不動産証券化とは?仕組みとメリット・デメリットの基礎知識

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/4

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不動産証券化とは?投資手法としての特徴

不動産投資を検討する中で、「不動産証券化」「J-REIT」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。「仕組みが複雑で分かりにくい」「現物不動産との違いは何か」と疑問に感じることもあるかもしれません。

この記事では、不動産証券化の仕組み、メリット・デメリット、リスクと注意点を、国土交通省不動産証券化協会の公式情報を元に解説します。

特定の金融商品を推奨するのではなく、投資判断の材料を提供します。

この記事のポイント

  • 不動産証券化は不動産を小口化し、多くの人が投資できる仕組みで、市場規模は約53.3兆円(日本、2023年)
  • J-REITは利益の90%以上を配当すれば法人税が実質ゼロになり、高い配当利回りが期待できる
  • 投資家側のメリットは少額投資(数万円〜)・分散投資・売却しやすさ、デメリットは収益が低額・ローン利用不可
  • 市場リスク(金利上昇・不動産価格下落)があり、元本割れの可能性もあるため専門家への相談を推奨

(1) 不動産証券化の定義と歴史

不動産証券化とは、不動産を証券化し、投資単位を小口化して多くの人が所有できる仕組みです。

不動産証券化協会によると、不動産証券化には以下の3つの機能があります。

  1. 資金調達: 不動産所有者が証券化により資金を調達
  2. リスクコントロール: 不動産のリスクを投資家に分散
  3. 流動性の付与: 不動産を売買しやすくする

現物不動産は数千万円〜億単位の資金が必要ですが、証券化により数万円〜から投資が可能になります。

(2) 不動産証券化の3つの機能(資金調達・リスクコントロール・流動性の付与)

不動産証券化の3つの機能をそれぞれ見ていきます。

資金調達:

  • 不動産を証券化することで、銀行借入に頼らず資金を調達できる
  • 複数の投資家から小口で資金を集められる

リスクコントロール:

  • 不動産のリスク(空室リスク、修繕リスク等)を投資家に分散
  • 所有者は一部のリスクを保持しつつ、過度なリスク集中を回避

流動性の付与:

  • 不動産は売却に時間がかかるが、証券化により売買が容易になる
  • 東京証券取引所に上場すれば、株式と同様に売買可能

(3) バブル崩壊後の不良債権処理と2001年REIT上場

日本の不動産証券化は、バブル崩壊後の不良債権処理のために推進されました。

大和ハウス工業によると、2001年9月に日本初のREIT2銘柄が東京証券取引所に上場し、J-REIT(ジェイ・リート)市場が誕生しました。

2023年末時点で、日本のJ-REIT時価総額は約16兆円、米国に次ぐ世界2位の市場規模です。

不動産証券化の仕組み(SPV/SPC・キャッシュフロー)

(1) SPV/SPC(特別目的事業体/会社)の役割

不動産証券化では、SPV/SPC(特別目的事業体/会社)と呼ばれるペーパーカンパニーが中心的な役割を果たします。

SPV/SPCの役割:

  • 不動産を保有・利用するための組織
  • 不動産のキャッシュフローを裏付けに証券を発行
  • 元の所有者(オリジネーター)から不動産を譲り受け、投資家に証券を販売

大東建託によると、SPV/SPCを活用することで、オフバランス化や二重課税の回避が可能になります。

(2) オリジネーター・SPV・投資家の関係

不動産証券化の基本的な流れは以下のとおりです。

1. オリジネーター(不動産の元の所有者)がSPV/SPCに不動産を譲渡
2. SPV/SPCが不動産のキャッシュフローを裏付けに証券を発行
3. 投資家が証券を購入し、SPV/SPCが資金を調達
4. 不動産の賃貸収入や売却益が投資家に配当として分配される

この仕組みにより、不動産の流動性が向上し、投資単位が小口化されます。

(3) 不動産のキャッシュフローを裏付けとした証券発行

不動産証券化では、不動産のキャッシュフロー(賃貸収入、売却益等)を裏付けに証券が発行されます。

キャッシュフローの内訳:

  • 賃貸収入(オフィスビル、マンション、商業施設等)
  • 売却益(不動産の値上がり益)
  • その他収入(駐車場収入、広告収入等)

投資家は、これらのキャッシュフローから配当を受け取ります。ただし、市場環境の変化により配当が減少するリスクもあります。

(4) オフバランス化と二重課税の回避

不動産証券化の重要なメリットとして、オフバランス化と二重課税の回避があります。

オフバランス化:

  • 不動産をSPVに移転することで、貸借対照表(バランスシート)から除外できる
  • 企業の財務指標(自己資本比率等)が改善される

二重課税の回避:

  • J-REITは利益の90%以上を配当すれば法人税が実質ゼロになる
  • 通常の法人は法人税と配当所得税の二重課税が発生するが、J-REITはこれを回避できる

この税制優遇により、J-REITは高い配当利回りが期待できます。

主な不動産証券化の手法(REIT・私募ファンド・SPC)

(1) J-REIT(不動産投資信託)の特徴と税制優遇

J-REITは、日本版不動産投資信託です。東京証券取引所に上場し、株式と同様に売買できます。

J-REITの特徴:

  • 上場しているため、流動性が高い
  • 数万円〜から投資可能
  • 利益の90%以上を配当すれば法人税が実質ゼロ

不動産証券化協会によると、2023年末時点で世界の上場REIT時価総額は約200兆円、日本のJ-REIT時価総額は約16兆円です。

(2) TK-GK(匿名組合・合同会社スキーム)

TK-GK(匿名組合・合同会社スキーム)は、小規模な不動産証券化で採用されるスキームです。

TK-GKの特徴:

  • 匿名組合(TK: Tokumei Kumiai)と合同会社(GK: Godo Kaisha)を組み合わせる
  • 私募形式で投資家を募集(上場しない)
  • 最低投資額は数百万円〜数千万円

小規模な不動産証券化に適していますが、流動性は上場REITより低くなります。

(3) TMK(特定目的会社・資産流動化法)

TMK(特定目的会社)は、資産流動化法を根拠とした確実性の高いスキームです。

TMKの特徴:

  • 資産流動化法に基づいて設立される
  • 法的な安定性が高い
  • 大規模な不動産証券化に適している

TMKは金融機関や機関投資家向けの私募ファンドで採用されることが多いです。

(4) 各スキームの適用場面

各スキームの適用場面をまとめます。

スキーム 適用場面 最低投資額 流動性
J-REIT 個人投資家向け、上場 数万円〜 高い
TK-GK 小規模証券化、私募 数百万円〜 低い
TMK 大規模証券化、私募 数千万円〜 低い

投資家のニーズに応じて、適切なスキームを選択することが重要です。

不動産証券化のメリット・デメリット

(1) 所有者側のメリット(流動性向上・オフバランス化・リスク分散)

不動産の所有者(オリジネーター)にとってのメリットは以下のとおりです。

  • 流動性向上: 不動産を証券化することで売却しやすくなる
  • オフバランス化: 貸借対照表から不動産を除外し、財務指標を改善
  • リスク分散: 不動産のリスクを投資家に分散
  • 二重課税の回避: J-REITなら法人税が実質ゼロ

(2) 所有者側のデメリット(仕組みが複雑・手間とコスト・一定規模が必要)

一方で、以下のデメリットもあります。

  • 仕組みが複雑: 証券化の仕組みを理解するには専門知識が必要
  • 手間とコスト: SPVの設立、法律・税務の手続きに費用がかかる
  • 一定規模が必要: 大和ハウス工業によると、証券化のコストを差し引いても証券化メリットが期待できる金額規模が必要

小規模な不動産には適さない可能性があります。

(3) 投資家側のメリット(少額投資・分散投資・売却しやすい)

投資家にとってのメリットは以下のとおりです。

  • 少額投資: 数万円〜から不動産投資が可能
  • 分散投資: 複数の不動産に分散投資できる(リスク軽減)
  • 売却しやすい: 上場REITなら株式と同様に売買可能
  • プロによる管理: 不動産の管理・運用をプロに任せられる

現物不動産(数千万円〜億単位)と比較して、投資のハードルが大幅に下がります。

(4) 投資家側のデメリット(収益が低額・不動産投資ローン利用不可)

一方で、以下のデメリットもあります。

  • 収益が低額: 投資金額が少ないため、利回りによる収益も低額になる
  • 不動産投資ローン利用不可: 現物不動産のように不動産投資ローンを利用できない
  • 市場リスク: 金利上昇や不動産価格下落により元本割れの可能性がある

レバレッジを活用した投資(借入を利用した投資)はできない点に注意が必要です。

不動産証券化のリスクと注意点

(1) 市場リスク(金利上昇・不動産価格下落)

不動産証券化には、以下の市場リスクがあります。

  • 金利上昇リスク: 金利が上昇すると、不動産の利回りが相対的に低下し、価格が下落する可能性
  • 不動産価格下落リスク: 不動産市場が低迷すると、証券の価格も下落する可能性
  • 空室リスク: 賃貸物件の空室率が上昇すると、配当が減少する可能性

2024年の不動産市場は高い流動性を維持していますが、金融政策の変化(金利上昇)への懸念もあります。

(2) 流動性リスク(売却時の価格変動)

上場REITは流動性が高いですが、私募ファンドやTMKは流動性が低い傾向にあります。

流動性リスク:

  • 売却したいときに買い手が見つからない可能性
  • 売却時に希望価格を下回る可能性

投資する際は、流動性の高さを確認することが重要です。

(3) 証券化に適した不動産の条件(金額規模・投資魅力)

証券化に適した不動産には、以下の条件があります。

  • 一定の金額規模: 証券化のコストを差し引いても利益が出る規模
  • 投資対象としての魅力: 安定した賃貸収入が見込める物件
  • 立地の良さ: 駅近、商業地域等の好立地

小規模な不動産や投資魅力の低い不動産は、証券化が困難です。

(4) 他の不動産投資手法との比較(現物不動産・クラウドファンディング等)

不動産証券化と他の投資手法を比較します。

投資手法 最低投資額 流動性 レバレッジ 管理の手間
現物不動産 数千万円〜 低い 可能(ローン) 高い
J-REIT 数万円〜 高い 不可 低い
不動産クラウドファンディング 1万円〜 低い 不可 低い

ご自身の資金力、リスク許容度、投資目的に応じて、適切な投資手法を選択してください。

まとめ:不動産証券化の投資判断ポイント

不動産証券化は、不動産を小口化し、少額(数万円〜)から投資できる仕組みです。日本の市場規模は約53.3兆円(2023年)、J-REITは利益の90%以上を配当すれば法人税が実質ゼロになる税制優遇があり、高い配当利回りが期待できます。

一方で、市場リスク(金利上昇・不動産価格下落)があり、元本割れの可能性もあります。投資金額が少ないため収益も低額になり、不動産投資ローンを利用できない点にも注意が必要です。

投資判断は個別の状況により異なります。税理士、ファイナンシャルプランナー、不動産鑑定士等の専門家に相談しながら、ご自身のリスク許容度に合った投資を行いましょう。

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よくある質問

Q1不動産証券化とは何ですか?

A1不動産を証券化し、投資単位を小口化して多くの人が所有できる仕組みです。資金調達、リスクコントロール、流動性の付与の3つの機能があり、少額(数万円〜)から不動産投資が可能になります。現物不動産は数千万円〜億単位の資金が必要ですが、証券化により投資のハードルが大幅に下がります。不動産証券化協会によると、日本の市場規模は約53.3兆円(2023年6月時点)です。

Q2J-REITと不動産証券化の違いは何ですか?

A2J-REITは不動産証券化の代表的な手法の一つです。日本版不動産投資信託として東京証券取引所に上場し、利益の90%以上を配当すれば法人税が実質ゼロになる税制優遇があります。2001年に日本初のREIT2銘柄が上場し、2023年末時点で日本のJ-REIT市場規模は約16兆円、米国に次ぐ世界2位です。数万円〜から投資可能で、株式と同様に売買できます。

Q3不動産証券化の市場規模はどのくらいですか?

A3国土交通省によると、日本の証券化された不動産および信託受益権の総資産額は約53.3兆円(2023年6月)、前年比+13.9%の増加です。世界の上場REIT時価総額は約200兆円(2023年末)で、日本は米国に次ぐ世界2位の市場規模です。2024年上半期の不動産取引額は約3.7兆円と、2007年の記録(約3.1兆円)を超過し、高い流動性を維持しています。

Q4不動産証券化のリスクは何ですか?

A4市場リスク(金利上昇・不動産価格下落による元本割れ)、流動性リスク(売却時の価格変動)があります。また、投資金額が少ないため利回りによる収益も低額になり、不動産投資ローンを利用できません。2024年の不動産市場は高い流動性を維持していますが、金融政策の変化(金利上昇)への懸念もあります。投資判断は税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家への相談を推奨します。

Q5不動産証券化の最低投資額はいくらですか?

A5J-REITなど上場商品の場合、数万円〜から投資可能です。私募ファンド(TK-GKスキーム)の場合は数百万円〜数千万円、TMK(特定目的会社)の場合は数千万円〜の単位が一般的です。現物不動産(数千万円〜億単位)と比較して、証券化により投資単位が小口化されています。ご自身の資金力とリスク許容度に応じて、適切なスキームを選択してください。

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Room Match編集部

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