土地情報総合システム(不動産情報ライブラリ)とは?基本を理解しよう
「土地の相場を調べたいけど、どこで信頼できる情報を見つければいいのかわからない」と悩んでいませんか。
この記事では、国土交通省が提供する無料の不動産取引価格情報サイト「不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)」の使い方、検索結果の見方、データの特性と活用法を解説します。
公的機関の実際の取引価格データを参考に、信頼性の高い相場情報を自分で調べられるようになります。
この記事のポイント
- 不動産情報ライブラリは国土交通省が提供する無料の不動産取引価格検索サイト(547万件のデータを公開)
- 2024年4月に土地総合情報システムから名称変更し、WebGIS化で防災・都市計画情報も重ね合わせ表示可能に
- 検索は地図上で地域を選択し、時期・種類を指定することで実際の取引価格を確認できる
- データはアンケート回答ベース(回収率30-40%程度)のため全取引を網羅していない点に注意
- 地価公示・路線価と併用することで、より正確な相場判断が可能になる
国土交通省が提供する無料の不動産取引価格情報サイト
不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)は、国土交通省が運営する公式の不動産取引価格情報サイトです。2006年4月に開始された「不動産取引価格情報提供制度」により、実際に不動産を購入した方へのアンケート調査を通じて、約547万件の取引価格データを蓄積・公開しています。
このシステムの最大の特徴は、無料で誰でも利用でき、会員登録も不要という点です。土地、中古マンション、中古戸建て等の実際の取引価格を地域別・時期別に検索できるため、不動産の相場感を掴む際の有力な情報源となります。
ただし、データの収集方法がアンケート回答ベース(回収率30-40%程度)であるため、全ての不動産取引が掲載されているわけではありません。また、個人情報保護のため、町字単位での表示となり、詳細な地番レベルでの検索はできない点に注意が必要です。
2024年4月に「不動産情報ライブラリ」へ名称変更
2024年4月、国土交通省の発表により、「土地総合情報システム」は「不動産情報ライブラリ」へと名称変更されました。同時に、システムも大幅にアップデートされ、WebGIS(地理情報システム)化によって以下の新機能が追加されました。
- 地図上で取引価格情報を視覚的に表示
- 防災情報(ハザードマップ等)の重ね合わせ表示
- 都市計画情報(用途地域等)の重ね合わせ表示
- REINS(不動産流通機構)情報の統合表示(個人情報マスキング済み)
これにより、不動産の取引価格だけでなく、周辺の防災リスクや用途地域といった多角的な情報を一元的に確認できるようになりました。
旧システムを利用していた方は、検索時に「土地総合情報システム」と「不動産情報ライブラリ」の両方の名称で見つけられるよう、名称変更の経緯を理解しておくとよいでしょう。
547万件の実際の取引価格データを公開
不動産情報ライブラリが提供するデータは、2005年以降に実際に行われた不動産取引のアンケート回答を基にしています。国土交通省の制度説明によると、これまでに蓄積された取引データは約547万件にのぼり、四半期ごとに最新の取引情報が追加されています。
データに含まれる主な情報は以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 所在地 | 都道府県・市区町村・町字レベルまで(地番は非表示) | 
| 取引価格 | 実際の成約価格 | 
| 面積 | ㎡単位で表示 | 
| ㎡単価 | 取引価格÷面積で算出 | 
| 用途地域 | 都市計画法で定められた地域区分 | 
| 取引時期 | 四半期単位で表示 | 
| その他 | 前面道路幅員、最寄駅からの距離、建物構造・築年等 | 
(出典: 国土交通省)
これらの情報を組み合わせることで、エリアの相場感を具体的に把握できます。
不動産情報ライブラリの具体的な使い方(手順解説)
不動産情報ライブラリの使い方は、以下の4ステップで進めます。初めての方でも迷わず検索できるよう、画面イメージに沿って解説します。
ステップ1:トップページから「取引価格」を選択
不動産情報ライブラリのトップページにアクセスすると、画面上部に複数のタブが表示されます。この中から「取引価格」タブをクリックします。
ステップ2:地図上で地域を選択または住所検索
地図が表示されたら、以下の2つの方法で検索地域を指定できます。
- 地図上で直接選択: マウスで地図を移動・拡大し、調べたいエリアを表示
- 住所検索: 画面右上の検索窓に都道府県・市区町村名を入力して検索
地図は拡大・縮小が自由にでき、広域の相場を比較したい場合は縮小表示、特定エリアを詳しく調べたい場合は拡大表示を使い分けるとよいでしょう。
ステップ3:時期・種類を指定して検索
地域を選択したら、以下の条件を指定します。
- 取引時期: 2005年以降の四半期単位で選択(例:2024年第2四半期)
- 種類: 宅地、中古マンション等、中古戸建て、農地、林地から選択
最新データは約3ヶ月遅れで公開されるため、直近の取引を調べる際は公開時期に注意してください。
ステップ4:地図上の青い丸をクリックして詳細表示
検索を実行すると、地図上に青い丸(取引地点)が表示されます。気になる地点の青い丸をクリックすると、取引価格、面積、㎡単価、用途地域等の詳細情報がポップアップで表示されます。
複数の地点をクリックして比較することで、同じエリア内でも立地条件や時期によって価格が変動する傾向を把握できます。
検索結果の見方:項目の意味と読み取りポイント
検索結果には多くの項目が表示されますが、特に重要なものを以下に解説します。
所在地・取引価格・面積・㎡単価の見方
- 所在地: 個人情報保護のため、地番は非表示で町字レベルまでの表示となります。特定の物件を調べることはできませんが、周辺エリアの相場把握には十分です。
- 取引価格: 実際に成約した価格が表示されます。ただし、アンケート回答時の記載内容であり、個別の値引き交渉や特殊事情は反映されていない場合があります。
- 面積: ㎡単位で表示されます。坪に換算したい場合は、面積を3.3で割ることで概算できます。
- ㎡単価: 取引価格を面積で割った1㎡あたりの価格です。立地条件(駅からの距離、前面道路の幅員等)により、同じエリアでも大きく変動します。
複数の取引事例の㎡単価を比較することで、エリアの価格帯の幅を把握できます。極端に安い物件は、何らかの条件(接道不良、地盤軟弱等)がある可能性に注意してください。
用途地域・建ぺい率・容積率の意味
- 用途地域: 都市計画法で定められた13種類の地域区分(住居系・商業系・工業系)を示します。用途地域により、建築できる建物の種類や建ぺい率・容積率の上限が異なります。
- 建ぺい率: 敷地面積に対する建築面積の割合の上限です。例えば、建ぺい率60%の場合、100㎡の土地には最大60㎡までの建物を建てられます。
- 容積率: 敷地面積に対する延床面積の割合の上限です。容積率200%の場合、100㎡の土地に延床面積200㎡(2階建て相当)までの建物を建てられます。
これらの情報は、購入後にどのような建物を建てられるかを判断する重要な指標となります。
前面道路・最寄駅からの距離等のその他項目
- 前面道路幅員: 土地に接する道路の幅です。建築基準法では、幅員4m以上の道路に2m以上接することが建築の条件(接道義務)となります。
- 最寄駅からの距離: 徒歩分数または距離(m)で表示されます。一般的に駅から近いほど㎡単価は高くなる傾向があります。
- 建物構造・築年: 中古マンションや中古戸建ての場合、建物の構造(木造・RC造等)や築年数も表示されます。
これらの詳細情報を総合的に見ることで、価格の妥当性を判断しやすくなります。
データの特性と限界:アンケート回答ベースの注意点
不動産情報ライブラリのデータは、国土交通省の制度説明にあるように、アンケート回答に基づいています。回収率は30-40%程度のため、全ての不動産取引が掲載されているわけではありません。
以下の点に注意してデータを活用してください。
- 母数の限界: アンケート未回答の取引は掲載されないため、特に地方や取引件数が少ないエリアではデータが不足している場合があります。
- 町字単位の表示: 個人情報保護のため、地番レベルでの検索はできません。「この物件の正確な価格」を調べることはできず、あくまで「周辺エリアの相場感」を掴むツールです。
- タイムラグ: 最新データは約3ヶ月遅れで公開されるため、急激に相場が変動している時期には、直近の市場動向と乖離している可能性があります。
- 個別事情の反映なし: 急ぎの売却、親族間取引、リフォーム済み等の特殊事情は反映されていないため、取引価格=適正価格ではありません。
これらの限界を理解した上で、複数の情報源(地価公示、路線価、不動産会社の査定等)と併用することが推奨されます。
地価公示・路線価との違いと使い分け
不動産の相場を調べる際、「地価公示」「路線価」「実際の取引価格」の3つの情報があります。それぞれの違いを理解し、使い分けることで、より正確な相場判断が可能になります。
地価公示:毎年1月1日時点の更地評価額(3月公表)
地価公示は、国土交通省が毎年1月1日時点で評価し、3月に公表する標準地の更地価格です。全国約26,000地点の「標準地」を選定し、不動産鑑定士が評価します。
地価公示の特徴は以下の通りです。
- 公的な土地評価の指標: 土地取引の指標、公共事業用地の取得価格算定の基準となります。
- 更地の評価: 建物の影響を除いた更地の価格であるため、実際の取引価格(建物付き等)とは異なります。
- 標準地の評価: 代表的な地点のみの評価であり、個別の土地の価格ではありません。
路線価:相続税評価額、地価公示の80%水準(7月公表)
路線価は、国税庁が毎年7月に公表する相続税・贈与税計算のための評価額です。道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価格として設定され、地価公示の約80%水準が目安となります。
路線価の特徴は以下の通りです。
- 相続税・贈与税の計算用: 主に税金計算のために使用され、実際の取引価格とは異なります。
- 地価公示の80%水準: 一般的に、地価公示価格の80%程度の水準で設定されます。
- 道路ごとに設定: 道路に面した土地の評価額を示し、個別の土地は補正率を掛けて算出します。
取引価格情報との併用方法
不動産情報ライブラリの取引価格情報は、実際に成約した価格(建物付き含む)であり、地価公示や路線価とは性質が異なります。以下のように使い分けることが推奨されます。
| 情報源 | 目的 | 特徴 | 
|---|---|---|
| 不動産情報ライブラリ | 実際の相場把握 | 実際の成約価格、建物付き含む | 
| 地価公示 | 公的な土地評価の指標 | 更地の評価額、標準地のみ | 
| 路線価 | 相続税・贈与税計算 | 地価公示の約80%、道路ごとに設定 | 
(出典: SUUMO)
不動産情報ライブラリで実際の取引事例を確認し、地価公示・路線価で妥当性を検証することで、より信頼性の高い相場判断ができます。
相場判断への活用法:データをどう使うか
不動産情報ライブラリのデータを相場判断に活用する際は、以下の手順で進めるとよいでしょう。
- 周辺の取引事例を複数確認: 同じエリア・同じ時期の取引事例を5-10件程度確認し、㎡単価の幅を把握します。
- 条件の近い事例を比較: 面積、前面道路幅員、最寄駅からの距離等、条件が近い事例を重点的に比較します。
- 地価公示・路線価と照らし合わせ: 取引価格が地価公示の何倍か、路線価とどの程度乖離しているかを確認し、妥当性を検証します。
- 不動産会社の査定も併用: 個別の立地条件(道路付け、日当たり、地盤等)により価格は大きく変動するため、最終的には不動産会社の査定も併用することを推奨します。
相場より極端に安い物件は、接道不良、地盤軟弱、境界未確定等の何らかの問題がある可能性があります。必ず現地確認と役所調査を行い、リスクを把握した上で購入判断を行ってください。
まとめ:不動産情報ライブラリを活用して相場を把握しよう
不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)は、国土交通省が提供する無料の不動産取引価格情報サイトです。具体的な使い方をマスターし、検索結果の見方を理解すれば、周辺の相場感を自分で調べられるようになります。
データの限界(アンケート回答ベース、回収率30-40%、町字単位の表示)を理解し、地価公示・路線価や不動産会社の査定と併用することで、より正確な相場判断が可能になります。
不動産の購入や売却を検討する際は、信頼できる不動産会社に相談しながら、公的な情報源も活用して、納得のいく取引を進めましょう。
