土地の相続税はいくら?計算方法と節税対策

公開日: 2025/10/26

土地の相続税とは?基礎控除で非課税になるケースも多い

親の土地を相続する際、「相続税がいくらかかるのか」「税金で破産しないか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地の相続税がどのように計算されるか、基礎控除の仕組み、小規模宅地等の特例による大幅な節税方法を、国税庁の公式情報を元に解説します。

多くの相続は基礎控除の範囲内で非課税になること、適切な対策で相続税を大幅に抑えられることが分かります。

この記事のポイント

  • 相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」で、多くの相続は非課税
  • 土地の評価額は路線価方式または倍率方式で計算され、時価の約70-80%
  • 小規模宅地等の特例を使えば、居住用土地は330㎡まで評価額が80%減額される
  • 相続税の申告期限は被相続人の死亡から10ヶ月以内で、期限を過ぎると特例が使えなくなる
  • 早めに税理士に相談することで、適切な節税対策が可能

相続税の基礎控除で非課税になるケース

相続税は、遺産総額が基礎控除額を超えた場合にのみ課税されます。基礎控除額は以下の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例えば、相続人が配偶者と子2人の計3人の場合、基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3人)となります。遺産総額がこの金額以下であれば、相続税は一切かかりません。

国税庁によると、平成27年の税制改正で基礎控除額が大幅に引き下げられましたが、2025年時点でも多くの相続は非課税の範囲内に収まっています。

法定相続人の数え方

法定相続人は民法で定められた相続人で、以下のルールで決まります。

  • 配偶者: 常に相続人となる
  • 第一順位(子): 子がいる場合は子が相続人
  • 第二順位(父母): 子がいない場合は父母が相続人
  • 第三順位(兄弟姉妹): 子も父母もいない場合は兄弟姉妹が相続人

養子も法定相続人にカウントできますが、基礎控除の計算では実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなります。

土地の評価額を計算する2つの方法

土地の相続税評価額は、国税庁が定める「路線価方式」または「倍率方式」で計算します。

路線価方式(市街地の土地)

路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する路線価(道路に面する土地の1㎡あたりの価格)を使って評価する方法です。主に都市部で使用されます。

計算式: 路線価 × 面積 × 補正率

例えば、路線価が20万円/㎡、面積が200㎡、補正率が1.0の場合、評価額は4000万円(20万円×200㎡×1.0)となります。

補正率は、土地の形状(奥行き、間口、不整形地等)に応じて調整されます。複雑な形状の土地は評価額が下がることがあります。

倍率方式(郊外・農地)

倍率方式は、路線価が設定されていない地域で使用される方法です。固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じて評価します。

計算式: 固定資産税評価額 × 評価倍率

例えば、固定資産税評価額が1000万円、評価倍率が1.1の場合、相続税評価額は1100万円(1000万円×1.1)となります。

路線価・評価倍率の調べ方

路線価・評価倍率は、国税庁の財産評価基準書で調べることができます。住所を入力すれば、該当する路線価や評価倍率が確認できます。

一般的に、路線価は時価の約80%、固定資産税評価額は時価の約70%に設定されていますが、あくまで目安であり、実際の評価額は地域や土地の形状により大きく異なる場合があります。

小規模宅地等の特例で最大80%減額

小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅や事業用の土地を相続する際、一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額できる制度です。

国税庁によると、特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額されます。

特定居住用宅地等の要件

特定居住用宅地等(被相続人の自宅の土地)で80%減額を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 配偶者が取得: 配偶者が取得する場合は無条件で適用
  • 同居親族が取得: 相続開始前から同居し、相続後も引き続き居住・保有
  • 家なき子が取得: 持ち家のない親族(一定の要件を満たす場合)が取得し、相続後も保有

「家なき子」の詳細要件は複雑であり、税理士に相談することをおすすめします。

減額の具体例

路線価方式で評価額が6000万円の居住用土地(200㎡)を相続する場合、小規模宅地等の特例を適用すると以下のようになります。

減額後の評価額 = 6000万円 × (1 - 0.8) = 1200万円

評価額が4800万円減少するため、相続税の負担も大幅に軽減されます。

ただし、要件を満たさない場合は特例が適用されず、減額できません。「必ず80%減額できる」わけではない点に注意が必要です。

土地の相続税額を計算する手順

相続税の計算は以下の3ステップで行います。

ステップ1: 課税遺産総額の算出

遺産総額(土地評価額+その他財産)から基礎控除額を差し引きます。

課税遺産総額 = 遺産総額 - 基礎控除額

例: 遺産総額8000万円、相続人3人の場合

  • 基礎控除額: 3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円
  • 課税遺産総額: 8000万円 - 4800万円 = 3200万円

ステップ2: 相続税の総額の計算

課税遺産総額を法定相続分で分割し、各人に税率を適用して相続税の総額を算出します。

相続税の税率は以下の通りです(国税庁)。

課税価格 税率 控除額
1000万円以下 10% -
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

ステップ3: 各相続人の納税額

相続税の総額を実際の取得割合で按分し、各相続人の納税額を決定します。配偶者は配偶者控除(1億6000万円または法定相続分のいずれか大きい額まで非課税)が適用されます。

個別具体的な相続税額の試算は税理士法の規制対象のため、実際の計算は税理士に相談することをおすすめします。

土地の相続税を節税する3つの対策

相続税を抑えるには、以下の3つの対策が有効です。

1. 小規模宅地等の特例を活用

前述の通り、要件を満たせば居住用土地は330㎡まで80%減額されます。適用要件を事前に確認し、確実に特例を受けられるようにしましょう。

2. 生前贈与で早めに対策

生前贈与を活用すれば、遺産総額を圧縮できます。暦年贈与(年110万円まで非課税)や相続時精算課税制度(2500万円まで非課税、相続時に合算)が利用できます。

ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早めの対策が重要です。

3. 賃貸経営で評価額を下げる

土地を賃貸アパート・マンション経営に活用すると、「貸家建付地」として評価額が約20%減額されます。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

ただし、賃貸経営にはリスクが伴うため、収益性や空室リスクを十分に検討する必要があります。

いずれの対策も要件や手続きが複雑で、専門家への相談が必須です。「必ず節税できる」わけではない点に留意してください。

まとめ:土地の相続税は早めの対策が重要

土地の相続税は、基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)により多くの相続は非課税となります。ただし、土地の評価額が高い場合は相続税が発生する可能性があります。

小規模宅地等の特例や生前贈与を活用すれば、大幅に節税できるケースもありますが、要件が複雑で専門知識が必要です。

相続税の申告期限は被相続人の死亡から10ヶ月以内で、期限を過ぎると延滞税や特例不適用のリスクがあります。早めに税理士や相続専門家に相談し、適切な対策を講じることをおすすめします。

よくある質問

Q1相続税の申告期限はいつまでですか?

A1相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると延滞税・無申告加算税が課され、小規模宅地等の特例が使えなくなります。申告が必要かどうか判断に迷う場合でも、早めに税理士に相談することをおすすめします。

Q2路線価と固定資産税評価額はどう違いますか?

A2路線価は相続税・贈与税の計算に使用され、時価の約80%に設定されています。固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用され、時価の約70%に設定されています。土地の相続税評価では、路線価方式(路線価×面積×補正率)または倍率方式(固定資産税評価額×倍率)のいずれかで計算します。評価方法は国税庁の財産評価基準書で確認できます。

Q3相続税がかからない場合でも申告は必要ですか?

A3遺産総額が基礎控除以下であれば、申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例を使う場合は、特例適用後に相続税が0円になったとしても申告が必須です。申告を怠ると特例が適用されず、相続税が課される可能性があります。申告漏れを防ぐため、税理士に相談することをおすすめします。

Q4土地を売却して相続税を支払うことはできますか?

A4可能ですが、土地の売却には時間がかかり、申告期限(10ヶ月)に間に合わない可能性があります。現金納付が難しい場合、延納(分割払い)や物納(土地で納税)の制度を利用できます。ただし、延納には利子税が発生し、物納には厳格な要件があります。事前に税理士に相談し、納税資金の準備計画を立てることが重要です。