住宅ローン仮審査通過後に本審査で落ちる理由と対策

公開日: 2025/10/31

住宅ローンの仮審査に通ったのに本審査で落ちることはあるのか

住宅購入を検討する際、「仮審査に通ったから大丈夫」と安心していたのに、本審査で落ちてしまうケースがあります。仮審査通過は融資可能性の見込みを示すものであり、本審査が正式な融資判断となるためです。

この記事では、仮審査と本審査の違い、本審査で落ちる具体的な理由、審査期間中の注意点、事前対策、落ちた場合の対処法を、住宅金融支援機構・金融庁の公式情報を元に解説します。

初めて住宅ローンを組む方でも、本審査で落ちるリスクを正確に理解し、対策を講じられるようになります。

この記事のポイント

  • 仮審査通過後の本審査通過率は約95%だが、審査期間中の転職・新規借入等で否決される可能性がある
  • 仮審査は自己申告ベースの簡易審査、本審査は公式書類による確認・物件評価・健康状態の精査が加わる
  • 本審査で落ちる主な理由は勤務状況の変化、新規借入、信用情報の問題、物件の担保価値不足、健康状態の5つ
  • 信用情報の開示請求、ワイド団信の検討、物件の担保価値確認で事前対策が可能
  • 本審査に落ちた場合は別の金融機関への申込、頭金増額、共同名義等の選択肢を検討すべき

仮審査と本審査は何が違うのか

仮審査は自己申告ベースの簡易審査

仮審査(事前審査)は、申込者の自己申告情報(年収・勤務先・希望借入額等)をもとに、銀行が融資可否の見込みを3-4日程度で回答する簡易審査です。主にスコアリング(点数化)による機械的な審査で、申告内容が一定基準を満たせば「仮審査通過」となります。

ただし、仮審査は公式書類による確認を行わないため、申告内容が正確であることを前提とした判断となります。

本審査は書類確認・物件評価・健康状態の精査

本審査は、仮審査通過後に保証会社が1-2週間かけて実施する正式審査です。以下の点が仮審査と大きく異なります。

  • 公式書類による確認: 源泉徴収票・給与明細・売買契約書等で申告内容の正確性を検証
  • 物件の担保価値評価: 金融庁が審査指標とするLTV(担保価格に対する融資額の割合)を算出し、物件の担保価値が十分かを確認
  • 健康状態の審査: 団体信用生命保険(団信)への加入に必要な健康告知を行い、保険会社が審査
  • 在籍確認: 勤務先に電話連絡し、申告通りに勤務しているかを確認

住宅金融支援機構によると、本審査では申込人の信用状況、担保評価、収支計画等を総合的に判断するため、仮審査より厳格な基準で審査されます。

金融庁の2025年1月データでは、地域銀行の住宅ローン審査においてLTV(Loan To Value)やDTI(Debt To Income=返済負担率)という指標が用いられていることが明記されており、本審査ではこれらの数値を厳密にチェックします。

本審査で落ちる5つの理由

勤務状況の変化(転職・退職)

仮審査通過後に転職・退職すると、勤続年数がリセットされ本審査で落ちる可能性が高くなります。多くの金融機関では勤続年数1年以上を審査基準としており、転職直後は基準を満たさなくなるためです。

転職を隠しても、源泉徴収票・在籍確認で必ずバレます。住宅ローン実行まで転職は避けるべきです。

新規借入による返済負担率の悪化

審査期間中にカーローン・クレジットカードのキャッシング等の新規借入をすると、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)が悪化し、本審査で落ちるケースがあります。

一般的に返済負担率は30-35%以内が審査通過の目安とされており、他のローン返済額も含めて計算されます。住宅ローン実行まで新たな借入は厳禁です。

信用情報の問題(延滞・ブラックリスト)

信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に延滞記録やブラックリスト情報があると、本審査で即座に否決されます。仮審査では信用情報の照会が簡易的または未実施の場合があり、本審査で初めて発覚するケースがあります。

過去にクレジットカード・ローンの支払いを延滞したことがある場合、信用情報機関への開示請求で自分の信用状態を事前に確認することが重要です。

物件の担保価値不足

物件に違法建築・再建築不可・接道義務違反等の問題があると、担保価値が不足し本審査で落ちます。仮審査段階では物件評価が甘いため、本審査で初めて発覚することがあります。

金融庁の審査指標であるLTVは、物件の担保価値に対する融資額の割合を示します(2025年時点)。例えば物件価格3000万円で融資額2700万円の場合、LTV=90%となります。担保価値が低いと判断されるとLTVが基準を超え、融資が否決される可能性があります。

健康状態・団信の審査

団体信用生命保険(団信)は、契約者が死亡・高度障害状態になった際に残りの住宅ローンを肩代わりする生命保険で、本審査で健康告知が必須となります。

健康告知で虚偽申告すると告知義務違反となり、団信の保障を受けられなくなります。持病・既往歴がある場合は、ワイド団信(通常の団信より金利が0.3%程度高いが、糖尿病・高血圧等でも加入できる可能性がある)の検討が必要です。

審査期間中に絶対やってはいけないこと

モゲチェックの調査によると、本審査で落ちる確率は約5%ですが、以下の行為は審査否決の主な原因となります。

  • 転職・退職: 住宅ローン実行まで避ける。転職を隠しても源泉徴収票・在籍確認で必ずバレる
  • 新規借入: カーローン・クレジットカード等の新規借入は厳禁。返済負担率が悪化する
  • 申告内容の変更: 年収・借入額・勤務先等の申告内容を変更すると虚偽申告とみなされ即座に否決

本審査までの期間は金融リテラシーが試されます。仮審査通過後も気を抜かず、上記のNG行為を避けることが重要です。

本審査に通るための事前対策

信用情報を自分で開示請求して確認

信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求で、自分の信用状態を事前に確認できます。開示請求は500-1,000円で可能で、延滞記録やブラックリスト情報の有無をチェックできます。

延滞記録がある場合、記録が消えるまで待つ(一般的に5-10年)か、借入額を減らす・頭金を増やす等の対策を検討する必要があります。

健康状態に不安がある場合はワイド団信を検討

持病・既往歴がある場合、通常の団信に加入できない可能性があります。ワイド団信は金利が0.3%程度高くなりますが、糖尿病・高血圧等でも加入できる可能性があります。

健康告知で虚偽申告すると告知義務違反となり保障を受けられないため、正直に申告し、必要に応じてワイド団信を選択することが重要です。

物件の担保価値を事前にチェック

物件の接道義務(建築基準法で定める道路に2m以上接していること)、再建築可否、違法建築の有無を事前に確認することで、担保価値不足による審査否決を防げます。

不動産会社に重要事項説明書で確認するか、購入前に専門家(建築士・不動産鑑定士等)に相談することが推奨されます。

本審査に落ちた場合の対処法

別の金融機関に申し込む

金融機関により審査基準が異なるため、1つの金融機関で否決されても、別の金融機関では審査基準が異なり通る可能性があります。モゲチェックによると、本審査に落ちる確率は約5%であり、多くの金融機関が独自の審査基準を持っています。

同じ金融機関への再申し込みは6ヶ月程度空けるのが一般的ですが、別の金融機関には即座に申し込み可能です。

頭金を増やして借入額を減らす

頭金を増やすことで、LTV(担保価格に対する融資額の割合)を改善できます。例えば物件価格3000万円で融資額2700万円(LTV=90%)の場合、頭金を300万円から600万円に増やすと融資額2400万円(LTV=80%)となり、審査に通りやすくなります。

共同名義・収入合算を検討

配偶者との共同名義や収入合算で、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)を下げることができます。例えば単独名義で年収500万円・借入額3000万円(返済負担率35%)の場合、配偶者の年収300万円を合算すると世帯年収800万円となり、返済負担率が約22%に改善します。

ただし、共同名義の場合は両名が団信に加入する必要があり、健康状態によっては利用できない可能性があります。

専門家への相談

ファイナンシャルプランナー(FP)や住宅ローンアドバイザーに相談することで、審査否決の原因分析や次の対策を具体的に提案してもらえます。多くの不動産会社・金融機関では無料相談を実施しています。

まとめ:仮審査通過は「スタートライン」に過ぎない

仮審査通過は融資可能性の見込みであり、本審査が正式な融資判断です。本審査通過率は約95%ですが、審査期間中の転職・新規借入、信用情報の問題、物件の担保価値不足、健康状態等により否決される可能性があります。

審査期間中は転職・新規借入を避け、申告内容の一貫性を保つことが重要です。信用情報の開示請求、ワイド団信の検討、物件の担保価値確認で事前対策を徹底しましょう。

本審査に落ちた場合は、別の金融機関への申込、頭金増額、共同名義等の選択肢を検討し、専門家への相談も視野に入れることをおすすめします。

よくある質問

Q1仮審査に通れば本審査に通る確率はどのくらいですか?

A1約95%です。ただし、審査期間中に転職・新規借入等をすると否決される可能性が高くなります。仮審査通過は「融資可能性の見込み」であり、本審査が正式な融資判断となります。仮審査は自己申告ベースの簡易審査ですが、本審査は源泉徴収票等の公式書類で申告内容を確認し、物件の担保価値・健康状態も精査するため、仮審査より厳格な基準で審査されます。

Q2本審査にかかる期間はどのくらいですか?

A21-2週間程度です。保証会社が源泉徴収票・売買契約書等の公式書類で申告内容を確認し、物件の担保価値・健康状態も精査するため、仮審査(3-4日)より長くかかります。在籍確認や信用情報機関への照会も含まれるため、書類の不備があると期間が延びる可能性があります。

Q3本審査に落ちた理由は教えてもらえますか?

A3金融機関は審査基準を公開しておらず、具体的な否決理由を教えないケースが多いです。ただし、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求で自分の信用状態を確認することができます(500-1,000円で開示可能)。延滞記録やブラックリスト情報がある場合、それが否決理由の可能性があります。開示請求で問題が見つからない場合、勤務状況・物件の担保価値・健康状態等が原因と考えられます。

Q4健康状態に不安があっても住宅ローンは組めますか?

A4ワイド団信(金利0.3%上乗せ)を検討してください。通常の団信では加入できない持病・既往歴(糖尿病・高血圧等)がある場合でも、ワイド団信なら加入できる可能性があります。健康告知で虚偽申告すると告知義務違反となり保障を受けられないため、正直に申告し、必要に応じてワイド団信を選択することが重要です。金融機関によってワイド団信の取扱いが異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。

Q5本審査に落ちた後、再申し込みまでの期間は?

A5同じ金融機関への再申し込みは6ヶ月程度空けるのが一般的です。ただし、別の金融機関には即座に申し込み可能です。金融機関によって審査基準が異なるため、1つの金融機関で否決されても、別の金融機関では通る可能性があります。再申し込み前に、否決理由を推測し(信用情報の開示請求等)、対策を講じることが重要です。