団信(団体信用生命保険)とは?
住宅ローンを検討する際、「団信とは何か」「必要なのか」「種類や保険料はどうなっているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、団信の仕組み、種類(一般団信・がん団信・3大疾病団信等)、保険料、加入できないケース、注意点を、金融庁・住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
初めて住宅ローンを検討する方でも、団信の全体像を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 団信は住宅ローン専用の生命保険で、債務者が死亡・高度障害時にローン残債がゼロになる
- 一般団信は金利上乗せなし(フラット35は年0.2%)、特約付きは+0.1-0.3%
- がん団信・3大疾病団信・全疾病団信等の種類があり、保障内容と金利上乗せが異なる
- 持病がある場合はワイド団信を検討(金利+0.2-0.3%)
- 団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、契約後は加入・変更できない
団信(団体信用生命保険)は、住宅ローン専用の生命保険です。債務者が死亡または高度障害状態になった場合、保険金でローン残債が完済される仕組みです。
5W1Hで整理:
- What(何): 住宅ローン専用の生命保険
- Who(誰): 住宅ローン債務者(保険金受取人は金融機関)
- When(いつ): 死亡・高度障害時に保険金で残債完済
- Why(なぜ): 遺族が住宅を失わないため、金融機関のリスクヘッジ
- How much(いくら): 一般団信は金利上乗せなし、特約付きは+0.1-0.3%程度
団信の最大のメリットは、遺族に住宅ローンの返済義務が残らないことです。債務者が亡くなっても、遺族は住宅を保持できます。
団信の仕組みと保障内容
保障される条件(死亡・高度障害)
団信は、以下の条件に該当した場合に保険金が支払われます。
保障される条件:
| 条件 | 内容 | 
|---|---|
| 死亡 | 債務者が死亡した場合 | 
| 高度障害 | 両眼の視力を永久に失った、言語またはそしゃくの機能を永久に失った等の重度の障害状態 | 
高度障害の具体例:
- 両眼の視力を永久に失った
- 言語またはそしゃくの機能を永久に失った
- 両上肢または両下肢の用を全く永久に失った
- 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態
保険金の受取人(金融機関)
団信の保険金は、金融機関が受け取ります。遺族が直接受け取ることはできません。保険金は住宅ローン残債の完済に充当され、遺族には住宅ローンのない住宅が残ります。
この仕組みにより、遺族は住宅ローンの返済義務から解放され、住宅を失うリスクが回避されます。
医療保険との違い
団信は住宅ローン残債のみ保障します。医療保険とは以下の違いがあります。
| 項目 | 団信 | 医療保険 | 
|---|---|---|
| 保障内容 | 住宅ローン残債の完済 | 治療費・入院費等 | 
| 受取人 | 金融機関 | 被保険者または家族 | 
| 加入時期 | 住宅ローン契約時 | いつでも | 
団信は治療費を保障しないため、医療保険やがん保険とは別物です。団信に加入しても、医療保険の必要性は残ります。
(出典: 三菱UFJ銀行)
団信の種類と保険料比較
団信には複数の種類があり、保障内容と保険料(金利上乗せ)が異なります。
一般団信(死亡・高度障害)
一般団信は、死亡・高度障害を保障する基本的な団信です。民間銀行では保険料無料(金利上乗せなし)が一般的ですが、フラット35は年0.2%上乗せとなります。
一般団信の特徴:
| 項目 | 民間銀行 | フラット35 | 
|---|---|---|
| 保険料 | 無料(金利上乗せなし) | 年0.2%上乗せ | 
| 加入義務 | 必須 | 任意 | 
(出典: 住宅金融支援機構)
がん団信(がん診断で残債免除)
がん団信は、がん診断確定で残債の50%または100%が免除される団信です。金利上乗せは+0.0-0.2%程度です。
がん団信の種類:
| 種類 | 保障内容 | 金利上乗せ | 
|---|---|---|
| がん50%保障 | がん診断で残債50%免除 | +0.0%(無料) | 
| がん100%保障 | がん診断で残債100%免除 | +0.1-0.2% | 
注意点: 上皮内がん(がん細胞が粘膜内にとどまっている初期がん)は対象外のことが多いです。がん団信を検討する際は、上皮内がんが保障されるか確認してください。
(出典: りそな銀行)
3大疾病団信(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)
3大疾病団信は、がん・脳卒中・急性心筋梗塞を保障する団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。
保障条件:
- がん: 診断確定で残債免除
- 脳卒中: 一定日数以上の後遺症で残債免除(金融機関により異なる)
- 急性心筋梗塞: 一定日数以上の後遺症で残債免除(金融機関により異なる)
脳卒中・急性心筋梗塞は、一定日数(60日等)以上の後遺症が残った場合に保障されることが多いです。診断確定のみでは保障されない場合があるため、保障条件を確認してください。
全疾病団信(就業不能)
全疾病団信は、すべての病気・ケガで就業不能になった場合、住宅ローン返済が一定期間免除される団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。
就業不能の定義や保障期間は金融機関により異なるため、契約前に確認してください。
ワイド団信(持病がある人向け)
ワイド団信は、持病がある人向けに加入条件を緩和した団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。
加入条件の緩和:
- 高血圧、糖尿病、肝炎等の持病がある人でも加入できる可能性
- 告知内容が緩和(過去3年以内の病歴・治療歴等)
ただし、すべての持病がある人が加入できるわけではありません。審査は個別に行われます。
(出典: モゲチェック)
団信の種類比較表
| 種類 | 保障内容 | 金利上乗せ | 
|---|---|---|
| 一般団信 | 死亡・高度障害 | +0.0%(フラット35は+0.2%) | 
| がん50%保障 | がん診断で残債50%免除 | +0.0% | 
| がん100%保障 | がん診断で残債100%免除 | +0.1-0.2% | 
| 3大疾病団信 | がん・脳卒中・急性心筋梗塞 | +0.2-0.3% | 
| 全疾病団信 | すべての病気・ケガで就業不能 | +0.2-0.3% | 
| ワイド団信 | 持病がある人向け | +0.2-0.3% | 
(出典: ダイヤモンド不動産研究所)
がん団信の詳細と注意点
がん診断で残債50%または100%免除
がん団信は、がん診断確定で残債の50%または100%が免除されます。50%保障は金利上乗せなし(無料)、100%保障は+0.1-0.2%が一般的です。
がん診断確定とは、医師によりがんと診断されることです。診断確定のタイミングで保険金が支払われるため、治療開始前に住宅ローンの負担が軽減されます。
上皮内がんは対象外が多い
多くのがん団信では、上皮内がんは保障対象外です。上皮内がんとは、がん細胞が粘膜内にとどまっている初期がんで、手術で完治する可能性が高いがんです。
がん団信を検討する際は、上皮内がんが保障されるか確認してください。一部の金融機関では、上皮内がんも保障する特約を提供しています。
がん保険との違い
がん団信とがん保険は以下の違いがあります。
| 項目 | がん団信 | がん保険 | 
|---|---|---|
| 保障内容 | 住宅ローン残債の免除 | 治療費・入院費等 | 
| 受取人 | 金融機関 | 被保険者または家族 | 
| 加入時期 | 住宅ローン契約時 | いつでも | 
がん団信は住宅ローン残債のみ保障し、治療費は出ません。がん治療には高額な費用がかかる可能性があるため、がん保険も併用することを推奨します。
(出典: りそな銀行)
団信に加入できないケースと対処法
加入できない健康状態
団信には告知義務があり、健康状態が基準を満たさない場合は加入できません。
加入できない例:
- 過去3年以内に重大な病気・ケガで治療を受けた
- 現在、継続的に薬を服用している
- 手術予定がある
告知内容は金融機関により異なりますが、一般的には過去3年以内の病歴・治療歴、現在の健康状態を告知します。
ワイド団信の加入条件
ワイド団信は告知内容を緩和していますが、すべての持病がある人が加入できるわけではありません。審査は個別に行われ、持病の種類や治療状況によって加入の可否が決まります。
ワイド団信でも加入できない場合は、以下の対処法があります。
団信未加入でも住宅ローンは組める(フラット35等)
フラット35等の一部住宅ローンは、団信任意加入のため、団信未加入でも住宅ローンを組むことができます。
団信未加入の場合の注意点:
- 生命保険等で別途備える必要
- 遺族に住宅ローンの返済義務が残る
団信未加入の場合、生命保険の保障額を住宅ローン残債以上に設定し、遺族が住宅を失わないよう備えることが重要です。
(出典: 住宅金融支援機構)
団信の注意点
住宅ローン契約時のみ加入可能(後から変更不可)
団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、契約後は加入・変更できません。一度加入した団信の種類を変更することもできません。
そのため、加入時の選択が重要です。保障内容と金利上乗せのバランスを考え、自分に合った団信を選んでください。
告知義務(正確に告知しないと保険金不払い)
団信加入時には、健康状態を正確に告知する義務があります。告知義務違反(健康状態を偽って申告)があると、保険金が支払われません。
告知義務違反の例:
- 過去の病歴・治療歴を隠した
- 現在の健康状態を偽った
告知義務違反があると、債務者が死亡・高度障害になっても保険金が支払われず、遺族に住宅ローンの返済義務が残ります。正確な告知が極めて重要です。
特約付きは金利上乗せで総返済額が増加
特約を付けると金利が上乗せされ、総返済額が増加します。
計算例:
- 住宅ローン3000万円、35年返済、金利1.0%
- がん100%保障(金利+0.2%)を付けた場合、総返済額は約120万円増加
保障内容と負担のバランスを考え、必要な保障を選ぶことが大切です。特約を付けすぎると、住宅ローンの負担が増え、生活を圧迫する可能性があります。
(出典: 京葉銀行)
まとめ
団信は住宅ローン専用の生命保険で、債務者が死亡・高度障害時にローン残債がゼロになります。一般団信、がん団信、3大疾病団信等の種類があり、保険料(金利上乗せ)も異なります。
加入時の選択が重要で、契約後は加入・変更できません。告知義務を正確に履行し、保障内容と負担のバランスを考えることが大切です。
持病がある場合はワイド団信を検討し、加入できない場合はフラット35等の団信任意加入の住宅ローンも選択肢です。信頼できる金融機関や専門家に相談しながら、自分に合った団信を選びましょう。
