土地の簡易査定とは?売却検討の第一歩として知っておきたい基礎知識
土地の売却を検討し始めたとき、「まずは大まかな価格を知りたい」と考える方は少なくありません。簡易査定(机上査定)は、不動産会社が現地訪問なしで、過去の取引事例や公的データから概算価格を算出する査定方法です。
売却検討の第一歩として、大まかな相場を知るには有用ですが、精度には限界があります。あくまで目安であり、「正確な価格が分かる」わけではない点を理解しておく必要があります。
本記事では、国土交通省の公式情報を元に、簡易査定の仕組み、メリット・デメリット、訪問査定との違い、使い分けの基準を解説します。
この記事のポイント
- 簡易査定は現地訪問なしで、取引事例・公示地価・路線価から概算価格を算出する机上査定
- 短時間で結果が得られ(数時間~数日)、個人情報の提供が最小限で済む、複数社の査定額を比較できる
- 現地の個別要因(形状・接道・高低差等)を反映できず、査定額と成約価格が乖離する可能性がある
- 土地の場合、個別性が強いため訪問査定と10-30%程度乖離することもある
- 売却検討の初期段階では簡易査定、具体的に売却を進める段階では訪問査定が適している
簡易査定の仕組み|取引事例と公的データから算出
取引事例比較法:最も多く使われる手法
簡易査定で最も多く使われるのは「取引事例比較法」です。これは、近隣の類似物件の過去の成約価格を参考に、土地の個別要因を補正して査定額を算出する手法です。
例えば、近隣で同じような面積・用途地域の土地が過去に売却された価格を基に、対象土地の査定額を推定します。
ただし、簡易査定は現地確認を伴わないため、土地の形状・接道状況・高低差・日当たり等の個別要因を詳細に反映できず、精度に限界があります。
簡易査定で参照される公的データ
簡易査定では、以下の公的データが参照されます。
- 地価公示: 国土交通省が毎年3月に公表する、標準地の1月1日時点の正常価格
- 地価調査: 都道府県が毎年9月に公表する、基準地の7月1日時点の価格
- 路線価: 国税庁が公表する、相続税・贈与税の計算に使用される価格(公示地価の約80%)
- REINS取引事例: 不動産流通推進センターが運営する、不動産会社専用の成約価格データベース
これらの公的データは、国土交通省の不動産情報ライブラリで一般ユーザーも確認できます。
簡易査定と訪問査定の違い|精度・所要時間・費用を比較
簡易査定と訪問査定(詳細査定)の違いを以下の表で比較します。
| 項目 | 簡易査定 | 訪問査定 |
|---|---|---|
| 精度 | 概算(個別要因を反映できず) | 高精度(現地確認で個別要因を反映) |
| 所要時間 | 数時間~数日 | 1-2週間 |
| 費用 | 無料 | 無料 |
| 個人情報 | 最小限(匿名査定も可能) | 詳細提供が必要 |
| 現地訪問 | なし | あり |
マンションと土地の精度差:
- マンション: 類似物件が多く、階数・向き・専有面積で比較しやすいため、簡易査定でも精度が高い
- 土地: 形状・接道・高低差・日当たり等の個別要因が強く、訪問査定と10-30%程度乖離する可能性がある
土地の場合、簡易査定はあくまで「目安」と考え、具体的に売却を進める段階では訪問査定が必要です。
簡易査定の3つのメリット
簡易査定には以下の3つのメリットがあります。
①短時間で結果が得られる
簡易査定は、通常数時間~数日以内に結果が得られます。AI査定を利用すれば、即座に概算価格が表示されることもあります。
担当者による簡易査定の場合は、1-3営業日程度かかる場合がありますが、訪問査定(1-2週間)よりも早く結果を知ることができます。
②個人情報の提供が不要または最小限で済む
簡易査定では、個人情報の提供が不要または最小限で済みます。匿名査定サービスを利用すれば、氏名・電話番号を提供せずに概算価格を知ることも可能です。
ただし、詳細な査定を受ける場合は、連絡先の提供が必要になることがあります。
③複数社の査定額を比較できる
一括査定サービスを利用すれば、複数の不動産会社に一度に査定依頼ができます。複数社の査定額を比較することで、相場を正確に把握できます。
ただし、複数社に個人情報が共有されるため、営業電話が頻繁に来る可能性がある点には注意が必要です。
簡易査定の注意点|精度の限界と査定額の乖離リスク
現地の個別要因を反映できない
簡易査定は現地確認なしで査定額を算出するため、以下の個別要因を反映できません。
- 土地の形状: 不整形地、旗竿地は減額要因
- 接道状況: 幅員4m未満の道路、接道義務を満たさない土地は大幅減額
- 高低差: 道路より高い・低い土地は造成費用がかかる
- 日当たり: 北向き、建物に囲まれた土地は減額
- 騒音・振動: 幹線道路沿い、鉄道沿いは減額
- 土壌汚染: 過去に工場・ガソリンスタンドがあった土地は減額
- 境界未確定: 隣地との境界が不明な土地は減額
これらの要因により、査定額と実際の成約価格が乖離する可能性があります。
査定額と成約価格が乖離する可能性
簡易査定は「正確な価格が分かる」わけではなく、あくまで概算です。土地の場合、個別要因が強いため、訪問査定と10-30%程度乖離することもあります。
査定額はあくまで不動産会社の見込み価格であり、実際の成約価格とは異なる点を理解しておく必要があります。
入力情報の正確性が重要
依頼者が入力する土地面積・地番・用途地域等が不正確だと、査定結果が大きく外れます。
正確な情報を入力するため、以下の書類を手元に用意しておくことをおすすめします。
- 固定資産税納税通知書
- 権利証(登記識別情報)
- 地積測量図
簡易査定が適したケース・訪問査定が必要なケース
以下の基準で、簡易査定と訪問査定を使い分けましょう。
簡易査定が適したケース:
- 売却を検討し始めた段階で、大まかな相場を知りたい
- 複数社の査定額を比較したい
- 個人情報をあまり提供したくない
- 短時間で結果が欲しい
訪問査定が必要なケース:
- 具体的に売却を進める段階で、正確な価格を知りたい
- 土地の個別要因(形状・接道・高低差等)が多い
- 境界未確定・高低差等の問題がある
- 媒介契約を結ぶ前に、精度の高い査定を受けたい
簡易査定で大まかな相場を把握し、具体的に売却を進める段階で訪問査定を受けることをおすすめします。
まとめ:簡易査定で相場を把握、本格売却時は訪問査定を
簡易査定は、売却検討の第一歩として有用ですが、精度に限界があり「あくまで目安」という点を理解しておく必要があります。
土地の場合、個別要因が強いため、訪問査定と10-30%程度乖離する可能性があります。具体的に売却を進める段階では、訪問査定が必要です。
重要なポイント:
- 簡易査定は概算価格の把握に有用
- 現地の個別要因を反映できず、精度に限界がある
- 複数社への査定依頼で相場を正確に把握
- 本格売却時は訪問査定を受ける
次のアクションとして、一括査定サービスを利用して複数社の査定額を比較したり、信頼できる不動産会社に訪問査定を依頼したりすることをおすすめします。
売却検討の初期段階では簡易査定、本格売却時は訪問査定と使い分けることで、スムーズに売却を進められます。
