所有者不明土地とは?原因・問題点・対策を徹底解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/29

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所有者不明土地が社会問題化している背景

土地の所有者がわからない、または連絡が取れないという「所有者不明土地」が、全国で深刻な社会問題となっています。公共事業の遅延、周辺環境の悪化、防災対策の停滞など、さまざまな悪影響を引き起こしているためです。

この記事では、所有者不明土地とは何か、なぜ発生するのか、どのような問題をもたらすのか、そして2024年から施行されている相続登記義務化などの新制度について、国土交通省法務省の公式情報をもとに解説します。

土地を所有している方、相続を控えている方が、所有者不明土地を生まないために必要な知識を身につけられる内容です。

この記事のポイント

  • 所有者不明土地は約410万ヘクタール(九州の面積を超える)が存在し、2040年には720万ヘクタール(北海道の約90%)まで拡大する予測
  • 相続時の登記未実施と住所変更時の登記未実施が主な発生原因
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象となる
  • 相続土地国庫帰属制度や所有者不明土地管理制度など、問題解決のための新制度が導入されている

所有者不明土地とは

(1) 所有者不明土地の定義

所有者不明土地とは、不動産登記簿等の公簿情報により調査しても所有者が直ちに判明しない、または判明しても所在が不明で連絡が取れない土地のことを指します。

具体的には、以下のような状態の土地が該当します。

  • 登記簿に記載されている所有者が既に亡くなっているが、相続登記がされていない
  • 登記簿の住所に所有者がおらず、現在の所在を特定できない
  • 相続が何代も繰り返され、相続人が多数になり所在がわからない
  • 登記名義人の氏名・住所の記載が不正確で本人を特定できない

国土交通省によると、こうした土地は決して特殊なケースではなく、全国に広く存在しています。

(2) 現状と規模(約410万ヘクタール)

2016年時点の調査では、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタールに達しています。これは九州の面積(約367万ヘクタール)を超える規模です。

さらに、2020年の地籍調査では、調査対象となった土地のうち**約24.0%**が所有者の所在を直ちに特定できない状態でした。つまり、4筆に1筆が所有者不明土地またはその予備軍となっているのです。

項目 数値
所有者不明土地の面積(2016年) 約410万ヘクタール
九州の面積 約367万ヘクタール
所有者の所在が不明な土地の割合(2020年) 24.0%

(出典: 国土交通省「所有者不明土地ガイドブック」

(3) 将来の予測(2040年には720万ヘクタール)

さらに深刻なのは、所有者不明土地が今後も増え続ける見込みであることです。

2040年には約720万ヘクタールまで拡大すると予測されており、これは北海道の面積(約783万ヘクタール)の約90%に相当します。何も対策を講じなければ、国土の約2割が所有者不明土地になる可能性があるのです。

所有者不明土地が発生する原因

(1) 相続登記の未実施

所有者不明土地が発生する最大の原因は、相続時に登記をしないことです。

不動産の所有者が亡くなった場合、本来は相続人が相続登記(所有権移転登記)を行うべきですが、従来は法的な義務ではありませんでした。そのため、以下のような理由で登記が放置されるケースが多く見られました。

  • 登記手続きに手間や費用がかかる
  • 土地の価値が低く、売却や活用の予定がない
  • 相続人が複数いて話し合いがまとまらない
  • 遠方の土地で関心が薄い
  • 登記の必要性を知らない

相続登記をしないまま次の相続が発生すると、相続人がねずみ算式に増え、権利関係が複雑化します。例えば、2世代で相続人が4人ずつ増えれば、16人の共有状態になります。こうなると、全員の同意を得ることが極めて困難になります。

(2) 住所変更登記の未実施

相続登記と並んで大きな原因となっているのが、住所変更登記の未実施です。

不動産の所有者が引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わった場合も、登記簿の情報を更新する必要があります。しかし、これも従来は義務ではなかったため、多くの方が手続きをしていませんでした。

その結果、登記簿に記載された住所に所有者がおらず、現在の所在を特定できないという状況が生まれています。

(3) その他の要因(所有意識の希薄化等)

そのほか、以下のような要因も所有者不明土地の発生に関係しています。

  • 土地の資産価値低下: 人口減少や過疎化により、地方の土地の価値が低下し、所有する意義を感じにくくなっている
  • 所有意識の希薄化: 相続で取得したものの、一度も訪れたことがない土地への関心が薄い
  • 管理コストの負担: 固定資産税や草刈り等の管理費用が負担となり、放置される

所有者不明土地がもたらす問題

(1) 公共事業への影響(用地買収の遅延)

所有者不明土地は、公共事業の大きな障害となります。

道路や鉄道、ダムなどの公共インフラを整備する際には、用地を買収する必要があります。しかし、所有者が不明だと、用地買収の交渉ができず、事業が大幅に遅延します。

所有者の探索には膨大な時間とコストがかかり、場合によっては事業計画そのものを見直さなければならないこともあります。

(2) 周辺環境の悪化(管理放棄)

所有者不明土地は管理されないまま放置されるため、周辺環境の悪化を招きます。

  • 雑草や樹木が繁茂し、景観が悪化
  • ゴミの不法投棄の温床になる
  • 害虫や害獣の発生源になる
  • 倒壊の危険がある空き家が放置される

こうした状況は、周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼします。

(3) 防災事業の遅延

所有者不明土地は、防災対策の実施を妨げる要因にもなります。

例えば、土砂災害対策や洪水対策として、擁壁の設置や河川の改修が必要な場合でも、所有者不明土地があると工事に着手できません。地域の防災力を高める取り組みが進まず、住民の安全が脅かされる可能性があります。

(4) 経済的損失

所有者不明土地による経済的損失も無視できません。

  • 土地の有効活用ができず、経済活動の機会損失が生じる
  • 所有者探索にかかる行政コストが増大する
  • 固定資産税の徴収ができない場合がある

国土交通省の試算では、所有者不明土地がもたらす経済的損失は膨大な規模に上ると指摘されています。

相続登記義務化と新制度

所有者不明土地の発生を防ぎ、既存の問題を解決するため、国は法改正を行い、いくつかの新制度を導入しました。

(1) 相続登記の義務化(2024年4月施行)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。これは所有者不明土地対策の中核となる制度です。

制度の概要:

  • 不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請が義務
  • 正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となる
  • 過去の相続も遡及適用される(施行日から3年間の猶予期間あり)

法務省によると、この義務化により、新たな所有者不明土地の発生を大幅に抑制することが期待されています。

相続人申告登記:

相続登記の義務を履行するための簡易な手続きとして、相続人申告登記という制度も新設されました。これは、遺産分割協議が整っていない場合でも、「自分が相続人である」ことを申告するだけで義務を履行できる仕組みです。

(2) 相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行)

相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地を国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に施行されました。

制度の概要:

  • 相続で取得した土地について、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる
  • 法務局への申請が必要
  • 審査手数料(土地1筆あたり14,000円)と負担金(10年分の土地管理費相当額)が必要

対象外となる土地:

以下のような土地は国庫帰属の対象外となります。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路など他人によって使用されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権の存否・範囲について争いがある土地

この制度は、不要な土地を手放したいという相続人のニーズに応えるものですが、すべての土地が対象になるわけではないため、詳細は法務局への相談が必要です。

(3) 所有者不明土地管理制度(2023年4月施行)

所有者不明土地管理制度は、裁判所が選任した管理人が所有者不明土地を管理・処分できる制度です。2023年4月1日に施行されました。

制度の概要:

  • 利害関係人が地方裁判所に所有者不明土地管理命令を申し立て
  • 裁判所が管理人を選任
  • 管理人が所有者に代わって土地を管理し、必要に応じて売却等の処分も可能

この制度により、例えば「隣地が所有者不明で、境界確定ができない」「所有者不明の土地を購入したい」といった場合に、法的な手続きを経て問題を解決できるようになりました。

(4) 住所変更登記の義務化(2026年4月予定)

2026年4月から、住所・氏名変更登記も義務化される予定です。

制度の概要:

  • 住所や氏名に変更があった日から2年以内に変更登記の申請が義務
  • 正当な理由なく義務を怠ると、5万円以下の過料の対象となる

この義務化により、登記簿の情報を最新の状態に保ち、所有者不明土地の発生を防ぐことが目指されています。

まとめ:所有者不明土地を防ぐためにできること

所有者不明土地は、九州の面積を超える規模で存在し、公共事業の遅延、周辺環境の悪化、防災対策の停滞など、深刻な社会問題を引き起こしています。その主な原因は、相続時や住所変更時の登記の未実施です。

2024年4月から相続登記が義務化され、違反すると10万円以下の過料の対象となります。この義務化は過去の相続にも遡及適用されるため、まだ相続登記をしていない方は、早急に手続きを行う必要があります。

また、相続土地国庫帰属制度や所有者不明土地管理制度など、問題解決のための新しい仕組みも整備されています。不要な土地を手放したい、隣地が所有者不明で困っているといった場合は、これらの制度の活用を検討しましょう。

今すぐできること:

  • 相続した不動産の登記状況を確認する
  • 相続登記が済んでいない場合は、司法書士に相談する
  • 住所・氏名が変わった際は、速やかに変更登記を行う
  • 不要な土地がある場合は、国庫帰属制度の利用を検討する

所有者不明土地を生まないために、一人ひとりが適切な登記を行うことが重要です。詳細な手続きについては、法務局や司法書士にご相談ください。

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よくある質問

Q1所有者不明土地とは?

A1不動産登記簿等の公簿情報により調査しても所有者が直ちに判明しない、または判明しても所在が不明で連絡が取れない土地のことです。2016年時点で約410万ヘクタール(九州の面積を超える規模)が存在し、2020年の調査では24.0%の土地が所有者の所在を直ちに特定できない状態でした。相続登記の未実施や住所変更登記の未実施が主な原因です。

Q2なぜ所有者不明土地が発生するのか?

A2最大の原因は相続時に登記をしないことです。従来は相続登記が義務ではなかったため、手間や費用を避けたい、土地の価値が低い、相続人が多く話し合いがまとまらないなどの理由で放置されるケースが多くありました。また、住所変更登記の未実施も大きな原因です。相続を繰り返すと相続人がねずみ算式に増え、権利関係が複雑化します。

Q3相続登記をしないとどうなる?

A32024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となります。この義務化は過去の相続にも遡及適用されるため(施行日から3年間の猶予期間)、まだ登記していない方は早急に手続きが必要です。

Q4不要な相続土地を手放す方法はある?

A4相続土地国庫帰属制度を利用すれば、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえます。法務局への申請が必要で、審査手数料(土地1筆あたり14,000円)と負担金(10年分の土地管理費相当額)がかかります。ただし、建物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは対象外です。詳細は法務局への相談が必要です。

Q5隣地が所有者不明の場合はどうすればいい?

A5所有者不明土地管理制度を利用できます。利害関係人が地方裁判所に所有者不明土地管理命令を申し立て、裁判所が管理人を選任します。管理人は所有者に代わって土地を管理し、必要に応じて売却等の処分も可能です。境界確定や土地の購入など、法的手続きを経て問題を解決できます。詳細は弁護士や司法書士への相談を推奨します。

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Room Match編集部

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