戸建てのテレビアンテナ工事とは
新築戸建てを購入した際、「テレビが映らない」と驚く方は少なくありません。実は、新築住宅にはアンテナが標準装備されていない場合が多く、テレビを視聴するには別途工事が必要です。
この記事では、戸建てのテレビアンテナ工事の種類、費用相場、業者選びのポイントを、総務省の公式情報を元に解説します。
初めてアンテナ工事を検討する方でも、自分に合った選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 新築戸建てはアンテナが標準装備でない場合が多く、別途工事が必要
- アンテナの種類は八木式(1.5-3万円)、デザイン(2-4万円)、4K8K対応BS/CS(3-5万円)
- ケーブルテレビ・光テレビとの比較では、アンテナは初期費用3-7万円で月額0円、長期的に安い
- 業者選びは相見積もり(3社以上)、施工実績、保証内容を確認することが重要
- 訪問営業・電話勧誘で「最安」を謳う悪質業者に注意が必要
新築は標準装備でない場合が多い
新築戸建ての建築時には、駐車場・照明・エクステリア等が優先され、テレビアンテナは標準装備に含まれないケースが一般的です。そのため、引き渡し後に別途アンテナ工事を依頼する必要があります。
ハウスメーカーや工務店によっては、オプションでアンテナ工事を請け負う場合もありますが、外部業者と比較すると割高な傾向があります。
地デジとBS/CSの違い
地デジアンテナは地上波放送(NHK、民放等)を受信するためのもので、BS/CSアンテナは衛星放送(BS放送、CS放送)を受信するためのものです。
地デジアンテナだけでは衛星放送は視聴できないため、BS/CSも見たい場合は両方のアンテナ設置が必要です。また、4K8K放送を視聴する場合は、専用の4K8K対応BS/CSアンテナ(SHマーク付き)が必須となります。
アンテナの種類とメリット・デメリット
戸建てで使用されるアンテナには、主に3つの種類があります。それぞれの特徴、費用相場、適した環境を比較表で整理します。
| アンテナの種類 | 費用相場 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 八木式アンテナ | 1.5-3万円 | 受信性能が高い、電波が弱い地域でも使える | 屋根上設置で外観に影響、台風・強風で破損リスク |
| デザインアンテナ | 2-4万円 | 箱型で外観がスッキリ、外壁設置で破損リスク低 | 電界強度が弱い地域は不向き |
| 4K8K対応BS/CS | 3-5万円 | 新4K8K放送視聴可能(左旋円偏波対応) | 従来のBSアンテナより高額 |
(出典: 総務省)
八木式アンテナ(1.5-3万円)
八木式アンテナは、魚の骨のような形状の従来型地デジアンテナです。屋根の上に設置するため外観に影響しますが、受信性能が高く、電波が弱い地域(弱電界地域)でも使用できます。
設置費用は1.5-3万円程度で、他のアンテナより安価です。ただし、台風・強風で破損するリスクがあり、定期的なメンテナンスが必要です。
デザインアンテナ(2-4万円)
デザインアンテナは箱型の平面アンテナで、外壁に設置するため外観がスッキリします。新築戸建てで人気が高く、台風・強風の影響を受けにくいのも特徴です。
費用は2-4万円で、八木式より高額ですが、外観を重視する方には適しています。ただし、電界強度が40dBμV/m未満の弱電界地域では受信性能が不足する場合があります。電界強度は地域により大きく異なるため、専門業者による電波調査を事前に実施し、設置可否を確認することが重要です。
4K8K対応BS/CSアンテナ(3-5万円)
4K8K対応BS/CSアンテナは、新4K8K衛星放送を視聴するための専用アンテナです。従来のBSアンテナ(右旋円偏波、2071MHzまで)では新4K8K放送(左旋円偏波、3224MHzまで)を受信できません。
4K8K対応アンテナには「SHマーク」(スーパーハイビジョン受信マーク)が付いており、これが左旋対応・3224MHz受信可能の証明となります。費用は3-5万円で、従来のBSアンテナより高額ですが、今後の放送規格に対応できるメリットがあります。
アンテナ工事の費用相場
アンテナ工事の費用は、アンテナ本体の価格と工事費の合計です。一般的な費用相場は以下の通りです。
地デジアンテナ:2.3-5万円(工事費込)
業者調査によると、地デジアンテナの設置費用は、八木式で1.5-3万円、デザインアンテナで2-4万円、工事費1-2万円を合わせると、2.3-5万円程度が相場です。
電波が弱い地域では、ブースター(電波増幅器)の追加設置が必要となり、5千-2万円の追加費用が発生します。
BS/CSアンテナ:4-7万円(工事費込)
BS/CSアンテナの設置費用は、本体価格3-5万円、工事費1-2万円を合わせて4-7万円程度です。4K8K対応アンテナの場合、本体価格がやや高額になります。
地デジアンテナとBS/CSアンテナを同時に設置する場合、工事費を一部節約できる場合があります。複数のアンテナ設置を検討する場合は、同時施工を業者に相談することをおすすめします。
ブースター・配線等の追加費用
ブースター(電波増幅器)は、電波が弱い地域や複数台のテレビを設置する場合にほぼ必須です。費用は5千-2万円で、設置場所(屋根裏・外壁)により金額が変わります。
その他、分配器(1台のアンテナから複数のテレビに電波を分配する機器)、配線工事等で追加費用が発生する場合があります。見積もり時に、追加費用の有無を必ず確認しましょう。
ケーブルテレビ・光テレビとの比較
テレビを視聴する方法には、アンテナ設置以外にケーブルテレビ・光テレビの選択肢もあります。それぞれの初期費用・月額コスト・チャンネル数を比較します。
| 項目 | アンテナ | ケーブルテレビ | 光テレビ |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 3-7万円 | 1-3万円 | 2-5万円 |
| 月額コスト | 0円 | 3-6千円 | 1-3千円 |
| 画質 | 高画質 | やや劣る | 高画質 |
| チャンネル数 | 地デジ・BS/CS | 専門チャンネル豊富 | 専門チャンネル豊富 |
| メンテナンス | 台風・経年劣化で必要 | 業者対応 | 業者対応 |
(出典: 新築のテレビアンテナ工事)
初期費用と月額コストの違い
アンテナは初期費用3-7万円で月額0円のため、長期的には最も安価です。10年間で計算すると、ケーブルテレビ(月額3-6千円)は36-72万円、光テレビ(月額1-3千円)は12-36万円の費用がかかります。
ケーブルテレビ・光テレビは初期費用が安く、すぐに利用開始できるメリットがありますが、長期的にはコストが高くなります。コスト重視ならアンテナ、チャンネル数重視ならケーブル・光という選択が一般的です。
画質・チャンネル数・メンテナンス性
画質は、アンテナ・光テレビが高画質で、ケーブルテレビはやや劣る傾向があります。チャンネル数は、ケーブル・光が専門チャンネル(映画・スポーツ等)を豊富に提供し、アンテナは地デジ・BS/CSのみです。
メンテナンスは、アンテナが台風・経年劣化で破損した場合に修理費用がかかりますが、ケーブル・光は業者が対応するため個人負担は少ないです。
アンテナ工事の流れと業者選びのポイント
アンテナ工事は、電波調査、アンテナ設置、配線工事、動作確認の4ステップで進みます。所要時間は1-3時間程度です。
工事の流れ(電波調査→設置→配線→動作確認)
- 電波調査: 専門業者が電界強度を測定し、設置可能なアンテナの種類を判定します。弱電界地域(40dBμV/m未満)では高性能アンテナが必要です。
- アンテナ設置: 屋根または外壁にアンテナを固定します。八木式は屋根上、デザインアンテナは外壁が一般的です。
- 配線工事: アンテナから屋内のテレビ端子まで配線を接続します。ブースター・分配器が必要な場合は同時に設置します。
- 動作確認: 全チャンネルの受信テストを実施し、映像・音声に問題がないか確認します。
業者選びのポイント(相見積もり、施工実績、保証)
業者選びでは、以下の3点を重視することが重要です。
- 相見積もり(3社以上): 同じ工事内容でも、業者により費用が数万円異なる場合があります。3社以上から見積もりを取り、費用の内訳(アンテナ本体、工事費、ブースター等)を比較しましょう。
- 施工実績・口コミ確認: 公式サイトで施工事例を確認し、過去の実績が豊富な業者を選びます。口コミサイト・Googleレビューも参考になります。
- 保証内容: 「10年保証」でも自然災害は対象外、移設不可、有償修理の条件など細則を確認します。保証書を必ず受け取り、内容を理解しておくことが重要です。
訪問営業・電話勧誘で「最安」「必ず映る」と謳う業者には注意が必要です。国民生活センターには、「電話で1.5万円と聞いたが、現地で8万円請求された」という相談事例が報告されています。書面での見積もり、契約書の確認、クーリングオフの活用で対策しましょう。
アンテナ工事でよくあるトラブルと対策
アンテナ工事では、受信不良、壁穴からの雨漏り、悪質業者の高額請求などのトラブルが報告されています。事前に対策を知っておくことで、リスクを軽減できます。
受信不良(電波強度・角度調整)
受信不良の原因は、電波強度不足(弱電界地域)やアンテナの角度調整ミスです。総務省近畿総合通信局によると、アンテナ設備の老朽化・設備不良もトラブルの一因とされています。
弱電界地域では、高性能アンテナ(八木式)やブースターの追加設置が必要です。専門業者に電波調査を依頼し、適切なアンテナを選ぶことが重要です。
壁穴からの雨漏り・施工不備
外壁にアンテナを設置する場合、壁に穴を開けて配線を通します。この際、防水処理が不十分だと雨漏りが発生する可能性があります。
施工後に壁穴周辺をチェックし、防水コーキングが適切に施されているか確認しましょう。施工不備が見つかった場合は、保証期間内であれば無償修理を依頼できます。
悪質業者の高額請求
訪問営業で安価を謳い、現地で高額請求する悪質業者が存在します。国民生活センターには、このような相談事例が複数報告されています。
対策として、以下の点を守りましょう。
- 書面での見積もりを受け取る
- 契約書の内容を確認する
- 訪問営業・電話勧誘の即決は避ける
- クーリングオフ制度を活用(契約から8日以内なら無条件解約可能)
まとめ:アンテナ工事の選び方と次のステップ
戸建てのテレビアンテナ工事は、アンテナの種類(八木式1.5-3万円、デザイン2-4万円、4K8K対応3-5万円)と費用相場を比較し、電波強度・外観・予算で選ぶことが重要です。
ケーブルテレビ・光テレビとの比較では、アンテナは初期費用3-7万円で月額0円、長期的に安いというメリットがあります。チャンネル数重視ならケーブル・光、コスト重視ならアンテナという選択が一般的です。
業者選びでは、相見積もり(3社以上)、施工実績、保証内容を確認し、訪問営業・電話勧誘の即決は避けましょう。
次のアクションは、専門業者に電波調査を依頼し、複数業者から見積もりを取得することです。信頼できる業者を選び、安心してテレビ視聴を開始しましょう。
