土地の評価額とは?調べ方と相続・売却時の活用方法を解説

公開日: 2025/10/27

土地の評価額とは何か

土地の相続や売却を検討する際、「土地の評価額」という言葉を目にして、「どの評価額を使えばいいのか」「評価額と売却価格は同じなのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地の評価額の種類(相続税評価額、固定資産税評価額、公示地価)と、それぞれの用途・調べ方・実勢価格との関係を、国税庁国土交通省の公式情報を元に解説します。

相続や売却の際に、土地の適正な評価額を理解し、小規模宅地等の特例などの節税対策も活用できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地の評価額には「相続税評価額」「固定資産税評価額」「公示地価」の3種類があり、用途が異なる
  • 相続税評価額は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%であり、売却価格とは異なる
  • 相続税評価額は路線価方式または倍率方式で計算し、国税庁の「財産評価基準書」で調べられる
  • 固定資産税評価額は毎年送付される「固定資産税課税明細書」で確認できる
  • 小規模宅地等の特例を活用すると、相続税評価額を最大80%減額できる

土地の評価額の種類と用途

土地の評価額には複数の種類があり、それぞれ用途と水準が異なります。「評価額=売却価格」ではないことを理解することが重要です。

評価額の種類 評価主体 更新頻度 用途 水準(公示地価比)
相続税評価額(路線価) 国税庁 毎年7月公表 相続税・贈与税計算 約80%(財産評価基本通達)
固定資産税評価額 市区町村 3年ごと評価替え 固定資産税・都市計画税・不動産取得税計算 約70%(総務省基準)
公示地価 国土交通省 毎年3月公表 一般の土地取引の指標 100%(基準)

(出典: 主な公的土地評価一覧(国土交通省)を基に作成)

相続税評価額(路線価):相続税・贈与税の計算用

相続税評価額は、相続税・贈与税の計算に使用する土地の評価額です。国税庁が毎年7月に公表し、公示地価の約80%の水準に設定されています(財産評価基本通達)。

路線価が定められた地域では「路線価方式」、路線価がない地域では「倍率方式」で計算します。

固定資産税評価額:固定資産税・都市計画税・不動産取得税の計算用

固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税・不動産取得税の計算基準です。市区町村が3年ごとに評価替えし、公示地価の約70%の水準に設定されています(総務省基準)。

公示地価:一般の土地取引の指標

公示地価は、地価公示法に基づき国土交通省が毎年3月に公表する、1月1日時点の標準地1㎡あたりの正常な価格です。一般の土地取引の指標となります。

相続税評価額の調べ方

相続税評価額は、国税庁の「財産評価基準書」を使って調べることができます。

路線価方式の計算方法

路線価が定められた地域では、以下の式で計算します。

計算式: 相続税評価額 = 路線価 × 補正率 × 面積

  • 路線価: 道路に面する土地1㎡あたりの価格(単位:千円/㎡)
  • 補正率: 土地の形状(奥行、間口、角地等)による補正
  • 面積: 土地の面積(㎡)

例えば、路線価300千円/㎡の道路に面した100㎡の土地(補正率1.0)の場合:

相続税評価額 = 300千円 × 1.0 × 100㎡ = 30,000千円(3,000万円)

倍率方式の計算方法

路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定倍率を乗じて計算します。

計算式: 相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

倍率は「財産評価基準書」の評価倍率表で確認できます。

国税庁の財産評価基準書の使い方

財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)では、全国の路線価と評価倍率を8年分参照できます。

操作手順:

  1. 調べたい年分(令和7年分等)を選択
  2. 都道府県・市区町村を選択
  3. 路線価図または評価倍率表を選択
  4. 地図上で該当する道路の路線価を確認(単位:千円/㎡)

固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに評価替えし、毎年送付される「固定資産税課税明細書」で確認できます。

固定資産税課税明細書で確認

毎年4-6月頃に市区町村から送付される「固定資産税納税通知書」に同封されている「固定資産税課税明細書」に、土地・建物の固定資産税評価額が記載されています。

市区町村の固定資産税課で閲覧

明細書が手元にない場合は、市区町村の固定資産税課で「固定資産税評価証明書」を取得できます(手数料300円程度)。

評価額と実勢価格の関係

評価額はあくまで税金計算の基準であり、実勢価格(実際の売却価格)とは異なります。

評価額と実勢価格の目安:

  • 相続税評価額(路線価):公示地価の約80%
  • 固定資産税評価額:公示地価の約70%
  • 実勢価格:公示地価の約110-120%(国土交通省の取引事例データ)

路線価の1.25倍程度が実勢価格の概算となりますが、土地の形状・接道状況・用途地域などの個別性により、実勢価格は大きく変動します。

実際の売却価格を知るには、不動産情報ライブラリ(国土交通省)で周辺の取引事例を確認したり、複数の不動産業者への査定依頼が必要です。

小規模宅地等の特例で評価額を減額

小規模宅地等の特例は、相続した宅地が事業用または居住用の場合、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

居住用宅地の特例(330㎡まで80%減額)

被相続人または被相続人と同一生計の親族が居住していた宅地を相続した場合、330㎡まで評価額を80%減額できます。

適用要件:

  • 配偶者または同居親族が取得
  • 申告期限(相続開始から10ヶ月)まで保有・居住
  • 相続税申告書に必要書類を添付

例えば、相続税評価額3,000万円の居住用宅地(200㎡)の場合:

減額後の評価額 = 3,000万円 × (1 - 0.8) = 600万円

相続税評価額が2,400万円減額されます。

貸付事業用宅地の特例(200㎡まで50%減額)

被相続人が貸付事業(アパート経営等)に使用していた宅地を相続した場合、200㎡まで評価額を50%減額できます。

適用要件:

  • 相続人が貸付事業を継続
  • 申告期限まで保有・事業継続
  • 相続税申告書に必要書類を添付

適用要件

小規模宅地等の特例を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 相続税の申告書を申告期限内に提出(特例適用には申告が必須)
  • 配偶者または一定の要件を満たす親族が取得
  • 申告期限まで保有・居住または事業継続

特例の適用判断は複雑なため、税理士への相談をおすすめします。

(出典: 小規模宅地等の特例(国税庁)

まとめ:土地の評価額を正しく理解し、相続・売却に活用する

土地の評価額には「相続税評価額」「固定資産税評価額」「公示地価」の3種類があり、それぞれ用途と水準が異なります。相続税評価額は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%であり、実勢価格とは異なることを理解してください。

相続時は小規模宅地等の特例を活用することで、相続税評価額を最大80%減額できます。売却時は実勢価格との違いを理解し、複数の不動産業者への査定依頼や専門家(税理士、不動産鑑定士)への相談をおすすめします。

評価額の調べ方は、相続税評価額は国税庁の「財産評価基準書」、固定資産税評価額は「固定資産税課税明細書」で確認できます。正確な評価と節税対策のため、早めに専門家へ相談しましょう。

よくある質問

Q1土地の評価額と売却価格は同じですか?

A1異なります。相続税評価額は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%であり、税金計算の基準です。一方、実勢価格(売却価格)は公示地価の約110-120%が目安ですが、土地の形状・接道状況・用途地域などの個別性により大きく変動します。正確な売却価格を知るには、複数の不動産業者への査定依頼が必要です。

Q2路線価が定められていない地域の土地はどう評価しますか?

A2倍率方式で評価します。固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じて計算します。倍率は国税庁の「財産評価基準書」の評価倍率表で確認できます。例えば、固定資産税評価額1,000万円、倍率1.1の場合、相続税評価額は1,100万円(1,000万円 × 1.1)となります。

Q3評価額は毎年変わりますか?

A3相続税評価額(路線価)は毎年7月に公表され毎年更新されます。一方、固定資産税評価額は3年ごとに評価替えされ、その間は据え置かれます。直近の評価替えは2024年度に実施されており、次回は2027年度の予定です。最新の評価額を確認するには、国税庁の「財産評価基準書」や市区町村の「固定資産税課税明細書」を参照してください。

Q4小規模宅地等の特例はどんな土地でも使えますか?

A4いいえ。居住用・事業用・貸付用の宅地が対象です。配偶者または同居親族が取得し、申告期限(相続開始から10ヶ月)まで保有・居住または事業継続する等の要件を満たす必要があります。また、特例適用には相続税申告が必須であり、申告しないと特例は適用されません。適用判断は複雑なため、税理士への相談をおすすめします。