マンションとアパートの定義(法的定義はない)
賃貸住宅を探す際、「マンションとアパートの違いは何だろう」と疑問に感じたことはありませんか。
実は、マンションとアパートには法的な定義がなく、建築基準法上は両方とも「共同住宅」として扱われます。
この記事では、不動産業界の慣習による区別方法、構造による性能の違い、家賃・設備の比較、選び方のポイントまで、国土交通省・建築基準法の情報を元に解説します。
初めて賃貸住宅を探す方でも、自分の優先順位(家賃重視・防音性重視・設備重視等)に応じて選べるようになります。
この記事のポイント
- マンションとアパートは法的な定義がなく、不動産業界の慣習で構造・階数・設備により区別されている
- 一般的には、RC造・鉄骨造がマンション、木造・軽量鉄骨がアパートとされるが、例外もある
- RC造・SRC造は遮音性・耐震性・耐火性に優れるが、家賃が高い傾向がある
- 木造・軽量鉄骨造は家賃が安いが、遮音性が劣る傾向がある
- 住宅性能評価書で耐久性・耐震性・耐火性の条件を満たす木造集合住宅を「マンション」と表記するケースも出ている
法的には区別されていない(建築基準法上は両方とも共同住宅)
マンションとアパートは、建築基準法上は両方とも「共同住宅」として扱われます。
建築基準法では、「共同住宅」を「一つの建物内に複数の独立した住戸がある住宅」と定義しており、マンション・アパート・寮・シェアハウス等を含みます。
つまり、法律上はマンションとアパートを区別する明確な基準は存在しません。
不動産業界の慣習で区別(構造・階数・設備等)
不動産業界では、構造・階数・設備等により、マンションとアパートを慣習的に区別しています。
一般的な区別基準
| 項目 | マンション | アパート | 
|---|---|---|
| 構造 | RC造・SRC造 | 木造・軽量鉄骨造 | 
| 階数 | 3階建て以上が多い | 2階建てが多い | 
| 設備 | エレベーター、オートロック等が充実 | 階段、外廊下が一般的 | 
ただし、この基準はあくまで慣習であり、例外も存在します。RC造でも3階建て以下で設備が少ない場合は「アパート」と呼ばれることがあり、木造でも住宅性能評価書で一定の条件を満たせば「マンション」と表記されることもあります。
最新の不動産業界の動向
最近では、国土交通省が定める住宅性能表示制度で、耐久性・耐震性・耐火性の条件を満たす木造集合住宅を「マンション」と表記するケースが出ています。
大手不動産ポータルサイトのSUUMOもこの基準を採用しており、構造だけでは判断できない点を強調しています。
構造による性能の違い
建物の構造は、遮音性・耐震性・耐火性に大きく影響します。
木造・軽量鉄骨造(アパートに多い)
木造
木造は、柱・梁・壁等を木材で構成した構造です。
メリット
- 建築コストが低く、家賃も安い傾向がある
- 通風・採光が良く、快適に過ごせる
- 引越しコストが低い(敷金・礼金が少ない場合が多い)
デメリット
- 遮音性が低い(隣戸の生活音が聞こえやすい)
- 耐震性・耐火性がRC造に劣る
- 設備が少ない(エレベーター、オートロック等がない場合が多い)
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造は、厚さ6mm未満の鉄骨を使用した構造です。
木造より耐火性に優れますが、重量鉄骨造やRC造には劣ります。遮音性も木造とほぼ同等です。
RC造・SRC造(マンションに多い)
RC造(鉄筋コンクリート造)
RC造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造です。引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートで、高い強度を実現しています。
メリット
- 遮音性が高い(隣戸の生活音が聞こえにくい)
- 耐震性・耐火性に優れる
- 設備が充実(エレベーター、オートロック、宅配ボックス、防犯カメラ等)
デメリット
- 建築コストが高く、家賃も高い傾向がある
- 管理費が高い(エレベーター、共用部の清掃等の維持費がかかる)
- 湿気がこもりやすい(通風が少ない場合)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
SRC造は、鉄骨を芯にして周囲に鉄筋コンクリートを配置した構造です。RC造より強度が高く、高層マンションに多く採用されています。
構造別の特徴(耐震性・耐火性・遮音性)
構造別の性能を比較すると、以下のようになります。
| 構造 | 耐震性 | 耐火性 | 遮音性 | 家賃 | 
|---|---|---|---|---|
| 木造 | △ | △ | △ | 安い | 
| 軽量鉄骨造 | △ | ○ | △ | 安い | 
| RC造 | ◎ | ◎ | ◎ | 高い | 
| SRC造 | ◎ | ◎ | ◎ | 高い | 
(出典: LIFULL HOME'S)
重要な注意点
RC造・SRC造は遮音性が高いとされていますが、戸境壁が構造壁でない場合は例外もあります。物件ごとに確認することをおすすめします。
家賃・管理費の違い
アパートの家賃相場(木造・軽量鉄骨造)
アパート(木造・軽量鉄骨造)は、建築コストが低いため、家賃も安い傾向があります。
2025年10月時点で、1K・1DKの家賃相場は地域により異なりますが、都心部で5~7万円程度、地方都市で3~5万円程度が目安です。
執筆時点の相場であり、地域・築年数・立地により大きく異なるため、複数の物件を比較することをおすすめします。
マンションの家賃相場(RC造・SRC造)
マンション(RC造・SRC造)は、建築コストが高く、エレベーター・オートロック等の設備があるため、家賃も高い傾向があります。
2025年10月時点で、1K・1DKの家賃相場は都心部で7~10万円程度、地方都市で5~7万円程度が目安です。
管理費・共益費の違い
管理費・共益費は、共用部の清掃、エレベーターの維持、設備の点検等に使われます。
マンションの方が設備が充実しているため、管理費・共益費も高い傾向があります。一般的には、月5,000~10,000円程度が目安です。
アパートの場合、管理費・共益費が不要またはごく少額(月2,000~3,000円程度)の場合が多いです。
設備の違い(エレベーター・オートロック・宅配ボックス等)
マンションに多い設備(エレベーター、オートロック、宅配ボックス、防犯カメラ等)
マンションは、以下の設備が充実している傾向があります。
- エレベーター: 3階建て以上の場合、ほぼ必須
- オートロック: エントランスでの入館管理、防犯性向上
- 宅配ボックス: 不在時でも荷物を受け取れる
- 防犯カメラ: 共用部の監視、防犯性向上
- 内廊下: 雨風を防ぎ、プライバシーを保護
これらの設備により、快適性・防犯性が向上しますが、家賃・管理費も高くなります。
アパートに多い設備(階段、外廊下等)
アパートは、以下の設備が一般的です。
- 階段: エレベーターがないため、階段で昇降
- 外廊下: 開放的で通風が良いが、雨風にさらされる
エレベーターやオートロックがない場合が多いですが、最近では木造アパートでもオートロックや宅配ボックスを設置する物件が増えています。
設備の有無で判断する際の注意点
設備だけでマンションとアパートを判断することはできません。
最近では、木造でもオートロック・宅配ボックスを設置した「デザイナーズアパート」や、RC造でもエレベーターがない「低層マンション」も存在します。
物件ごとに設備を確認し、自分の優先順位(防犯性重視・宅配ボックス必須等)に応じて選ぶことをおすすめします。
構造別のメリット・デメリット比較表
アパート(木造・軽量鉄骨造)のメリット・デメリット
メリット
- 家賃が安い(都心部で5~7万円程度)
- 通風・採光が良い(外廊下のため)
- 引越しコストが低い(敷金・礼金が少ない場合が多い)
- 管理費が安い、または不要
デメリット
- 遮音性が低い(隣戸の生活音が聞こえやすい)
- 耐震性・耐火性がRC造に劣る
- 設備が少ない(エレベーター、オートロック等がない場合が多い)
- 断熱性が低い(冷暖房費が高くなる場合がある)
マンション(RC造・SRC造)のメリット・デメリット
メリット
- 遮音性が高い(隣戸の生活音が聞こえにくい)
- 耐震性・耐火性に優れる(安全性が高い)
- 設備が充実(エレベーター、オートロック、宅配ボックス、防犯カメラ等)
- 断熱性が高い(冷暖房費を抑えられる)
デメリット
- 家賃が高い(都心部で7~10万円程度)
- 管理費が高い(月5,000~10,000円程度)
- 湿気がこもりやすい(通風が少ない場合)
- 引越しコストが高い(敷金・礼金が高い場合が多い)
どちらを選ぶべきか(優先順位別の選び方)
自分の優先順位に応じて選ぶことが重要です。
家賃を抑えたい場合
木造・軽量鉄骨造のアパートがおすすめです。ただし、地域・築年数・立地により異なるため、複数の物件を比較しましょう。
防音性を重視する場合
RC造・SRC造のマンションがおすすめです。ただし、戸境壁が構造壁でない場合は例外もあるため、物件ごとに確認することを推奨します。
設備を重視する場合
エレベーター、オートロック、宅配ボックス等が充実したマンションがおすすめです。最近では、木造アパートでもこれらの設備を設置する物件が増えているため、選択肢は広がっています。
まとめ:マンションとアパートの違いを理解して選ぶ
マンションとアパートの違いを理解して選ぶポイントを要約します。
マンションとアパートは法的な定義がなく、不動産業界の慣習で構造・階数・設備により区別されています。一般的には、RC造・鉄骨造がマンション、木造・軽量鉄骨がアパートとされますが、例外もあります。
構造による性能の違い(遮音性・耐震性・耐火性)を理解し、家賃・管理費・設備を比較することが重要です。
自分の優先順位(家賃重視・防音性重視・設備重視等)に応じて選ぶことが大切です。構造だけでなく、物件ごとに性能や設備を確認し、複数の物件を比較することをおすすめします。
信頼できる不動産会社に相談しながら、自分に合った住まいを見つけましょう。
