不動産登記簿謄本とは?登記事項証明書との違い
不動産の売買や相続、担保設定などで「登記簿謄本を取得してください」と言われたとき、どこで取得すればよいのか、どの項目を確認すればよいのか分からず、不安に感じる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産登記簿謄本の取得方法(窓口・オンライン・郵送)と記載内容の見方を、法務局の公式情報を元に解説します。初めて取得する方でも、必要な手続きと確認すべきポイントを正確に把握できるようになります。
2024年4月から相続登記が義務化されたことで、登記簿謄本の重要性がさらに高まっています。
この記事のポイント
- 登記簿謄本は法務局の窓口・郵送・オンラインの3つの方法で取得可能
- オンライン取得が最安(480円)で24時間受付、窓口は600円で平日のみ
- 地番・家屋番号は住所と異なるため、権利証や固定資産税納税通知書で事前確認が必要
- 登記簿謄本は表題部・権利部甲区・権利部乙区・共同担保目録の4部構成
- 2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の登記が法律で義務づけられた
登記簿謄本の定義と役割
登記簿謄本とは、不動産の権利関係を公的に証明する書類です。土地や建物の所在地、面積、所有者の住所・氏名、抵当権の有無などが記載されており、不動産取引や相続手続きで必須の書類となります。
登記事項証明書との違い(現在は同じもの)
従来は紙の登記簿を複写した「登記簿謄本」が発行されていましたが、登記の電子化が完了した現在は、「登記事項証明書」が正式名称です。内容は従来の登記簿謄本と同じであり、法的効力も同等です。
誰でも取得可能な公開情報
登記簿謄本は公開情報であり、誰でも取得できます。法務局の公式サイトによると、取得時に身分証明書は不要で、手数料と地番・家屋番号の情報があれば誰でも申請可能です。
登記簿謄本で何がわかるか
登記簿謄本からは以下の情報が確認できます。
- 所有者の住所・氏名(過去の所有者履歴も含む)
- 不動産の所在地・面積・構造
- 抵当権の有無・債権額・債権者名
- 地上権、賃借権などの所有権以外の権利
- 複数不動産の担保関係(共同担保目録)
登記簿謄本の取得方法3つ(窓口・オンライン・郵送)
登記簿謄本の取得方法は、窓口・オンライン・郵送の3つがあります。それぞれの手順、費用、所要時間を比較して、自分に合った方法を選びましょう。
窓口取得(全国どこの法務局でもOK)
法務局の窓口で直接取得する方法です。全国どこの法務局でも取得可能で、物件の所在地を管轄する法務局でなくても申請できます。
手順:
- 最寄りの法務局に行く(平日8:30-17:15)
- 窓口で申請書を記入(地番・家屋番号を記入)
- 手数料600円を支払い(収入印紙)
- その場で登記事項証明書を受け取る
メリット: 即日取得可能、窓口で地番・家屋番号を調べてもらえる
デメリット: 平日のみ、オンラインより高い
オンライン取得(24時間受付・最安480円)
法務局の登記・供託オンライン申請システムを利用する方法です。24時間受付可能で、最も安く取得できます。
手順:
- 申請用総合ソフトをインストール(初回のみ)
- オンラインで申請(地番・家屋番号を入力)
- 手数料480円を電子納付
- 窓口受取または郵送を選択
メリット: 最安(480円)、24時間受付
デメリット: 初回登録とソフトインストールが必要
郵送取得(500円+返信料)
法務局に郵送で申請する方法です。
手順:
- 申請書を記入(法務局サイトからダウンロード)
- 収入印紙500円分と返信用封筒を同封
- 管轄の法務局に郵送
- 1週間程度で返送される
メリット: 窓口に行かなくてもOK
デメリット: 時間がかかる、返信料が別途必要
地番・家屋番号の調べ方(事前確認が必須)
登記簿謄本の取得には、住所ではなく「地番」(土地)または「家屋番号」(建物)が必要です。地番・家屋番号は以下の方法で確認できます。
| 確認方法 | 詳細 |
|---|---|
| 権利証 | 登記済証・登記識別情報通知に記載 |
| 固定資産税納税通知書 | 毎年4-6月に郵送される書類に記載 |
| 法務局窓口 | 住所から地番・家屋番号を調べてもらえる |
地番と住所は異なるため、住所だけでは登記簿謄本を取得できません。事前に確認しておくことが重要です。
各方法の手数料と所要時間の比較
| 取得方法 | 手数料 | 受付時間 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| 窓口 | 600円 | 平日8:30-17:15 | 即日 |
| オンライン | 480円 | 24時間 | 窓口受取:即日、郵送:2-3日 |
| 郵送 | 500円+返信料 | 随時 | 1週間程度 |
(出典: 法務局)
登記簿謄本の見方(表題部・甲区・乙区・共同担保目録)
登記簿謄本は、表題部・権利部甲区・権利部乙区・共同担保目録の4部構成です。それぞれの記載内容を理解することで、不動産の権利関係を正確に把握できます。
表題部:物理的状況(所在地・面積・構造等)
表題部には、不動産の物理的状況が記載されています。
記載内容:
- 所在地(地番)
- 地目(宅地、田、畑等)
- 地積(土地の面積)
- 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造等)
- 床面積
確認ポイント: 地積や床面積が現況と一致しているか確認しましょう。増築後に登記を変更していない場合、実際の面積と異なることがあります。
権利部甲区:所有権に関する情報
権利部甲区には、所有権に関する情報が記載されています。
記載内容:
- 所有者の住所・氏名
- 所有権取得年月日
- 取得原因(売買、相続、贈与等)
- 過去の所有者履歴
確認ポイント: 現在の所有者が誰なのか、過去に何回所有者が変わったのかを確認します。相続が発生しているのに登記が古いままの場合、相続登記が未了の可能性があります。
権利部乙区:所有権以外の権利(抵当権等)
権利部乙区には、所有権以外の権利が記載されています。
記載内容:
- 抵当権(住宅ローンの担保設定)
- 地上権、賃借権
- 債権額、債権者名
確認ポイント: 住宅ローンが完済済みなのに抵当権が残っている場合、抹消登記が未了の可能性があります。抵当権の有無は売買時に重要な確認事項です。
共同担保目録:複数不動産の担保関係
共同担保目録には、複数の不動産が同一の債権の担保となっている場合の関連情報が記載されています。
記載内容:
- 担保対象の不動産リスト
- 債権の総額
確認ポイント: 一つの住宅ローンで土地と建物の両方が担保に入っている場合、共同担保目録に記載されます。
初心者が注意すべきポイント
- 下線・取消線: 下線は新規登記、取消線は削除された情報を示します
- 順位番号: 登記の順位を示し、抵当権の優先順位に影響します
- 登記年月日: いつ登記されたかを示します(最新情報でない可能性に注意)
登記簿謄本が必要になる場面と活用方法
登記簿謄本は、さまざまな場面で必要となります。
不動産売買時の所有権確認
売買契約前に、売主が真の所有者であることを確認するために登記簿謄本を取得します。抵当権が残っている場合、売買前に抹消する必要があります。
相続手続きでの権利関係確認
相続が発生した際、誰が所有者として登記されているかを確認します。2024年4月から相続登記が義務化されたため、相続から3年以内に登記が必要です。
融資申込時の担保設定確認
住宅ローンを申し込む際、金融機関は登記簿謄本で抵当権の設定状況を確認します。
その他の活用場面
- 隣地との境界確認
- 所有者不明土地の調査
- 不動産投資の事前調査
2024年4月からの相続登記義務化と注意点
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
相続登記義務化の内容(3年以内の登記義務)
相続により不動産の所有権を取得した場合、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に登記する義務が課せられました。
違反時の過料(10万円以下)
正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
専門家(司法書士等)への相談の重要性
相続登記は法律知識が必要な手続きです。相続人が複数いる場合や、遺産分割協議が必要な場合は、司法書士や弁護士に相談することを推奨します。
地番と住所の違いに注意
相続登記の申請時にも、地番・家屋番号が必要です。住所と地番は異なるため、権利証や固定資産税納税通知書で事前に確認しましょう。
まとめ:登記簿謄本の取得と活用のポイント
登記簿謄本は、法務局の窓口・オンライン・郵送の3つの方法で取得できます。オンライン取得が最安(480円)で24時間受付可能ですが、初回登録が必要です。窓口取得は即日可能で、地番・家屋番号を調べてもらえる利点があります。
登記簿謄本は表題部・権利部甲区・権利部乙区・共同担保目録の4部構成で、所有者情報、抵当権の有無、物件の詳細が記載されています。不動産売買、相続、融資申込など、さまざまな場面で必要となる重要書類です。
2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の登記が法律で義務づけられました。専門家(司法書士、弁護士等)への相談を検討しながら、適切に手続きを進めましょう。
