく、取得後60日以内の申請が必須
  • 申請を怠ると本来受けられる軽減を逃し、満額課税される

相続は原則非課税(例外に注意)

不動産取得税は地方税法により、相続による不動産取得は原則非課税です。総務省によると、相続人(配偶者・子・父母等)への相続・遺贈は課税対象外となります。

相続・遺贈(相続人)は非課税

以下のケースでは不動産取得税は課税されません。

  • 法定相続人への相続(配偶者、子、父母、兄弟姉妹等)
  • 相続人への包括遺贈(遺言で「全財産の3分の1を相続させる」等)
  • 相続人への特定遺贈(遺言で「〇〇の土地を相続させる」等)

これは相続税と不動産取得税の二重課税を避けるための措置です。

課税される例外ケース(相続人以外への特定遺贈・死因贈与)

一方、以下のケースでは不動産取得税が課税されます。

  • 相続人以外への特定遺贈(友人・事実婚パートナー・遠い親戚等への遺贈)
  • 死因贈与(「死亡したら〇〇に不動産を渡す」という契約)

税理士法人チェスターによると、相続人と受遺者の違い、特定遺贈と包括遺贈の区別を理解することが重要です。「相続なら絶対に非課税」という誤解を避けるため、遺言書作成時は専門家に相談してください。

免税点未満なら課税されない

地方税法で定める免税点を下回る場合、不動産取得税は課税されません。総務省によると、免税点は以下の通りです。

不動産の種類 免税点(課税標準額)
土地 10万円未満
新築家屋 23万円未満
中古家屋 12万円未満

土地:課税標準額10万円未満

土地の課税標準額は、固定資産税評価額をもとに算出されます。2027年3月31日までの取得は、評価額の2分の1が課税標準額となります。

計算例:

  • 固定資産税評価額: 150万円
  • 課税標準額: 150万円 × 1/2 = 75万円
  • 免税点(10万円)を超えるため、課税対象

新築家屋:課税標準額23万円未満

新築家屋の課税標準額は、固定資産税評価額と同額です。評価額が23万円未満の小規模な建物(小屋・物置等)は課税されません。

中古家屋:課税標準額12万円未満

中古家屋(売買・贈与による取得、増改築)の課税標準額が12万円未満の場合は課税されません。

重要な注意点: 免税点は「取得した不動産単体」で判断されます。複数の不動産を同時取得した場合は合算されるため、個別には免税点未満でも合計で超える場合は課税されます。

軽減措置で実質ゼロになるケース

免税点を超える不動産でも、軽減措置により税額が実質ゼロになる場合があります。総務省茨城県の公式情報によると、以下の軽減措置があります。

新築住宅の軽減措置(1,200-1,300万円控除)

新築住宅を取得した場合、以下の要件を満たせば軽減措置が適用されます。

軽減要件:

  • 床面積50㎡以上240㎡以下(戸建て以外の貸家住宅は40㎡以上)
  • 自己居住用または賃貸用

軽減内容:

  • 評価額から1,200万円を控除(長期優良住宅は1,300万円控除)
  • 税率: 控除後の評価額 × 3%

計算例:

  • 新築住宅の評価額: 1,500万円
  • 控除後: 1,500万円 - 1,200万円 = 300万円
  • 税額: 300万円 × 3% = 9万円

評価額が1,200万円以下の新築住宅は、控除により税額が実質ゼロになります。

中古住宅の軽減措置(築年数別控除)

中古住宅を取得した場合、以下の要件を満たせば軽減措置が適用されます。

軽減要件:

  • 自己居住用
  • 床面積50㎡以上240㎡以下
  • 昭和57年1月1日以降に新築された住宅、または耐震基準適合証明書を取得した住宅

軽減内容:

築年数に応じて控除額が異なります。

新築年月日 控除額
1997年4月1日以降 1,200万円
1989年4月1日〜1997年3月31日 1,000万円
1985年7月1日〜1989年3月31日 450万円
1981年7月1日〜1985年6月30日 420万円
1975年1月1日〜1981年6月30日 350万円
1973年1月1日〜1974年12月31日 230万円
1954年7月1日〜1972年12月31日 150万円

住宅用土地の軽減措置(減額・還付)

住宅の軽減措置が適用される場合、土地分も減額・還付が受けられます。

軽減内容:

以下のいずれか多い方の額が軽減されます。

  • 45,000円
  • (土地1㎡あたりの評価額 × 1/2) × (住宅の床面積 × 2) × 3%

軽減措置の申請方法と注意点

軽減措置は自動適用ではありません。東京都主税局によると、取得後60日以内に都道府県税事務所へ申請が必要です。

申請期限は取得後60日以内

申請期限を過ぎると、本来受けられる軽減を逃し、満額で課税される可能性があります。不動産取得後は速やかに申請手続きを行ってください。

必要書類(登記事項証明書・住民票等)

主な必要書類は以下の通りです。

  • 不動産取得税申告書(都道府県税事務所で入手)
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 住民票の写し(自己居住用の場合)
  • 売買契約書の写し
  • 長期優良住宅認定通知書(該当者のみ)
  • 耐震基準適合証明書(中古住宅で昭和57年以前築の場合)

都道府県により申請期限・必要書類が異なる場合があるため、取得した不動産所在地の税事務所に確認することをおすすめします。

申請しないと軽減は受けられない

軽減措置の申請を怠ると、満額で納税通知書が届きます。通知書が届いてから軽減適用の可否を確認することも可能ですが、期限内の申請が確実です。不動産取得後は必ず申請手続きを行ってください。

まとめ:不動産取得税の正しい理解と対応

不動産取得税を「払わなくて良い」ケースは①相続(非課税)、②免税点未満(非課税)、③軽減措置で実質ゼロの3つです。

相続は原則非課税ですが、相続人以外への遺贈は課税されます。免税点未満は課税されませんが、該当するのは小規模な不動産のみです。多くのケースでは軽減措置により税負担が大幅に減少または実質ゼロになります。

軽減措置は取得後60日以内の申請が必須です。通知が来る前に自ら申請し、不要な税負担を避けることが重要です。詳細は取得した不動産所在地の都道府県税事務所にお問い合わせください。

よくある質問

Q1不動産取得税の納税通知書が届いたら必ず払わないといけませんか?

A1軽減措置の申請を忘れた場合、満額で通知が来る可能性があります。通知書に記載の問い合わせ先に連絡し、軽減適用の可否を確認してください。期限内なら修正申告が可能な場合もありますが、都道府県により対応が異なるため早急に確認すべきです。

Q2マンションの1室を購入した場合、土地分も軽減措置の対象になりますか?

A2マンションの土地持分(敷地権)も軽減措置の対象です。住宅の軽減措置が適用される場合、土地分の減額・還付も受けられます。ただし、住宅と土地を同時に取得した場合に限ります。先に土地のみ取得した場合は要件が異なるため、都道府県税事務所に確認してください。

Q3中古住宅を購入したが、軽減措置の要件を満たすか分かりません。

A3中古住宅の軽減要件は築年数(昭和57年以降築)または耐震基準適合証明書の有無です。登記事項証明書で新築年月日を確認し、昭和57年1月1日以降なら基本的に適用対象です。それ以前築なら耐震基準適合証明書の取得が必要となります。

Q4贈与で不動産を受け取った場合、不動産取得税は課税されますか?

A4贈与による不動産取得は課税対象です。ただし、贈与が相続時精算課税制度の適用を受ける場合や、住宅の軽減措置の要件を満たす場合は軽減が適用されます。贈与税と不動産取得税の両方がかかる可能性があるため、事前に税理士に相談することをおすすめします。

Q5不動産取得税の軽減措置は2027年3月31日まで延長されましたが、それ以降はどうなりますか?

A5現行の軽減措置(土地の課税標準1/2、住宅の控除額1,200-1,300万円)は租税特別措置法で2027年3月31日まで適用されます。それ以降は法改正により延長または内容変更の可能性があるため、不動産取得前に最新の制度を確認してください。