住宅ローン返済中でも車のローンは組める?
「住宅ローンがあると車のローンは組めない」と心配されている方は多いのではないでしょうか。車の買い替えを検討しているけれど、住宅ローンがあるから無理だと諦めていませんか。
実は、これは誤解です。住宅ローン返済中でも、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)次第で車のローン審査に通る可能性は十分にあります。
この記事では、金融庁や日本貸金業協会の公式情報を元に、住宅ローンが車ローン審査にどう影響するか、審査通過のための対策、無理な借入のリスクを解説します。
この記事のポイント
- 住宅ローンがあっても返済負担率30-35%以内なら車のローン審査に通る可能性が高い
- 返済負担率の計算式は「(住宅ローン年間返済額 + 車ローン年間返済額) ÷ 年収 × 100」
- 審査通過の対策は頭金増額、借入額削減、収入合算、他ローン完済など
- 無理な借入は家計圧迫・延滞リスクを招くため、代替案(現金購入・中古車)も検討を
返済負担率とは?計算方法と目安
返済負担率(返済比率)とは、年収に占める年間ローン返済額の割合のことです。金融機関が住宅ローンや車ローンの審査時に重視する指標の一つです。
返済負担率の計算式
返済負担率の計算式は以下の通りです。
返済負担率 = (住宅ローン年間返済額 + 車ローン年間返済額) ÷ 税込年収 × 100
具体例(年収500万円の場合):
- 住宅ローン: 月10万円(年間120万円)
- 車ローン: 月3万円(年間36万円)
- 合計: 年間156万円
返済負担率 = 156万円 ÷ 500万円 × 100 = 31.2%
一般的な目安(30-35%以内)
みずほ銀行の公式情報によると、金融機関は一般的に返済負担率30-35%以内を審査基準としています。
返済負担率の判断基準:
| 返済負担率 | 判断 | 説明 |
|---|---|---|
| 20%以下 | 安全圏 | 家計に余裕がある |
| 20-30% | やや余裕 | 無理のない範囲 |
| 30-35% | ギリギリ | 審査は通るが家計に負担 |
| 35%超 | 危険 | 審査に落ちる可能性が高い |
理想的な水準(20-25%以内)
審査基準は30-35%以内ですが、理想的には20-25%以内が家計に余裕がある水準です。税込年収ではなく手取り収入で計算すると、実際の家計負担がより正確に分かります。
手取り収入ベースの計算例(年収500万円の場合):
- 税込年収: 500万円
- 手取り収入: 約390万円(社会保険料・税金を差し引き)
- 年間返済額: 156万円
- 手取りベースの返済負担率: 156万円 ÷ 390万円 × 100 = 約40%
これは家計にかなりの負担がかかる水準です。
住宅ローンが車ローン審査に与える影響
住宅ローンの契約内容・返済状況は、車ローン審査に影響します。金融機関は以下の点を確認します。
信用情報への記録
住宅ローンの契約内容・返済状況は、信用情報機関(JICC等)に記録されます。車ローン審査時に金融機関が照会し、以下の点を確認します。
信用情報で確認される内容:
- 住宅ローンの契約額・残高
- 毎月の返済額
- 延滞歴の有無(過去5年間)
- 他のローン・クレジットの契約状況
延滞歴があると審査に非常に不利です。1回でも延滞すると記録され、5年間は審査が厳しくなります。
総量規制との関係
日本貸金業協会の説明によると、貸金業法の総量規制(年収の3分の1まで制限)は、住宅ローン・銀行系車ローンは対象外です。
総量規制の適用:
| ローンの種類 | 総量規制の適用 | 説明 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 対象外 | 除外貸付に該当 |
| 銀行系車ローン | 対象外 | 銀行法で規制 |
| 信販系ローン | 一部適用 | 貸金業者の場合 |
ただし、総量規制対象外でも、金融機関は返済負担率を独自に審査するため、審査に落ちる可能性があります。
金融機関の審査基準
金融機関は返済負担率・年収・信用情報を総合的に審査します。金融庁の説明によると、返済能力の確認義務があり、無理な貸付は行わないよう規制されています。
審査基準は金融機関により異なるため、1社に断られても他の金融機関で審査に通る可能性があります。複数社に相談することをおすすめします。
車ローン審査通過のための対策
返済負担率を下げることで、車ローン審査に通りやすくなります。以下の4つの対策が有効です。
頭金を増やして借入額を減らす
頭金を増やすことで、車ローンの借入額を減らせます。返済負担率が下がり、審査に有利になります。
例(300万円の車を購入する場合):
- 頭金なし: 借入額300万円、月々5万円(5年返済)
- 頭金100万円: 借入額200万円、月々3.3万円(5年返済)
頭金を100万円用意するだけで、月々の返済額が約1.7万円減り、返済負担率を約3-4%下げられます。
返済期間を短縮する
返済期間を短縮すると、月々の返済額は増えますが、返済負担率を下げられる場合があります(金融機関の計算方法による)。
ただし、返済期間を短縮すると月々の返済額が増えて家計負担が重くなるため、手元資金に余裕がある場合のみ検討してください。
配偶者の収入を合算する
配偶者の収入を合算してローン審査を受けることで、世帯収入が増えて返済負担率が下がります。
例(夫婦の収入を合算する場合):
- 夫の年収: 500万円
- 妻の年収: 200万円
- 世帯年収: 700万円
- 年間返済額: 156万円
- 返済負担率: 156万円 ÷ 700万円 × 100 = 約22%
収入合算により、返済負担率が31%から22%に下がり、審査に通りやすくなります。
他のローンを完済する
カードローンやクレジットのリボ払い等、他のローンがある場合は、完済することで返済負担率を下げられます。
例(カードローンを完済する場合):
- 住宅ローン: 月10万円(年間120万円)
- 車ローン: 月3万円(年間36万円)
- カードローン: 月2万円(年間24万円)
- 合計: 年間180万円
- 返済負担率(年収500万円): 180万円 ÷ 500万円 × 100 = 36%
カードローンを完済すると、返済負担率が36%から31%に下がり、審査に通りやすくなります。
無理な借入のリスクと代替案
返済負担率を超える無理な借入は、家計圧迫・延滞リスクを招きます。代替案も検討しましょう。
無理な借入のリスク(家計圧迫・延滞)
返済負担率35%を超える無理な借入は、以下のリスクがあります。
無理な借入のリスク:
- 家計が圧迫され、教育費・医療費・老後資金が不足
- 収入減少・失業時に返済が滞る
- 延滞すると信用情報に傷がつき、住宅ローンの借り換えや新規借入に影響
金融庁も、多重債務防止の観点から、返済能力を超える借入を避けるよう注意喚起しています。
現金購入・中古車・カーリース
車ローンを組まずに済む代替案も検討しましょう。
代替案の比較:
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 現金購入 | ローン不要、金利負担なし | 手元資金が減る |
| 中古車購入 | 車両価格を抑えられる | 故障リスク、保証が短い |
| カーリース | 月々定額、返済負担率への影響が少ない場合あり | 契約期間縛り、走行距離制限 |
現金で購入できる余裕があれば、金利負担がなく総支払額が少ないため現金購入が有利です。ただし、手元資金を全額使うと緊急時の備えがなくなるため、一部を頭金にして残りをローンで借りる方法もあります。
まとめ:返済負担率を確認して冷静に判断
住宅ローン返済中でも、返済負担率30-35%以内であれば車ローン審査に通る可能性は十分にあります。「住宅ローンがあると絶対に組めない」というのは誤解です。
自分の年収・住宅ローン返済額・車ローン希望額から返済負担率を計算し、金融機関の基準(30-35%以内)を満たすか確認しましょう。審査通過のための対策(頭金増額・返済期間短縮・収入合算・他ローン完済)を検討し、無理な借入は避けることが重要です。
代替案(現金購入・中古車・カーリース)も比較して、家計に余裕がある選択をしましょう。金融機関・ファイナンシャルプランナーに相談することもおすすめします。
