なぜ登記簿謄本が不動産取引に必要なのか
不動産を売買する際、「登記簿謄本はどこで取得できるのか」「何を確認すればよいのか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、土地・建物の登記簿謄本の取得方法、手数料の比較、記載内容の見方、不動産取引での活用法を、法務局の公式情報をもとに解説します。
初めて不動産取引を行う方でも、必要な知識を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 登記簿謄本(登記事項証明書)は不動産の所有者、抵当権の有無等を証明する公的書類
- 取得方法は法務局窓口、郵送、オンライン申請の3つ。オンライン申請が最も安価で便利
- 手数料はオンライン(窓口受取)490円、オンライン(郵送)520円、窓口600円(2025年現在)
- 登記簿謄本は表題部(物理的情報)、権利部甲区(所有権)、権利部乙区(抵当権等)の3つの部分で構成
- 不動産取引前には、所有者確認、抵当権の有無、登記情報と現況の違いを必ず確認
登記簿謄本の基礎知識
(1) 登記簿謄本とは何か
登記簿謄本は、不動産の登記情報を証明する公的書類です。
登記簿謄本には、以下の情報が記載されています。
- 土地・建物の所在地、面積、構造等の物理的情報
- 所有者の氏名・住所
- 所有権の移転履歴(売買、相続、贈与等)
- 抵当権や根抵当権等の権利関係
不動産取引では、購入前に登記簿謄本を取得し、物件の権利関係を確認することが重要です。
(2) 登記簿謄本と登記事項証明書の違い
「登記簿謄本」と「登記事項証明書」は、実質的に同じものです。
| 名称 | 時期 | 形式 |
|---|---|---|
| 登記簿謄本 | 電子化前 | 紙の書類 |
| 登記事項証明書 | 電子化後(現在) | 電子データ |
(出典: 法務局「登記事項証明書と登記簿謄抄本とは、どう違うのですか?」)
登記簿が電子化された現在、正式名称は「登記事項証明書」ですが、通称として「登記簿謄本」という名称も広く使われています。内容も効力も同じです。
(3) 登記簿謄本の種類(全部事項証明書・現在事項証明書等)
登記簿謄本には、以下の種類があります。
全部事項証明書:
- 現在有効な登記事項だけでなく、過去の履歴(抹消された抵当権等)も含めてすべて記載
- 不動産取引では、過去の権利関係も確認できるため、こちらを取得するのが一般的
現在事項証明書:
- 現在有効な登記事項のみ記載
- 過去に抹消された抵当権等は記載されない
閉鎖事項証明書:
- 閉鎖された登記簿(建物が解体された場合等)の情報を記載
不動産取引では、全部事項証明書を取得することを推奨します。
登記簿謄本の取得方法と手数料
(1) 法務局窓口での取得(受付時間・必要書類)
法務局窓口での取得手順:
- 最寄りの法務局に足を運ぶ(管轄外の法務局でも取得可能)
- 備え付けの請求書に必要事項を記入(地番、家屋番号等)
- 窓口に提出し、手数料600円を支払う
- 10〜15分程度で交付される
受付時間: 平日8:30-17:15(土日祝日・年末年始は休業)
必要書類: 特になし(本人確認書類は不要)
窓口での取得は、地番や家屋番号が分からない場合でも、窓口の職員に相談しながら請求できるメリットがあります。
(2) オンライン請求の手順(かんたん証明書請求)
オンライン請求の手順:
- 法務局の「かんたん証明書請求」サイトにアクセス
- アカウント登録(初回のみ)
- 請求する不動産の情報(所在、地番、家屋番号等)を入力
- 受取方法を選択(窓口受取または郵送)
- クレジットカードで手数料を支払う
- 窓口受取の場合、指定した法務局で受け取る
受付時間: 平日8:30-21:00(システムメンテナンス時を除く)
メリット:
- 24時間いつでも請求可能(受付は平日8:30-21:00)
- スマートフォンからも請求できる
- ブラウザのみで完結し、ソフトウェアのインストール不要
- 手数料が窓口より安い
(出典: 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」)
(3) 郵送での取得方法
郵送での取得手順:
- 法務局のウェブサイトから請求書をダウンロード、または法務局で入手
- 請求書に必要事項を記入
- 手数料分の収入印紙を貼付(600円分)
- 返信用封筒(切手を貼付)を同封
- 法務局に郵送
- 数日後に登記簿謄本が郵送される
郵送での取得は、法務局に行く時間がない場合に便利ですが、往復の郵送期間(3〜7日程度)がかかります。
(4) 取得方法別の手数料比較(窓口600円・オンライン490円〜)
登記簿謄本の取得手数料は、取得方法によって異なります。
| 取得方法 | 手数料(2025年現在) | 受取までの時間 |
|---|---|---|
| 法務局窓口 | 600円 | 10〜15分 |
| オンライン(窓口受取) | 490円 | 請求後、指定法務局で即時受取 |
| オンライン(郵送) | 520円 | 請求後2〜3日 |
| 郵送 | 600円 | 往復で3〜7日 |
(出典: Legal AI Insight「登記簿謄本(登記事項証明書)とは?【2025年最新手数料・最短取得ガイド】」)
オンライン請求は、窓口より最大110円安く、24時間いつでも請求できるため、最も便利な方法です。
登記簿謄本の見方と確認ポイント
(1) 表題部の見方(所在・地番・地目・地積・建物構造等)
表題部には、不動産の物理的情報が記載されています。
土地の表題部:
- 所在: 土地の所在地(住所ではなく地番)
- 地番: 土地を特定する番号
- 地目: 土地の用途(宅地、畑、山林等)
- 地積: 土地の面積(㎡)
建物の表題部:
- 所在: 建物の所在地
- 家屋番号: 建物を特定する番号
- 種類: 建物の用途(居宅、店舗、事務所等)
- 構造: 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造等)
- 床面積: 各階の床面積(㎡)
表題部で確認すべきポイントは、登記簿の情報と現況が一致しているかです。
例えば、登記簿に記載された建物が実際には解体されている場合や、逆に、実際に建物が存在しても登記されていない場合(未登記建物)があります。
(2) 権利部甲区の見方(所有者・所有権移転履歴)
権利部甲区には、所有権に関する情報が記載されています。
記載内容:
- 所有者の氏名・住所
- 所有権の移転原因(売買、相続、贈与等)
- 所有権移転の日付
権利部甲区で確認すべきポイントは、現在の所有者が誰かです。
不動産取引では、売主が本当に所有者なのかを確認するため、登記簿謄本の所有者と売買契約書の売主が一致しているかを確認します。
(3) 権利部乙区の見方(抵当権・根抵当権・その他の権利)
権利部乙区には、所有権以外の権利(抵当権、根抵当権、地上権、賃借権等)が記載されています。
記載内容:
- 抵当権: 住宅ローンの担保として設定される権利
- 根抵当権: 事業資金の借入等で設定される権利
- 債権額: 借入金額
- 債権者: 金融機関の名称
権利部乙区で確認すべきポイントは、抵当権が抹消されているかです。
抵当権が残っている場合、売主が住宅ローンを完済していない可能性があります。売却時には抵当権を抹消する必要があるため、売主に確認することが重要です。
抹消の記載例:
○番抵当権抹消 令和○年○月○日受付 抹消
抹消されている場合、このような記載があります。
不動産取引での活用法と注意点
(1) 購入前の物件調査(所有者確認・抵当権の有無)
不動産を購入する前には、必ず登記簿謄本を取得し、以下の項目を確認します。
確認すべき項目:
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 所有者 | 売主が本当に所有者か |
| 抵当権の有無 | 抵当権が残っていないか |
| 地目 | 土地の用途が宅地か(農地等でないか) |
| 面積 | 登記簿の面積と実測面積が一致するか |
| 建物の構造 | 登記簿の構造と現況が一致するか |
特に、抵当権が残っている場合、売却時に抹消できるかを売主に確認することが重要です。
(2) 抵当権の抹消確認と売却時のリスク
売主が住宅ローンを完済していない場合、抵当権が登記簿に残っています。
抵当権が残ったまま不動産を購入すると、以下のリスクがあります。
- 売主がローンを滞納した場合、金融機関が抵当権を実行し、不動産が競売にかけられる可能性がある
- 抵当権を抹消するために、買主が追加費用を負担する必要がある場合がある
売買契約では、引渡し時までに抵当権を抹消することを条件とするのが一般的です。
売主が売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消する流れを確認しておきましょう。
(3) 登記情報と現況の違い(未登記建物・解体済み建物)
登記簿謄本の情報は、必ずしも現況と一致しない場合があります。
よくあるケース:
登記簿に建物が記載されているが、実際には解体されている:
- 建物が解体されても、登記を抹消していない場合がある
- 現地確認または最新の情報を取得することが重要
実際に建物が存在するが、登記されていない(未登記建物):
- 小規模な建物や倉庫等は登記されていない場合がある
- 未登記建物は融資の対象外となる場合があるため、購入前に確認が必要
不動産取引では、登記簿謄本だけでなく、現地確認や売主への聞き取りを併せて行うことを推奨します。
まとめ:登記簿謄本を活用した安全な不動産取引
土地・建物の登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の所有者、抵当権の有無、物件の物理的情報を証明する公的書類です。
取得方法は、法務局窓口、郵送、オンライン申請の3つがあり、オンライン申請が最も安価(490円〜)で便利です。
登記簿謄本は、表題部(物理的情報)、権利部甲区(所有権)、権利部乙区(抵当権等)の3つの部分で構成されており、不動産取引では以下の項目を確認することが重要です。
- 所有者: 売主が本当に所有者か
- 抵当権の有無: 抵当権が残っていないか、抹消予定はあるか
- 登記情報と現況の違い: 登記簿の情報と現地の状況が一致しているか
不動産取引では、登記簿謄本を取得し、専門家(司法書士、不動産業者等)に相談しながら、安全な取引を進めましょう。
