土地の相続税とは?評価額の調べ方と計算の流れ
親族から土地を相続した、または相続予定の方にとって、「相続税はいくらかかるのか」という不安は大きいものです。
この記事では、土地の相続税の計算方法、評価額の調べ方、節税対策まで、国税庁や国土交通省の公式情報を元に解説します。
相続税の基礎控除や小規模宅地等の特例を理解することで、適正な相続税額を把握し、無駄な不安を解消できます。
この記事のポイント
- 土地の相続税は「評価額−基礎控除」で決まり、基礎控除以下なら課税されない
- 土地の評価方法は路線価方式と倍率方式の2種類があり、国税庁のサイトで調べられる
- 小規模宅地等の特例を使えば、居住用土地の評価額を最大80%減額できる
- 相続税の申告期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内で、延納・物納制度もある
- 相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に手続きが必要
土地の評価方法:路線価方式と倍率方式
土地の相続税を計算するには、まず土地の評価額を調べる必要があります。国税庁では、2つの評価方法を定めています。
路線価方式(市街地)
市街地の土地は、路線価方式で評価します。路線価とは、道路に面する土地の1㎡あたりの価格のことです。
計算式は以下の通りです。
土地の評価額 = 路線価 × 画地補正率 × 地積
国税庁の路線価図・評価倍率表で、対象の土地が面する道路の路線価を確認できます。
ただし、「路線価×面積」だけでは正確な評価額になりません。土地の形状(不整形地、間口が狭い等)や接道状況により、画地補正率を適用する必要があります。
倍率方式(地方部)
路線価が設定されていない地方部の土地は、倍率方式で評価します。
計算式は以下の通りです。
土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
固定資産税評価額は、毎年4-6月に届く「固定資産税課税明細書」で確認できます。倍率は国税庁の評価倍率表で調べられます。
路線価図の見方
路線価図では、道路に数字とアルファベットが記載されています。例えば「300D」と書かれている場合、路線価は300千円/㎡(30万円/㎡)、借地権割合はD(60%)を意味します。
路線価は公示地価の約80%に設定されているため、時価(実勢価格)とは異なる点に注意が必要です。
小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額
相続税の大幅な節税が可能な制度が、小規模宅地等の特例です。
国税庁の公式説明によると、一定の要件を満たす宅地は、相続税の課税価格を減額できます。
特例の種類と減額割合
| 宅地の種類 | 適用面積 | 減額割合 | 
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(居住用) | 330㎡まで | 80% | 
| 特定事業用宅地等(事業用) | 400㎡まで | 80% | 
| 貸付事業用宅地等(賃貸) | 200㎡まで | 50% | 
特定居住用宅地等の適用要件
特定居住用宅地等(居住用)の特例を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 配偶者が相続する:無条件で適用可能
- 同居親族が相続する:相続後も継続居住し、保有し続けること
- 生計一親族が相続する:相続後も継続居住すること
別居親族は、原則として適用対象外です(一部例外あり)。
適用例:評価額が5分の1に
具体例で節税効果を見てみましょう。
- 評価額:5,000万円
- 適用面積:330㎡(全面積)
- 減額割合:80%
減額後の評価額 = 5,000万円 × (1 - 0.8) = 1,000万円
評価額が5分の1になり、大幅な節税効果が得られます。
相続税の計算方法と基礎控除
土地の評価額が分かったら、相続税の計算に進みます。
基礎控除の計算
国税庁によると、相続税には基礎控除があり、以下の計算式で算出します。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
例:法定相続人が3人の場合
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
遺産総額が基礎控除以下なら、相続税はかかりません。
相続税の計算手順
相続税は以下の手順で計算します。
- 遺産総額を算出:土地、預貯金、株式等の評価額を合計
- 基礎控除を差し引く:課税遺産総額 = 遺産総額 - 基礎控除
- 法定相続分で按分:課税遺産総額を法定相続分で分割
- 税率を適用:各相続人の取得金額に累進税率(10%〜55%)を適用
- 相続税の総額を算出:各相続人の税額を合計
- 実際の相続割合で按分:総額を実際の相続割合で分割
注意点:相続放棄した人もカウント
法定相続人数には、相続放棄した人も含めます。また、養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
相続税の申告期限と延納・物納制度
申告期限は10ヶ月以内
国税庁によると、相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
期限が土曜日・日曜日・祝日の場合は、その翌平日が期限となります。
期限を過ぎると、無申告加算税(15%〜20%)と延滞税が課され、小規模宅地等の特例も適用できなくなるため、注意が必要です。
延納・物納制度
金銭で一括納付が困難な場合、以下の制度を利用できます。
延納
- 相続税額が10万円超で、金銭納付が困難な場合
- 担保を提供して年払いで納付
- 申請期限は申告書提出期限(10ヶ月)まで
物納
- 延納でも納付が困難な場合
- 相続した財産そのもので納付
- 申請期限は申告書提出期限(10ヶ月)まで
いずれも、税務署への事前相談と申請が必要です。
相続登記の義務化(2024年4月施行)
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記手続きが必要で、違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続税の申告と合わせて、法務局での登記手続きも忘れずに行いましょう。
まとめ:相続税の計算は複雑、税理士への相談を推奨
土地の相続税は、路線価方式または倍率方式で評価額を調べ、基礎控除を差し引いて計算します。小規模宅地等の特例を使えば、評価額を最大80%減額でき、大幅な節税が可能です。
申告期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内で、延納・物納制度も活用できます。また、2024年4月からは相続登記も義務化されているため、期限内の手続きが必要です。
個別具体的な税額計算や節税対策は、税理士法で税理士の独占業務と定められています。詳細は税理士に相談することをおすすめします。
