団信とは?住宅ローンの団体信用生命保険の仕組み・種類・注意点を解説

公開日: 2025/10/27

団信(団体信用生命保険)とは?

住宅ローンを検討する際、「団信とは何か」「必要なのか」「種類や保険料はどうなっているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、団信の仕組み、種類(一般団信・がん団信・3大疾病団信等)、保険料、加入できないケース、注意点を、金融庁・住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。

初めて住宅ローンを検討する方でも、団信の全体像を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 団信は住宅ローン専用の生命保険で、債務者が死亡・高度障害時にローン残債がゼロになる
  • 一般団信は金利上乗せなし(フラット35は年0.2%)、特約付きは+0.1-0.3%
  • がん団信・3大疾病団信・全疾病団信等の種類があり、保障内容と金利上乗せが異なる
  • 持病がある場合はワイド団信を検討(金利+0.2-0.3%)
  • 団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、契約後は加入・変更できない

団信(団体信用生命保険)は、住宅ローン専用の生命保険です。債務者が死亡または高度障害状態になった場合、保険金でローン残債が完済される仕組みです。

5W1Hで整理:

  • What(何): 住宅ローン専用の生命保険
  • Who(誰): 住宅ローン債務者(保険金受取人は金融機関)
  • When(いつ): 死亡・高度障害時に保険金で残債完済
  • Why(なぜ): 遺族が住宅を失わないため、金融機関のリスクヘッジ
  • How much(いくら): 一般団信は金利上乗せなし、特約付きは+0.1-0.3%程度

団信の最大のメリットは、遺族に住宅ローンの返済義務が残らないことです。債務者が亡くなっても、遺族は住宅を保持できます。

団信の仕組みと保障内容

保障される条件(死亡・高度障害)

団信は、以下の条件に該当した場合に保険金が支払われます。

保障される条件:

条件 内容
死亡 債務者が死亡した場合
高度障害 両眼の視力を永久に失った、言語またはそしゃくの機能を永久に失った等の重度の障害状態

高度障害の具体例:

  • 両眼の視力を永久に失った
  • 言語またはそしゃくの機能を永久に失った
  • 両上肢または両下肢の用を全く永久に失った
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態

保険金の受取人(金融機関)

団信の保険金は、金融機関が受け取ります。遺族が直接受け取ることはできません。保険金は住宅ローン残債の完済に充当され、遺族には住宅ローンのない住宅が残ります。

この仕組みにより、遺族は住宅ローンの返済義務から解放され、住宅を失うリスクが回避されます。

医療保険との違い

団信は住宅ローン残債のみ保障します。医療保険とは以下の違いがあります。

項目 団信 医療保険
保障内容 住宅ローン残債の完済 治療費・入院費等
受取人 金融機関 被保険者または家族
加入時期 住宅ローン契約時 いつでも

団信は治療費を保障しないため、医療保険やがん保険とは別物です。団信に加入しても、医療保険の必要性は残ります。

(出典: 三菱UFJ銀行

団信の種類と保険料比較

団信には複数の種類があり、保障内容と保険料(金利上乗せ)が異なります。

一般団信(死亡・高度障害)

一般団信は、死亡・高度障害を保障する基本的な団信です。民間銀行では保険料無料(金利上乗せなし)が一般的ですが、フラット35は年0.2%上乗せとなります。

一般団信の特徴:

項目 民間銀行 フラット35
保険料 無料(金利上乗せなし) 年0.2%上乗せ
加入義務 必須 任意

(出典: 住宅金融支援機構

がん団信(がん診断で残債免除)

がん団信は、がん診断確定で残債の50%または100%が免除される団信です。金利上乗せは+0.0-0.2%程度です。

がん団信の種類:

種類 保障内容 金利上乗せ
がん50%保障 がん診断で残債50%免除 +0.0%(無料)
がん100%保障 がん診断で残債100%免除 +0.1-0.2%

注意点: 上皮内がん(がん細胞が粘膜内にとどまっている初期がん)は対象外のことが多いです。がん団信を検討する際は、上皮内がんが保障されるか確認してください。

(出典: りそな銀行

3大疾病団信(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)

3大疾病団信は、がん・脳卒中・急性心筋梗塞を保障する団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。

保障条件:

  • がん: 診断確定で残債免除
  • 脳卒中: 一定日数以上の後遺症で残債免除(金融機関により異なる)
  • 急性心筋梗塞: 一定日数以上の後遺症で残債免除(金融機関により異なる)

脳卒中・急性心筋梗塞は、一定日数(60日等)以上の後遺症が残った場合に保障されることが多いです。診断確定のみでは保障されない場合があるため、保障条件を確認してください。

全疾病団信(就業不能)

全疾病団信は、すべての病気・ケガで就業不能になった場合、住宅ローン返済が一定期間免除される団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。

就業不能の定義や保障期間は金融機関により異なるため、契約前に確認してください。

ワイド団信(持病がある人向け)

ワイド団信は、持病がある人向けに加入条件を緩和した団信です。金利上乗せは+0.2-0.3%程度です。

加入条件の緩和:

  • 高血圧、糖尿病、肝炎等の持病がある人でも加入できる可能性
  • 告知内容が緩和(過去3年以内の病歴・治療歴等)

ただし、すべての持病がある人が加入できるわけではありません。審査は個別に行われます。

(出典: モゲチェック

団信の種類比較表

種類 保障内容 金利上乗せ
一般団信 死亡・高度障害 +0.0%(フラット35は+0.2%)
がん50%保障 がん診断で残債50%免除 +0.0%
がん100%保障 がん診断で残債100%免除 +0.1-0.2%
3大疾病団信 がん・脳卒中・急性心筋梗塞 +0.2-0.3%
全疾病団信 すべての病気・ケガで就業不能 +0.2-0.3%
ワイド団信 持病がある人向け +0.2-0.3%

(出典: ダイヤモンド不動産研究所

がん団信の詳細と注意点

がん診断で残債50%または100%免除

がん団信は、がん診断確定で残債の50%または100%が免除されます。50%保障は金利上乗せなし(無料)、100%保障は+0.1-0.2%が一般的です。

がん診断確定とは、医師によりがんと診断されることです。診断確定のタイミングで保険金が支払われるため、治療開始前に住宅ローンの負担が軽減されます。

上皮内がんは対象外が多い

多くのがん団信では、上皮内がんは保障対象外です。上皮内がんとは、がん細胞が粘膜内にとどまっている初期がんで、手術で完治する可能性が高いがんです。

がん団信を検討する際は、上皮内がんが保障されるか確認してください。一部の金融機関では、上皮内がんも保障する特約を提供しています。

がん保険との違い

がん団信とがん保険は以下の違いがあります。

項目 がん団信 がん保険
保障内容 住宅ローン残債の免除 治療費・入院費等
受取人 金融機関 被保険者または家族
加入時期 住宅ローン契約時 いつでも

がん団信は住宅ローン残債のみ保障し、治療費は出ません。がん治療には高額な費用がかかる可能性があるため、がん保険も併用することを推奨します。

(出典: りそな銀行

団信に加入できないケースと対処法

加入できない健康状態

団信には告知義務があり、健康状態が基準を満たさない場合は加入できません。

加入できない例:

  • 過去3年以内に重大な病気・ケガで治療を受けた
  • 現在、継続的に薬を服用している
  • 手術予定がある

告知内容は金融機関により異なりますが、一般的には過去3年以内の病歴・治療歴、現在の健康状態を告知します。

ワイド団信の加入条件

ワイド団信は告知内容を緩和していますが、すべての持病がある人が加入できるわけではありません。審査は個別に行われ、持病の種類や治療状況によって加入の可否が決まります。

ワイド団信でも加入できない場合は、以下の対処法があります。

団信未加入でも住宅ローンは組める(フラット35等)

フラット35等の一部住宅ローンは、団信任意加入のため、団信未加入でも住宅ローンを組むことができます。

団信未加入の場合の注意点:

  • 生命保険等で別途備える必要
  • 遺族に住宅ローンの返済義務が残る

団信未加入の場合、生命保険の保障額を住宅ローン残債以上に設定し、遺族が住宅を失わないよう備えることが重要です。

(出典: 住宅金融支援機構

団信の注意点

住宅ローン契約時のみ加入可能(後から変更不可)

団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、契約後は加入・変更できません。一度加入した団信の種類を変更することもできません。

そのため、加入時の選択が重要です。保障内容と金利上乗せのバランスを考え、自分に合った団信を選んでください。

告知義務(正確に告知しないと保険金不払い)

団信加入時には、健康状態を正確に告知する義務があります。告知義務違反(健康状態を偽って申告)があると、保険金が支払われません。

告知義務違反の例:

  • 過去の病歴・治療歴を隠した
  • 現在の健康状態を偽った

告知義務違反があると、債務者が死亡・高度障害になっても保険金が支払われず、遺族に住宅ローンの返済義務が残ります。正確な告知が極めて重要です。

特約付きは金利上乗せで総返済額が増加

特約を付けると金利が上乗せされ、総返済額が増加します。

計算例:

  • 住宅ローン3000万円、35年返済、金利1.0%
  • がん100%保障(金利+0.2%)を付けた場合、総返済額は約120万円増加

保障内容と負担のバランスを考え、必要な保障を選ぶことが大切です。特約を付けすぎると、住宅ローンの負担が増え、生活を圧迫する可能性があります。

(出典: 京葉銀行

まとめ

団信は住宅ローン専用の生命保険で、債務者が死亡・高度障害時にローン残債がゼロになります。一般団信、がん団信、3大疾病団信等の種類があり、保険料(金利上乗せ)も異なります。

加入時の選択が重要で、契約後は加入・変更できません。告知義務を正確に履行し、保障内容と負担のバランスを考えることが大切です。

持病がある場合はワイド団信を検討し、加入できない場合はフラット35等の団信任意加入の住宅ローンも選択肢です。信頼できる金融機関や専門家に相談しながら、自分に合った団信を選びましょう。

よくある質問

Q1団信に入らなくても住宅ローンは組めますか?

A1フラット35等は団信任意加入のため、団信未加入でも住宅ローン可能です。ただし、民間銀行は団信加入が必須条件のことが多いです。団信未加入の場合、生命保険等で別途備える必要があり、遺族に住宅ローンの返済義務が残ります。生命保険の保障額を住宅ローン残債以上に設定することを推奨します。

Q2団信と生命保険は両方必要ですか?

A2団信は住宅ローン残債のみ保障します。生活費や子供の教育費等は保障されないため、生命保険も併用することを推奨します。ただし、団信加入により生命保険の保障額を減額できる可能性があります。生命保険の保障額を見直し、重複を避けながら必要な保障を確保してください。

Q3団信の保険料は誰が負担しますか?

A3民間銀行の一般団信は金融機関が負担し、金利上乗せはありません(保険料無料)。特約付き団信や、フラット35の団信は債務者が負担し、金利上乗せ方式で保険料を支払います。がん団信は+0.1-0.2%、3大疾病団信は+0.2-0.3%程度の金利上乗せが一般的です。

Q4持病があっても団信に加入できますか?

A4ワイド団信は告知内容を緩和していますが、すべての持病がある人が加入できるわけではありません。審査は個別に行われ、持病の種類や治療状況によって加入の可否が決まります。加入できない場合、フラット35等の団信任意加入の住宅ローンを検討してください。

Q5団信の保険金は誰が受け取りますか?

A5金融機関が受け取ります。保険金は住宅ローン残債の完済に充当されます。遺族が直接受け取ることはできませんが、遺族には住宅ローンのない住宅が残ります。遺族は住宅ローンの返済義務から解放され、住宅を失うリスクが回避されます。