売れない土地を手放したい:現実的な解決方法とは
相続した土地や田舎の土地が売れず、固定資産税の負担や管理責任に悩んでいる方は少なくありません。「どうにかして手放したい」と考えても、具体的な方法が分からず困っている方も多いでしょう。
この記事では、売れない土地を手放す4つの方法(相続土地国庫帰属制度、専門買取業者、隣接地所有者への売却、寄付)を、政府広報オンライン・民法・相続法の公式情報を元に解説します。
各方法の要件・手続き・費用・リスクを理解し、状況に応じた最適な選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 売れない土地を手放す方法は4つ:相続土地国庫帰属制度、専門買取業者、隣接地所有者への売却、寄付
- 相続土地国庫帰属制度は2023年4月施行、承認率93%(2025年2月時点)で、審査手数料1.4万円+負担金が必要
- 相続放棄は全財産放棄が条件で、管理義務が継続するため慎重な判断が必要
- 固定資産税の負担を避けるため、土地の価値を高める工夫と複数方法の比較検討が重要
売れない土地を手放したい:現状と理由
売れない土地の典型例(相続した田舎の土地、市街化調整区域等)
売れない土地の典型例は以下の通りです。
- 相続した田舎の土地: 需要が少なく、買い手が見つからない
- 市街化調整区域の土地: 建物を建てる許可が下りにくく、利用価値が低い
- 狭小地・不整形地: 面積が小さい、形が悪いため、活用が困難
- 道路に面していない土地: 接道義務を満たさず、建築不可
- 崖地・傾斜地: 造成費用が高額で、活用が困難
これらの土地は、通常の不動産仲介では買い手が見つかりにくいため、処分に困るケースが多いです。
固定資産税の負担と管理責任
売れない土地でも、所有者には以下の負担が発生します。
- 固定資産税: 毎年1月1日時点の所有者に課税(標準税率1.4%)
- 管理責任: 雑草・倒木等の管理責任を負う
使用していない土地でも、これらの負担が永続するため、「手放したい」と考える方が増えています。
2024年4月から相続登記が義務化(3年以内)
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知ってから3年以内の登記が必須になりました。
登記しないまま放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続した土地を手放したい場合は、早めに対応することが重要です。
売れない土地を手放す4つの方法
方法①:相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行、承認率93%)
相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に施行された制度で、相続で取得した土地を一定の要件下で国に返還できます。
政府広報オンラインによると、2025年2月時点で承認件数1,426件、**承認率93%**と高い実績があります。
相続した土地を「国に引き取ってもらう」ことで、固定資産税の負担と管理責任から解放されます。
方法②:専門買取業者への売却
専門買取業者は、通常の不動産仲介で売れない土地も買い取ります。
- 田舎の土地
- 市街化調整区域の土地
- 狭小地・不整形地
これらの土地を専門に買い取る業者が存在し、確実に売却できる可能性があります。ただし、買取価格は市場価格より低くなる傾向があります。
方法③:隣接地所有者への売却
隣接地所有者への売却は、最も現実的な選択肢の一つです。
隣接地所有者は、自分の土地と一体化できるため、購入意欲が高い可能性があります。市場価格に近い価格で売却できる場合もあります。
売却交渉の際は、測量・境界確定を行い、トラブルを避けることが重要です。
方法④:自治体・法人・個人への寄付
寄付は、土地を無償で譲渡する方法です。ただし、以下の問題があります。
- 自治体への寄付: 固定資産税収が減るため、基本的に受け入れない(公共利用の予定がある場合のみ可能性あり)
- 法人への寄付: みなし譲渡として譲渡所得税が課される可能性
- 個人への贈与: 受贈者に贈与税の負担が発生(年間110万円超で課税)
寄付は、受け入れ先が限られており、税制上の問題もあるため、専門家への相談が必須です。
相続放棄は選択肢になるか?(全財産放棄が条件、管理義務は継続)
相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する手続きです。
しかし、以下の問題があります。
- 一部の財産のみを放棄することはできず、すべての相続権を放棄する必要がある
- 相続放棄しても管理義務が継続し、相続財産管理人の選任が必要な場合がある
- 相続財産管理人の選任費用(数十万円~)が高額
相続放棄は、プラスの財産が少なく、マイナスの財産が多い場合にのみ有効で、土地のみを手放す目的では適していません。
各方法の手続き・費用・要件の詳細
相続土地国庫帰属制度の要件(建物なし、担保権なし等)
相続土地国庫帰属制度の対象となる土地は、以下の要件を満たす必要があります。
申請できる土地:
- 相続または遺贈で取得した土地
- 建物がない土地
- 担保権が設定されていない土地
- 境界が明確な土地
却下事由(以下の土地は対象外):
- 建物がある土地
- 担保権・使用収益権が設定されている土地
- 通路・墓地・境内地・現況が道路の土地
- 土壌汚染・地下埋設物がある土地
- 崖地(勾配30度以上、高さ5m以上)
要件が厳しいため、事前に法務局で相談することを推奨します。
相続土地国庫帰属制度の費用(審査手数料1.4万円+負担金10年分の管理費)
相続土地国庫帰属制度の費用は以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 審査手数料 | 1.4万円(土地1筆あたり) |
| 負担金 | 10年分の管理費相当額 |
負担金の目安:
- 宅地: 面積により20万円~(最低20万円)
- 農地・原野: 約20万円
- 森林: 面積により変動(最低14万円)
例えば、宅地(200㎡)の場合、審査手数料1.4万円+負担金20万円=合計21.4万円程度が必要です。
専門買取業者の手続き(査定→契約→決済)
専門買取業者への売却の流れは以下の通りです。
- 査定依頼: 複数の買取業者に査定を依頼
- 価格提示: 買取価格の提示を受ける
- 契約: 売買契約を締結
- 決済: 代金受領・所有権移転登記
売却期間は3-6ヶ月程度が目安です。地元密着型の業者も含めて複数社に依頼することで、高値売却の可能性が高まります。
隣接地所有者への売却の手続き(測量・境界確定→価格交渉→登記)
隣接地所有者への売却の流れは以下の通りです。
- 測量・境界確定: 土地家屋調査士に依頼(費用30万円~)
- 価格交渉: 隣接地所有者と価格を交渉
- 売買契約: 契約書を作成
- 登記: 所有権移転登記(司法書士に依頼、費用5万円~)
測量費用・登記費用は売主負担が一般的です。
自治体への寄付の条件(公共利用の予定がある場合のみ受け入れ可能性)
自治体への寄付は、以下の条件を満たす場合のみ受け入れられる可能性があります。
- 公共利用の予定がある(道路・公園等の用地)
- 自治体が公共事業で必要としている土地
自治体は固定資産税収が減るため、基本的に土地寄付を受け入れません。まずは自治体の資産税課・財産管理課に相談することを推奨します。
個人への贈与の税制(贈与税110万円超で課税、みなし譲渡の注意)
個人への贈与は、以下の税制上の問題があります。
- 贈与税: 受贈者に年間110万円超の贈与税が課される
- みなし譲渡: 法人へ無償譲渡した場合、時価での譲渡とみなされ、譲渡所得税が課される
税制上の影響が大きいため、税理士への相談が必須です。
各方法のメリット・デメリット比較
相続土地国庫帰属制度:メリット(国が引き取り)、デメリット(要件厳格、費用発生)
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 国が引き取るため確実に手放せる | 要件が厳格(建物なし、担保権なし等) |
| 固定資産税の負担から解放 | 審査手数料+負担金(20万円~)が必要 |
| 承認率93%(2025年2月時点) | 審査に時間がかかる(数ヶ月~) |
専門買取業者:メリット(確実に売却可能)、デメリット(買取価格が低い)
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 確実に売却できる | 買取価格が市場価格より低い |
| 売却期間が短い(3-6ヶ月) | 複数業者を比較する手間がかかる |
| 仲介手数料が不要(買取のため) | 地域により業者が少ない |
隣接地所有者への売却:メリット(高値売却の可能性)、デメリット(交渉が必要、断られる可能性)
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 市場価格に近い価格で売却できる可能性 | 隣接地所有者が購入を断る可能性 |
| 購入意欲が高い(土地を一体化できる) | 測量・境界確定費用(30万円~)が必要 |
| 仲介手数料が不要(個人間売買) | 価格交渉が難航する可能性 |
寄付:メリット(無償で手放せる可能性)、デメリット(受け入れ先が少ない、税金発生)
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 無償で手放せる可能性 | 自治体は基本的に受け入れない |
| 固定資産税の負担から解放 | 個人への贈与は贈与税が発生 |
| 公共利用される場合がある | 法人へはみなし譲渡で譲渡所得税 |
売れない土地を放置するリスクと固定資産税
固定資産税の支払い義務(毎年1月1日時点で課税、使用状況にかかわらず)
毎年1月1日時点の所有者に固定資産税の支払い義務があります(使用状況にかかわらず)。
標準税率は**1.4%**で、市町村が評価額を決定します。使用していない土地でも、所有者である限り支払い義務が継続します。
負担調整措置(地価下落でも税額が下がらない場合)
負担調整措置により、地価が下がっても固定資産税額が下がらない場合があります。
これは、急激な税額変動を防ぐための措置ですが、地価下落局面では税額が高止まりする原因になります。
次世代への負担の継続
売れない土地を放置すると、固定資産税の負担が永続し、次世代に負担を残します。
相続登記が義務化されたことで、相続人が登記を怠ると過料が科される可能性もあります。
管理責任の継続(雑草・倒木等のトラブル)
所有者には、土地の管理責任があります。雑草・倒木等が隣地に被害を及ぼした場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
まとめ:売れない土地を手放す際の注意点と専門家への相談
売れない土地を手放す方法は、相続土地国庫帰属制度、専門買取業者への売却、隣接地所有者への売却、寄付の4つです。それぞれに要件・費用・難易度の違いがあります。
相続土地国庫帰属制度は承認率93%と高く、確実に手放せる方法です。審査手数料1.4万円+負担金(20万円~)が必要ですが、固定資産税の負担から解放されます。
土地の価値を高める工夫(境界確定、測量図作成、更地化)を行うことで、売却可能性が向上します。複数の方法を比較検討し、状況に応じた最適な選択を行いましょう。
専門家(司法書士・税理士・弁護士・土地家屋調査士)への相談を推奨します。詳細は政府広報オンラインでご確認ください。
