土地価格相場を自分で調べる方法とは
土地の売買を検討する際、「適正な価格が分からず不安」「自分で相場を調べる具体的な方法を知りたい」と感じる方は少なくありません。土地価格には複数の公的評価額があり、それぞれ目的が異なるため、混乱しやすいのが実情です。
この記事では、土地価格相場を自分で調べる具体的な4つのステップ(公示地価・基準地価、実取引価格、路線価、固定資産税評価額)を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に、画面操作の手順付きで解説します。
初めて土地の売買を検討する方でも、適正な価格判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 土地価格には4つの公的評価額(公示地価・基準地価・路線価・固定資産税評価額)があり、目的・更新時期・水準が異なる
- 実際の売買価格(実勢価格)は、公示地価の1.1-1.2倍程度が目安だが、地域・時期・個別要因で変動する
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」で547万件以上の実取引データを確認できる
- 路線価や固定資産税評価額から実勢価格を逆算できる(路線価÷0.8、評価額÷0.7)が、あくまで目安
- 複数の情報源でクロスチェックし、不動産会社の査定も取得することが適正価格判断の鍵
土地価格相場を自分で調べる重要性と調べ方の全体像
土地価格の相場判断ができないと、売却時に安く買い叩かれたり、購入時に高値掴みをするリスクがあります。
4つの調べ方
本記事では、以下の4つのステップで土地価格相場を調べる方法を解説します。
- 公示地価・基準地価を調べる: 国土交通省の標準地・基準地検索システムで、周辺の標準的な土地の価格を確認
- 実取引価格を調べる: 国土交通省の不動産情報ライブラリで、実際の売買事例を確認
- 路線価から実勢価格を逆算する: 国税庁の財産評価基準書で路線価を確認し、計算式で実勢価格を概算
- 固定資産税評価額から実勢価格を推計する: 固定資産税納税通知書の評価額から、計算式で実勢価格を概算
複数の情報源でクロスチェックすることが重要です。
ステップ1:公示地価・基準地価を調べる
土地価格相場を調べる最初のステップは、公示地価・基準地価を確認することです。
公示地価と基準地価の違い
公示地価とは、地価公示法に基づき国土交通省が毎年1月1日時点で公表する標準地の正常な価格です。土地取引の指標となり、全国26,000地点の標準地価格が3月に公表されます。
基準地価とは、国土利用計画法に基づき都道府県が毎年7月1日時点で公表する基準地の価格です。公示地価の補完的指標として機能し、9月に公表されます。
標準地・基準地検索システムの使い方(画面付き)
国土交通省の標準地・基準地検索システムを使えば、公示地価・基準地価を具体的な手順で調べられます。
手順:
- トップページで「都道府県」「市区町村」を選択
- 地図表示画面で調べたいエリアをクリック
- 周辺の標準地・基準地の価格を一覧表示
- 評価年度(2025年等)、価格(円/㎡)、用途地域を確認
標準地は全国26,000地点で、周辺地域の標準的な土地の価格を示します。自分が調べたい土地に近い標準地を見つけることで、相場の基準となる価格が分かります。
周辺の標準地価格を確認する
複数の標準地価格を確認し、平均値を算出することで、より正確な相場感を掴めます。
例えば、調べたいエリアの周辺3地点の公示地価が以下の場合:
- 標準地A: 35万円/㎡
- 標準地B: 38万円/㎡
- 標準地C: 33万円/㎡
平均値: (35万円 + 38万円 + 33万円) ÷ 3 = 約35.3万円/㎡
これが、周辺エリアの標準的な土地価格の目安となります。
ステップ2:実取引価格を調べる
公示地価・基準地価は「標準的な価格」であり、実際の売買価格(実勢価格)とは異なります。実勢価格を調べるには、国土交通省の不動産情報ライブラリが最も信頼できる情報源です。
不動産情報ライブラリとは
2024年4月に開始された公的な不動産情報サイトで、547万件以上の実取引価格データを検索できます。実際にどの地域で、どの程度の価格で土地が売買されたかを確認できます。
不動産情報ライブラリの使い方(画面付き)
手順:
- トップページで「地域検索」または「地図表示」を選択
- 都道府県・市区町村・町名を指定
- 「価格情報」メニューで「土地」を選択
- 取引時期(2024年第1四半期等)、面積、用途地域で絞り込み
- 複数の取引事例を確認
複数の取引事例をクロスチェックする
重要なポイント:
- 複数の取引事例をクロスチェックする: 1件だけでは判断できません。5-10件程度の取引事例を確認しましょう
- 取引時期を確認する: 古いデータは現在の相場と異なる場合があります。直近1年以内のデータを優先します
- 面積・用途地域・接道状況等の条件を比較する: 条件が近い取引事例を選びます
例えば、調べたいエリアの直近1年の取引事例が以下の場合:
- 取引A: 38万円/㎡(150㎡、第一種住居地域、南側道路)
- 取引B: 42万円/㎡(200㎡、第一種住居地域、角地)
- 取引C: 35万円/㎡(120㎡、第一種住居地域、北側道路)
平均値: (38万円 + 42万円 + 35万円) ÷ 3 = 約38.3万円/㎡
これが、実際の売買価格(実勢価格)の目安となります。公示地価(約35.3万円/㎡)の約1.08倍となっており、「公示地価の1.1-1.2倍」という一般的な目安とほぼ一致します。
ステップ3:路線価から実勢価格を逆算する
路線価は、相続税・贈与税の算定基準として国税庁が公表する道路に面した土地1㎡あたりの価格です。公示地価の約80%水準で設定されているため、実勢価格を逆算できます。
路線価図の見方と読み方
手順:
- 国税庁の財産評価基準書にアクセス
- 都道府県・市区町村を選択
- 路線価図を表示
- 調べたい土地が面している道路の路線価を確認
路線価図には、道路ごとに「300C」等の数字が記載されています。これは「1㎡あたり300千円(30万円)、借地権割合C(70%)」という意味です。
路線価÷0.8×1.1-1.2の計算式
路線価は公示地価の約80%水準のため、以下の計算式で実勢価格を概算できます。
計算式: 路線価 ÷ 0.8 × 1.1~1.2
計算例:
- 路線価: 30万円/㎡
- 公示地価相当: 30万円 ÷ 0.8 = 37.5万円/㎡
- 実勢価格: 37.5万円 × 1.1~1.2 = 41.3~45万円/㎡
注意点: この計算式はあくまで目安です。都市部では実勢価格が公示地価の1.5~2倍になることもあり、地方では1.0~1.1倍程度にとどまる等、地域差が大きい点に注意が必要です。
路線価方式と倍率方式の違い
路線価が設定されていない地域では、倍率方式(固定資産税評価額×倍率)を使用します。国税庁の評価倍率表で倍率を確認できます。
ステップ4:固定資産税評価額から実勢価格を推計する
固定資産税評価額は、市町村が固定資産税・都市計画税の算定基準として設定する価格です。公示地価の約70%水準で設定され、3年ごとに評価替えが行われます。
固定資産税評価額の確認方法
固定資産税評価額は、毎年4-6月に市町村から送付される「固定資産税納税通知書」に記載されています。通知書の「価格」または「評価額」欄を確認しましょう。
評価額÷0.7×1.1-1.2の計算式
固定資産税評価額は公示地価の約70%水準のため、以下の計算式で実勢価格を概算できます。
計算式: 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1~1.2
計算例:
- 固定資産税評価額: 2,100万円(300㎡の土地)
- 公示地価相当: 2,100万円 ÷ 0.7 = 3,000万円
- 実勢価格: 3,000万円 × 1.1~1.2 = 3,300~3,600万円
3年ごとの評価替えによる乖離リスク
固定資産税評価額は3年ごとの評価替えのため、地価が急変している地域(再開発エリア等)では実態と大きく乖離している可能性があります。
最新の公示地価や国土交通省の不動産情報ライブラリの実取引データと比較し、現在の相場を確認することが推奨されます。
複数の公的価格を一括で調べる方法と地域差の注意点
全国地価マップの使い方
全国地価マップは、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供する無料ツールです。以下の4つの公的価格を地図上で一括確認できます。
- 固定資産税路線価
- 相続税路線価
- 公示地価
- 基準地価
手順:
- トップページで調べたい公的価格を選択
- 都道府県・市区町村を指定
- 地図上で調べたいエリアをクリック
- 各公的価格を一覧表示
複数の公的価格を一度に確認できるため、効率的に相場を把握できます。
都市部・郊外・地方の価格差
2025年地価公示によると、都市部・郊外・地方で価格差が大きく、地域特性を考慮する必要があります(大和ハウス工業の分析)。
- 都市部: 再開発エリアでは公示地価の1.5~2倍で取引される場合がある
- 郊外: アクセスの良いエリアは上昇傾向、山間部は低下傾向
- 地方: 人口減少エリアでは公示地価の1.0~1.1倍程度にとどまる場合がある
個別要因による価格変動の確認
接道状況・土地形状・用途地域・災害リスク等の個別要因により、同じエリアでも価格が大きく変動します。
接道状況: 接道義務を満たさない土地(建築基準法上の道路に2m以上接していない)は、建物を建てられないため価格が大幅下落します。
土地形状: 不整形地(変形した土地)は、整形地より減価されます。
用途地域: 建築制限が厳しい地域(第一種低層住居専用地域等)は、制限が緩い地域より価格が低い場合があります。
災害リスク: ハザードマップで浸水想定区域・土砂災害警戒区域等に指定されているエリアは、価格が低くなる傾向があります。
公的価格からの計算だけでは判断できないため、複数の不動産会社に査定を依頼し、個別要因を考慮した価格を確認することが重要です。
まとめ:土地価格相場は複数の方法でクロスチェックする
土地価格の相場は、①公示地価・基準地価、②実取引価格、③路線価・固定資産税評価額から逆算する方法の3つで調べます。
それぞれあくまで目安であり、地域差・時期差・個別要因で大きく変動します。国土交通省の不動産情報ライブラリで実取引データを確認し、標準地・基準地検索システムで公示地価を確認することが効率的です。
全国地価マップで複数の公的価格を一括確認し、複数の不動産会社に査定を依頼することで、より正確な価格判断ができます。
接道状況・土地形状・用途地域・災害リスク等の個別要因を考慮し、総合的に判断しましょう。信頼できる不動産会社や不動産鑑定士に相談しながら、適正な価格判断を行うことをおすすめします。
