住宅ローン控除の初年度に確定申告が必要な理由
住宅ローンで住宅を購入したとき、「確定申告が必要」と聞いて戸惑う会社員の方は少なくありません。普段は年末調整で済んでいるのに、なぜ初年度だけ確定申告が必要なのか、どんな書類を準備すればいいのか、不安を感じることでしょう。
この記事では、住宅ローン控除の初年度確定申告に必要な書類の一覧、入手方法、確定申告の手順を、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めて確定申告をする方でも、必要な書類を正確に把握し、期限内にスムーズに申告できるようになります。
この記事のポイント
- 会社員でも初年度のみ確定申告が必須(2年目以降は年末調整で可能)
- 必須書類は5つ(確定申告書、計算明細書、残高証明書、売買契約書、登記事項証明書)
- 中古住宅・認定住宅は追加書類が必要(耐震基準適合証明書・認定通知書等)
- e-Taxとマイナンバーカードで一部書類の提出を省略可能
- 申告期限は翌年2月16日-3月15日、還付は1-2ヶ月後
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末時点のローン残高の一定割合が所得税・住民税から控除される制度です。
会社員の場合、2年目以降は年末調整で控除を受けられますが、初年度のみ確定申告が必須です。確定申告により、所得税の還付を受け、翌年度の住民税も軽減されます。
国税庁によると、2025年の場合、申告期限は翌年2月16日-3月15日です。この期間に確定申告を行うと、1-2ヶ月後に還付金が振り込まれます。
還付申告は5年間遡及可能ですが、還付が遅れるため、期限内の申告をおすすめします。
必ず必要な書類一覧
住宅ローン控除の確定申告には、以下の5つの書類が必須です。
確定申告書(国税庁サイトから作成)
確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成します。給与所得者は「給与所得者用」を選択し、源泉徴収票の内容を入力します。
作成した申告書は、e-Tax(電子申請)または印刷して税務署に郵送・持参します。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住宅ローン控除を受けるために作成・提出する書類です。年末残高・控除額の計算根拠を記載します。
国税庁サイトからPDF・Excel形式でダウンロードできます。「確定申告書等作成コーナー」で入力すれば自動計算されるため、手計算は不要です。
融資額残高証明書(金融機関から郵送)
金融機関が発行する、住宅ローンの年末時点の残高を証明する書類です。毎年10月中旬頃に郵送されます。
重要: この書類を紛失すると、金融機関への再発行依頼が必要で、一般的に1-2週間かかります。届いたら即座に保管しましょう。
2024年以降の新制度(調書方式): 国税庁によると、金融機関が国税庁に年末残高情報を直接提供する「調書方式」が導入されました。マイナポータル経由で取得すれば、残高証明書の提出が不要になります。ただし、居住開始年内の事前申請が必要です。
売買契約書または建築請負契約書の写し
不動産の購入価格・取得日を証明する書類です。契約時に不動産会社から受け取った原本をコピーして提出します。
原本は手元に保管し、写し(コピー)を提出してください。
登記事項証明書(法務局から取得)
不動産の所有者・所在地・面積等を証明する書類です。法務局で取得します。
入手方法と費用:
| 方法 | 手数料 | 所要時間 | 
|---|---|---|
| オンライン請求 | 480円 | 数日で郵送 | 
| 窓口請求 | 600円 | 即日 | 
| 郵送請求 | 600円 | 1週間程度 | 
(出典: 法務局)
e-Taxでの省略: e-Taxで申告する場合、不動産番号を入力すれば原本提出を省略できます。不動産番号は、購入時に受け取った登記識別情報通知に記載されています。
物件によって必要な追加書類
新築住宅の場合は上記5つの書類で足りますが、中古住宅・認定住宅・増改築の場合は追加書類が必要です。
中古住宅の場合(耐震基準適合証明書等)
中古住宅を購入した場合、築年数により追加書類が必要です。
- 1982年1月1日以降に建築: 追加書類不要
- 1982年1月1日より前に建築: 以下のいずれかが必須- 耐震基準適合証明書
- 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
 
これらの書類は、国土交通省が認定した登録住宅性能評価機関で発行されます。発行には一般的に2-3週間かかるため、早めの手配が必要です。
認定住宅の場合(認定通知書等)
認定長期優良住宅または認定低炭素住宅を購入した場合、以下の書類が必要です。
- 認定長期優良住宅: 長期優良住宅建築等計画認定通知書の写し
- 認定低炭素住宅: 低炭素建築物新築等計画認定通知書の写し
認定住宅の場合、住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高く設定されます(最大5000万円)。
増改築の場合(確認済証等)
増改築により住宅ローン控除を受ける場合、以下の書類が必要です。
- 建築確認済証の写し
- 検査済証の写し
- 増改築等工事証明書
増改築の要件(工事費用100万円以上、床面積50㎡以上等)を満たす必要があります。
e-Taxとマイナンバーカードで省略できる書類
e-Tax(インターネット確定申告)を利用すると、一部の書類提出を省略できます。
調書方式(2024年以降の新制度)
国税庁によると、2024年以降、金融機関が国税庁に年末残高情報を直接提供する「調書方式」が導入されました。
マイナポータル経由で年末残高情報を取得すれば、融資額残高証明書の提出が不要になります。
利用条件:
- 居住開始年内に金融機関への事前申請が必要
- マイナンバーカードを持っている
- e-Taxで申告する
事前申請を忘れた場合、初年度は従来方式(残高証明書を提出)での申告が必要です。
マイナポータル連携の活用
マイナポータルと連携することで、以下の情報を自動取得できます。
- 源泉徴収票の内容
- 社会保険料の支払額
- 生命保険料控除の証明書
ただし、住宅ローン控除の書類(売買契約書・登記事項証明書等)は自動取得できないため、別途準備が必要です。
登記事項証明書については、e-Tax申告時に不動産番号を入力すれば原本提出を省略できます。
確定申告の手順とチェックリスト
確定申告は以下の3ステップで進めます。
ステップ1: 書類準備
必要書類をチェックリスト形式で確認しましょう。
全員必須:
- 確定申告書(作成コーナーで作成)
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 融資額残高証明書(10月頃に郵送)
- 売買契約書または建築請負契約書の写し
- 登記事項証明書(法務局で取得)
物件により追加:
- 耐震基準適合証明書(中古住宅で1982年以前の建築)
- 認定通知書の写し(認定住宅)
- 建築確認済証・検査済証(増改築)
ステップ2: 確定申告書の作成
国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の指示に従って入力します。
源泉徴収票の内容、住宅ローン控除の情報(年末残高、物件の取得価格等)を入力すると、控除額が自動計算されます。
ステップ3: 提出
作成した申告書を提出します。
| 方法 | 提出期限 | 還付時期 | 
|---|---|---|
| e-Tax(電子申請) | 24時間受付 | 1ヶ月程度 | 
| 郵送 | 3月15日消印有効 | 2ヶ月程度 | 
| 税務署窓口 | 平日8:30-17:00 | 2ヶ月程度 | 
e-Taxなら24時間申請可能で、還付が早いため、マイナンバーカードを持っている方にはおすすめです。
申告期限を過ぎても還付申告は5年間遡及可能ですが、還付が遅れるため、期限内(翌年2月16日-3月15日)に申告することが望ましいです。
まとめ
住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須です。必須書類は5つ(確定申告書・計算明細書・残高証明書・売買契約書・登記事項証明書)で、物件により追加書類(耐震基準適合証明書・認定通知書等)が必要です。
e-Taxとマイナンバーカードを利用すれば、登記事項証明書の原本提出を省略でき、調書方式なら残高証明書も不要になります。
次のアクションとして、融資額残高証明書を確実に保管し、必要書類チェックリストを確認しましょう。期限内(翌年2月16日-3月15日)に申告を完了し、1-2ヶ月後の還付を受け取ってください。
不明点がある場合は、税務署の確定申告相談窓口や、信頼できる税理士に相談することをおすすめします。
