土地の相続税の計算方法と節税対策|評価額の調べ方から申告まで

公開日: 2025/10/26

土地の相続税とは?評価額の調べ方と計算の流れ

親族から土地を相続した、または相続予定の方にとって、「相続税はいくらかかるのか」という不安は大きいものです。

この記事では、土地の相続税の計算方法、評価額の調べ方、節税対策まで、国税庁国土交通省の公式情報を元に解説します。

相続税の基礎控除や小規模宅地等の特例を理解することで、適正な相続税額を把握し、無駄な不安を解消できます。

この記事のポイント

  • 土地の相続税は「評価額−基礎控除」で決まり、基礎控除以下なら課税されない
  • 土地の評価方法は路線価方式と倍率方式の2種類があり、国税庁のサイトで調べられる
  • 小規模宅地等の特例を使えば、居住用土地の評価額を最大80%減額できる
  • 相続税の申告期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内で、延納・物納制度もある
  • 相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に手続きが必要

土地の評価方法:路線価方式と倍率方式

土地の相続税を計算するには、まず土地の評価額を調べる必要があります。国税庁では、2つの評価方法を定めています。

路線価方式(市街地)

市街地の土地は、路線価方式で評価します。路線価とは、道路に面する土地の1㎡あたりの価格のことです。

計算式は以下の通りです。

土地の評価額 = 路線価 × 画地補正率 × 地積

国税庁の路線価図・評価倍率表で、対象の土地が面する道路の路線価を確認できます。

ただし、「路線価×面積」だけでは正確な評価額になりません。土地の形状(不整形地、間口が狭い等)や接道状況により、画地補正率を適用する必要があります。

倍率方式(地方部)

路線価が設定されていない地方部の土地は、倍率方式で評価します。

計算式は以下の通りです。

土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

固定資産税評価額は、毎年4-6月に届く「固定資産税課税明細書」で確認できます。倍率は国税庁の評価倍率表で調べられます。

路線価図の見方

路線価図では、道路に数字とアルファベットが記載されています。例えば「300D」と書かれている場合、路線価は300千円/㎡(30万円/㎡)、借地権割合はD(60%)を意味します。

路線価は公示地価の約80%に設定されているため、時価(実勢価格)とは異なる点に注意が必要です。

小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額

相続税の大幅な節税が可能な制度が、小規模宅地等の特例です。

国税庁の公式説明によると、一定の要件を満たす宅地は、相続税の課税価格を減額できます。

特例の種類と減額割合

宅地の種類 適用面積 減額割合
特定居住用宅地等(居住用) 330㎡まで 80%
特定事業用宅地等(事業用) 400㎡まで 80%
貸付事業用宅地等(賃貸) 200㎡まで 50%

特定居住用宅地等の適用要件

特定居住用宅地等(居住用)の特例を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 配偶者が相続する:無条件で適用可能
  • 同居親族が相続する:相続後も継続居住し、保有し続けること
  • 生計一親族が相続する:相続後も継続居住すること

別居親族は、原則として適用対象外です(一部例外あり)。

適用例:評価額が5分の1に

具体例で節税効果を見てみましょう。

  • 評価額:5,000万円
  • 適用面積:330㎡(全面積)
  • 減額割合:80%

減額後の評価額 = 5,000万円 × (1 - 0.8) = 1,000万円

評価額が5分の1になり、大幅な節税効果が得られます。

相続税の計算方法と基礎控除

土地の評価額が分かったら、相続税の計算に進みます。

基礎控除の計算

国税庁によると、相続税には基礎控除があり、以下の計算式で算出します。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例:法定相続人が3人の場合

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円

遺産総額が基礎控除以下なら、相続税はかかりません。

相続税の計算手順

相続税は以下の手順で計算します。

  1. 遺産総額を算出:土地、預貯金、株式等の評価額を合計
  2. 基礎控除を差し引く:課税遺産総額 = 遺産総額 - 基礎控除
  3. 法定相続分で按分:課税遺産総額を法定相続分で分割
  4. 税率を適用:各相続人の取得金額に累進税率(10%〜55%)を適用
  5. 相続税の総額を算出:各相続人の税額を合計
  6. 実際の相続割合で按分:総額を実際の相続割合で分割

注意点:相続放棄した人もカウント

法定相続人数には、相続放棄した人も含めます。また、養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

相続税の申告期限と延納・物納制度

申告期限は10ヶ月以内

国税庁によると、相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

期限が土曜日・日曜日・祝日の場合は、その翌平日が期限となります。

期限を過ぎると、無申告加算税(15%〜20%)と延滞税が課され、小規模宅地等の特例も適用できなくなるため、注意が必要です。

延納・物納制度

金銭で一括納付が困難な場合、以下の制度を利用できます。

延納

  • 相続税額が10万円超で、金銭納付が困難な場合
  • 担保を提供して年払いで納付
  • 申請期限は申告書提出期限(10ヶ月)まで

物納

  • 延納でも納付が困難な場合
  • 相続した財産そのもので納付
  • 申請期限は申告書提出期限(10ヶ月)まで

いずれも、税務署への事前相談と申請が必要です。

相続登記の義務化(2024年4月施行)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記手続きが必要で、違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続税の申告と合わせて、法務局での登記手続きも忘れずに行いましょう。

まとめ:相続税の計算は複雑、税理士への相談を推奨

土地の相続税は、路線価方式または倍率方式で評価額を調べ、基礎控除を差し引いて計算します。小規模宅地等の特例を使えば、評価額を最大80%減額でき、大幅な節税が可能です。

申告期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内で、延納・物納制度も活用できます。また、2024年4月からは相続登記も義務化されているため、期限内の手続きが必要です。

個別具体的な税額計算や節税対策は、税理士法で税理士の独占業務と定められています。詳細は税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1相続税がかからないのはいくらまでですか?

A1基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下なら相続税はかかりません。例えば、法定相続人が3人の場合、4,800万円までは非課税です。さらに小規模宅地等の特例を使えば、居住用土地の評価額を最大80%減額できるため、実質的な非課税枠を大きく広げることができます。

Q2小規模宅地等の特例は誰でも使えますか?

A2適用要件があります。特定居住用宅地等の場合、配偶者が相続する、同居親族が相続後も継続居住する、生計一親族が相続する等の要件を満たす必要があります。別居親族は原則として適用対象外です。詳細は税理士にご相談ください。

Q3相続税の申告期限を過ぎたらどうなりますか?

A3無申告加算税(15%〜20%)と延滞税が課されます。また、小規模宅地等の特例等の優遇措置も適用できなくなります。期限内に申告できない場合は、税務署に相談し、延納・物納の申請を検討してください。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

Q4路線価が公示地価の80%なのはなぜですか?

A4相続税評価は課税目的のため、時価(公示地価)の80%程度に抑えられています。これは納税者の負担を軽減し、短期的な地価変動の影響を緩和するための調整です。路線価から実勢価格を逆算する場合は、路線価÷0.8で推計できますが、あくまで目安であり、実際の売買価格とは異なる場合があります。

Q5相続した土地を売却する場合、相続税は控除できますか?

A5相続税の取得費加算の特例を使えます。相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、支払った相続税のうち売却した財産に対応する金額を取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できます。売却を検討する場合は、この期限を意識してタイミングを計画することが重要です。