住宅ローン控除とふるさと納税の併用は損なのか
住宅ローン控除を受けている方の中には、「ふるさと納税も活用したいが、併用すると損をするのではないか」と不安に感じる方が少なくありません。
この記事では、住宅ローン控除とふるさと納税を併用する際の仕組み、控除上限額への影響、計算方法、注意点を総務省・国税庁の公式情報を元に解説します。
自分の状況で併用すべきかどうかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローン控除で所得税が0円になる場合のみ、ふるさと納税の控除上限額が減る
- 住宅ローン控除後も所得税が残る場合は影響が少ない
- ワンストップ特例制度を活用すると、所得税が0円の場合でも有利になる可能性がある
- シミュレーターで限度額を試算し、自分の所得税額を確認することが重要
- 一律に「損」「問題ない」と断定できないため、個別の判断が必要
住宅ローン控除とふるさと納税の仕組み
併用時の影響を理解するには、両制度の控除の仕組みを把握することが重要です。
住宅ローン控除の仕組み(所得税→住民税の順)
住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高の0.7%を最長13年間、所得税から控除する制度です。国税庁によると、令和4年以降に入居した場合、まず所得税から控除され、控除しきれない場合は住民税からも控除されます。
ただし、住民税からの控除には上限があり、国税庁によると課税所得の5%(最大97,500円)までとなっています。
ふるさと納税の控除の仕組み(所得税・住民税)
ふるさと納税は、自治体への寄付金のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される制度です。総務省の説明によると、控除は以下の3段階で行われます。
- 所得税からの控除:(寄付額 - 2,000円)× 所得税率
- 住民税からの基本控除:(寄付額 - 2,000円)× 10%
- 住民税からの特例控除:(寄付額 - 2,000円)× (100% - 10% - 所得税率)
ワンストップ特例と確定申告の違い
ふるさと納税には2つの申請方法があります。
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 手続き | 自治体に申請書を送付 | 税務署に確定申告 |
| 控除対象税 | 住民税のみ | 所得税・住民税の両方 |
| 利用条件 | 確定申告不要、寄付先5自治体以内 | 誰でも利用可能 |
| 所得税への影響 | なし | あり(所得税が還付される) |
ワンストップ特例制度を利用すると、控除は全額住民税から行われ、所得税には影響しません。このため、住宅ローン控除で所得税が0円になる場合でも、ふるさと納税の控除を受けられる可能性があります。
併用すると控除上限額が減るケースと減らないケース
併用時の影響は、住宅ローン控除後の所得税額によって異なります。個人の所得状況・家族構成により結果が異なるため、一律に判断できません。
所得税が0円になる場合は限度額が減る
住宅ローン控除で所得税が完全に0円になる場合、ふるさと納税の所得税控除分(寄付額 - 2,000円の約10%)が使えなくなります。三菱UFJ銀行の解説によると、このケースでは確定申告よりワンストップ特例制度を利用する方が有利です。
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税の控除が全額住民税から行われるため、所得税が0円でも影響を受けません。
所得税が残る場合は影響が少ない
住宅ローン控除後も所得税が残る場合は、ふるさと納税の所得税控除が受けられるため、影響は限定的です。年収が高い、または住宅ローン控除額が小さい場合がこれに該当します。
住民税からの控除上限に注意
住宅ローン控除で住民税から控除できる上限は、課税所得の5%(最大97,500円)です。この上限を超えると、ふるさと納税の住民税控除枠が圧迫される可能性があります。
例えば、課税所得が300万円の場合、住宅ローン控除で住民税から控除できる上限は15万円(300万円 × 5%)ですが、実際の控除額が上限に達している場合、ふるさと納税の住民税控除枠が減ることがあります。
併用時の控除限度額の計算方法
自分の控除限度額を把握するには、以下の手順を踏むことをおすすめします。
自分の所得税額を確認する
まず、源泉徴収票の「所得税額」を確認してください。住宅ローン控除額を差し引いた後の所得税額が0円か、残るかで判断が変わります。
シミュレーターで限度額を試算する
楽天ふるさと納税やさとふる等のシミュレーターで、住宅ローン控除を考慮した限度額を試算できます。ただし、これらは概算であり、正確な限度額は税理士に相談することをおすすめします。
年収別の具体例
併用時の影響を具体例で見てみましょう。
年収500万円・住宅ローン控除30万円の場合(一般的な所得控除を適用)
- 所得税額(控除前):約10万円
- 住宅ローン控除後の所得税:0円(10万円 - 30万円 = マイナス)
- 結果:所得税が0円になるため、ふるさと納税の限度額が数万円減る可能性
- 対策:ワンストップ特例制度の活用を検討
年収700万円・住宅ローン控除30万円の場合(一般的な所得控除を適用)
- 所得税額(控除前):約40万円
- 住宅ローン控除後の所得税:10万円(40万円 - 30万円)
- 結果:所得税が残るため、ふるさと納税の限度額への影響は小さい
併用時の注意点
併用する際には、以下の点に注意してください。
住宅ローン控除1年目は確定申告必須(ワンストップ不可)
住宅ローン控除の1年目は確定申告が必須のため、ワンストップ特例制度は使えません。さとふるによると、ふるさと納税も確定申告で処理する必要があります。
2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けられるため(会社員の場合)、ワンストップ特例制度も利用可能です。ただし、医療費控除等で確定申告する場合は、住宅ローン控除・ふるさと納税も合わせて申告が必要です。
シミュレーターは概算(正確な限度額は税理士に相談)
シミュレーターは便利ですが、あくまで概算です。個人の詳細な状況(他の控除の有無、収入の変動等)は反映されないため、「シミュレーター通りに寄付すれば大丈夫」と過信しないよう注意してください。
正確な限度額や個別の判断については、税理士に相談することをおすすめします。
控除額は毎年変わる(年収・ローン残高の変動)
年収や住宅ローン残高は毎年変動するため、控除額・限度額も毎年変わります。前年と同じ金額を寄付すると、限度額を超える可能性があります。
毎年、源泉徴収票を確認し、シミュレーターで限度額を再計算することをおすすめします。
まとめ:併用は可能、所得税額の確認が鍵
住宅ローン控除とふるさと納税の併用は可能ですが、住宅ローン控除で所得税が0円になる場合は、ふるさと納税の控除上限額が減る可能性があります。所得税が残る場合は影響が少ないため、一律に「損」「問題ない」と断定できません。
自分の所得税額を確認し、シミュレーターで限度額を試算することが重要です。ワンストップ特例制度の活用も検討してください。
正確な限度額や個別の判断については、税理士に相談することをおすすめします。次のアクションとして、源泉徴収票の確認、シミュレーターでの試算、税理士への相談を検討しましょう。
