住宅ローン本審査承認後に落ちることはある?
住宅購入を進めており本審査承認を受けた後、「これで安心」と思っている方は少なくありません。しかし、本審査承認=融資確定ではなく、承認後から融資実行までの間に状況が変化すれば、融資が取り消される可能性があります。
この記事では、本審査承認後に融資が取り消される主なケース、融資実行までの注意点、万が一の対処法を、金融庁や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
本審査承認後でも油断せず、適切に行動することで、融資取消のリスクを最小限に抑えられます。
この記事のポイント
- 本審査承認後でも融資実行までに状況変化があれば、融資が取り消される可能性がある
- 新たな借入(車・クレジットカード等)は返済比率を悪化させ、融資取消の原因になる
- 転職・退職は申込情報との相違を生じさせ、再審査が必要になる
- 信用情報の悪化(延滞・滞納)は融資否決につながる
- 融資実行まで大きな買い物・転職・延滞を避けることが重要
本審査承認後に落ちる主なケース
収入や勤務先の変更(転職・退職)
住宅金融支援機構によると、本審査承認後でも収入額や勤務先の変更があれば再審査が実施され、融資否決や減額の可能性があります。
転職・退職により申込情報との相違が生じると、以下のリスクがあります。
- 勤続年数がリセットされ、審査基準を満たさなくなる
- 収入が減少し、返済比率が悪化する
- 新しい勤務先が審査基準に満たない(例:試用期間中、非正規雇用等)
SBIエステートファイナンスによると、転職後は再審査が必要になり、審査結果や申込自体が無効となるリスクがあります。融資実行まで転職は控えることを強くおすすめします。
新たな借入やクレジット契約
本審査承認後に新たな借入(車のローン、カードローン、クレジットカード、携帯電話の分割払い等)をすると、返済比率が悪化し、融資取消のリスクがあります。
返済比率(年収に対する年間返済額の割合)は、金融機関の重要な審査基準です。新たな借入により返済比率が基準を超えると、住宅ローンの融資が取り消される場合があります。
モゲチェックによると、クレジットカードの発行も新たな借入として信用情報に記録されるため、融資実行後まで控えるべきです。
信用情報の悪化(延滞・滞納)
本審査承認後でも、金融機関は融資実行前に信用情報を再照会する場合があります。奨学金・クレジットカード・携帯電話料金の延滞が記録されると、融資が取り消される可能性があります。
信用情報に延滞が記録される条件:
- クレジットカード・ローンの支払いを61日以上延滞
- 携帯電話の分割払いを2ヶ月以上延滞
- 奨学金の返済を3ヶ月以上延滞
延滞情報は信用情報機関(CIC・JICC)に記録され、金融機関が照会すると即座に判明します。融資実行まで絶対に延滞しないよう注意してください。
その他の融資取消リスク
健康状態の悪化(団信加入不可)
本審査承認後に健康状態が悪化し、団体信用生命保険(団信)に加入できなくなった場合、融資が否決されるリスクがあります。
多くの金融機関では、団信加入が融資の必須条件です。健康状態の悪化により団信に加入できない場合は、以下の対処法があります。
- ワイド団信: 引受範囲が広い団信(金利上乗せ0.2-0.3%程度)
- フラット35: 団信加入が任意の住宅ローン
auじぶん銀行によると、ワイド団信は高血圧症・糖尿病等でも加入できる場合があります。健康状態の悪化が懸念される場合は、早めに金融機関に相談してください。
物件の担保価値低下・虚偽申告の発覚
物件の再評価で担保価値が当初より低下した場合や、申込時の虚偽申告(収入の水増し、借入の隠蔽等)が発覚した場合、融資が取り消されます。
金融機関は融資実行前に物件の担保価値を再評価する場合があります。再評価の結果、担保価値が融資額を下回ると判断されれば、融資減額または否決となります。
虚偽申告は絶対に行わないでください。発覚すれば融資取消だけでなく、信用情報に記録され、今後の借入が困難になります。
融資実行までにやってはいけないこと
大きな買い物を控える(車・家具・家電等)
融資実行まで、車・家具・家電等の大きな買い物(特にローンやクレジット利用)は控えてください。
| 買い物の種類 | リスク | 対処法 |
|---|---|---|
| 車のローン | 返済比率悪化で融資取消 | 融資実行後に購入 |
| クレジットカード発行 | 新たな借入として記録 | 融資実行後に申込 |
| 家具・家電の分割払い | 返済比率に影響 | 現金一括払いのみ |
引越し準備で家具・家電を購入したい気持ちは分かりますが、融資実行まで我慢してください。現金一括払いなら問題ありませんが、ローンやクレジット利用は避けるべきです。
転職・退職をしない
SBIエステートファイナンスによると、本審査承認後の転職は申込情報との相違を生じさせ、再審査が必要になります。
転職・退職のリスク:
- 勤続年数がリセットされる
- 試用期間中は審査に通りにくい
- 収入が減少する可能性
- 再審査の結果、融資否決や減額の可能性
転職を検討している場合は、融資実行後まで待つことを強くおすすめします。
延滞を避ける(クレジット・携帯・公共料金)
融資実行まで、以下の支払いを絶対に延滞しないでください。
- クレジットカード・ローンの支払い
- 携帯電話の料金(特に分割払い)
- 奨学金の返済
- 公共料金(電気・ガス・水道)
クレジットカード・携帯電話・奨学金の延滞は信用情報に記録され、金融機関が照会すると即座に判明します。公共料金の延滞は信用情報に直接は記録されませんが、滞納が続くと信用情報機関に登録される場合があります。
金融機関への適切な報告
状況変化(転職、収入減少、健康状態の悪化等)があった場合は、金融機関に速やかに報告する義務があります。
報告すべき状況変化:
- 転職・退職
- 収入の大幅な減少
- 健康状態の悪化
- 新たな借入
- 物件の状況変化(引渡し遅延等)
隠蔽すると虚偽申告とみなされ、融資取消だけでなく、信用情報に記録されるリスクがあります。変化があれば必ず報告してください。
万が一融資が取り消された場合の対処法
ローン特約(融資特約)の確認
万が一融資が取り消された場合、ローン特約(融資特約)により売買契約を白紙解除できるかを確認してください。
ローン特約とは、住宅ローンが否決された場合に売買契約を白紙解除し、手付金を返金してもらえる特約です。不動産売買契約時に必ず確認すべき重要事項です。
ローン特約の確認ポイント:
- 特約の有無(契約書に明記されているか)
- 対象となる金融機関(複数申込の場合、全て否決が条件か)
- 期限(いつまでに否決されれば適用されるか)
ローン特約がない場合、手付金を放棄しても契約解除できない場合があります。契約時に必ず確認してください。
別の金融機関への申込
融資が取り消された場合、別の金融機関へ申込を検討する選択肢があります。ただし、以下の点に注意が必要です。
- 審査落ちの原因を明確にする(原因が解消されない限り、他行でも否決の可能性)
- 申込履歴が信用情報に残る(短期間に複数申込すると審査に不利)
- ローン特約の期限内に承認を得る必要がある
別の金融機関へ申込む前に、なぜ融資が取り消されたのか原因を明確にし、対処法を検討してください。専門家(ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー)への相談も有効です。
まとめ
本審査承認後も融資実行までは油断せず、新たな借入・転職・延滞を避けることが重要です。本審査承認=融資確定ではなく、承認後から融資実行までの間に状況が変化すれば、融資が取り消される可能性があります。
融資実行までに絶対に避けるべきこと:
- 車のローン、クレジットカード発行等の新たな借入
- 転職・退職
- クレジットカード・携帯電話・奨学金の延滞
万が一融資が取り消された場合は、ローン特約を活用できるよう、契約時の確認が大切です。融資実行まで慎重に行動し、状況変化があれば金融機関に速やかに報告してください。
不明点があれば、金融機関・不動産会社・専門家へ相談することをおすすめします。
