土地なしで家を建てる総費用とは
土地を所有していない状態で家を建てる場合、「総額でどれくらい必要なのか」とイメージできず不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地なしで家を建てる際の総費用、土地代と建物代の内訳、予算配分の考え方を、住宅金融支援機構・国土交通省の公式統計を元に解説します。
土地と建物の予算配分、エリアによる土地代の違い、コスト削減ポイントを理解し、現実的な資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 土地なしで家を建てる総費用は全国平均約4,903万円(首都圏約5,680万円)
- 費用の内訳は「土地代」「建物代」「諸費用」の3つで構成される
- 土地代と建物代の予算配分は一般的に土地4:建物6程度
- 建物代は坪単価50万〜80万円×建物面積で概算可能
- 諸費用は総額の5-10%が目安(登記、ローン手数料、税金等)
土地代と建物代の内訳【全国平均】
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(2023年度)によると、土地付注文住宅の全国平均は以下の通りです。
| 項目 | 全国平均 | 首都圏平均 |
|---|---|---|
| 総費用 | 4,903万円 | 5,680万円 |
| 土地代 | 1,445万円 | 2,141万円 |
| 建築費 | 3,010万円 | 3,097万円 |
| 諸費用 | 約450万円 | 約440万円 |
(出典: 住宅金融支援機構)
総費用のうち、土地代が約30%、建築費が約60%、諸費用が約10%を占めます。地域により土地代が大きく変動するため、総費用も変わります。
エリア別の土地代相場
土地代はエリアにより大きく異なります。
| エリア | 土地代相場 |
|---|---|
| 首都圏 | 2,141万円 |
| 近畿圏 | 1,693万円 |
| 東海圏 | 1,300万円 |
| 地方都市 | 800-1,200万円 |
| 郊外 | 500-800万円 |
(参考: フラット35利用者調査、2023年度)
首都圏は地方の2-3倍の土地代となります。土地代を抑えたい場合、郊外や地方都市を検討することも選択肢の一つです。
建物代の算出方法(坪単価)
建物代は、坪単価×建物面積で概算できます。坪単価は、建物価格を床面積(坪)で割った単価です。1坪=約3.3平方メートルです。
2025年の坪単価相場
坪単価は、建築会社により大きく異なります。
| 建築会社 | 坪単価相場 |
|---|---|
| ローコスト住宅 | 50-60万円 |
| 地域工務店 | 60-70万円 |
| 中堅ハウスメーカー | 70-80万円 |
| 大手ハウスメーカー | 90-110万円 |
(参考: 住宅産業新聞等の坪単価相場調査、2025年時点)
例えば、建物面積35坪(約115平方メートル)、坪単価70万円の場合:
- 建物代:35坪 × 70万円 = 2,450万円
坪単価には付帯工事費(外構、地盤改良等)が含まれないことが多いため、別途予算を確保する必要があります。
付帯工事費の目安
付帯工事費として、以下の費用が別途必要です(各工務店・ハウスメーカーの標準的な見積もり)。
- 外構工事: 100-200万円(駐車場、門扉、フェンス等)
- 地盤改良: 30-200万円(地盤の状態により変動)
- 水道引込: 50-100万円(敷地外から水道管を引き込む場合)
- 設計料: 建築費の5-10%程度
これらを含めた総額を試算することが重要です。
諸費用の内訳と目安
諸費用は、総額の5-10%が目安です。土地と建物それぞれに発生するため、合計で200-500万円程度となります。
土地購入時の諸費用
土地購入時には以下の諸費用が発生します。
| 項目 | 目安額 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 土地代の3%+6万円+消費税 |
| 登記費用 | 10-20万円 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額の3% |
| 印紙税 | 1-3万円 |
(参考: 宅地建物取引業法による仲介手数料の上限等)
例えば、土地代1,500万円の場合:
- 仲介手数料:1,500万円 × 3% + 6万円 + 消費税 = 約56万円
- 登記費用:15万円
- 不動産取得税:1,500万円 × 70%(評価額) × 3% = 約32万円
- 印紙税:2万円
- 合計:約105万円
建物建築時の諸費用
建物建築時には以下の諸費用が発生します。
| 項目 | 目安額 |
|---|---|
| 登記費用 | 10-20万円 |
| 印紙税 | 1-3万円 |
| 火災保険 | 10年一括払いで20-30万円 |
| 住宅ローン手数料 | 借入額の1-2% |
| つなぎ融資利息 | 30-50万円 |
(参考: 建物建築時の諸費用)
例えば、借入額4,000万円の場合:
- 登記費用:15万円
- 印紙税:2万円
- 火災保険:25万円
- 住宅ローン手数料:4,000万円 × 2% = 80万円
- つなぎ融資利息:40万円
- 合計:約162万円
つなぎ融資とは、建物完成前に土地代や着工金を支払うための一時的な借入です。
予算配分の考え方(土地4:建物6)
土地と建物の予算配分は、一般的に土地4:建物6程度が目安とされます。ただし、エリアや優先順位により調整が必要です。
住宅ローン借入可能額から逆算
住宅ローンの借入可能額は、年収の5-7倍程度が目安です。ただし、返済比率(年収に占める住宅ローン返済額の割合)は20-25%以内が無理のない返済計画とされます。
例えば、年収600万円の場合:
- 借入可能額:600万円 × 6倍 = 3,600万円
- 返済比率25%以内の年間返済額:600万円 × 25% = 150万円
- 返済比率から逆算した借入可能額(金利1.5%、35年返済):約4,000万円
自己資金500万円の場合、総予算は4,500万円となります。
優先順位による予算配分
土地と建物のどちらを優先するか、家族の優先順位により予算配分を調整します。
- 立地重視: 土地代に予算を多く配分し、建物をコンパクトに
- 建物重視: 土地は郊外で安く購入し、建物に予算を配分
どちらを優先するかを明確にすることで、現実的な資金計画を立てられます。
コスト削減のポイント
総費用を抑えるためのポイントは以下の通りです。
土地の形状妥協
土地の形状を妥協することで、土地代を抑えられます。
- 旗竿地: 道路に接する部分が狭い土地。相場より10-20%安い
- 狭小地: 面積が小さい土地。建物を工夫すれば十分住める
- 変形地: 形が不整形な土地。設計次第で活用可能
建物仕様の見直し
建物仕様を見直すことで、建築費を抑えられます。
- シンプルな間取り: 複雑な間取りを避け、施工費を削減
- 標準仕様の設備: オプション設備を減らし、コストダウン
- 延床面積の縮小: 床面積を減らし、坪単価を抑える
補助金活用
各種補助金を活用することで、実質的な負担を軽減できます(2025年度時点)。
- こどもエコすまい支援事業: 最大100万円
- 地域型住宅グリーン化事業: 最大140万円
- 各自治体の補助金: 地域により異なる
補助金は年度ごとに条件が変わるため、最新情報を確認しましょう。
まとめ:総費用を把握し現実的な資金計画を
土地なしで家を建てる総費用は、全国平均約4,903万円(首都圏約5,680万円)です。土地代、建物代、諸費用の3つで構成され、エリアや建築会社により大きく変動します。
土地と建物の予算配分は一般的に土地4:建物6程度が目安ですが、優先順位により調整が必要です。住宅ローン借入可能額から逆算し、自己資金とのバランスを見ながら総予算を決めましょう。
次のアクションとして、①ハウスメーカー・工務店への見積もり依頼、②土地探し、③住宅ローンの事前審査を進めましょう。複数社から見積もりを取り、総費用を正確に把握することが重要です。
