住宅ローン初年度の確定申告マニュアル|必要書類と手続きの流れ

公開日: 2025/10/27

住宅ローン控除とは

住宅ローンを利用して住宅を購入した方は、初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は勤務先の年末調整で控除を受けられますが、初年度だけは自分で手続きしなければなりません。

この記事では、住宅ローン初年度の確定申告に必要な書類、手続きの流れ、よくあるミスと対策を、国税庁国土交通省の公式情報を元に解説します。

初めて確定申告する方でも、チェックリスト形式で迷わず手続きできるようになります。

この記事のポイント

  • 住宅ローン控除は年末残高の0.7%を最大13年間控除できる制度
  • 初年度のみ確定申告が必要、2年目以降は勤務先の年末調整で可能
  • 必要書類は住民票・登記事項証明書・売買契約書・年末残高証明書等
  • e-Taxと書面提出の2つの方法があり、e-Taxは還付が早い(約2~3週間)
  • 確定申告期間は2月17日~3月17日だが、還付申告は1月1日から受付開始、5年以内なら申告可能

住宅ローン控除の基本的な仕組み

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅を取得・新築・増改築した場合、年末のローン残高の0.7%を所得税・住民税から最大13年間控除できる制度です。

国税庁によると、控除を受けるための主な要件は以下の通りです。

  • 合計所得金額が2,000万円以下
  • 住宅の床面積が50㎡以上(新築の場合)
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上
  • 住宅の取得日から6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住している

初年度は確定申告で住宅の要件を確認し、控除額を計算し、税務署に登録する手続きが必要です。2年目以降は勤務先の年末調整で控除を受けられるため、初年度のみの手続きです。

ただし、年収2,000万円以上の会社員や個人事業主は2年目以降も確定申告が必要です。

初年度の確定申告に必要な書類

住宅ローン控除の確定申告には、以下の書類が必要です。入手先別に整理しました。

税務署で入手する書類

書類名 入手方法
確定申告書 税務署の窓口、国税庁のウェブサイトからダウンロード、e-Taxで作成
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署の窓口、国税庁のウェブサイトからダウンロード

自治体で入手する書類

書類名 入手方法
住民票の写し 市区町村役場の窓口、コンビニ交付(マイナンバーカード必要)

金融機関から入手する書類

書類名 入手方法
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関から毎年10月頃に郵送される

法務局で入手する書類

書類名 入手方法
登記事項証明書(建物・土地) 法務局の窓口、オンライン申請

売主・不動産会社から入手する書類

書類名 入手方法
売買契約書のコピー 契約時に受領した書類を使用
源泉徴収票 勤務先から毎年1月頃に交付される

国税庁の公式サイトでは、住宅の区分別(認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、その他の住宅)に必要な証明書類が異なるため、事前に確認することを推奨しています。

確定申告の手順(e-Tax・書面提出)

確定申告の方法は、e-Tax(電子申告)と書面提出の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットを比較しました。

項目 e-Tax 書面提出
申告方法 パソコン・スマートフォンで24時間申告可能 税務署に郵送または持参
添付書類 登記事項証明書等はPDFで提出 原本または写しを郵送・持参
還付時期 約2~3週間 約1~2ヶ月
必要なもの マイナンバーカードまたはID・パスワード 確定申告書一式

e-Taxでの申告方法

e-Taxは国税庁の確定申告書等作成コーナーで手続きできます。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはマイナンバーカード対応スマートフォン)があれば、自宅から24時間申告可能です。

マイナンバーカードがない場合は、税務署でID・パスワードを発行してもらうことで利用できます。

書面での申告方法

確定申告書を国税庁のウェブサイトからダウンロードし、手書きで記入します。必要書類を添付して税務署に郵送または持参します。

確定申告期間は2025年の場合2月17日~3月17日ですが、住宅ローン控除は還付申告のため、1月1日から受付開始、5年以内なら申告可能です。

証明書方式と調書方式の違い

2024年から調書方式が導入されました。調書方式では、金融機関が年末残高等のデータを税務署に直接送信するため、証明書方式より提出書類が少なくなります。

ただし、国税庁によると、初年度は証明書類の提出が必要です。調書方式に対応していない金融機関を利用している場合は、従来の証明書方式で申告します。

よくあるミスと対策

初年度の確定申告でよくあるミスと対策を整理しました。

書類不足で申告が受理されない

登記事項証明書や売買契約書等の添付書類が不足していると、申告が受理されません。三井住友銀行によると、事前にチェックリストを作成し、必要書類を漏れなく準備することが重要です。

不明点は税務署に事前確認することを推奨します。

記入ミスで控除額が減る

住宅ローンの年末残高や床面積の記入ミスがあると、控除額が実際より少なくなる場合があります。申告書を提出する前に、必ず見直しを行いましょう。

申告期限を過ぎてしまう

確定申告期間は2月17日~3月17日ですが、還付申告は1月1日から受付開始、5年以内なら申告可能です。期限を過ぎても還付申告は受け付けられますが、還付金の受取が遅れるため、期限内の申告を推奨します。

2年目以降は年末調整で可能

初年度の確定申告が完了すると、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がローン控除の適用年数分(最大13年分)まとめて送付されます。

2年目以降は、この申告書と金融機関から送付される年末残高証明書の2点を勤務先に提出するだけで、年末調整で控除を受けられます。

国税庁によると、還付金は12月または1月の給与に含まれます。年末調整を忘れた場合は、確定申告で5年さかのぼって申告できます。

ただし、年収2,000万円以上の会社員や個人事業主は2年目以降も確定申告が必要です。

2025年の制度変更点

国土交通省によると、2025年度税制改正後も住宅ローン控除の基本的な仕組みは変わりませんが、子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額上乗せ措置が2025年も継続されます。

住宅の環境性能別に借入限度額が異なるため、事前に確認することをおすすめします。

住宅の区分 借入限度額
認定住宅 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円
その他の住宅 3,000万円

(出典: 国土交通省

まとめ

住宅ローン初年度の確定申告は手間がかかりますが、2年目以降は年末調整で簡単に控除を受けられるため、初年度のみの手続きです。

必要書類を早めに準備し、期限(2月17日~3月17日、還付申告は1月1日から可能)を守ることを推奨します。e-Taxを利用すると還付が早く(約2~3週間)、書類の郵送も不要です。

不明点は税務署や税理士に相談しながら、確実に手続きを進めましょう。

よくある質問

Q1住宅ローン控除の還付金はいつ入金されますか?

A1e-Taxで申告した場合は約2~3週間、書面提出の場合は約1~2ヶ月で指定口座に振り込まれます。2年目以降の年末調整では12月または1月の給与に還付金が含まれます。還付時期は申告内容や税務署の処理状況により前後する場合があります。

Q2中古住宅でも住宅ローン控除は受けられますか?

A2一定の要件(築年数制限または耐震基準適合、床面積50㎡以上等)を満たせば受けられます。2024年以降は新築・買取再販以外の既存住宅の借入限度額は2,000万円です。詳細は国土交通省のQ&Aや税務署に確認することをおすすめします。

Q3確定申告を忘れた場合、住宅ローン控除は受けられませんか?

A3還付申告は5年以内なら可能です。例えば2024年入居分は2029年12月31日まで申告できます。ただし早めに申告しないと還付金の受取が遅れるため、期限内の申告を推奨します。不明点は税務署に相談しましょう。

Q4e-Taxで申告する場合、添付書類はすべて省略できますか?

A4登記事項証明書や売買契約書はPDFで添付が必要です。省略できるのは源泉徴収票等の一部書類のみです。調書方式でも初年度は証明書類の提出が必要です。詳細は国税庁のe-Taxガイドを参照してください。

Q52年目以降の年末調整を忘れたらどうなりますか?

A5年末調整を忘れた場合でも、確定申告で5年さかのぼって控除を受けられます。勤務先に申告書を提出し忘れた場合は、翌年2月17日~3月17日の確定申告期間に自分で申告しましょう。税務署に相談することをおすすめします。