土地査定シミュレーション|相場を自分で調べる方法と注意点

公開日: 2025/11/11

土地査定シミュレーションとは?優良物件にアクセスするための基礎知識

土地の売却を検討する際、「自分の土地はいくらで売れるのか」と不安に感じる方は少なくありません。不動産会社に査定を依頼する前に、自分でおおよその相場を知ることができれば、査定額が妥当かどうかを判断する基準になります。

土地査定シミュレーションは、公的データ(公示地価、路線価、実際の取引事例)を使って自分で概算価格を推定する方法です。この記事では、国土交通省の土地総合情報システム国税庁の路線価図を活用した具体的な手順と、オンライン査定サービスとの使い分けを解説します。

初めて土地査定を行う方でも、必要な資金計画を正確に立てられるようになります。

この記事のポイント

  • 土地査定シミュレーションは、公的データを使って自分で相場を把握する方法
  • 自分で調べるメリットは、不動産会社の査定額が妥当か判断できること
  • 具体的な手順は、①近隣の取引事例を検索、②路線価から時価を推定(路線価÷0.8)、③補正要素を考慮して調整
  • オンライン査定(AI査定)は即時・匿名だが、精度に限界がある
  • シミュレーション結果はあくまで目安で、実際の売却時は不動産会社の訪問査定が必須

土地査定シミュレーションの3つのメリット

自分で土地査定をシミュレーションすることには、以下の3つのメリットがあります。

①不動産会社の査定額が妥当か判断できる

不動産会社の査定額は、会社によって100万円以上の差が出る場合があります。自分で相場を把握しておくことで、「この査定額は高すぎる(または低すぎる)」と判断できるようになります。

②複数社の査定を比較する際の基準になる

複数の不動産会社に査定を依頼した際、自分で相場を知っていれば、どの査定が適正かを冷静に比較できます。

③営業圧力を感じずに情報収集できる

不動産会社に査定を依頼すると、営業電話やメールが頻繁に来る場合があります。自分でシミュレーションすることで、営業圧力を感じずに情報収集できます。

机上査定と訪問査定の違い

土地査定には大きく2つの方法があります。

査定方法 特徴 精度 所要時間
机上査定(シミュレーション) 現地訪問せず、公的データ・周辺事例から算出 中程度(実務上±10-20%のズレ) 即日
訪問査定 不動産会社が現地を訪問し、土地の状態を確認 高精度 数日〜1週間

机上査定(AI査定もこの一種)は即時性・匿名性がありますが、接道状況・形状・越境・土壌汚染等のマイナス要因は未反映です。実際の売却時は訪問査定が必須となります。

自分で土地査定をシミュレーションする方法

具体的なシミュレーション手順を3ステップで解説します。

ステップ1: 近隣の取引事例を検索

国土交通省の土地総合情報システムで、近隣の取引事例を検索します。地域・時期・面積が類似した土地の実際の取引価格を参照できます。

検索手順:

  1. 土地総合情報システムにアクセス
  2. 「不動産取引価格情報検索」を選択
  3. 都道府県・市区町村・地区を選択
  4. 時期(直近1〜2年以内)を指定
  5. 類似した面積・用途の取引事例を確認

注意点: 取引事例は個別の条件(接道状況・形状・利便性等)により価格が大きく異なるため、複数の事例を参照して平均的な相場を把握することが重要です。

ステップ2: 路線価から時価を推定

国税庁の路線価図で、自分の土地の路線価を確認します。路線価は相続税評価に使う価格で、国税庁の基準により公示地価の約80%が目安とされています。時価を推定する際は、路線価を0.8で割り戻すことで概算時価を算出できます。

計算例:

  • 路線価: 20万円/㎡
  • 土地面積: 100㎡
  • 路線価ベースの評価額: 20万円 × 100㎡ = 2,000万円
  • 概算時価: 2,000万円 ÷ 0.8 = 2,500万円

注意点: 路線価は相続税評価のための価格であり、実際の取引価格とは異なります。あくまで目安として活用してください。

ステップ3: 補正要素を考慮して調整

土地の個別条件により、基準価格に補正率を掛けて調整します。国土交通省の不動産鑑定評価基準に基づく補正率の考え方を参考にします。

※下記の補正率は国土交通省 不動産鑑定評価基準に基づく目安です

補正要素 補正率の目安
角地(2方向道路) +10-15%
日当たり・眺望良好 +5-10%
駅徒歩10分以内 +10-20%
整形地(正方形・長方形) 標準評価
不整形地(三角形・L字型等) -10-20%
旗竿地(接道部分が細い) -20-30%
接道2m未満・再建築不可 -30-50%以上
傾斜地・崖地 -20-40%
土壌汚染・埋蔵文化財 大幅減額

計算例 (ステップ2の続き):

  • 概算時価: 2,500万円
  • 補正要素: 角地(+10%)、駅徒歩8分(+15%)
  • 補正後: 2,500万円 × 1.10 × 1.15 = 約3,163万円

注意点: 複数の補正要素が重なる場合、単純に足し算するのではなく掛け算で計算します。また、補正率はあくまで目安であり、実際の査定では不動産鑑定士や不動産会社の専門的な判断が必要です。

オンライン査定シミュレーションとの違い

AI査定ツールの活用

オンライン査定シミュレーション(AI査定)は、土地情報を入力するだけで即座に概算価格を算出できるツールです。以下のサービスが匿名・無料で利用可能です。

自分で計算する方法との違い:

項目 自分で計算 AI査定
即時性 数時間〜1日 数秒〜数十秒
匿名性 完全匿名 完全匿名
専門知識 必要 不要
精度 中〜高(補正要素を正確に考慮できる) 中(過去データベースに依存)

AI査定の限界と注意点

AI査定には以下の限界があります。

  • 接道状況・形状・越境・土壌汚染等のマイナス要因は未反映
  • 過去データベースで実際の現況と異なる可能性
  • 実務上±10-20%のズレがある

AI査定はあくまで相場感を掴むためのツールであり、実際の売却時は不動産会社の訪問査定が必須です。特に旗竿地・不整形地・再建築不可等の複雑なケースでは、AI査定の精度が大幅に低下します。

査定額に影響する要素

土地の査定額に影響する要素を整理します。

プラス要素(角地、日当たり、駅近等)

以下の要素は査定額を押し上げます。

  • 角地(2方向道路): +10-15%
  • 日当たり・眺望良好: +5-10%
  • 駅徒歩10分以内: +10-20%
  • 整形地(正方形・長方形): 標準評価
  • 前面道路が広い(6m以上): +5-10%
  • 南向き・南東向き: +5-10%

マイナス要素(不整形地、旗竿地、接道不良等)

以下の要素は査定額を押し下げます。

  • 不整形地(三角形・L字型等): -10-20%
  • 旗竿地(接道部分が細い): -20-30%
  • 接道2m未満・再建築不可: -30-50%以上
  • 傾斜地・崖地: -20-40%
  • 土壌汚染・埋蔵文化財: 大幅減額
  • 前面道路が狭い(4m未満): -10-20%
  • 北向き: -5-10%

これらの要素はAI査定では正確に反映されないため、訪問査定で専門家に確認してもらう必要があります。

まとめ

土地査定シミュレーションは、公的データ(土地総合情報システム、路線価)を使って自分で概算価格を把握できる有効な方法です。具体的な手順は、①近隣の取引事例を検索、②路線価から時価を推定(路線価÷0.8)、③補正要素を考慮して調整の3ステップです。

オンライン査定(AI査定)も便利ですが、接道状況や形状等のマイナス要因は未反映のため、実務上±10-20%のズレがあります。シミュレーション結果はあくまで目安であり、実際の売却時は不動産会社の訪問査定が必須です。

次のアクションとして、①まず自分でシミュレーションして相場感を掴む、②複数の不動産会社に訪問査定を依頼、③査定額を比較して売却戦略を立てることを推奨します。信頼できる不動産会社に相談しながら、適正な価格で売却を進めましょう。

よくある質問

Q1シミュレーション結果と実際の売却価格は一致する?

A1シミュレーション結果はあくまで目安で、実際の売却価格とは±10-20%のズレが生じる場合があります。接道状況・形状・越境・土壌汚染等のマイナス要因はシミュレーションでは反映されないため、正式な売却時は不動産会社の訪問査定が必須です。訪問査定では現地を確認し、個別の条件を正確に評価します。

Q2路線価と公示地価の違いは?

A2路線価は相続税評価に使う道路に面した土地の1㎡あたり価格で、公示地価の約80%が目安です。公示地価は国土交通省が毎年3月に公表する標準地の価格で、土地取引の指標となります。時価を推定する際は、路線価を0.8で割り戻す(路線価÷0.8)ことで概算時価を算出できます。

Q3オンライン査定と訪問査定はどちらを選ぶべき?

A3まずオンライン査定(AI査定)で相場感を掴み、その後訪問査定を依頼するのが効率的です。オンライン査定は匿名・即時・無料ですが精度に限界があります。訪問査定は現地を確認するため精度が高く、実際の売却時は必須です。複数社の訪問査定を比較することで適正価格を判断できます。

Q4旗竿地の査定はどのくらい下がる?

A4旗竿地(道路に接する部分が細く奥に広がる形状の土地)は、標準地の70-80%程度に評価されることが一般的です(-20-30%減額)。接道部分の幅が狭いほど評価は下がり、接道2m未満で再建築不可の場合は-30-50%以上の大幅減額となります。正確な評価は土地家屋調査士や不動産会社の訪問査定が必要です。