住宅ローン控除とは?所得税から還付される仕組み
住宅を購入する際、「住宅ローン控除で実際にどれくらい還付されるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、2025年時点の制度に基づいて、住宅ローン控除の基本的な仕組み、所得税と住民税からの還付の流れ、控除額の計算方法を国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
住宅ローン控除が「税額控除」であること、所得税額が少ない場合は満額控除されないことを理解できます。
この記事のポイント
- 住宅ローン控除は「税額控除」であり、所得税額そのものから差し引かれるため節税効果が大きい
- 控除率は0.7%、年末ローン残高×0.7%が控除額(控除期間は新築13年・中古10年)
- 所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除されるが、住民税の控除上限は97,500円
- 新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅)は借入限度額が高く、最大控除額455万円
- 1年目は確定申告が必須、2年目以降は年末調整で手続き可能(給与所得者の場合)
住宅ローン控除の基本的な仕組み
税額控除と所得控除の違い
住宅ローン控除は「税額控除」です。税額控除と所得控除の違いを理解することが重要です。
| 項目 | 税額控除 | 所得控除 | 
|---|---|---|
| 控除対象 | 所得税額から直接差し引く | 課税所得から差し引く | 
| 節税効果 | 大きい(控除額がそのまま還付) | 小さい(控除額×税率分が還付) | 
| 例 | 住宅ローン控除、配当控除 | 医療費控除、扶養控除 | 
(出典: 国税庁)
具体例:
- 所得税額20万円、税額控除15万円の場合 → 還付額15万円(所得税5万円に減額)
- 所得税額20万円、所得控除15万円の場合 → 還付額は15万円×税率(例: 20%なら3万円)
このように、税額控除は所得税額から直接差し引かれるため、節税効果が非常に大きいのが特徴です。
控除率0.7%の計算方法
住宅ローン控除の控除率は0.7%です。年末時点のローン残高に0.7%を乗じた額が、その年の控除額となります。
計算式:
控除額(年間)= 年末ローン残高 × 0.7%
計算例:
| 年末ローン残高 | 控除額(年間) | 
|---|---|
| 3,000万円 | 21万円 | 
| 2,500万円 | 17.5万円 | 
| 2,000万円 | 14万円 | 
(出典: 国税庁)
ただし、この控除額は所得税額が十分にある場合の上限です。所得税額が少ない場合は、所得税額までしか控除されません。
控除期間と借入限度額
控除期間と借入限度額は、住宅の種類により異なります。
| 住宅種類 | 控除期間 | 借入限度額 | 最大控除額 | 
|---|---|---|---|
| 新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅) | 13年 | 5,000万円 | 455万円 | 
| 新築一般住宅 | 13年 | 3,000万円 | 273万円 | 
| 中古住宅(認定住宅) | 10年 | 3,000万円 | 210万円 | 
| 中古住宅(一般) | 10年 | 2,000万円 | 140万円 | 
(出典: 国税庁、2022年以降入居の場合)
2022年の税制改正で控除率が0.7%に引き下げられましたが、新築住宅の控除期間が10年から13年に延長されました。
所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除
住民税の控除上限額97,500円
所得税額が少ない場合、控除しきれない額は翌年の住民税から控除されます。ただし、住民税の控除には上限があります。
住民税の控除上限:
地方税法による住民税の控除上限は、所得税の課税総所得金額等の5%または97,500円のいずれか少ない額
総務省によると、住民税からの控除は自動的に行われるため、別途手続きは不要です。
具体的な計算例
ケース1: 所得税額が十分にある場合
- 年末ローン残高: 3,000万円
- 控除額: 21万円
- 所得税額: 25万円
- 所得税から控除: 21万円(全額控除)
- 住民税から控除: 0円
ケース2: 所得税額が少ない場合
- 年末ローン残高: 3,000万円
- 控除額: 21万円
- 所得税額: 15万円
- 所得税から控除: 15万円(全額)
- 控除しきれない額: 6万円
- 住民税から控除: 6万円(97,500円以内のため全額控除)
ケース3: 所得税額が非常に少ない場合
- 年末ローン残高: 3,000万円
- 控除額: 21万円
- 所得税額: 5万円
- 所得税から控除: 5万円(全額)
- 控除しきれない額: 16万円
- 住民税から控除: 97,500円(上限まで)
- 実際の控除額合計: 5万円 + 97,500円 = 147,500円
このように、所得税額が少ないと、住宅ローン控除の満額を受けられない場合があります。
新築・中古・省エネ住宅等の種別ごとの控除額
新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅)
新築認定住宅は、省エネ性能や耐久性に優れた住宅で、借入限度額が最も高く設定されています。
対象住宅:
- ZEH住宅: ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(年間エネルギー消費量が正味ゼロ)
- 長期優良住宅: 長期にわたり良好な状態で使用できる住宅
- 低炭素住宅: CO2排出量を抑えた住宅
控除内容:
- 借入限度額: 5,000万円
- 控除期間: 13年
- 最大控除額: 5,000万円 × 0.7% × 13年 = 455万円
(出典: 国土交通省)
認定住宅の証明書は、工事業者または指定確認検査機関から取得する必要があります。
新築一般住宅
省エネ基準(断熱性能や一次エネルギー消費量の基準)に適合する一般的な新築住宅は、以下の控除内容です。
- 借入限度額: 3,000万円
- 控除期間: 13年
- 最大控除額: 3,000万円 × 0.7% × 13年 = 273万円
2024年以降は、省エネ基準に適合しない新築住宅は住宅ローン控除の対象外となりました。
中古住宅
中古住宅の場合、築年数要件を満たす必要があります。
築年数要件:
- 1982年(昭和57年)以降に建築された住宅
- または、耐震基準適合証明書を取得した住宅
控除内容:
| 住宅種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 最大控除額 | 
|---|---|---|---|
| 認定住宅 | 3,000万円 | 10年 | 210万円 | 
| 一般住宅 | 2,000万円 | 10年 | 140万円 | 
(出典: 国税庁)
中古住宅は新築と比べて控除期間が短く、借入限度額も低いですが、築年数要件を満たせば控除を受けられます。
住宅ローン控除の手続き方法
1年目:確定申告
住宅ローン控除を受けるには、1年目は確定申告が必須です。確定申告は、入居の翌年の2月16日~3月15日に行います。
必要書類:
| 書類 | 取得先 | 
|---|---|
| 住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁ホームページからダウンロード | 
| 住宅ローンの残高証明書 | 金融機関 | 
| 登記事項証明書 | 法務局 | 
| 売買契約書・工事請負契約書の写し | 不動産業者・工事業者 | 
| 源泉徴収票 | 勤務先(給与所得者の場合) | 
(出典: 国税庁)
新築認定住宅の場合は、追加で認定長期優良住宅証明書またはZEH住宅証明書が必要です。
2年目以降:年末調整
給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で手続きが可能です。
手続き方法:
- 税務署から「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」が郵送される(9-10月頃)
- 金融機関から「住宅ローンの残高証明書」が郵送される(10-11月頃)
- これらの書類を勤務先に提出
- 年末調整で所得税が還付される
自営業者・フリーランスの場合は、毎年確定申告が必要です。
まとめ:住宅ローン控除で所得税を賢く節税
住宅ローン控除は税額控除であり、所得税額から直接差し引かれるため節税効果が大きい制度です。控除率0.7%、控除期間13年(新築)・10年(中古)で、所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除されます(上限97,500円)。
新築認定住宅なら最大455万円の控除を受けられるため、省エネ性能の高い住宅を選ぶメリットも大きいです。1年目は確定申告が必須ですが、2年目以降は年末調整で手続き可能です。
所得税額が少ない場合は満額控除されないため、年収・扶養人数を考慮して資金計画を立てることが重要です。
