アパート・マンションの違いとは?法的定義がない曖昧な区分
賃貸住宅を探していると、「アパート」と「マンション」という言葉をよく目にしますが、「具体的にどう違うのか」「自分にはどちらが合っているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、アパート・マンションの違い(構造・家賃・設備・遮音性等)と、ライフスタイル別の選び方を、国土交通省等の公式情報を元に解説します。
初めて賃貸住宅を探す方でも、自分に合った物件タイプを見つけられるようになります。
この記事のポイント
- アパート・マンションには法的な明確な定義がなく、不動産業界の慣習的な区分
- 一般的にはRC造・鉄骨造がマンション、木造・軽量鉄骨造がアパート
- マンションは遮音性・設備・セキュリティに優れるが家賃が1-2割高め
- アパートは家賃が安いが遮音性が低め
- ライフスタイル別(学生、ファミリー、在宅勤務等)のおすすめを提示
一般的な区別基準
アパート・マンションには法的な定義がなく、不動産業界の慣習で区別されています。
一般的な区別基準:
| 項目 | マンション | アパート | 
|---|---|---|
| 構造 | RC造・SRC造・重量鉄骨造 | 木造・軽量鉄骨造 | 
| 階数 | 3階建て以上 | 2-3階建て | 
| 総戸数 | 数十〜数百戸 | 数戸〜十数戸 | 
| 設備 | オートロック・宅配ボックス等充実 | 基本的な設備のみ | 
| 家賃 | 高め | 安め | 
ただし、この基準は統一されておらず、不動産会社により呼び方が異なる場合もあります。建築基準法上は、どちらも「共同住宅」として分類されます。
(出典: 国土交通省)
構造別の特徴比較
構造の違いが、遮音性・耐震性・家賃に大きく影響します。
RC造(鉄筋コンクリート造)
特徴:
- 鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造
- 引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートで高い強度を実現
性能:
- 遮音性: 非常に高い(床衝撃音レベル L-40~50)
- 耐震性: 高い
- 耐火性: 高い
- 法定耐用年数: 47年
家賃: 最も高い(同じ立地・広さの木造アパートより2-3割高い)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
特徴:
- 鉄骨を芯にして周囲に鉄筋コンクリートを配置した構造
- RC造より強度が高く、高層マンション(10階建て以上)に多い
性能:
- RC造とほぼ同等(遮音性・耐震性・耐火性すべて高い)
軽量鉄骨造
特徴:
- 厚さ6mm未満の鋼材を使用した構造
- 木造より防音性・耐火性が高いが、RC造には劣る
性能:
- 遮音性: 中程度(床衝撃音レベル L-60程度)
- 耐震性: 中程度
- 耐火性: 中程度
- 法定耐用年数: 19年
家賃: 木造より若干高め、RC造より安い
木造
特徴:
- 主要構造部が木材で構成される建築構造
- 建築費が安いが防音性・耐火性は低め
性能:
- 遮音性: 低い(床衝撃音レベル L-70~75)
- 耐震性: 中程度(最近の建物は性能向上)
- 耐火性: 低い
- 法定耐用年数: 22年
家賃: 最も安い
ただし、築年数の古い木造アパート(2000年以前)と新しい木造アパート(2010年以降)では、防音性能が大きく異なります。最近の木造アパートは遮音性能が向上している物件もあります。
家賃・設備・遮音性の違い
家賃の違いと最新トレンド
家賃は、構造・築年数・立地により大きく異なります。
一般的な傾向(同じ立地・広さの場合):
- RC造マンション: 基準
- 軽量鉄骨造アパート: RC造より1割安い
- 木造アパート: RC造より2-3割安い
2025年の最新トレンド:
- マンションとアパートの家賃差が3割に拡大(日本経済新聞の報道)
- 同じ予算でより広く新しいアパートを選ぶ傾向
(出典: 日本経済新聞)
設備の違い
| 設備項目 | マンション | アパート | 
|---|---|---|
| オートロック | 多い | 少ない | 
| 宅配ボックス | 標準化 | 少ない | 
| エレベーター | 3階以上は必須 | なし(2-3階建て) | 
| 防犯カメラ | 多い | 少ない | 
| 24時間ゴミ出し可 | 多い | 少ない | 
| 管理人常駐 | 多い | 少ない(巡回管理) | 
遮音性の違い
遮音性は、住み心地に最も大きく影響します。
RC造マンション:
- 床衝撃音レベル L-40~50(優秀)
- 隣室・上階の生活音がほとんど聞こえない
- 在宅勤務、ピアノ演奏、小さな子供がいる家庭に向いている
軽量鉄骨造アパート:
- 床衝撃音レベル L-60程度(中程度)
- 足音・話し声が少し聞こえる場合がある
木造アパート:
- 床衝撃音レベル L-70~75(低い)
- 足音・話し声・テレビ音等がよく聞こえる
- 生活音が気になる方には不向き
(出典: UR都市機構)
ライフスタイル別のおすすめ
読者のライフスタイルに応じて、以下のように選びましょう。
学生・単身赴任の方
おすすめ: 木造・軽量鉄骨造アパート
理由:
- 家賃を抑えられる
- 短期間の居住が多く、設備充実度は重視しない
- 日中は学校・会社にいるため、遮音性はそれほど重要でない
ファミリー・在宅勤務の方
おすすめ: RC造・SRC造マンション
理由:
- 遮音性が高く、隣室・上階の生活音が気にならない
- 在宅勤務で長時間室内にいる場合、防音性が重要
- 小さな子供がいる家庭は、足音が響きにくいRC造が推奨
ペット飼育の方
おすすめ: RC造マンション
理由:
- 遮音性が高く、ペットの鳴き声が響きにくい
- ペット可物件はマンションに多い傾向
ただし、物件によりペット飼育が禁止の場合もあるため、事前確認が必要です。
防音性重視の方
おすすめ: RC造マンション(壁式構造)
理由:
- 壁式構造は壁が厚く、防音性に優れる
- 中層(5階建て以下)の建物に多い
- ラーメン構造より防音性が高い
(出典: SUUMO)
防音性の見分け方
内見時に、以下のポイントを確認しましょう。
壁の厚みを確認
壁を軽く叩いて、以下を確認します。
- コンコンという音: コンクリート壁(遮音性高い)
- ペコペコという音: 石膏ボード壁(遮音性低い)
構造を確認
物件情報には必ず構造が記載されています。
- RC造・SRC造: 遮音性高い
- 軽量鉄骨造: 中程度
- 木造: 低い
二重サッシ・二重窓の有無
外からの騒音対策として、二重サッシ・二重窓が設置されている物件は防音性が高い傾向にあります。
まとめ:優先順位に応じて選ぼう
アパート・マンションには法的定義がなく、構造・階数・設備等で慣習的に区別されます。マンション(RC造・鉄骨造、遮音性・設備充実、家賃高め)、アパート(木造・軽量鉄骨造、遮音性低め、家賃安め)という傾向があります。
読者のライフスタイル(学生・ファミリー・在宅勤務・ペット飼育等)に応じて選択することが重要です。家賃重視ならアパート、防音性・設備重視ならマンションを選びましょう。
実際に内見して、壁を叩いて厚みを確認し、構造・遮音性を見極めることをおすすめします。
