住宅ローン控除の初年度確定申告に必要な書類一覧と入手方法

公開日: 2025/10/27

住宅ローン控除の初年度に確定申告が必要な理由

住宅ローンで住宅を購入したとき、「確定申告が必要」と聞いて戸惑う会社員の方は少なくありません。普段は年末調整で済んでいるのに、なぜ初年度だけ確定申告が必要なのか、どんな書類を準備すればいいのか、不安を感じることでしょう。

この記事では、住宅ローン控除の初年度確定申告に必要な書類の一覧、入手方法、確定申告の手順を、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。

初めて確定申告をする方でも、必要な書類を正確に把握し、期限内にスムーズに申告できるようになります。

この記事のポイント

  • 会社員でも初年度のみ確定申告が必須(2年目以降は年末調整で可能)
  • 必須書類は5つ(確定申告書、計算明細書、残高証明書、売買契約書、登記事項証明書)
  • 中古住宅・認定住宅は追加書類が必要(耐震基準適合証明書・認定通知書等)
  • e-Taxとマイナンバーカードで一部書類の提出を省略可能
  • 申告期限は翌年2月16日-3月15日、還付は1-2ヶ月後

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末時点のローン残高の一定割合が所得税・住民税から控除される制度です。

会社員の場合、2年目以降は年末調整で控除を受けられますが、初年度のみ確定申告が必須です。確定申告により、所得税の還付を受け、翌年度の住民税も軽減されます。

国税庁によると、2025年の場合、申告期限は翌年2月16日-3月15日です。この期間に確定申告を行うと、1-2ヶ月後に還付金が振り込まれます。

還付申告は5年間遡及可能ですが、還付が遅れるため、期限内の申告をおすすめします。

必ず必要な書類一覧

住宅ローン控除の確定申告には、以下の5つの書類が必須です。

確定申告書(国税庁サイトから作成)

確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成します。給与所得者は「給与所得者用」を選択し、源泉徴収票の内容を入力します。

作成した申告書は、e-Tax(電子申請)または印刷して税務署に郵送・持参します。

住宅借入金等特別控除額の計算明細書

住宅ローン控除を受けるために作成・提出する書類です。年末残高・控除額の計算根拠を記載します。

国税庁サイトからPDF・Excel形式でダウンロードできます。「確定申告書等作成コーナー」で入力すれば自動計算されるため、手計算は不要です。

融資額残高証明書(金融機関から郵送)

金融機関が発行する、住宅ローンの年末時点の残高を証明する書類です。毎年10月中旬頃に郵送されます。

重要: この書類を紛失すると、金融機関への再発行依頼が必要で、一般的に1-2週間かかります。届いたら即座に保管しましょう。

2024年以降の新制度(調書方式): 国税庁によると、金融機関が国税庁に年末残高情報を直接提供する「調書方式」が導入されました。マイナポータル経由で取得すれば、残高証明書の提出が不要になります。ただし、居住開始年内の事前申請が必要です。

売買契約書または建築請負契約書の写し

不動産の購入価格・取得日を証明する書類です。契約時に不動産会社から受け取った原本をコピーして提出します。

原本は手元に保管し、写し(コピー)を提出してください。

登記事項証明書(法務局から取得)

不動産の所有者・所在地・面積等を証明する書類です。法務局で取得します。

入手方法と費用:

方法 手数料 所要時間
オンライン請求 480円 数日で郵送
窓口請求 600円 即日
郵送請求 600円 1週間程度

(出典: 法務局

e-Taxでの省略: e-Taxで申告する場合、不動産番号を入力すれば原本提出を省略できます。不動産番号は、購入時に受け取った登記識別情報通知に記載されています。

物件によって必要な追加書類

新築住宅の場合は上記5つの書類で足りますが、中古住宅・認定住宅・増改築の場合は追加書類が必要です。

中古住宅の場合(耐震基準適合証明書等)

中古住宅を購入した場合、築年数により追加書類が必要です。

  • 1982年1月1日以降に建築: 追加書類不要
  • 1982年1月1日より前に建築: 以下のいずれかが必須
    • 耐震基準適合証明書
    • 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
    • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書

これらの書類は、国土交通省が認定した登録住宅性能評価機関で発行されます。発行には一般的に2-3週間かかるため、早めの手配が必要です。

認定住宅の場合(認定通知書等)

認定長期優良住宅または認定低炭素住宅を購入した場合、以下の書類が必要です。

  • 認定長期優良住宅: 長期優良住宅建築等計画認定通知書の写し
  • 認定低炭素住宅: 低炭素建築物新築等計画認定通知書の写し

認定住宅の場合、住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高く設定されます(最大5000万円)。

増改築の場合(確認済証等)

増改築により住宅ローン控除を受ける場合、以下の書類が必要です。

  • 建築確認済証の写し
  • 検査済証の写し
  • 増改築等工事証明書

増改築の要件(工事費用100万円以上、床面積50㎡以上等)を満たす必要があります。

e-Taxとマイナンバーカードで省略できる書類

e-Tax(インターネット確定申告)を利用すると、一部の書類提出を省略できます。

調書方式(2024年以降の新制度)

国税庁によると、2024年以降、金融機関が国税庁に年末残高情報を直接提供する「調書方式」が導入されました。

マイナポータル経由で年末残高情報を取得すれば、融資額残高証明書の提出が不要になります。

利用条件:

  • 居住開始年内に金融機関への事前申請が必要
  • マイナンバーカードを持っている
  • e-Taxで申告する

事前申請を忘れた場合、初年度は従来方式(残高証明書を提出)での申告が必要です。

マイナポータル連携の活用

マイナポータルと連携することで、以下の情報を自動取得できます。

  • 源泉徴収票の内容
  • 社会保険料の支払額
  • 生命保険料控除の証明書

ただし、住宅ローン控除の書類(売買契約書・登記事項証明書等)は自動取得できないため、別途準備が必要です。

登記事項証明書については、e-Tax申告時に不動産番号を入力すれば原本提出を省略できます。

確定申告の手順とチェックリスト

確定申告は以下の3ステップで進めます。

ステップ1: 書類準備

必要書類をチェックリスト形式で確認しましょう。

全員必須:

  • 確定申告書(作成コーナーで作成)
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 融資額残高証明書(10月頃に郵送)
  • 売買契約書または建築請負契約書の写し
  • 登記事項証明書(法務局で取得)

物件により追加:

  • 耐震基準適合証明書(中古住宅で1982年以前の建築)
  • 認定通知書の写し(認定住宅)
  • 建築確認済証・検査済証(増改築)

ステップ2: 確定申告書の作成

国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の指示に従って入力します。

源泉徴収票の内容、住宅ローン控除の情報(年末残高、物件の取得価格等)を入力すると、控除額が自動計算されます。

ステップ3: 提出

作成した申告書を提出します。

方法 提出期限 還付時期
e-Tax(電子申請) 24時間受付 1ヶ月程度
郵送 3月15日消印有効 2ヶ月程度
税務署窓口 平日8:30-17:00 2ヶ月程度

e-Taxなら24時間申請可能で、還付が早いため、マイナンバーカードを持っている方にはおすすめです。

申告期限を過ぎても還付申告は5年間遡及可能ですが、還付が遅れるため、期限内(翌年2月16日-3月15日)に申告することが望ましいです。

まとめ

住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須です。必須書類は5つ(確定申告書・計算明細書・残高証明書・売買契約書・登記事項証明書)で、物件により追加書類(耐震基準適合証明書・認定通知書等)が必要です。

e-Taxとマイナンバーカードを利用すれば、登記事項証明書の原本提出を省略でき、調書方式なら残高証明書も不要になります。

次のアクションとして、融資額残高証明書を確実に保管し、必要書類チェックリストを確認しましょう。期限内(翌年2月16日-3月15日)に申告を完了し、1-2ヶ月後の還付を受け取ってください。

不明点がある場合は、税務署の確定申告相談窓口や、信頼できる税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1融資額残高証明書を紛失した場合どうすればいいですか?

A1金融機関に再発行を依頼します。発行まで1-2週間かかるため、10月頃に届いたら即座に保管することが重要です。再発行手数料がかかる場合もあります(金融機関により異なる)。確定申告の期限(翌年3月15日)に間に合うよう、紛失に気づいたらすぐに再発行依頼をしてください。

Q2登記事項証明書は必ず原本が必要ですか?

A2e-Taxで申告する場合、不動産番号を入力すれば原本提出を省略できます。郵送申告の場合は原本または写しの提出が必要です。オンライン請求なら480円、窓口請求なら600円で取得可能です。不動産番号は、購入時に受け取った登記識別情報通知に記載されています。

Q3確定申告の期限を過ぎても控除は受けられますか?

A3還付申告は5年間遡及可能なため、期限後でも控除を受けられます。ただし還付が遅れるため、翌年2月16日-3月15日の期限内に申告することが望ましいです。期限を過ぎた場合でも、税務署に相談すれば申告手続きができます。5年を過ぎると控除を受ける権利が消滅するため、早めの対応が必要です。

Q42年目以降も確定申告が必要ですか?

A4会社員なら2年目以降は年末調整で控除可能です。初年度の確定申告後、税務署から「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」が郵送されます。この証明書と金融機関の「融資額残高証明書」を会社に提出すれば、年末調整で控除が受けられます。自営業者は毎年確定申告が必要です。