土地の相続税はいくら?計算方法と評価額の調べ方を解説

公開日: 2025/10/27

土地の相続税はいくらかかる?まずは基礎控除を確認

親や親族から土地を相続する際、「相続税がいくらかかるのか」「自分の場合は申告が必要なのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地の相続税の計算方法、評価額の調べ方、節税対策を、国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて土地を相続する方でも、必要な手続きと税額の目安を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 相続税は基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えた部分に課税される
  • 法定相続人が配偶者と子2人なら基礎控除は4,800万円で、これ以下なら相続税はかからない
  • 土地の評価額は路線価方式または倍率方式で算定する
  • 小規模宅地等の特例で自宅敷地は330㎡まで80%減額できる可能性がある
  • 申告期限は相続開始から10ヶ月以内で、遅れると延滞税・加算税が発生する

土地の相続税:基礎控除と税率

基礎控除額の計算

相続税は、相続財産の合計額が基礎控除額を超えた部分に課税されます。基礎控除額は以下の計算式で算出されます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

法定相続人の例と基礎控除額:

法定相続人の構成 基礎控除額
配偶者のみ 3,600万円
配偶者と子1人 4,200万円
配偶者と子2人 4,800万円
配偶者と子3人 5,400万円
子2人のみ(配偶者なし) 4,200万円

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除額は4,800万円です。相続財産の合計がこれ以下であれば、相続税は課税されず、申告も不要です。

多くの方が非課税: 国税庁のデータによると、実際に相続税が課税されるのは相続全体の約8%程度です。基礎控除により、大半の方は相続税を支払う必要がありません。

相続税の税率(10%~55%の累進課税)

基礎控除を超えた部分には、10%~55%の累進課税が適用されます。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(出典: 国税庁

土地の評価方法:路線価方式と倍率方式

路線価方式(国税庁の路線価図で確認)

路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する「路線価」を使って土地を評価する方法です。路線価が定められている地域(主に市街地)で使用されます。

計算式:

土地の評価額 = 路線価 × 土地面積(㎡)

路線価は、道路に面する土地1㎡あたりの評価額で、千円単位で表示されます。公示地価の約80%が目安です。

路線価図の見方:

  • 国税庁の路線価図で全国の路線価を確認できます
  • 道路に書かれた数字が路線価(千円単位)です
  • 例:「300D」と記載されている場合、路線価は300千円/㎡(30万円/㎡)
  • アルファベット(A~G)は借地権割合を示します(相続では通常使用しません)

計算例:

路線価が30万円/㎡、土地面積が150㎡の場合:

30万円/㎡ × 150㎡ = 4,500万円

倍率方式(路線価がない地域)

倍率方式は、路線価が定められていない地域(主に郊外・農村部)で使用される評価方法です。

計算式:

土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

固定資産税評価額は、市町村から毎年送付される固定資産税納税通知書で確認できます。倍率は、国税庁の「評価倍率表」で地域ごとに定められています。

計算例:

固定資産税評価額が2,000万円、倍率が1.1倍の場合:

2,000万円 × 1.1 = 2,200万円

倍率は国税庁の財産評価基準書で確認できます。路線価図と同じサイトで「評価倍率表」を選択してください。

路線価図の見方(千円単位、借地権割合の記号)

路線価図を実際に見る手順:

  1. 国税庁の路線価図にアクセス
  2. 該当する都道府県・市区町村を選択
  3. 対象の土地がある地域の地図を表示
  4. 道路に記載された数字(千円単位)を確認

注意点:

  • 路線価は毎年7月1日に更新されます(相続開始年の路線価を使用)
  • 角地や不整形地の場合は補正率を適用する必要があり、専門知識が必要です
  • 自分で正確に計算するのが難しい場合は、税理士に相談することをおすすめします

小規模宅地等の特例:最大80%減額の大幅節税

特定居住用宅地等(自宅敷地330㎡まで80%減額)

小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅や事業用地を相続した場合、一定面積まで評価額を大幅に減額できる制度です。

特定居住用宅地等(自宅):

  • 減額率:80%
  • 適用面積:330㎡まで
  • 要件:配偶者または同居親族が相続し、居住を継続すること

計算例:

評価額5,000万円の自宅敷地(200㎡)を配偶者が相続する場合:

5,000万円 × (1 - 80%) = 1,000万円

評価額が4,000万円減額され、大幅な節税効果があります。

特定事業用宅地等(事業用地400㎡まで80%減額)

被相続人が事業(不動産貸付業を除く)を行っていた宅地を相続した場合も、80%減額が適用される可能性があります。

  • 減額率:80%
  • 適用面積:400㎡まで
  • 要件:事業を相続税申告期限まで継続し、宅地を保有すること

貸付事業用宅地等(賃貸用地200㎡まで50%減額)

賃貸アパート等の貸付事業用の宅地は、50%減額が適用される可能性があります。

  • 減額率:50%
  • 適用面積:200㎡まで
  • 要件:貸付事業を相続税申告期限まで継続し、宅地を保有すること

適用要件と注意点

小規模宅地等の特例の適用には、以下の重要な注意点があります。

適用要件(特定居住用宅地等の場合):

  • 配偶者が相続する場合:無条件で適用
  • 同居親族が相続する場合:相続開始前から申告期限まで居住・所有を継続すること
  • 別居の子が相続する場合(家なき子特例):相続開始前3年以内に持ち家に居住していないこと等の厳格な要件を満たす必要がある

重要な注意点:

  • 小規模宅地等の特例を適用する場合、基礎控除以下であっても相続税の申告が必須です
  • 申告しないと特例が適用されず、相続税が課税される可能性があります
  • 申告期限は相続開始から10ヶ月以内です

(出典: 国税庁

相続税の計算方法:具体例で理解する

ステップ1: 土地の評価額を算定

まず、路線価方式または倍率方式で土地の評価額を算定します。

: 路線価30万円/㎡、土地面積200㎡の自宅敷地

30万円/㎡ × 200㎡ = 6,000万円

ステップ2: 小規模宅地等の特例を適用

配偶者が相続し、特定居住用宅地等の特例(80%減額)を適用します。

6,000万円 × (1 - 80%) = 1,200万円

ステップ3: 基礎控除額を差し引く

法定相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除額は4,800万円です。

他に預貯金等の財産が3,000万円あると仮定すると、相続財産の合計は:

1,200万円(土地) + 3,000万円(預貯金等) = 4,200万円

基礎控除額4,800万円 > 相続財産4,200万円のため、相続税は課税されません。

ただし、小規模宅地等の特例を適用する場合は、基礎控除以下でも申告が必須です。

ステップ4: 法定相続分で按分し税率を適用(課税される場合)

仮に相続財産の合計が6,000万円で基礎控除を超える場合の計算例を示します。

課税遺産総額 = 6,000万円 - 4,800万円(基礎控除) = 1,200万円

法定相続分で按分:

  • 配偶者(1/2): 600万円 → 税率10% → 60万円
  • 子1(1/4): 300万円 → 税率10% → 30万円
  • 子2(1/4): 300万円 → 税率10% → 30万円

相続税の総額 = 60万円 + 30万円 + 30万円 = 120万円

これを実際の相続割合で再按分し、各相続人の納税額を決定します。配偶者は配偶者控除(最低1億6,000万円まで非課税)により、実際の納税額はゼロになる場合が多いです。

相続税の申告期限と納税方法

申告期限(相続開始から10ヶ月以内)

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

例えば、2025年4月15日に被相続人が亡くなった場合、申告期限は2026年2月15日となります。

申告が必要なケース:

  • 相続財産の合計が基礎控除を超える場合
  • 基礎控除以下でも、小規模宅地等の特例や配偶者控除を適用する場合

延滞税・加算税のリスク

申告期限を過ぎると、以下のペナルティが課される可能性があります。

ペナルティの種類 税率・内容
延滞税 年7.3%~14.6%(期限後の経過期間により異なる)
無申告加算税 本税の15%~20%(税務調査前の自主申告なら5%)
過少申告加算税 本税の10%~15%(申告額が過少だった場合)
重加算税 本税の35%~40%(故意の隠蔽・仮装があった場合)

(出典: 国税庁

申告期限を守ることが、余計な税負担を避けるために重要です。

延納・物納制度

相続税を一括で納付することが困難な場合、延納(年賦払い)または物納(土地等で納税)を利用できる可能性があります。

延納:

  • 5年~20年の分割払いが可能(相続財産に不動産が多い場合は最長20年)
  • 利子税が年0.8%~5.4%程度かかります
  • 担保の提供が必要な場合があります

物納:

  • 延納でも納付が困難な場合に限り、土地等の財産で納税できます
  • 物納する財産の種類・順位が定められており、要件が厳格です
  • 管理処分不適格財産(境界未確定、法令違反の建物がある等)は物納できません

延納・物納を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ:土地の相続税は専門家に相談を

土地の相続税は、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば非課税です。法定相続人が配偶者と子2人なら基礎控除は4,800万円で、多くの方が相続税を支払う必要はありません。

土地の評価額は、路線価方式(路線価×土地面積)または倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で算定します。国税庁の路線価図で評価額を調べることができます。

小規模宅地等の特例を適用すれば、自宅敷地は330㎡まで80%減額できる可能性があります。ただし、適用には厳格な要件があり、基礎控除以下でも申告が必須です。

申告期限は相続開始から10ヶ月以内で、遅れると延滞税・加算税が課される可能性があります。一括納付が困難な場合は、延納や物納の制度もあります。

個別の財産状況により最適な対応が異なるため、税理士に相談しながら適切な手続きを進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1路線価と固定資産税評価額の違いは何ですか?

A1路線価は国税庁が毎年7月に公表する、相続税・贈与税の計算に使用する評価額で、公示地価の約80%が目安です。一方、固定資産税評価額は市町村が決定し、固定資産税の計算に使用する評価額で、公示地価の約70%が目安です。どちらも土地の価値を示しますが、用途と算出元が異なります。相続税の計算では路線価(または固定資産税評価額×倍率)を使用します。

Q2小規模宅地等の特例は誰が相続しても適用できますか?

A2配偶者が相続する場合は無条件で適用できますが、それ以外の場合は要件があります。同居親族が相続する場合は、相続開始前から申告期限まで居住・所有を継続する必要があります。別居の子が相続する場合は、「家なき子特例」の要件(相続開始前3年以内に持ち家に居住していない等)を満たす必要があり、ハードルが高くなります。適用要件の詳細は税理士に確認することをおすすめします。

Q3相続税の申告は自分でもできますか?

A3単純なケース(財産が預貯金のみ等)であれば自分で申告することも可能ですが、土地の評価や小規模宅地等の特例の適用は専門知識が必要です。評価誤りで過少申告すると、税務調査で加算税が課される可能性があります。特に土地の評価額が大きい場合や複数の相続人がいる場合は、税理士への依頼を強くおすすめします。税理士報酬は相続財産の0.5~1%程度が目安です。

Q4相続放棄をすれば相続税はかかりませんか?

A4相続放棄をすれば相続税はかかりません。ただし、相続放棄は全ての財産(預貯金、不動産等)を放棄することになり、一度放棄すると撤回できません。負債が多い場合や相続トラブルを避けたい場合に検討されますが、慎重な判断が必要です。相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。迷う場合は弁護士に相談することをおすすめします。