アパートとマンションの違いとは?法的定義がない曖昧な区分
賃貸住宅を探していると、「アパート」と「マンション」という言葉をよく目にしますが、「両者の違いは何か」「どちらを選ぶべきか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、アパートとマンションの違い(構造・家賃・設備・遮音性等)を、国土交通省等の公式情報を元に解説します。
初めて賃貸住宅を探す方でも、自分に合った物件タイプを選べるようになります。
この記事のポイント
- アパートとマンションには法的な明確な定義がなく、不動産業界の慣習的な区分
- 一般的にはRC造・鉄骨造がマンション、木造・軽量鉄骨造がアパート
- マンションは遮音性・設備・セキュリティに優れるが家賃が高め
- アパートは家賃が安いが遮音性が低め
- 読者の優先順位(家賃・防音性・設備等)に応じて選ぶことが重要
構造による違い
アパートとマンションの最も大きな違いは、建物の構造です。
マンション(RC造・鉄骨造)
マンションは、一般的に以下の構造で建てられます。
- RC造(鉄筋コンクリート造): 鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造。引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートで高い強度を実現
- SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造): 鉄骨を芯にして周囲に鉄筋コンクリートを配置した構造。RC造より強度が高く高層マンションに多い
- 重量鉄骨造: 厚さ6mm以上の鉄骨を使用した構造
特徴:
- 遮音性: 高い(隣室・上階の生活音が聞こえにくい)
- 耐震性: 高い
- 耐火性: 高い
- 法定耐用年数: RC造47年、鉄骨造19-34年
アパート(木造・軽量鉄骨造)
アパートは、一般的に以下の構造で建てられます。
- 木造: 主要構造部が木材で構成される建築構造。建築費が安いが防音性・耐火性は低め
- 軽量鉄骨造: 厚さ6mm未満の鋼材を使用した構造。木造より防音性・耐火性が高いが、RC造には劣る
特徴:
- 遮音性: 低め(生活音が聞こえやすい)
- 耐震性: 中程度(最近の建物は性能向上)
- 耐火性: 低め
- 法定耐用年数: 木造22年、軽量鉄骨造19年
構造により防音性・断熱性・耐震性が大きく異なることを理解しましょう。
家賃・初期費用の違い
家賃と初期費用の違いは、物件選びの重要なポイントです。
一般的な傾向:
- 地域・築年数・立地により異なりますが、一般的な傾向として、アパートの方が安い(同じ立地・広さの場合、マンションより1-3割程度安い)
理由:
- 構造: 木造・軽量鉄骨造は建築費が安い
- 築年数: アパートは築古物件が多い
- 設備: マンションはオートロック・宅配ボックス等充実
ただし、立地・築年数により逆転することもあります。新築アパートが築古マンションより高い場合もあるため、一概には言えません。
設備・セキュリティの違い
設備とセキュリティの違いも、住み心地に大きく影響します。
マンションの設備
マンションは、以下の設備が充実していることが多いです。
- オートロック: 建物入口で入居者が解錠しないと入れない仕組み。防犯性を高める設備
- 宅配ボックス: 不在時に荷物を受け取れる設備。再配達の手間を省ける
- 防犯カメラ: エントランスや廊下に設置。犯罪抑止効果
- エレベーター: 3階以上の建物では必須
- 24時間ゴミ出し可: いつでもゴミを出せる
- 管理人常駐: トラブル対応が迅速
アパートの設備
アパートは、基本的な設備のみの物件が多いです。
- オートロックなしの物件が多い
- 宅配ボックスなしの物件が多い
- エレベーターなし(2-3階建てが多い)
- 管理人非常駐(管理会社が巡回)
マンションの方がセキュリティ面で充実していますが、その分家賃が高くなります。
遮音性・住み心地の違い
遮音性は、住み心地に最も大きく影響する要素の一つです。
マンション(RC造・鉄骨造):
- 遮音性が高く、隣室・上階の生活音が聞こえにくい
- 床衝撃音レベル(数値が小さいほど遮音性が高い)L-40~50(優秀)
- 在宅勤務、ピアノ演奏等に向いている
アパート(木造・軽量鉄骨造):
- 遮音性が低く、生活音が気になる場合がある
- 床衝撃音レベル L-70~75(低い)
- 特に木造は音が響きやすい(足音・話し声・テレビ音等)
ただし、最近の木造アパートは遮音性能が向上している物件もあります。内見時に壁を叩いて厚みを確認することをおすすめします。
住み心地重視ならマンション、家賃重視ならアパートという選択基準を提示します。
階数・規模の違い
階数と規模の違いも、物件選びのポイントです。
マンション:
- 階数: 3階建て以上の中高層建築(5-20階建て等)
- 総戸数: 数十〜数百戸
- 共用部分: エントランス、廊下、エレベーター等が充実
アパート:
- 階数: 2-3階建ての低層建築
- 総戸数: 数戸〜十数戸
- 共用部分: 最小限(階段、ポスト等)
建築基準法上は階数で区分されていません。あくまで不動産業界の慣習です。
アパート・マンションの選び方
読者の優先順位に応じて、以下の基準で選びましょう。
家賃重視の方: アパート
- 同じ立地・広さでマンションより1-3割安い傾向
- 初期費用も抑えられる
防音性重視の方: マンション(RC造・鉄骨造)
- 在宅勤務、ピアノ演奏、小さな子供がいる家庭に向いている
- 隣室・上階の生活音が気になりにくい
設備・セキュリティ重視の方: マンション
- オートロック、宅配ボックス、エレベーター等が充実
- 防犯性が高い
ペット飼育の方: RC造マンション
- 遮音性が高く、ペットの鳴き声が響きにくい
- ただし物件により禁止の場合もあるため要確認
実際に内見して、構造・遮音性を確認することが重要です。どちらが絶対的に良いとは言えず、読者の優先順位によります。
まとめ:優先順位に応じて選ぼう
アパートとマンションには法的定義がなく、構造・階数・設備等で慣習的に区別されます。マンション(RC造・鉄骨造、遮音性・設備充実、家賃高め)、アパート(木造・軽量鉄骨造、遮音性低め、家賃安め)という傾向があります。
読者の優先順位(家賃・防音性・設備・セキュリティ等)に応じて選択することが重要です。どちらが絶対的に良いとは言えません。
実際に内見して、構造・遮音性を確認し、自分に合った物件を見つけましょう。
