住宅ローンの年収目安はいくら?借入可能額と返済比率を徹底解説

公開日: 2025/10/27

住宅ローンの年収目安とは?借入可能額の基本的な考え方

住宅購入を検討する際、「自分の年収でいくらまで借りられるのか」「返済できる金額はどれくらいか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、年収別の借入可能額の目安、返済比率の計算方法、金融機関の審査基準、安全に返済できる借入額の判断基準を、住宅金融支援機構金融庁の公式情報を元に解説します。

初めて住宅ローンを組む方でも、自分に合った借入額を正しく判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 金融機関の審査基準は返済比率30-35%だが、安全な目安は手取り年収の20-25%以内
  • 年収別の借入可能額は年収300万で約1,800万円、年収600万で約4,300万円が目安(金利1.5%・35年)
  • 「審査に通る金額」と「安全に返せる金額」は別物であり、将来の教育費・老後資金・収入減少リスクを考慮すべき
  • 住宅ローン以外の借入(自動車ローン・カードローン等)も総返済負担率に含まれるため、他ローンがある場合は借入可能額が大幅に減る
  • 自営業者は会社員より審査が厳しく、直近3期分の所得平均で審査される

年収別の借入可能額シミュレーション

住宅ローンの借入可能額は、年収・返済比率・金利で決まります。以下の表は、金利1.5%・返済期間35年・返済比率30%を前提とした一般的な金融機関の基準における目安です。

年収 月返済額の上限 借入可能額の目安
300万円 約7.5万円 約1,800万円
400万円 約10万円 約2,400万円
500万円 約12.5万円 約3,100万円
600万円 約15万円 約3,700万円
700万円 約17.5万円 約4,300万円
800万円 約20万円 約4,900万円
900万円 約22.5万円 約5,500万円
1,000万円 約25万円 約6,100万円

(前提条件: 金利1.5%、返済期間35年、返済比率30%)

実際の利用者の借入実態

住宅金融支援機構の2023年度調査によると、フラット35利用者の実績は以下の通りです。

  • 年収倍率: 注文住宅7.6倍、新築マンション7.2倍
  • 返済負担率の平均: 23.1%
  • 平均年収: 注文住宅641万円、新築マンション785万円

このデータは「審査に通った人」の実績であり、返済困難者の統計は含まれない点に注意が必要です。年収倍率7.6倍は審査基準の上限に近く、将来の支出増加・収入減少時に返済困難になるリスクがあります。

返済比率の計算方法と金融機関の審査基準

返済比率(DTI)とは何か

返済負担率(返済比率)は、年間返済額を年収で割った割合です。計算式は以下の通りです。

返済比率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100

例えば、年収600万円で月15万円(年間180万円)を返済する場合、返済比率は30%となります。

金融機関の審査基準(返済比率30-35%)

金融機関の審査では、返済比率30-35%以下が一般的な基準です。金融庁の2025年1月レポート(2025年1月時点)では、DTI(Debt To Income = 年間返済額÷年収)指標による審査実態が示されており、返済能力審査の厳格化が進んでいます。最新の審査基準については、お借入予定の金融機関にご確認ください。

審査基準の返済比率(30-35%)で借りると、将来の教育費・老後資金・収入減少時に返済困難になるリスクがあるため、安全な返済比率との違いを理解することが重要です。

住宅ローン以外の借入も含めた総返済負担率

重要なポイントは、返済比率の計算に住宅ローン以外の借入も含まれることです。

  • 自動車ローン
  • カードローン
  • スマホ分割払い
  • 奨学金返済

これらの年間返済額を合算した「総返済負担率」で審査されます。例えば、年収600万円・返済比率35%の場合、月返済額の上限は17.5万円ですが、他ローンで月5万円返済中なら、住宅ローンは月12.5万円が上限となります。

安全な借入額の判断基準(手取り年収ベース)

理想的な返済比率(手取り20-25%)

三菱UFJ銀行のコラムによると、理想的な返済比率は手取り年収の20-25%以内です。

金融機関の審査基準(額面年収の35%以下)で借りると、将来の返済困難リスクが高いため、安全な返済比率(手取り年収の20-25%)を推奨します。

手取り年収と額面年収の違い

手取り年収は、額面年収から税金・社会保険料を差し引いた実際の可処分所得です。一般に額面の75-80%程度となります(年収水準や扶養家族の有無により異なります)。

具体例(年収600万円の場合):

  • 額面年収: 600万円
  • 手取り年収: 450万円(額面の75%)
  • 審査基準(額面35%): 月17.5万円
  • 安全な返済額(手取り25%): 月9.4万円

返済比率30%と25%の具体的な差額

返済比率30%と25%の違いが、将来の教育費・老後資金・収入減少時の返済余力に大きく影響します。

年収 返済比率30%(月返済額) 返済比率25%(月返済額) 差額
400万円 10万円 8.3万円 1.7万円
600万円 15万円 12.5万円 2.5万円
800万円 20万円 16.7万円 3.3万円

月2-3万円の差額が、教育費・老後資金の積立に回せるかどうかの分かれ目となります。

借入可能額と返済可能額の違い(将来リスクを考慮)

将来の教育費・老後資金の負担増

三井住友銀行 Money VIVAの記事によると、「審査に通る金額」と「安全に返せる金額」は別物です。

将来の支出増加リスク:

  • 子供の教育費: 大学進学で年間100-200万円の負担増
  • 老後資金: 住宅ローン完済後の生活費・医療費
  • 親の介護費用: 月5-10万円の負担が発生する可能性

これらの支出を考慮せずに返済比率の上限ギリギリで借りると、将来の家計が破綻するリスクがあります。

収入減少リスク(転職・病気・介護)

収入減少リスクも考慮すべきです。

  • 転職: 年収が一時的に減少
  • 病気・怪我: 長期休職で収入が減少
  • 昇給停滞: 期待した昇給が実現しない

これらのリスクに備えるため、返済比率は手取り20-25%以内に抑え、家計に余裕を持たせることが重要です。

会社員と自営業者の審査基準の違い

会社員は1年分の収入で審査されますが、自営業者は直近3期分の所得平均で審査されます。また、確定申告書の所得金額(経費控除後)が審査対象となるため、節税目的で所得を圧縮していると借入可能額が少なくなります。

自営業者は会社員より審査が厳しく、同じ年収でも借入可能額が少なくなる点に注意が必要です。

まとめ:無理のない借入額で安心して返済を続けるために

住宅ローンの年収目安は、年収別の借入可能額シミュレーション、金融機関の審査基準(返済比率30-35%)、安全な返済比率(手取り20-25%)、将来の支出増加・収入減少リスクを総合的に考慮して判断することが重要です。

「年収の○倍まで借りられる」という単純な目安ではなく、自分のライフプラン・家族構成・将来の支出を考慮して借入額を決めることで、長期的に安心して返済を続けることができます。

次のアクションとして、住宅金融支援機構の返済シミュレーションツールを活用して自分に合った借入額を確認し、必要に応じてファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1年収の何倍までなら住宅ローンを借りられますか?

A1金融機関の審査では年収の7-8倍程度まで借りられるケースもありますが、安全な目安は年収の5-6倍以内です。フラット35の2023年実績では平均7.6倍ですが、これは「審査に通った人」の統計であり、返済困難者は含まれていません。将来の教育費・老後資金・収入減少リスクを考慮すると、年収倍率は控えめに設定することが重要です。

Q2自営業者でも会社員と同じように住宅ローンを借りられますか?

A2自営業者は会社員より審査が厳しくなります。会社員は1年分の収入で審査されますが、自営業者は直近3期分の所得平均で審査されます。また、確定申告書の所得金額(経費控除後)が審査対象となるため、節税目的で所得を圧縮していると借入可能額が少なくなります。自営業者は同じ年収でも会社員より借入可能額が少なくなる点に注意が必要です。

Q3住宅ローン以外の借入があると、借入可能額は減りますか?

A3減ります。金融機関は住宅ローン以外の自動車ローン・カードローン・スマホ分割払い・奨学金返済等を含めた総返済負担率で審査します。例えば、年収600万円・返済比率35%の場合、月返済額の上限は17.5万円ですが、他ローンで月5万円返済中なら住宅ローンは月12.5万円が上限となります。住宅ローンを組む前に、他の借入をできるだけ完済しておくことが推奨されます。

Q4住宅ローンの返済比率は何%までが安全ですか?

A4金融機関の審査基準は額面年収の30-35%ですが、安全な目安は手取り年収の20-25%以内です。手取り年収は額面の75-80%程度なので、額面年収の35%で借りると将来の教育費・老後資金・収入減少時に返済困難になるリスクが高くなります。[三菱UFJ銀行](https://www.bk.mufg.jp/)のコラムでも、手取り年収ベースでの返済比率を推奨しています。

Q5返済比率を計算する際、ボーナス払いは含めますか?

A5含めます。返済比率は年間返済額÷年収×100で計算するため、ボーナス払い分も年間返済額に加算されます。ただし、ボーナスは景気・業績で変動しやすいため、ボーナス払い併用は推奨されません。毎月返済のみで組むことで、ボーナスが減額・不支給になった場合でも返済を続けられます。