住宅ローン控除とは?所得税の仕組みから計算まで完全解説

公開日: 2025/10/27

住宅ローン控除とは?所得税から還付される仕組み

住宅を購入する際、「住宅ローン控除で実際にどれくらい還付されるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、2025年時点の制度に基づいて、住宅ローン控除の基本的な仕組み、所得税と住民税からの還付の流れ、控除額の計算方法を国税庁国土交通省の公式情報を元に解説します。

住宅ローン控除が「税額控除」であること、所得税額が少ない場合は満額控除されないことを理解できます。

この記事のポイント

  • 住宅ローン控除は「税額控除」であり、所得税額そのものから差し引かれるため節税効果が大きい
  • 控除率は0.7%、年末ローン残高×0.7%が控除額(控除期間は新築13年・中古10年)
  • 所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除されるが、住民税の控除上限は97,500円
  • 新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅)は借入限度額が高く、最大控除額455万円
  • 1年目は確定申告が必須、2年目以降は年末調整で手続き可能(給与所得者の場合)

住宅ローン控除の基本的な仕組み

税額控除と所得控除の違い

住宅ローン控除は「税額控除」です。税額控除と所得控除の違いを理解することが重要です。

項目 税額控除 所得控除
控除対象 所得税額から直接差し引く 課税所得から差し引く
節税効果 大きい(控除額がそのまま還付) 小さい(控除額×税率分が還付)
住宅ローン控除、配当控除 医療費控除、扶養控除

(出典: 国税庁

具体例:

  • 所得税額20万円、税額控除15万円の場合 → 還付額15万円(所得税5万円に減額)
  • 所得税額20万円、所得控除15万円の場合 → 還付額は15万円×税率(例: 20%なら3万円)

このように、税額控除は所得税額から直接差し引かれるため、節税効果が非常に大きいのが特徴です。

控除率0.7%の計算方法

住宅ローン控除の控除率は0.7%です。年末時点のローン残高に0.7%を乗じた額が、その年の控除額となります。

計算式:

控除額(年間)= 年末ローン残高 × 0.7%

計算例:

年末ローン残高 控除額(年間)
3,000万円 21万円
2,500万円 17.5万円
2,000万円 14万円

(出典: 国税庁

ただし、この控除額は所得税額が十分にある場合の上限です。所得税額が少ない場合は、所得税額までしか控除されません。

控除期間と借入限度額

控除期間と借入限度額は、住宅の種類により異なります。

住宅種類 控除期間 借入限度額 最大控除額
新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅) 13年 5,000万円 455万円
新築一般住宅 13年 3,000万円 273万円
中古住宅(認定住宅) 10年 3,000万円 210万円
中古住宅(一般) 10年 2,000万円 140万円

(出典: 国税庁、2022年以降入居の場合)

2022年の税制改正で控除率が0.7%に引き下げられましたが、新築住宅の控除期間が10年から13年に延長されました。

所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除

住民税の控除上限額97,500円

所得税額が少ない場合、控除しきれない額は翌年の住民税から控除されます。ただし、住民税の控除には上限があります。

住民税の控除上限:

地方税法による住民税の控除上限は、所得税の課税総所得金額等の5%または97,500円のいずれか少ない額

総務省によると、住民税からの控除は自動的に行われるため、別途手続きは不要です。

具体的な計算例

ケース1: 所得税額が十分にある場合

  • 年末ローン残高: 3,000万円
  • 控除額: 21万円
  • 所得税額: 25万円
  • 所得税から控除: 21万円(全額控除)
  • 住民税から控除: 0円

ケース2: 所得税額が少ない場合

  • 年末ローン残高: 3,000万円
  • 控除額: 21万円
  • 所得税額: 15万円
  • 所得税から控除: 15万円(全額)
  • 控除しきれない額: 6万円
  • 住民税から控除: 6万円(97,500円以内のため全額控除)

ケース3: 所得税額が非常に少ない場合

  • 年末ローン残高: 3,000万円
  • 控除額: 21万円
  • 所得税額: 5万円
  • 所得税から控除: 5万円(全額)
  • 控除しきれない額: 16万円
  • 住民税から控除: 97,500円(上限まで)
  • 実際の控除額合計: 5万円 + 97,500円 = 147,500円

このように、所得税額が少ないと、住宅ローン控除の満額を受けられない場合があります。

新築・中古・省エネ住宅等の種別ごとの控除額

新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅)

新築認定住宅は、省エネ性能や耐久性に優れた住宅で、借入限度額が最も高く設定されています。

対象住宅:

  • ZEH住宅: ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(年間エネルギー消費量が正味ゼロ)
  • 長期優良住宅: 長期にわたり良好な状態で使用できる住宅
  • 低炭素住宅: CO2排出量を抑えた住宅

控除内容:

  • 借入限度額: 5,000万円
  • 控除期間: 13年
  • 最大控除額: 5,000万円 × 0.7% × 13年 = 455万円

(出典: 国土交通省

認定住宅の証明書は、工事業者または指定確認検査機関から取得する必要があります。

新築一般住宅

省エネ基準(断熱性能や一次エネルギー消費量の基準)に適合する一般的な新築住宅は、以下の控除内容です。

  • 借入限度額: 3,000万円
  • 控除期間: 13年
  • 最大控除額: 3,000万円 × 0.7% × 13年 = 273万円

2024年以降は、省エネ基準に適合しない新築住宅は住宅ローン控除の対象外となりました。

中古住宅

中古住宅の場合、築年数要件を満たす必要があります。

築年数要件:

  • 1982年(昭和57年)以降に建築された住宅
  • または、耐震基準適合証明書を取得した住宅

控除内容:

住宅種類 借入限度額 控除期間 最大控除額
認定住宅 3,000万円 10年 210万円
一般住宅 2,000万円 10年 140万円

(出典: 国税庁

中古住宅は新築と比べて控除期間が短く、借入限度額も低いですが、築年数要件を満たせば控除を受けられます。

住宅ローン控除の手続き方法

1年目:確定申告

住宅ローン控除を受けるには、1年目は確定申告が必須です。確定申告は、入居の翌年の2月16日~3月15日に行います。

必要書類:

書類 取得先
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 国税庁ホームページからダウンロード
住宅ローンの残高証明書 金融機関
登記事項証明書 法務局
売買契約書・工事請負契約書の写し 不動産業者・工事業者
源泉徴収票 勤務先(給与所得者の場合)

(出典: 国税庁

新築認定住宅の場合は、追加で認定長期優良住宅証明書またはZEH住宅証明書が必要です。

2年目以降:年末調整

給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で手続きが可能です。

手続き方法:

  1. 税務署から「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」が郵送される(9-10月頃)
  2. 金融機関から「住宅ローンの残高証明書」が郵送される(10-11月頃)
  3. これらの書類を勤務先に提出
  4. 年末調整で所得税が還付される

自営業者・フリーランスの場合は、毎年確定申告が必要です。

まとめ:住宅ローン控除で所得税を賢く節税

住宅ローン控除は税額控除であり、所得税額から直接差し引かれるため節税効果が大きい制度です。控除率0.7%、控除期間13年(新築)・10年(中古)で、所得税で控除しきれない場合は住民税からも控除されます(上限97,500円)。

新築認定住宅なら最大455万円の控除を受けられるため、省エネ性能の高い住宅を選ぶメリットも大きいです。1年目は確定申告が必須ですが、2年目以降は年末調整で手続き可能です。

所得税額が少ない場合は満額控除されないため、年収・扶養人数を考慮して資金計画を立てることが重要です。

よくある質問

Q1所得税額が少ない場合、控除額は全額還付されない?

A1その通りです。所得税額15万円、控除額21万円の場合、所得税から15万円、住民税から6万円(上限97,500円以内)が還付されます。所得税額が少ないと満額控除されないため、年収・扶養人数により控除額が変動します。所得税額が非常に少ない場合は、住民税の控除上限97,500円により、控除額が大幅に減少する可能性があります。

Q2住宅ローン控除の控除期間は何年?

A2新築住宅は13年、中古住宅は10年が基本です。2022年以降入居の場合、控除率0.7%で控除期間が延長されました(以前は新築10年)。新築認定住宅(ZEH・長期優良住宅)は13年で最大控除額455万円、中古住宅は10年で最大控除額140-210万円です。詳細は国税庁の最新制度を確認してください。

Q3確定申告は毎年必要?

A31年目のみ確定申告が必須です。2年目以降は年末調整で手続き可能(給与所得者の場合)です。税務署から「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」が郵送されるため、金融機関の残高証明書とともに勤務先に提出するだけで還付を受けられます。自営業者・フリーランスは毎年確定申告が必要です。

Q4住宅ローン控除と住宅ローン減税の違いは?

A4同じ制度を指します。正式名称は「住宅借入金等特別控除」ですが、一般的に「住宅ローン控除」「住宅ローン減税」と呼ばれることが多いです。国税庁の公式文書では「住宅借入金等特別控除」と表記されていますが、内容は同じです。

Q5中古住宅でも住宅ローン控除は受けられる?

A5受けられます。ただし、築年数要件(1982年以降建築または耐震基準適合)を満たす必要があります。中古認定住宅は借入限度額3,000万円・控除期間10年で最大控除額210万円、中古一般住宅は借入限度額2,000万円で最大控除額140万円です。築年数が古い住宅の場合は、耐震基準適合証明書を取得することで対象となります。