土地売買に消費税はかかる?課税・非課税の判断基準

公開日: 2025/11/6

土地売買に消費税はかかる?結論と課税の基本

土地の売買を検討する際、「消費税はかかるのか」「建物との違いは何か」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地売買と消費税の関係を、国税庁・財務省の公式情報を元に解説します。土地は原則として非課税ですが、仲介手数料・登記費用等の諸費用には消費税がかかります。建物との違い、事業者と個人の違い、土地付き建物の按分方法まで、具体例とともに網羅的に説明します。

執筆時点(2025年11月)の最新情報に基づいています。

この記事のポイント

  • 土地の譲渡は消費税非課税(消費税法第6条)
  • 建物は事業者売主の場合のみ課税(個人間売買は非課税)
  • 土地付き建物の売買では按分により建物部分のみ課税
  • 仲介手数料・登記費用等の諸費用には全て消費税10%が課税
  • 借地権の譲渡は課税対象(土地そのものではなく権利の譲渡)

なぜ土地は消費税非課税なのか?

土地の譲渡が非課税となる理由を、消費税法の原理から説明します。

消費税は「消費されるもの」に課税する税金です。建物・車・食品等は使用すると減価・消耗するため課税対象ですが、土地は使用しても減価・消耗しない「資本の移転」として位置付けられます。

国税庁によると、土地の譲渡・貸付けは消費税法第6条・別表第一で非課税取引に該当します。政策的配慮(土地は生活の基盤、高額取引への負担軽減)も背景にあります。

ただし、借地権の譲渡は課税対象です。土地そのものではなく「権利の譲渡」として扱われるためです。

建物は消費税の課税対象

建物は消費税の課税対象ですが、売主が事業者か個人かによって扱いが異なります。

事業者が売主の場合(課税)

売主が事業者(不動産会社・法人・個人事業主)の場合、建物の譲渡には消費税10%が課税されます。

事業者判定は「反復継続して対価を得る意図」の有無で判断されます。新築マンション・建売住宅は事業者売主のため課税されるケースが多くなります。

個人が売主の場合(非課税)

個人間売買(中古住宅の個人売買等)では建物も非課税です。個人が自宅を売却する場合、事業として行っているわけではないため消費税はかかりません。

土地付き建物の売買における消費税の計算

土地付き建物を一括で売買する際、売買代金を土地と建物に按分し、建物部分のみに消費税を課税します。

按分方法(固定資産税評価額比率)

按分方法は固定資産税評価額比率が一般的です。国税庁が認める按分方法の一つであり、実務上広く用いられています。

固定資産税評価額が不明な場合は、不動産鑑定士の評価を利用する方法もあります。

計算例で理解する

売買代金3,000万円、土地の固定資産税評価額1,000万円、建物の固定資産税評価額500万円の場合を例に説明します。

按分計算

  • 按分比率:土地1,000万円:建物500万円 = 2:1
  • 土地:3,000万円×2/3 = 2,000万円(非課税)
  • 建物:3,000万円×1/3 = 1,000万円(課税)

消費税の計算

  • 建物1,000万円は税込み価格
  • 税抜き価格 = 1,000万円÷1.1 ≒ 909万円
  • 消費税 ≒ 91万円

このように、土地付き建物の売買では按分により建物部分のみに消費税が課税されます。

仲介手数料など諸費用には消費税がかかる

土地売買そのものは非課税ですが、諸費用には消費税が課税されます。

項目 内容 消費税
仲介手数料 不動産会社への報酬(売買代金×3%+6万円+消費税が上限) 課税
司法書士報酬 登記手続きの報酬(5-15万円程度) 課税
測量費用 土地家屋調査士への報酬(30-80万円程度) 課税
住宅ローン手数料 金融機関への事務手数料(融資額×1-2%程度) 課税

例えば、2,000万円の土地を購入する場合、仲介手数料は最大72.6万円(= 2,000万円×3%+6万円+消費税)となります。

これらの諸費用は全て課税対象のため、土地のみの売買でも消費税負担が発生する点を認識しておいてください。

消費税と譲渡所得税の関係

土地売買時には消費税以外に譲渡所得税も発生する可能性があります。両者を混同しないよう注意が必要です。

消費税と譲渡所得税の違い

  • 消費税:売主が受け取る税金(間接税)。事業者が売主の場合、受け取った消費税を税務署に納付
  • 譲渡所得税:売却益に対して売主が納める税金(直接税)。個人・法人ともに対象

譲渡所得の計算では、建物の取得費は消費税込みの金額を使用します。消費税と譲渡所得税は別の税金であり、二重課税ではありません。

確定申告では両方を正しく申告する必要があります。詳細は税理士にご相談ください。

まとめ:土地は非課税、建物と諸費用は課税対象

土地の譲渡は消費税非課税(消費税法第6条)です。建物は事業者売主の場合のみ課税され、個人間売買は非課税です。

土地付き建物の売買では按分により建物部分のみ課税されます。按分方法は固定資産税評価額比率が一般的です。

仲介手数料・登記費用等の諸費用には全て消費税10%が課税されます。借地権の譲渡は課税対象である点にも注意が必要です。

土地売買の際は売買契約書で土地・建物の按分を確認し、諸費用の見積もりで消費税込みの総額を把握してください。詳細な税額計算は税理士にご相談されることをおすすめします。

よくある質問

Q1個人間で土地を売買する場合、消費税はかかりますか?

A1個人間売買では土地も建物も消費税は非課税です。ただし、仲介手数料・登記費用等の諸費用には消費税10%が課税されます。売買代金そのものには消費税がかからないため、事業者売主の場合より総額が安くなります。

Q2借地権を売却する場合、消費税はかかりますか?

A2借地権の譲渡は消費税の課税対象です。土地そのものの譲渡ではなく「権利の譲渡」と位置付けられるため、事業者が売主の場合は消費税10%が課税されます。個人間取引では非課税です。

Q3土地付き建物の売買で、按分比率は自由に決められますか?

A3按分比率は原則として固定資産税評価額比率に基づくべきです。恣意的な按分(土地を多く、建物を少なく設定して消費税を減らす等)は税務署に否認される可能性があります。固定資産税評価額が不明な場合は、不動産鑑定士の評価を利用する方法もあります。

Q4消費税を払った土地売買代金は、確定申告でどう扱いますか?

A4土地は非課税のため、売買代金に消費税は含まれません。ただし、譲渡所得税の計算では、建物の取得費は消費税込みの金額を使用します。消費税と譲渡所得税は別の税金であり、確定申告では両方を正しく申告する必要があります。詳細は税理士に相談してください。

Q5土地を売却して受け取った消費税は、どう処理しますか?

A5土地の売却そのものは非課税のため、消費税を受け取ることはありません。事業者が建物を売却した場合、受け取った消費税は税務署に納付します(消費税の申告・納税義務)。個人が不動産を売却した場合、消費税の納税義務は原則としてありません。