固定資産税の計算方法とは?基本的な仕組みを理解しよう
不動産を所有すると毎年課される固定資産税。「どうやって計算されているのか」「いくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、固定資産税の計算方法を基本から解説し、土地と建物それぞれの軽減措置、税額シミュレーション、評価額の確認方法まで、総務省等の公式情報を元に分かりやすく説明します。
初めて不動産を所有する方でも、固定資産税の仕組みを正確に理解し、適切な税額を把握できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×税率1.4%」が基本
- 住宅用地の特例により、200㎡以下は評価額の1/6、200㎡超は1/3に軽減
- 新築住宅は3年間(マンションは5年間)税額が1/2に減額される
- 評価額は公示地価の70%水準で、3年ごとに評価替えが行われる
- 課税明細書で評価額を確認し、高すぎる場合は縦覧制度や審査申出を活用できる
土地の固定資産税計算:住宅用地の特例で大幅減額
小規模住宅用地(200㎡以下)は評価額の1/6
住宅用地には特例措置があり、課税標準が大幅に軽減されます。200㎡以下の小規模住宅用地は、固定資産税評価額の1/6に減額されます。
例えば、土地150㎡で評価額2,000万円の場合:
- 特例適用前の課税標準:2,000万円
- 特例適用後の課税標準:2,000万円 × 1/6 = 約333万円
- 固定資産税:333万円 × 1.4% = 約4.7万円
一般住宅用地(200㎡超)は評価額の1/3
200㎡を超える部分は、評価額の1/3に軽減されます。例えば、土地250㎡で評価額3,000万円の場合:
- 200㎡以下の部分:2,000万円 × 1/6 = 約333万円(評価額は㎡単価で按分)
- 200㎡超の部分:1,000万円 × 1/3 = 約333万円
- 合計課税標準:666万円
- 固定資産税:666万円 × 1.4% = 約9.3万円
住宅用地特例が適用されない場合の注意点
住宅用地特例は、1月1日時点で住宅が建っていることが条件です。更地では適用されないため、税額が6倍になる可能性があります。空き家を解体する際は、固定資産税の増加を考慮した計画が必要です。
建物の固定資産税計算:新築減額特例を活用しよう
一般住宅は3年間、マンションは5年間1/2に減額
新築住宅には減額特例があり、120㎡相当分まで税額が1/2になります。一般住宅(戸建て)は3年間、マンション(3階建以上の耐火・準耐火建築物)は5年間が対象です。
例えば、新築戸建(評価額1,500万円、床面積100㎡)の場合:
- 減額前の税額:1,500万円 × 1.4% = 21万円
- 減額後の税額:21万円 × 1/2 = 10.5万円(3年間)
認定長期優良住宅はさらに優遇(5年・7年)
国土交通省が認定する長期優良住宅の場合、減額期間がさらに延長されます:
- 一般住宅(戸建て):5年間
- マンション:7年間
新築減額特例の適用期限と申請方法
新築減額特例の適用期限は令和8年(2026年)3月31日までに新築された住宅です。申請期限は購入翌年の1月末までなので、忘れずに市区町村に申請しましょう。
固定資産税の税額シミュレーション:土地と建物の実例
シミュレーション①:土地150㎡+新築戸建の場合
条件:
- 土地150㎡、評価額2,000万円
- 新築戸建、評価額1,500万円、床面積100㎡
計算:
- 土地:2,000万円 × 1/6 × 1.4% = 約4.7万円
- 建物:1,500万円 × 1.4% × 1/2 = 約10.5万円(3年間)
- 合計:約15.2万円(3年間)、4年目以降は約25.7万円
- 都市計画税(0.3%)込み:約18.3万円(3年間)
シミュレーション②:土地250㎡+マンションの場合
条件:
- 土地250㎡、評価額3,000万円
- 新築マンション、評価額2,000万円、床面積80㎡
計算:
- 土地:200㎡以下2,000万円×1/6 + 50㎡分1,000万円×1/3 = 約666万円 × 1.4% = 約9.3万円
- 建物:2,000万円 × 1.4% × 1/2 = 14万円(5年間)
- 合計:約23.3万円(5年間)、6年目以降は約37.3万円
シミュレーション③:更地の場合との比較
土地150㎡、評価額2,000万円を更地で所有する場合:
- 固定資産税:2,000万円 × 1.4% = 28万円
- 住宅を建てた場合:約4.7万円
- 差額:約23.3万円(住宅用地特例により約1/6)
評価額の確認方法と高すぎる場合の対処法
課税明細書で評価額を確認する
毎年4-6月頃に市区町村から送付される納税通知書に、「課税明細書」が同封されています。ここに土地と建物の固定資産税評価額、課税標準額、税額が記載されています。
記載項目:
- 固定資産税評価額
- 課税標準額(軽減措置適用後)
- 税率(1.4%が標準)
- 税額
縦覧制度で他の物件と比較する
毎年4-5月頃、市区町村で「固定資産課税台帳の縦覧」が実施されます。自分の土地・建物の評価額が、同じエリアの他の物件と比べて妥当かを確認できます。
縦覧できる内容:
- 同じ市区町村内の土地・家屋の評価額
- 所在地、地目、面積等の基本情報
評価額が高すぎる場合の審査申出
評価額に不服がある場合、納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内に、固定資産評価審査委員会に審査申出ができます。評価に誤りがあれば訂正されます。まずは市区町村の固定資産税課に問い合わせ、評価の根拠を確認することが推奨されます。
評価替えの仕組みと税額の変動
3年ごとの評価替えとは
固定資産税評価額は、地価の変動や建物の劣化を反映するため、3年ごとに見直されます。総務省によると、令和5年度の固定資産税税収は9.8兆円で、地方税収入の約4割を占める重要な財源です。
2024年の評価替えの影響
2024年(令和6年度)に評価替えが実施されました。地価が上昇したエリアでは評価額が増加し、税額も上がる可能性があります。ただし、急激な税負担増を緩和するための「負担調整措置」があります。
次回の評価替えは2027年
次回の評価替えは2027年(令和9年度)です。地価の動向や建物の経年劣化により、税額が変動する可能性があります。評価替えの年には、課税明細書で評価額の変化を確認しましょう。
まとめ:固定資産税の計算方法を理解して適切に備えよう
固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×税率1.4%」が基本です。住宅用地の特例(200㎡以下1/6、200㎡超1/3)や新築減額(3年または5年間1/2)を活用することで、税額を大幅に軽減できます。
評価額は公示地価の70%水準で、3年ごとに評価替えが行われます。課税明細書で評価額を確認し、高すぎると感じた場合は、縦覧制度で他の物件と比較したり、審査申出を検討しましょう。
自治体の公式サイトで税率や軽減措置の詳細を確認し、適切な税額を把握して資金計画を立てることをおすすめします。
