親から子への土地の名義変更を検討している方へ
親から土地を譲り受ける際、または子供に土地を譲りたい際、「名義変更はどうすればいいのか」「税金はいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、親子間の土地名義変更の手続き、費用、税金を、法務局・国税庁の公式情報を元に解説します。
生前贈与と相続の税負担の違いを理解し、適切なタイミングで名義変更を進められるようになります。
この記事のポイント
- 親子間の土地名義変更には「生前贈与」と「相続」の2パターンがある
- 生前贈与の贈与税は最大55%、基礎控除110万円/年
- 相続の相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数
- 登録免許税は生前贈与で2%、相続で0.4%と5倍の差
- 不動産取得税は生前贈与で課税、相続で非課税
親子間の土地名義変更の2つのパターン
親から子へ土地の名義を変更する方法は2つあります。
生前贈与
親が存命中に財産を子に無償で譲ること。贈与契約書を作成し、登記申請により名義変更します。贈与税(基礎控除110万円/年)が課税されます。
相続
親の死亡により財産が子に移転すること。2024年4月から登記義務化(3年以内)。相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数です。
どちらを選ぶかで税負担が大きく異なるため、慎重に判断する必要があります。
生前贈与による名義変更の手続き
生前贈与の手続きを4ステップで解説します。
ステップ1:贈与契約書の作成
贈与契約書を書面で作成します。口頭での贈与は、後に相続人間で「贈与は無効」と争われるリスクがあるため、必ず書面で契約しましょう。
贈与契約書には以下を記載します。
- 贈与者(親)・受贈者(子)の氏名・住所
- 贈与する土地の所在・地番・地積
- 贈与日
- 署名・押印
ステップ2:必要書類の準備
法務局によると、以下の書類が必要です。
- 登記識別情報(または登記済証)
- 印鑑証明書(贈与者)
- 住民票(受贈者)
- 固定資産評価証明書
- 贈与契約書
- 登記申請書
ステップ3:登記申請(オンライン or 窓口)
登記申請は以下のいずれかで行います。
- オンライン: 法務局の登記・供託オンライン申請システム
- 窓口: 不動産所在地を管轄する法務局
司法書士に委任することも可能です。
ステップ4:贈与税の申告(翌年2-3月)
贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間に、税務署へ贈与税の申告をします。基礎控除110万円を超える場合は納税が必要です。
生前贈与の費用と税金
登録免許税(固定資産評価額の2%)
登録免許税は固定資産評価額×2%です。
例: 評価額2000万円の土地なら40万円
相続の場合は0.4%(8万円)なので、生前贈与の方が5倍高くなります。
不動産取得税(固定資産税評価額の3%程度)
生前贈与の場合、不動産取得税が課税されます(固定資産税評価額の3%程度)。相続の場合は非課税です。
例: 評価額2000万円の土地なら60万円程度
贈与税の計算方法と税率
国税庁によると、贈与税は以下のように計算します。
計算式: (贈与額 - 基礎控除110万円)× 税率 - 控除額
特例贈与財産の税率(親から子への贈与):
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4500万円超 | 55% | 640万円 |
例: 評価額2000万円の土地を贈与した場合
(2000万円 - 110万円)× 45% - 265万円 = 585万円
贈与税は非常に高額になる可能性があります。
司法書士報酬(5万〜10万円程度)
司法書士に登記手続きを依頼する場合の費用は5万〜10万円程度です。
相続時精算課税制度の活用
川村会計事務所によると、2024年改正で相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。
相続時精算課税制度とは
累計2500万円まで贈与税非課税で贈与できる制度です。ただし、相続時に相続税として精算されます。
2024年改正のポイント
- 年110万円の基礎控除が新設: 毎年110万円以下の贈与なら贈与税・相続税ともに非課税
- 累計2500万円まで非課税: 110万円を超える部分も、累計2500万円まで贈与税非課税(相続時に精算)
注意点
- 一度選択すると暦年課税に戻れない
- 他の財産も同一制度で課税される
- 相続時に相続税として精算される
制度を選択する際は税理士への相談を推奨します。
親子間売買の注意点(みなし贈与)
親子間で著しく安い価格で売買すると「みなし贈与」と判定され、差額に贈与税が課税されるリスクがあります。
みなし贈与とは
WAKEARIPROによると、時価の80%未満が目安で売買した場合、差額を贈与とみなす税法上の規定です。
例: 時価2000万円の土地を1000万円で売買した場合
差額1000万円に贈与税が課税される可能性があります。
適正価格の設定
親子間売買を行う場合、不動産鑑定士の鑑定評価書を取得し、適正価格を設定することを推奨します。
生前贈与と相続の税負担比較
生前贈与と相続の税負担を比較します。
税金の比較
| 項目 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 110万円/年 | 3000万円+600万円×法定相続人数 |
| 最高税率 | 55% | 55% |
| 登録免許税 | 固定資産評価額の2% | 固定資産評価額の0.4% |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額の3%程度 | 非課税 |
どちらを選ぶべきか
- 土地の評価額が低い: 生前贈与も選択肢(基礎控除110万円以内なら非課税)
- 土地の評価額が高い: 相続の方が税負担が軽い場合が多い
- 相続時精算課税制度を活用: 年110万円以下の贈与なら非課税
個別具体的な判断は税理士への相談を推奨します。
まとめ
親から子への土地の名義変更には、生前贈与と相続の2パターンがあります。生前贈与の贈与税は最大55%、相続の相続税は基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数です。
登録免許税は生前贈与で2%、相続で0.4%と5倍の差があり、不動産取得税も生前贈与で課税、相続で非課税です。
税負担を正確に把握し、適切なタイミングで名義変更を進めましょう。個別具体的な判断は司法書士・税理士への相談を推奨します。
