固定資産税が下がるタイミングはいつ?
毎年春に届く固定資産税の納税通知書を見て、「いつになったら税金が下がるのか」と疑問に感じる方は多いでしょう。
この記事では、固定資産税が下がるタイミングとして①評価替え(3年ごと)、②新築減額の終了後、③経年劣化による評価減、④軽減措置の申請、という4つのパターンを、総務省の公式情報を元に解説します。
「自動的に下がる」場合と「申請が必要」な場合を理解することで、固定資産税の仕組みを正しく把握できます。
この記事のポイント
- 固定資産税の評価替えは3年ごとに実施され、次回は2027年(令和9年度)
- 建物の固定資産税は経年劣化で下がるが、残存価格(新築時の約20%)があるため一定期間後は下がらない
- 新築住宅の減額措置は3年後(マンションは5年後)に終了し、税額が「本来の水準に戻る」
- 土地の固定資産税は地価次第で上がることもあり、「3年ごとに必ず下がる」わけではない
- 災害・耐震改修等の軽減措置は申請が必要で、自動適用されない
評価替えとは:3年ごとに評価額を見直す制度
固定資産税の評価替えとは、固定資産税の評価額を3年ごとに見直す制度です。総務省によると、基準年度(令和6年度・令和9年度等)に実施され、翌2年間は据置年度として原則として評価額を据え置きます。
基準年度と据置年度の違い
評価替えが行われる年度を「基準年度」と呼びます。令和6年度(2024年度)、令和9年度(2027年度)等が基準年度です。この年度に評価額が見直され、新しい評価額が固定資産税の計算に使われます。
基準年度の翌2年間は「据置年度」として、原則として評価額を据え置きます。ただし、地価下落がある場合は下落修正が行われることがあります。
次の評価替えは2027年(令和9年度)です。2025年(令和7年度)は据置年度のため、評価替えはありません。
評価替えで評価額が下がるとは限らない
評価替えは「評価額を見直す」制度であり、「必ず下がる」わけではありません。建物の固定資産税は経年劣化により下がる傾向がありますが、物価高・建築費高騰時は評価額が据え置かれるため、実際には下がらない場合があります。
土地の固定資産税は地価次第で上がることもあります。地価が上昇している地域では、評価替えで評価額が上がる可能性があります。
建物の固定資産税が下がる仕組み
建物の固定資産税は、経年劣化により評価額が下がる仕組みになっています。ただし、残存価格(新築時の約20%)があるため、一定期間経過後は下がらなくなります。
経年劣化による評価減
建物の固定資産税評価額は、経年減点補正率により築年数に応じて減額されます。木造・鉄骨造・RC造等の構造によって異なり、最終的に残存価格(20%)まで下がります。
エイブルによると、木造住宅の場合、築20年で評価額が約50%に下がり、築25年以降は残存価格(20%)で固定されます。RC造(鉄筋コンクリート造)の場合、築40年で残存価格に達します。
残存価格に達すると下がらない
残存価格(新築時の約20%)に達すると、それ以上は下がりません。このため、「古い家なのに税金が下がらない」という現象が発生します。
残存価格は、建物の最低評価額として設定されており、建物が存在する限り固定資産税がかかります。
新築住宅の減額措置:3年後・5年後に税額が「戻る」
新築住宅には、固定資産税を3年間(マンションは5年間)半額にする減額措置があります。ただし、この措置は「税金が下がる」のではなく、「軽減措置が終了して本来の税額に戻る」ことを意味します。
減額措置の適用期間
地方税法により、新築住宅(2026年3月31日までに建築)の固定資産税を以下の期間、半額にする措置があります。
- 一般住宅:3年間
- マンション(3階建以上の耐火・準耐火建築物):5年間
- 認定長期優良住宅:5年間(マンションは7年間)
減額措置終了後は税額が「上がる」
減額措置が終了すると、税額が本来の水準に戻ります。これを「税金が上がった」と誤解する方が多いですが、正確には「軽減措置が終了して本来の税額に戻った」です。
例えば、新築時の固定資産税が年10万円(減額後5万円)だった場合、3年後には10万円に戻ります。この時、「税金が2倍になった」と感じますが、これは軽減措置の終了によるものです。
土地の固定資産税:地価次第で上がることもある
土地の固定資産税は、地価(公示価格の70%)を基準に評価額が決まります。地価が上昇している地域では、評価替えで評価額が上がる可能性があります。
住宅用地の特例(1/6・1/3軽減)
住宅用地には、固定資産税を大幅に軽減する特例があります。これは申請不要で、自動的に適用されます。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡超部分) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
(出典: 総務省)
この特例により、住宅用地の固定資産税は大幅に軽減されています。ただし、この特例は「評価額を軽減する」ものであり、「税額を下げる」ものではありません。
地価が上昇すれば評価額も上昇
地価が上昇している地域では、評価替えで評価額が上がる可能性があります。都心部や駅近など、人気エリアでは地価が上昇しているため、固定資産税も上がる傾向があります。
逆に、地価が下落している地域では、評価額が下がり、固定資産税も下がる可能性があります。
軽減措置の申請:災害・耐震改修等
固定資産税には、災害・耐震改修・バリアフリー改修等による軽減措置があります。これらは自動適用されず、申請が必要です。
災害による減免措置
災害(地震・火災・風水害等)により住宅が被害を受けた場合、固定資産税の減免措置を受けられる可能性があります。災害減免法により、被害の程度に応じて減免されます。
減免を受けるには、市区町村の税務課に申請が必要です。被害の状況を写真で記録し、り災証明書を取得しておくことが重要です。
耐震改修・バリアフリー改修による減額
耐震改修工事(昭和57年1月1日以前に建築された住宅が対象)やバリアフリー改修工事を行った場合、固定資産税が減額される場合があります。
減額を受けるには、工事完了後3か月以内に市区町村の税務課に申請が必要です。工事内容・費用を証明する書類(契約書、領収書等)を準備しましょう。
申請を忘れると軽減されない
これらの軽減措置は、自動的に適用されません。申請を忘れると、軽減を受けられないため、工事後は速やかに市区町村の税務課に相談しましょう。
よくある誤解と正しい理解
固定資産税については、多くの誤解があります。正しい知識を持つことで、不要な不満を避けることができます。
誤解1:「3年ごとに必ず下がる」
誤りです。評価替えは3年ごとに実施されますが、評価額が必ず下がるわけではありません。建物は経年劣化で下がる傾向がありますが、物価高・建築費高騰時は据え置かれることがあります。土地は地価次第で上がることもあります。
誤解2:「新築減額終了後は税金が上がった」
誤りです。新築住宅の減額措置が終了しただけで、税額は本来の水準に戻っただけです。「税金が上がった」のではなく、「軽減措置が終了した」と理解すべきです。
誤解3:「古い家は税金がかからない」
誤りです。建物の評価額は残存価格(新築時の約20%)まで下がりますが、ゼロにはなりません。建物が存在する限り、固定資産税がかかります。
まとめ:固定資産税が下がるタイミングを理解しよう
固定資産税が下がるタイミングは、①評価替え(3年ごと、次回は2027年)、②建物の経年劣化(残存価格まで)、③軽減措置の申請(災害・耐震改修等)です。
新築住宅の減額措置は3年後(マンションは5年後)に終了し、税額が本来の水準に戻ります。土地の固定資産税は地価次第で上がることもあり、「必ず下がる」わけではありません。
軽減措置を受けるには申請が必要です。災害・耐震改修・バリアフリー改修を行った場合は、速やかに市区町村の税務課に相談しましょう。
疑問点があれば、市区町村の税務課に問い合わせることをおすすめします。固定資産税の仕組みを正しく理解し、無理のない資金計画を立てましょう。
