親から子への土地の名義変更【完全ガイド】手続き・費用・税金

公開日: 2025/11/4

親から子への土地の名義変更を検討している方へ

親から土地を譲り受ける際、または子供に土地を譲りたい際、「名義変更はどうすればいいのか」「税金はいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、親子間の土地名義変更の手続き、費用、税金を、法務局・国税庁の公式情報を元に解説します。

生前贈与と相続の税負担の違いを理解し、適切なタイミングで名義変更を進められるようになります。

この記事のポイント

  • 親子間の土地名義変更には「生前贈与」と「相続」の2パターンがある
  • 生前贈与の贈与税は最大55%、基礎控除110万円/年
  • 相続の相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数
  • 登録免許税は生前贈与で2%、相続で0.4%と5倍の差
  • 不動産取得税は生前贈与で課税、相続で非課税

親子間の土地名義変更の2つのパターン

親から子へ土地の名義を変更する方法は2つあります。

生前贈与

親が存命中に財産を子に無償で譲ること。贈与契約書を作成し、登記申請により名義変更します。贈与税(基礎控除110万円/年)が課税されます。

相続

親の死亡により財産が子に移転すること。2024年4月から登記義務化(3年以内)。相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数です。

どちらを選ぶかで税負担が大きく異なるため、慎重に判断する必要があります。

生前贈与による名義変更の手続き

生前贈与の手続きを4ステップで解説します。

ステップ1:贈与契約書の作成

贈与契約書を書面で作成します。口頭での贈与は、後に相続人間で「贈与は無効」と争われるリスクがあるため、必ず書面で契約しましょう。

贈与契約書には以下を記載します。

  • 贈与者(親)・受贈者(子)の氏名・住所
  • 贈与する土地の所在・地番・地積
  • 贈与日
  • 署名・押印

ステップ2:必要書類の準備

法務局によると、以下の書類が必要です。

  • 登記識別情報(または登記済証)
  • 印鑑証明書(贈与者)
  • 住民票(受贈者)
  • 固定資産評価証明書
  • 贈与契約書
  • 登記申請書

ステップ3:登記申請(オンライン or 窓口)

登記申請は以下のいずれかで行います。

  • オンライン: 法務局の登記・供託オンライン申請システム
  • 窓口: 不動産所在地を管轄する法務局

司法書士に委任することも可能です。

ステップ4:贈与税の申告(翌年2-3月)

贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間に、税務署へ贈与税の申告をします。基礎控除110万円を超える場合は納税が必要です。

生前贈与の費用と税金

登録免許税(固定資産評価額の2%)

登録免許税は固定資産評価額×2%です。

: 評価額2000万円の土地なら40万円

相続の場合は0.4%(8万円)なので、生前贈与の方が5倍高くなります。

不動産取得税(固定資産税評価額の3%程度)

生前贈与の場合、不動産取得税が課税されます(固定資産税評価額の3%程度)。相続の場合は非課税です。

: 評価額2000万円の土地なら60万円程度

贈与税の計算方法と税率

国税庁によると、贈与税は以下のように計算します。

計算式: (贈与額 - 基礎控除110万円)× 税率 - 控除額

特例贈与財産の税率(親から子への贈与):

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

: 評価額2000万円の土地を贈与した場合

(2000万円 - 110万円)× 45% - 265万円 = 585万円

贈与税は非常に高額になる可能性があります。

司法書士報酬(5万〜10万円程度)

司法書士に登記手続きを依頼する場合の費用は5万〜10万円程度です。

相続時精算課税制度の活用

川村会計事務所によると、2024年改正で相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。

相続時精算課税制度とは

累計2500万円まで贈与税非課税で贈与できる制度です。ただし、相続時に相続税として精算されます。

2024年改正のポイント

  • 年110万円の基礎控除が新設: 毎年110万円以下の贈与なら贈与税・相続税ともに非課税
  • 累計2500万円まで非課税: 110万円を超える部分も、累計2500万円まで贈与税非課税(相続時に精算)

注意点

  • 一度選択すると暦年課税に戻れない
  • 他の財産も同一制度で課税される
  • 相続時に相続税として精算される

制度を選択する際は税理士への相談を推奨します。

親子間売買の注意点(みなし贈与)

親子間で著しく安い価格で売買すると「みなし贈与」と判定され、差額に贈与税が課税されるリスクがあります。

みなし贈与とは

WAKEARIPROによると、時価の80%未満が目安で売買した場合、差額を贈与とみなす税法上の規定です。

: 時価2000万円の土地を1000万円で売買した場合

差額1000万円に贈与税が課税される可能性があります。

適正価格の設定

親子間売買を行う場合、不動産鑑定士の鑑定評価書を取得し、適正価格を設定することを推奨します。

生前贈与と相続の税負担比較

生前贈与と相続の税負担を比較します。

税金の比較

項目 生前贈与 相続
基礎控除 110万円/年 3000万円+600万円×法定相続人数
最高税率 55% 55%
登録免許税 固定資産評価額の2% 固定資産評価額の0.4%
不動産取得税 固定資産税評価額の3%程度 非課税

どちらを選ぶべきか

  • 土地の評価額が低い: 生前贈与も選択肢(基礎控除110万円以内なら非課税)
  • 土地の評価額が高い: 相続の方が税負担が軽い場合が多い
  • 相続時精算課税制度を活用: 年110万円以下の贈与なら非課税

個別具体的な判断は税理士への相談を推奨します。

まとめ

親から子への土地の名義変更には、生前贈与と相続の2パターンがあります。生前贈与の贈与税は最大55%、相続の相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数です。

登録免許税は生前贈与で2%、相続で0.4%と5倍の差があり、不動産取得税も生前贈与で課税、相続で非課税です。

税負担を正確に把握し、適切なタイミングで名義変更を進めましょう。個別具体的な判断は司法書士・税理士への相談を推奨します。

よくある質問

Q1生前贈与と相続、どちらが税負担が軽いですか?

A1土地の評価額により異なります。評価額が低い場合は生前贈与(基礎控除110万円以内なら非課税)も選択肢ですが、評価額が高い場合は相続の方が税負担が軽い場合が多いです。相続税の基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人数で、生前贈与の基礎控除110万円/年より大きいためです。個別具体的な判断は税理士への相談を推奨します。

Q2親子間で土地を売買する場合、どのような価格設定が必要ですか?

A2時価の80%未満で売買すると「みなし贈与」と判定され、差額に贈与税(最大55%)が課税されるリスクがあります。適正価格の設定が必須です。不動産鑑定士の鑑定評価書を取得し、時価に近い価格で売買することをおすすめします。親子間であっても、税務署は厳しくチェックするため注意が必要です。

Q3贈与税の基礎控除110万円はどのように活用できますか?

A3毎年110万円以下の贈与なら贈与税が非課税です。土地の持分を毎年少しずつ贈与することで、長期間かけて非課税で名義変更できます。ただし、毎年贈与契約書を作成し、登記申請を行う必要があり、手間と登録免許税がかかる点に注意してください。計画的な贈与を行う場合は税理士への相談を推奨します。

Q4相続時精算課税制度を選択すると、どのようなメリットがありますか?

A42024年改正で年110万円の基礎控除が新設され、毎年110万円以下の贈与なら贈与税・相続税ともに非課税になりました。110万円を超える部分も累計2500万円まで贈与税非課税(相続時に精算)です。ただし、一度選択すると暦年課税に戻れず、他の財産も同一制度で課税される点に注意が必要です。

Q5土地の名義変更は自分でできますか?

A5法的義務はなく、自分で手続き可能です。法務局の窓口で相談しながら進めることができます。ただし、贈与契約書の作成、登記申請書の記入、必要書類の準備など専門知識が必要です。複雑なケース(共有名義、複数の不動産等)は司法書士への依頼を推奨します。費用を抑えたい場合は自分で挑戦し、難しければ専門家に依頼する方法もあります。