不動産無料査定とは?なぜ無料なのか
不動産の売却を検討する際、無料査定サービスを利用したいが、「しつこい営業が心配」「個人情報が悪用されないか不安」と感じる方は少なくありません。
この記事では、国民生活センターのトラブル事例を基に、実際に起こりうるリスク、安全な査定の受け方、業者の見分け方、トラブル時の対処法を解説します(2025年時点の情報)。
正しい知識を持つことで、無料査定を安全に活用し、トラブルを避けて不動産売却を進められるようになります。
この記事のポイント
- 無料査定の仕組みは、業者が媒介契約獲得を目的に無料で査定を提供
- よくあるトラブルは、しつこい営業、個人情報の流出、不当に低い査定額、専任媒介契約の強要
- 安全な査定の受け方は、複数社に依頼、宅建業免許の確認、個人情報の取り扱い確認
- 業者の見分け方は、宅建業免許の有無、査定根拠の説明力、口コミ・評判を確認
- トラブル時は、国民生活センター・消費生活センターに相談、宅建業法違反は国土交通省・都道府県に通報
よくある無料査定のトラブル事例
国民生活センターのデータを参考に、実際に起こりうるトラブル事例を紹介します。
トラブル1:しつこい営業電話・訪問
一括査定サイトを利用すると、複数社(5-6社)から一斉に営業電話がかかってくることがあります。国民生活センターの相談事例によると、無視すると1週間で60件以上の着信履歴が残るケースも報告されています。
事例
- 「一括査定に申し込んだら、翌日から毎日10件以上の営業電話がかかってきた」
- 「断っても訪問営業が続き、ストレスで体調を崩した」
トラブル2:個人情報の第三者提供
査定依頼時に提供した個人情報が、利用者の同意なく第三者(他の不動産会社・営業代行会社)に提供されるケースがあります。
リスク
- 知らない業者から営業電話がかかってくる
- ダイレクトメール・訪問営業が増える
- 個人情報保護法違反の可能性
トラブル3:不当に低い査定額の提示(後で値下げ交渉)
実際の相談事例を一般化すると、高額査定を提示して媒介契約を獲得し、その後「買い手が見つからない」と値下げ交渉する悪質業者が存在します。これは「囲い込み」と呼ばれる違法行為の可能性があります。
事例
- 「高額査定で専任媒介契約したが、数ヶ月後に『売れないので大幅に値下げしましょう』と言われた」
トラブル4:専任媒介契約の強要
「専任媒介契約でないと本気で売却活動しない」「一般媒介では広告を出さない」等の脅しで、専任媒介契約を強要するケースがあります。
注意点
専任媒介契約は1社のみに依頼する契約で、他社に依頼できません。一般媒介契約(複数社に依頼可能)と比較して検討すべきです。
トラブル5:査定後の不当な請求
査定は本来無料のはずが、「広告掲載費」「事務手数料」等の名目で不当な費用を請求されるケースがあります。
対処法
査定は宅地建物取引業法により無料が原則です。費用請求された場合は、宅建業法違反の可能性があるため、国土交通省・都道府県に通報してください。
トラブルの原因:悪質業者と知識不足
トラブルが発生する主な原因は、以下の3点です。
原因1:悪質業者の存在
宅建業免許を持たない無資格業者や、免許番号を偽装した悪質業者が存在します。こうした業者は、個人情報の不適切な管理、しつこい営業、不当な請求等を行う可能性が高いです。
原因2:利用者の知識不足
無料査定の仕組み(業者が媒介契約獲得を目的に提供)や、宅建業法の基礎知識(査定は無料、個人情報保護法の適用等)を知らないと、トラブルに巻き込まれやすくなります。
原因3:個人情報の不適切な管理
一括査定サイトの中には、個人情報の取り扱いが不透明なものもあります。利用規約に「第三者提供する場合がある」と小さく記載されているケースもあり、注意が必要です。
安全な無料査定の受け方:5つのポイント
以下の5点を守ることで、トラブルを避けて安全に査定を受けられます。
ポイント1:複数社(3-5社)に依頼して比較
1社のみの査定では、査定額の妥当性を判断できません。一般的には3-5社が目安とされており、複数社に依頼して査定額を比較し、極端に高い・低い業者は避けましょう。
比較のポイント
| 項目 | 確認内容 | 
|---|---|
| 査定額 | 極端に高い・低くないか | 
| 査定根拠 | 周辺の取引事例、物件の特徴を説明できるか | 
| 対応の丁寧さ | 質問に誠実に答えるか | 
ポイント2:宅建業者の免許番号を確認
宅地建物取引業を営むには、宅建業免許が必要です。国土交通省のサイトで免許番号を検索し、正規の業者か確認しましょう。
確認方法
- 国土交通大臣免許:複数都道府県に事務所がある業者
- 都道府県知事免許:単一都道府県内の業者
- 免許番号の形式:「国土交通大臣(1)第○○○○号」「東京都知事(2)第○○○○号」等
免許番号は、業者のウェブサイトや名刺に記載されています。
ポイント3:個人情報の取り扱い方針を確認
査定依頼前に、個人情報の取り扱い方針(プライバシーポリシー)を確認しましょう。
確認事項
- 個人情報を第三者に提供する場合があるか
- 本人の同意なく提供されることはないか
- 個人情報の管理体制は適切か
「第三者提供する場合がある」と記載されている場合、同意しない旨を明確に伝えるか、利用を避けることを検討してください。
ポイント4:査定根拠を質問して説明できる業者を選ぶ
査定額の根拠を質問し、周辺の取引事例、物件の特徴、市場動向等を具体的に説明できる業者を選びましょう。
良い業者の説明例
- 「周辺の同じマンションで、3ヶ月前に3,200万円で成約しました」
- 「この地域は駅近で需要が高く、相場より高めの査定が可能です」
悪い業者の説明例
- 「とにかく高く売れます」→ 根拠なし
- 「うちに任せれば大丈夫」→ 説明なし
ポイント5:すぐに契約せず検討期間を設ける
査定後、すぐに媒介契約を迫る業者には注意が必要です。複数社の査定額・説明を比較し、検討期間を設けてから契約しましょう。
検討期間の目安
- 3社以上の査定を比較:1-2週間
- 家族と相談:数日~1週間
- 契約書の内容確認:契約前日までに
業者の見分け方:4つの基準
以下の4つの基準で業者を見分けましょう。
基準1:宅建業免許の有無
国土交通省のサイトで免許番号を検索し、正規の業者か確認します。免許番号がない、または検索で出てこない業者は利用を避けてください。
基準2:会社の規模・実績
会社のウェブサイトで、設立年数、売買実績、店舗数等を確認します。実績が豊富な業者の方が、査定の精度や対応が安心です。
基準3:口コミ・評判
インターネットの口コミサイトやSNSで、業者の評判を確認します。ただし、口コミは匿名投稿も多いため、複数の情報源を参照してください。
基準4:査定根拠の説明力
査定額の根拠を具体的に説明できる業者を選びます。周辺の取引事例、物件の特徴、市場動向等を示せる業者は信頼性が高いです。
トラブル時の対処法:3つの相談先
トラブルが発生した場合、以下の3つの相談先を活用してください。
対処法1:国民生活センター・消費生活センターに相談
しつこい営業、不当な請求、個人情報の悪用等のトラブルは、国民生活センターや各地の消費生活センターに相談できます。
相談窓口
- 消費者ホットライン:188(いやや)
- 受付時間:平日9時-17時(地域により異なる)
対処法2:宅建業法違反は国土交通省・都道府県に通報
不当な勧誘、誇大広告、査定後の不当請求等は、宅地建物取引業法違反の可能性があります。国土交通省または都道府県の宅建業担当部署に通報してください。
通報先
- 国土交通大臣免許業者:国土交通省 地方整備局
- 都道府県知事免許業者:各都道府県の宅建業担当部署
対処法3:しつこい営業は明確に断る(録音も有効)
しつこい営業電話や訪問営業には、明確に断る意思を伝えます。「今後一切連絡しないでください」と伝え、それでも続く場合は録音も有効です。
断り方の例
- 「査定結果は確認しました。今後の連絡は不要です」
- 「他社と契約しました。今後一切連絡しないでください」
録音した内容は、警察や消費生活センターへの相談時に証拠として使用できます。
まとめ:正しく利用すれば無料査定は有効なツール
不動産無料査定は、業者が媒介契約獲得を目的に無料で提供するサービスです。よくあるトラブルは、しつこい営業、個人情報の流出、不当に低い査定額、専任媒介契約の強要、査定後の不当な請求等です。
安全な査定の受け方として、複数社に依頼、宅建業免許の確認、個人情報の取り扱い確認、査定根拠の質問、検討期間の確保の5点を守りましょう。業者の見分け方は、宅建業免許の有無、会社の規模・実績、口コミ・評判、査定根拠の説明力を基準に判断します。
トラブル時は、国民生活センター・消費生活センターに相談、宅建業法違反は国土交通省・都道府県に通報、しつこい営業は明確に断ることが重要です。
正しい知識を持って利用すれば、無料査定は不動産売却の第一歩として有効なツールです。複数社の査定を比較し、信頼できる業者を選んで、安心して売却を進めてください。
