土地売却でかかる税金の全体像
「土地を売却したいけど、税金がいくらかかるのか不安」と感じていませんか。
この記事では、土地売却時にかかる税金の種類、譲渡所得税の計算方法、確定申告の具体的な手順、節税に使える特例制度を、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めて土地を売却する方でも、必要な税金と手続きを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却時の税金は譲渡所得税(所得税・住民税・復興税)、印紙税、登録免許税の3種類が主
- 譲渡所得税の税率は所有期間5年超で約20%、5年以下で約40%と大きく異なる
- 確定申告は売却翌年2月16日〜3月15日が期限で、給与所得者でも申告必須
- 3000万円特別控除等の特例制度を活用することで、税額を大幅に抑えられる場合がある
- 不明点がある場合は税務署や税理士に早めに相談することが重要
※本記事は2025年時点の税制を基に解説しています。税制改正により内容が変更される可能性があるため、最新情報は国税庁ホームページをご確認ください。
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税
土地を売却した際に最も大きな負担となるのが、**譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)**です。これは、土地を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金です。
国税庁の公式情報によると、譲渡所得税は以下の3つで構成されます。
| 税目 | 内容 | 
|---|---|
| 所得税 | 譲渡所得に対する国税 | 
| 住民税 | 譲渡所得に対する地方税 | 
| 復興特別所得税 | 東日本大震災の復興財源(2037年まで) | 
(出典: 国税庁)
譲渡所得税の税率は、土地の所有期間によって「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に区分され、税率が約2倍異なります(詳細は次のセクションで解説)。
譲渡所得税は、売却翌年の確定申告時に納税します。売却代金から直接差し引かれるわけではないため、納税資金を別途用意しておく必要があります。
印紙税
印紙税は、土地の売買契約書に貼付する収入印紙で納付する国税です。契約金額に応じて税額が変動します。
印紙税の税額早見表によると、主な契約金額の印紙税は以下の通りです(軽減税率適用時)。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(令和9年3月31日まで) | 
|---|---|---|
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 | 
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 | 
| 1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 | 
(出典: すまいステップ)
令和9年(2027年)3月31日までは軽減税率が適用されるため、通常の半額程度の税額となります。印紙税は売買契約書に収入印紙を貼付することで納税し、売主・買主がそれぞれ負担するのが一般的です。
登録免許税
登録免許税は、土地の抵当権を抹消する際に納める国税です。国税庁の税額表によると、土地1筆あたり1,000円です。
登録免許税が発生するのは、売却時に住宅ローンを完済し、金融機関が設定していた抵当権を抹消する場合です。抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的で、登録免許税(土地1筆1,000円)と司法書士報酬(1-3万円程度)が必要になります。
抵当権が設定されていない土地(ローン完済済み、現金購入等)を売却する場合は、登録免許税は発生しません。
譲渡所得税の計算方法とシミュレーション
譲渡所得税の計算は、以下の式で行います。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
この譲渡所得に対して、所有期間に応じた税率を掛けることで税額が算出されます。
譲渡所得の計算式(売却価格-取得費-譲渡費用)
各項目の内容は以下の通りです。
- 売却価格: 土地を売却した金額
- 取得費: 土地を取得した際にかかった費用(購入代金、仲介手数料、測量費、造成費等)
- 譲渡費用: 土地を売却する際にかかった費用(仲介手数料、測量費、建物解体費、契約書の印紙税等)
例えば、以下のケースで計算してみます。
- 売却価格: 5,000万円
- 取得費: 3,000万円(購入代金2,800万円 + 仲介手数料150万円 + 測量費50万円)
- 譲渡費用: 200万円(仲介手数料150万円 + 測量費30万円 + 印紙税2万円 + その他18万円)
譲渡所得 = 5,000万円 - 3,000万円 - 200万円 = 1,800万円
この1,800万円に対して、所有期間に応じた税率を掛けることで税額が決まります。
長期・短期譲渡所得の税率差(5年の境界)
2025年時点では、譲渡所得税の税率は、国税庁の公式情報により、土地の所有期間で大きく異なります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興税 | 合計税率 | 
|---|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% | 
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% | 
(出典: 国税庁)
重要な注意点: 所有期間の判定は、「売却年の1月1日時点」で行います。
例えば、2019年4月に取得し、2025年6月に売却した場合を考えます。
- 実際の所有期間: 6年2ヶ月
- 判定時点(2025年1月1日時点): 5年9ヶ月
しかし、前年の2024年1月1日時点では4年9ヶ月のため、短期譲渡所得として扱われます。
このように、実際の所有期間が6年以上でも短期扱いになるケースがあるため、売却時期の判断には注意が必要です。
先ほどの例(譲渡所得1,800万円)で税額を計算すると、以下のようになります。
- 長期譲渡所得(5年超)の場合: 1,800万円 × 20.315% = 約365万円
- 短期譲渡所得(5年以下)の場合: 1,800万円 × 39.63% = 約713万円
所有期間の違いで、税額が約350万円も異なります。
取得費に含められる項目(購入代金・仲介手数料・測量費等)
取得費には、土地を取得する際にかかった以下の費用を含めることができます。
- 購入代金(土地代金そのもの)
- 仲介手数料
- 測量費
- 造成費(整地、盛土等)
- 登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
- 不動産取得税
- 契約書の印紙税
これらの費用を正確に計上することで、譲渡所得を抑え、税額を削減できます。領収書や契約書を保管しておくことが重要です。
譲渡費用に含められる項目(仲介手数料・測量費・解体費等)
譲渡費用には、土地を売却する際に直接かかった以下の費用を含めることができます。
- 仲介手数料
- 測量費(境界確定測量等)
- 建物解体費(古家付き土地を更地にして売却した場合)
- 契約書の印紙税
- 広告費(不動産会社に支払った広告費用)
ただし、売却後の引越し費用や、土地を使用していた期間の固定資産税等は、譲渡費用に含められません。
取得費不明時の概算取得費(5%ルール)のデメリット
相続した土地等で、購入時の契約書や領収書が残っていない場合、**概算取得費(5%ルール)**を使うことができます。これは、売却価格の5%を取得費とみなす方法です。
例えば、売却価格5,000万円の土地の場合、取得費は250万円(5,000万円 × 5%)とみなされます。
しかし、この方法には大きなデメリットがあります。
- 実際の取得費が5%以上であっても、5%しか控除できない
- 売却価格の95%に課税される(譲渡所得が非常に大きくなる)
先ほどの例(売却価格5,000万円、譲渡費用200万円)で比較すると、以下のようになります。
実際の取得費3,000万円の場合:
- 譲渡所得 = 5,000万円 - 3,000万円 - 200万円 = 1,800万円
- 税額(長期) = 1,800万円 × 20.315% = 約365万円
概算取得費(5%ルール)の場合:
- 譲渡所得 = 5,000万円 - 250万円 - 200万円 = 4,550万円
- 税額(長期) = 4,550万円 × 20.315% = 約924万円
税額の差: 約559万円
概算取得費を使うと、税額が大幅に高くなります。可能な限り、購入時の契約書や領収書を探し、実際の取得費を証明することが重要です。
確定申告の具体的な手順と必要書類
土地を売却した場合、給与所得者であっても確定申告が必須です。国税庁の申告の手引きに基づき、手順を解説します。
確定申告の時期と期限(売却翌年2-3月)
確定申告の期間は、土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日です。
例えば、2025年中に土地を売却した場合、2026年2月16日〜3月15日の間に確定申告を行います。
期限を過ぎると、**無申告加算税(本税の15-20%)と延滞税(年7.3-14.6%)**が追徴されるため、必ず期限内に申告してください。
必要書類チェックリスト(譲渡所得の内訳書・登記事項証明書・売買契約書等)
確定申告時に必要な書類は、国税庁の添付書類リストにより、以下の通りです。
必須書類:
- 譲渡所得の内訳書(国税庁ウェブサイトからダウンロード可能)
- 売却時の売買契約書のコピー
- 取得時の売買契約書のコピー
- 登記事項証明書(法務局で取得)
- 仲介手数料等の領収書
特例を適用する場合の追加書類:
- 住民票の写し(3000万円特別控除を適用する場合)
- 登記事項証明書(所有期間の証明)
これらの書類を事前に準備し、申告書と共に提出します。
申告書の書き方(記載例)
確定申告書の記載方法は、国税庁の記載例を参考にするとよいでしょう。
申告書の主な記載項目は以下の通りです。
- 譲渡所得の内訳書: 売却価格、取得費、譲渡費用の明細を記載
- 確定申告書B(第一表・第二表): 給与所得等の他の所得と合算して記載
- 確定申告書第三表(分離課税用): 譲渡所得の金額と税額を記載
申告書の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで自動計算されるため便利です。
節税に使える特例制度
土地売却時の税負担を軽減するため、国税庁の特例一覧にあるように、いくつかの特例制度が用意されています。
3000万円特別控除(居住用財産)の適用条件
3000万円特別控除は、マイホーム(居住用財産)の敷地を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
主な適用条件は以下の通りです。
- 自己が居住していた家屋の敷地であること
- 家屋を取り壊した場合、取り壊しから1年以内に売買契約を締結すること
- 売却先が配偶者や親族でないこと
- 前年・前々年に同じ特例を使っていないこと
この特例は、所有期間の長短に関係なく適用できます。譲渡所得が3,000万円以下であれば、税額はゼロになります。
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率は、所有期間が10年を超えるマイホームの敷地を売却した場合に、長期譲渡所得の税率をさらに軽減する特例です。
| 譲渡所得の金額 | 所得税 | 住民税 | 復興税 | 合計税率 | 
|---|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | 0.21% | 14.21% | 
| 6,000万円超の部分 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% | 
(出典: 国税庁)
3000万円特別控除と併用できるため、譲渡所得が9,000万円以下であれば、大幅な節税が可能です。
特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例は、マイホームを売却して新たにマイホームを購入する場合に、譲渡益の課税を繰り延べる特例です。
主な適用条件は以下の通りです。
- 売却価格が1億円以下であること
- 所有期間が10年超、居住期間が10年以上であること
- 売却年の前年から翌年までの間に新たな住宅を取得すること
- 新たな住宅の床面積が50㎡以上であること
この特例は、課税を「免除」するのではなく「繰り延べる」ものです。将来、買い替えた住宅を売却する際に、繰り延べていた課税が発生します。
税理士への相談を検討すべきタイミング
以下のような場合は、税理士への相談を検討することをおすすめします。
- 取得費が不明で5%ルールを使う場合: 実際の取得費を証明する方法を専門家に相談することで、税額を大幅に削減できる可能性があります。
- 特例の適用可否が不明な場合: 居住実態、所有期間等の要件が複雑なため、専門家の判断が必要です。
- 相続した土地で複数人の共有名義の場合: 共有者それぞれの持分に応じた申告が必要で、計算が複雑になります。
- 譲渡所得が高額(1,000万円以上)の場合: 税額が大きくなるため、専門家のアドバイスで節税対策を検討する価値があります。
税理士への依頼費用は、譲渡所得の金額により異なりますが、一般的に10-30万円程度が目安です。税額が大きい場合、専門家のアドバイスで削減できる税額が報酬を上回る可能性もあります。
まとめ:土地売却の税金で損しないために
土地売却では、譲渡所得税が最も大きな負担となります。所有期間5年の境界で税率が約2倍異なるため、売却時期の判断が重要です。
取得費・譲渡費用を正確に計上し、領収書や契約書を保管しておくことで、譲渡所得を抑えることができます。3000万円特別控除等の特例制度を活用することで、税額を大幅に削減できる場合もあります。
確定申告は売却翌年2月16日〜3月15日が期限で、給与所得者でも申告必須です。不明点があれば税務署や税理士に早めに相談し、正確な申告と適切な節税を心がけましょう。
