1. 不動産評価額とは|なぜ複数の評価額が存在するのか
不動産を所有していると、「評価額っていくつあるの?」「固定資産税評価額と時価は違うの?」「どうやって調べればいいの?」と疑問を感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産評価額の種類、それぞれの用途、具体的な調べ方を、総務省・国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産の売却や相続を検討している方が、目的に応じた評価額を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産評価額は5種類あり、用途によって使い分ける(固定資産税・相続税・売買で異なる)
- 固定資産税評価額は課税明細書で確認するのが最も簡単(毎年4月初旬に送付)
- 相続税評価額(路線価)は国税庁ホームページで無料で閲覧・計算可能
- 実勢価格(時価)は不動産一括査定サイトや国土交通省の取引価格データで確認できる
(1) 不動産評価額の役割(税金・売買・相続等)
不動産評価額とは、不動産の価値を金額で表したものです。
以下のような場面で使用されます。
- 固定資産税の計算: 固定資産税評価額を基準に税額を算出
- 相続税・贈与税の計算: 相続税評価額(路線価)を基準に税額を算出
- 不動産の売買: 実勢価格(市場価格)を参考に取引価格を決定
- 不動産の価値把握: 公示価格や基準地価で市場動向を確認
(2) 5つの評価額の関係性と目安(公示価格を100とした場合の比率)
不動産評価額には5種類があり、それぞれ異なる基準で算出されます。
| 評価額の種類 | 公示価格を100とした場合の比率 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 実勢価格(市場価格) | 100~110程度 | 実際の売買 |
| 公示価格 | 100 | 土地取引の指標 |
| 固定資産税評価額 | 70程度 | 固定資産税の計算 |
| 相続税評価額(路線価) | 80程度 | 相続税・贈与税の計算 |
| 基準地価 | 100程度 | 公示価格を補完 |
2. 不動産評価額の5つの種類とそれぞれの用途
(1) 実勢価格(市場価格)|実際の売買価格
実勢価格とは、実際に不動産が売買された価格です。
市場で決まる価格であり、需要と供給のバランス、物件の状態、立地条件等により変動します。
(2) 公示価格|国土交通省が公表する標準地の価格
公示価格とは、国土交通省が毎年3月に公表する標準地の1平方メートルあたりの価格です。
土地取引の指標として活用されます。
(3) 固定資産税評価額|固定資産税の課税基準(公示価格の70%程度)
固定資産税評価額とは、固定資産税の課税基準となる価格です。
公示価格の70%程度が目安とされています。
(4) 相続税評価額(路線価)|相続税・贈与税の課税基準(公示価格の80%程度)
相続税評価額(路線価)とは、道路に面した宅地1平方メートルあたりの価格です。
相続税・贈与税の課税基準として使用され、公示価格の80%程度が目安です。
(5) 基準地価|都道府県が公表する基準地の価格
基準地価とは、都道府県が毎年9月に公表する基準地の価格です。
公示価格を補完する指標として活用されます。
3. 固定資産税評価額の調べ方と確認方法
(1) 方法①:課税明細書で確認(最も簡単、毎年4月初旬に送付)
最も簡単な方法は、毎年4月初旬に送付される課税明細書を確認することです。
課税明細書の「価格」欄が固定資産税評価額です。
(2) 方法②:固定資産課税台帳の閲覧(役所窓口、4~5月は無料)
役所の窓口で固定資産課税台帳を閲覧することもできます。
4~5月頃は無料、それ以外の期間は手数料300円程度がかかります。
(3) 方法③:固定資産評価証明書を取得(手数料300円程度)
固定資産評価証明書を取得することで、固定資産税評価額を確認できます。
手数料は300円程度です。
(4) 方法④:全国地価マップで確認(無料、インターネット)
全国地価マップを使えば、インターネットで無料で固定資産税評価額を確認できます。
地図上で物件所在地を検索し、評価額を閲覧できます。
(5) 固定資産税評価額と課税標準額の違い(住宅用地の特例措置)
固定資産税評価額と課税標準額は異なります。
住宅用地の特例措置により、課税標準額は固定資産税評価額よりも小さくなります。
| 区分 | 特例措置 |
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 固定資産税評価額の1/6 |
| 一般住宅用地(200㎡超) | 固定資産税評価額の1/3 |
4. 相続税評価額(路線価)の調べ方と計算方法
(1) 路線価図の確認方法(国税庁ホームページで無料閲覧)
国税庁ホームページで路線価図を無料で閲覧できます。
令和6年分(2024年1月1日基準)の路線価が2024年7月1日に公表されています。
(2) 路線価方式の計算式(路線価 × 奥行価格補正率 × 地積)
路線価方式の基本的な計算式は以下の通りです。
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積
計算例:
- 路線価: 200,000円/㎡
- 奥行価格補正率: 1.00(奥行10m~24mの場合)
- 地積: 100㎡
評価額 = 200,000円 × 1.00 × 100㎡ = 20,000,000円
(3) 補正率の種類(奥行価格補正率・側方路線影響加算率等)
路線価の計算には、以下のような補正率が適用されます。
- 奥行価格補正率: 土地の奥行距離に応じて調整
- 側方路線影響加算率: 側方に道路がある場合に加算
- 二方路線影響加算率: 二方に道路がある場合に加算
- 不整形地補正率: 形状が不整形な土地の場合に調整
(4) 計算例と注意点
路線価の計算は、複数の補正率を適用する必要があるため、複雑になりやすいです。
(5) 専門家(税理士等)への相談を推奨
正確な相続税評価額の計算が必要な場合は、税理士等の専門家への相談を推奨します。
5. 実勢価格(時価・市場価格)の調べ方
(1) 国土交通省「不動産情報ライブラリ」で取引価格を検索
国土交通省の不動産情報ライブラリで、過去の取引価格を検索できます。
地域や物件種別を指定して、実際の取引価格を確認できます。
(2) 不動産一括査定サイトで無料査定を受ける
不動産一括査定サイトを利用すれば、複数の不動産会社から無料で査定を受けられます。
実勢価格(市場価格)の目安を知ることができます。
(3) 不動産会社に査定依頼する
不動産会社に直接査定を依頼することもできます。
物件の状態や立地条件を踏まえた詳細な査定を受けられます。
(4) 評価額と実勢価格の違い(市場で決まる、地域や時期で変動)
評価額(固定資産税評価額・相続税評価額)は、税金計算の基準として使用される価格です。
一方、実勢価格は市場で決まる価格であり、地域や時期によって大きく変動します。
2025年は都市部でマンション価格が高騰しており、評価額と実勢価格に乖離が生じやすい状況です。
6. まとめ:目的別の評価額の使い分けと注意点
不動産評価額は5種類あり、用途によって使い分けることが重要です。
(1) 固定資産税の確認 → 固定資産税評価額
固定資産税の金額を確認したい場合は、固定資産税評価額を使用します。
課税明細書で簡単に確認できます。
(2) 相続・贈与税の計算 → 相続税評価額(路線価)
相続税・贈与税の計算には、相続税評価額(路線価)を使用します。
国税庁ホームページで無料で確認できますが、計算が複雑な場合は税理士に相談しましょう。
(3) 売買の参考 → 実勢価格・公示価格
不動産の売買を検討する場合は、実勢価格や公示価格を参考にします。
不動産一括査定サイトや不動産情報ライブラリで確認できます。
(4) 評価額は3年に一度の評価替えがあることに注意
固定資産税評価額は、3年に一度の評価替えが行われます。
最新の評価額を確認するようにしてください。
(5) 2025年の不動産市場動向(都市部と地方の違い)
2025年は全国的に不動産価格が上昇傾向にあり、特にマンション価格が高騰しています。
一方、地方圏では地価がマイナスになっており、評価額が実勢価格を上回る可能性があります。
地域による違いを理解し、適切な評価額を確認することが重要です。
信頼できる専門家のサポートを受けながら、目的に応じた評価額を正確に把握しましょう。
