固定資産税を名義人以外が支払うことは可能?法的扱い

公開日: 2025/11/11

固定資産税を名義人以外が支払うことは可能か

親名義の不動産に住んでいる方や、高齢の親の代わりに固定資産税を支払いたいと考える方は少なくありません。

この記事では、固定資産税を名義人以外が支払うことの法的な可否、支払い方法、贈与税の扱い、将来のトラブルを避けるための注意点を、総務省国税庁の公式情報を元に解説します。

固定資産税の納税義務者は登記上の所有者ですが、民法第474条の第三者弁済により、名義人以外の支払いは法的に可能です。ただし、自治体によっては本人確認や委任状を求められる場合があることを理解しておきましょう。

この記事のポイント

  • 民法第474条の第三者弁済により、名義人以外の支払いは法的に可能
  • 生計を一にする親族間の扶助(親の固定資産税を子が肩代わり)は原則として贈与税非課税
  • 支払い方法は口座振替・納付書での直接支払い・委任状による代理納付がある
  • 固定資産税を払っても所有権は移転しない(登記が必須)
  • 将来の相続トラブルを避けるため、支払いの記録を残すことを推奨

固定資産税の納税義務者とは

固定資産税の基本的な仕組みを理解しましょう。

固定資産税は、毎年1月1日時点の登記上の所有者が納税義務者となります。これは地方税法に基づく原則です。

納税義務者の例:

  • 親名義の土地・建物 → 親が納税義務者
  • 夫名義のマンション → 夫が納税義務者
  • 相続により取得した不動産(未登記) → 相続人全員が連帯して納税義務を負う

納税通知書は納税義務者の住所に送付されますが、送付先を変更することも可能です(自治体により手続きが異なる)。

名義人以外の支払いは法的に可能か

名義人以外が固定資産税を支払うことは、法的に認められています。

第三者弁済の法的根拠

民法第474条により、第三者弁済(債務者以外の第三者が債務を支払うこと)が認められています。

民法第474条(第三者の弁済):

債務の弁済は、第三者もすることができる。

この規定により、固定資産税の納税義務者でない家族や親族が、代わりに固定資産税を支払うことは法的に問題ありません。

(出典: 民法 第474条【第三者の弁済】

自治体の対応と委任状の必要性

多くの自治体では、名義人以外の者が納付書を持参すれば、金融機関やコンビニで支払いが可能です。

ただし、以下のケースでは委任状が必要な場合があります。

手続き 委任状の要否
納付書での支払い 不要(多くの自治体)
口座振替の申請 必要(本人確認)
納税証明書の取得 必要
固定資産課税台帳の閲覧 必要

(出典: 東京都主税局 - 代理人による申請

自治体によって対応が異なるため、事前に税務課・資産税課に確認することをおすすめします。

名義人以外が支払う方法

名義人以外が固定資産税を支払う具体的な方法を紹介します。

口座振替で支払う

名義人以外の口座から自動引き落としで支払う方法です。

手続き:

  1. 自治体の税務課で「口座振替依頼書」を取得
  2. 納税義務者本人の同意が必要(委任状を求められる場合がある)
  3. 引き落とし口座の情報を記入し提出

メリット:

  • 支払い忘れがない
  • 毎年自動で引き落とされる

注意点:

  • 自治体によっては委任状が必要
  • 残高不足に注意

納付書で直接支払う

納税義務者に送付された納付書を使い、名義人以外の者が直接支払う方法です。

支払い場所:

  • 金融機関(銀行・郵便局等)
  • コンビニエンスストア
  • 自治体の窓口

メリット:

  • 委任状不要(多くの自治体)
  • すぐに支払える

注意点:

  • 納付書を紛失しないよう保管
  • 期限を過ぎると延滞税が発生

委任状による代理納付

委任状を作成し、正式に代理人として支払う方法です。

手続き:

  1. 納税義務者(名義人)が委任状を作成
  2. 委任状に記載する内容:
    • 納税義務者の氏名・住所
    • 代理人の氏名・住所
    • 委任する内容(固定資産税の納付)
    • 日付・署名・押印
  3. 委任状と納付書を持参して支払い

メリット:

  • 正式な代理人として認められる
  • 納税証明書の取得等も可能

注意点:

  • 委任状の作成が必要
  • 自治体により様式が異なる

贈与税が課税されるケース・されないケース

名義人以外が固定資産税を支払う際、贈与税の扱いが気になる方は多いでしょう。

贈与税が非課税となるケース

以下の条件を満たす場合、贈与税は原則として非課税です。

生計を一にする親族間の扶助: 国税庁の解釈によると、生計を一にする親族間での日常的な扶助(生活費・学費・療養費等)は贈与税の対象外とされています。

「生計を一にする」とは:

  • 同居している
  • 別居していても、生活費・学費・療養費等を常に送金している

これに基づき、親名義の不動産の固定資産税を子が支払うことは、「親の生活を支える扶助」として贈与税非課税と解釈されるケースが多いです。

(出典: 親子間の贈与でも贈与税がかかる?

贈与税が課税される可能性があるケース

以下のケースでは、贈与税が課税される可能性があります。

1. 多額・継続的な支払い: 親に十分な収入・資産があるにもかかわらず、子が年間数十万円~数百万円の固定資産税を継続的に支払う場合、「扶助の範囲を超える贈与」と判断される可能性があります。

2. 生計を一にしていない: 別居しており、生活費の送金等もない場合、贈与税が課税されるリスクがあります。

贈与税の基礎控除: 年間110万円までの贈与は非課税です。固定資産税が年間110万円以下であれば、仮に贈与と判断されても贈与税はかかりません。

(出典: 親の口座から固定資産税の振替は贈与税、相続税?

個別具体的な判断が必要: 贈与税の課税可否は個別のケースにより異なります。心配な場合は、税理士に相談することを推奨します。

将来のトラブルを避けるために

固定資産税を名義人以外が支払う場合、将来のトラブルを避けるための対策を講じましょう。

支払いの記録を残す

固定資産税を代わりに支払った場合、以下の記録を残しておくことを推奨します。

記録すべき事項:

  • 支払い日・金額
  • 支払い方法(口座振替・納付書等)
  • 領収書のコピー

目的:

  • 相続時に「誰が支払っていたか」を明確にする
  • 相続人間のトラブルを防ぐ

例えば、長男が親の固定資産税を10年間支払っていた場合、相続時に「長男が不動産を管理していた」という事実として考慮される場合があります。

生前贈与や名義変更を検討する

固定資産税を長期間支払い続ける場合、将来的に以下の選択肢を検討しましょう。

1. 生前贈与: 親が元気なうちに、不動産の所有権を子に移転する方法です。

  • メリット: 名義が明確になり、トラブルを避けられる
  • デメリット: 贈与税が課税される(評価額により数十万円~数百万円)

2. 相続登記: 親が亡くなった後、速やかに相続登記を行う方法です。

  • 重要: 2024年4月から相続登記が義務化されました(違反すると最大10万円の過料)
  • 手続き: 相続人全員の同意を得て、法務局で登記申請

(出典: 相続した不動産の固定資産税は誰が払う?

現所有者申告を提出する

所有者が亡くなった場合、相続人は現所有者申告を自治体に提出する必要があります(2020年10月施行)。

現所有者申告:

  • 所有者が死亡した日から3か月以内に提出
  • 相続人の氏名・住所等を申告
  • 自治体は申告を元に、納税通知書の送付先を決定

相続登記が完了するまでは、相続人全員が連帯して納税義務を負います。

まとめ:名義人以外の支払いは可能だが記録を残そう

固定資産税を名義人以外が支払うことは、民法第474条の第三者弁済により法的に可能です。

支払い方法:

  • 口座振替(委任状が必要な場合あり)
  • 納付書での直接支払い(委任状不要が多い)
  • 委任状による代理納付

贈与税の扱い:

  • 生計を一にする親族間の扶助は原則非課税
  • 多額・継続的な場合は課税リスクあり

注意点:

  • 固定資産税を払っても所有権は移転しない
  • 支払いの記録を残す
  • 将来的に生前贈与や名義変更を検討

個別具体的な判断が必要な場合は、税理士や司法書士に相談することをおすすめします。適切な対応により、将来のトラブルを回避できます。

よくある質問

Q1: 固定資産税を払っていれば、相続時に優先権がありますか?

ありません。支払いと所有権は別です。相続は登記上の所有者の遺産分割協議によって決まります。固定資産税を払っていても、法的な優先権は発生しません。ただし、「長年にわたり不動産を管理していた」という事実として、遺産分割協議の際に考慮される場合はあります。

Q2: 親の固定資産税を年間50万円払っていますが、贈与税はかかりますか?

生計を一にする親族間の扶助であれば原則非課税です。ただし、親に十分な収入・資産がある場合は、「扶助の範囲を超える贈与」と判断され、課税リスクがあります。年間110万円以下であれば、仮に贈与と判断されても基礎控除内で非課税です。詳細は税理士に要相談です。

Q3: 自治体に委任状を提出しないと支払えませんか?

多くの自治体では、納付書をそのまま金融機関・コンビニで支払うことが可能です(委任状不要)。ただし、納税証明書の取得、固定資産課税台帳の閲覧等、本人確認が必要な手続きには委任状が必要です。口座振替の申請時も委任状を求められる場合があります。

Q4: 親が亡くなったら、すぐに固定資産税の支払い義務は移りますか?

相続登記が完了するまでは、相続人全員が連帯して納税義務を負います。現所有者申告(死亡日から3か月以内)を提出することで、自治体は納税通知書の送付先を決定します。2024年4月から相続登記が義務化されたため、速やかに登記手続きを行いましょう(違反すると最大10万円の過料)。

Q5: 固定資産税を代わりに払うと、将来相続でもめますか?

支払いの記録を残しておけば、トラブルを減らせます。領収書のコピー、口座振替の記録等を保管し、「誰が何年間支払っていたか」を明確にしましょう。相続時に「長男が不動産を管理していた」という事実として考慮される場合があります。生前贈与や遺言書の作成も有効な対策です。

よくある質問

Q1固定資産税を払っていれば、相続時に優先権がありますか?

A1ありません。支払いと所有権は別です。相続は登記上の所有者の遺産分割協議によって決まります。固定資産税を払っていても、法的な優先権は発生しません。ただし、「長年にわたり不動産を管理していた」という事実として、遺産分割協議の際に考慮される場合はあります。

Q2親の固定資産税を年間50万円払っていますが、贈与税はかかりますか?

A2生計を一にする親族間の扶助であれば原則非課税です。ただし、親に十分な収入・資産がある場合は、「扶助の範囲を超える贈与」と判断され、課税リスクがあります。年間110万円以下であれば、仮に贈与と判断されても基礎控除内で非課税です。詳細は税理士に要相談です。

Q3自治体に委任状を提出しないと支払えませんか?

A3多くの自治体では、納付書をそのまま金融機関・コンビニで支払うことが可能です(委任状不要)。ただし、納税証明書の取得、固定資産課税台帳の閲覧等、本人確認が必要な手続きには委任状が必要です。口座振替の申請時も委任状を求められる場合があります。

Q4親が亡くなったら、すぐに固定資産税の支払い義務は移りますか?

A4相続登記が完了するまでは、相続人全員が連帯して納税義務を負います。現所有者申告(死亡日から3か月以内)を提出することで、自治体は納税通知書の送付先を決定します。2024年4月から相続登記が義務化されたため、速やかに登記手続きを行いましょう(違反すると最大10万円の過料)。

Q5固定資産税を代わりに払うと、将来相続でもめますか?

A5支払いの記録を残しておけば、トラブルを減らせます。領収書のコピー、口座振替の記録等を保管し、「誰が何年間支払っていたか」を明確にしましょう。相続時に「長男が不動産を管理していた」という事実として考慮される場合があります。生前贈与や遺言書の作成も有効な対策です。