固定資産税の仕訳方法を完全解説|個人・法人

公開日: 2025/11/11

固定資産税の仕訳とは?個人事業主と法人で異なる処理方法

「固定資産税の仕訳はどうすればいいの?」「租税公課と地代家賃のどちらを使うべき?」と悩む個人事業主や経理担当者は少なくありません。

この記事では、固定資産税の仕訳方法、個人事業主と法人での処理の違い、家事按分の計算方法、未払計上のタイミングを、国税庁の公式情報を元に解説します。

確定申告・決算で正しく処理したい方にとって、必要な知識を正確に把握できる内容となっています。

この記事のポイント

  • 固定資産税の仕訳は「租税公課(借方)/ 現金・普通預金(貸方)」が基本
  • 個人事業主は事業用部分のみを租税公課として経費計上し、個人用部分は事業主貸で処理
  • 法人は全額を租税公課として損金算入可能
  • 経費計上時期は賦課決定日・納期開始日・実際納付日のいずれかを選択可能(継続適用が前提)
  • 納付時期と経費計上時期のズレは未払計上で処理できる

固定資産税の仕訳の基本|租税公課の勘定科目を使用

固定資産税の仕訳は、事業用資産にかかる税金を経費計上する会計処理です。基本の仕訳は「租税公課(借方)/ 現金・普通預金(貸方)」となります。

租税公課とは?事業に関連する税金の勘定科目

租税公課は、事業に関連する税金(固定資産税、事業税、自動車税等)や公的な課金(商工会議所会費等)を経費計上する勘定科目です。

国税庁の公式ページによると、事業用資産の固定資産税は必要経費として認められます。

基本の仕訳例:年間12万円を一括納付

: 事業用の土地・建物の固定資産税12万円を一括で現金納付した場合

借方 金額 貸方 金額
租税公課 120,000円 現金 120,000円

分割納付(年4回)の場合の仕訳

固定資産税は通常、年4回に分けて納付します。各納期ごとに仕訳を計上します。

: 年間12万円を4回分割納付(各3万円)の場合

第1期納付時:

借方 金額 貸方 金額
租税公課 30,000円 現金 30,000円

第2期~第4期も同様に処理します。

個人事業主の固定資産税の仕訳|事業用・個人用の按分計算

自宅兼事務所等で事業用と個人用が混在する場合、合理的な基準で事業用部分のみを経費計上する家事按分を行います。

家事按分とは?自宅兼事務所での按分基準

家事按分は、合理的な基準(床面積比・使用時間比等)で事業用部分のみを経費計上することです。国税庁の必要経費の定義により、事業に直接必要な部分のみが経費対象となります。

按分割合の決め方(床面積比・使用時間比)

按分割合は以下のような基準で決定します。

  • 床面積比: 自宅100㎡のうち事務所30㎡ → 事業用割合30%
  • 使用時間比: 1日8時間を事業に使用 → 事業用割合33%(8時間÷24時間)

按分割合は合理的な基準で決定する必要があり、恣意的な設定は税務調査で否認されるリスクがあります。

具体的な仕訳例:事業用30%、個人用70%の場合

: 年間12万円の固定資産税を4回分納、事業用割合30%の場合

第1期納付時(3万円):

借方 金額 貸方 金額
租税公課 9,000円 現金 30,000円
事業主貸 21,000円
  • 租税公課: 30,000円 × 30% = 9,000円(事業用部分)
  • 事業主貸: 30,000円 × 70% = 21,000円(個人用部分)

第2期~第4期も同様に処理します。

青色申告と白色申告の按分ルールの違い

按分ルールは申告形式で異なります。

  • 青色申告: 任意の割合(例:床面積の30%)で按分可能。合理的な基準であることが前提
  • 白色申告: 業務用が50%超の場合のみ経費計上可能。50%以下の場合は全額が経費対象外

白色申告の場合、自宅兼事務所で事業用が50%以下の場合は固定資産税を経費計上できない点に注意が必要です。

法人の固定資産税の仕訳|全額を租税公課として損金算入

法人の場合、事業用資産の固定資産税は全額を租税公課として損金算入可能です。

法人は全額を経費計上可能

法人が所有する土地・建物の固定資産税は、全額を租税公課として経費計上できます。個人事業主のような家事按分は不要です。

経費計上のタイミング(賦課決定日・納期開始日・実際納付日)

国税庁の法人税法解説によると、経費計上時期は以下の3つの時期のいずれかを選択できます。

  1. 賦課決定日: 地方自治体が税額を決定し、納税通知書を送付する日(通常4-6月)
  2. 納期開始日: 各納期(第1期~第4期)が始まる日
  3. 実際納付日: 実際に現金を支払った日

継続適用が前提であり、年度ごとに変更することはできません。

具体的な仕訳例:年間36万円を分割納付

: 年間36万円を4回分割納付する場合(実際納付日に計上)

第1期納付時(9万円):

借方 金額 貸方 金額
租税公課 90,000円 現金 90,000円

第2期~第4期も同様に処理します。

納付時期と経費計上時期のズレ|未払計上と期間按分

発生主義を採用している場合、賦課決定日に費用を計上し、実際の納付日に未払金を減少させる未払計上を行います。

発生主義による未払計上の仕訳

: 6月に年間12万円の賦課決定を受けた場合

賦課決定時(6月):

借方 金額 貸方 金額
租税公課 120,000円 未払金 120,000円

第1期納付時(7月、3万円):

借方 金額 貸方 金額
未払金 30,000円 現金 30,000円

第2期~第4期も同様に未払金を減少させます。

決算期をまたぐ場合の期間按分

決算期をまたぐ固定資産税は、事業年度の月数に応じて費用を分割計上する期間按分も可能です。

: 3月決算の法人が、4月~翌年3月分の固定資産税12万円を6月に賦課決定された場合

  • 当期分(4月~3月の12ヶ月分): 120,000円を全額計上

詳細な処理方法については税理士にご相談ください。

現金主義との違い

現金主義(小規模事業者の特例)を選択している場合、実際に現金の収支があった時点で費用・収益を計上します。未払計上は不要です。

発生主義と現金主義のどちらを採用するかは、事業規模や会計処理の方針により異なります。

まとめ|固定資産税の仕訳は個人事業主と法人で異なる

固定資産税の仕訳は「租税公課 / 現金・普通預金」が基本です。個人事業主は事業用部分のみを経費計上し、按分計算が必要です。法人は全額を損金算入可能で、経費計上時期も選択できます。

納付時期と経費計上時期のズレは未払計上で処理します。

次のアクションとして、会計ソフトでの仕訳入力、税理士への相談(複雑なケース)を検討しましょう。個別具体的な税務相談は税理士にご依頼ください。

よくある質問

Q1青色申告と白色申告で按分ルールは違いますか?

A1青色申告は任意の割合(例:床面積の30%)で按分可能です。白色申告は業務用が50%超の場合のみ経費計上可能で、50%以下の場合は全額が経費対象外となります。合理的な基準で按分割合を決定し、税務調査で説明できるようにしておくことが重要です。恣意的な設定は否認されるリスクがあります。

Q2固定資産税の勘定科目は租税公課以外でもいいですか?

A2事業用資産の固定資産税は租税公課で処理するのが一般的です。地代家賃や管理費として計上する方法もありますが、国税庁の公式ガイダンスでは租税公課を推奨しています。会計処理の統一性・比較可能性の観点から租税公課を使用するのが望ましいでしょう。詳細は税理士にご相談ください。

Q3賦課決定日・納期開始日・実際納付日のどれで計上すべきですか?

A3法人税法では3つの時期のいずれでも経費計上可能です。継続適用が前提となります。発生主義を採用している場合は賦課決定日(4-6月)での未払計上が会計原則に適合します。小規模事業者で現金主義を選択している場合は実際納付日での計上が簡便です。税理士に相談して決定するのが推奨されます。

Q4按分割合は自由に決められますか?

A4按分割合は合理的な基準(床面積比・使用時間比等)で決定する必要があり、恣意的な設定は税務調査で否認されるリスクがあります。青色申告であれば任意の割合で按分可能ですが、実態に即した割合であることが前提です。白色申告は50%超が業務用の場合のみ経費計上可能となります。