不動産名義変更の費用とは:全体像と主な費用項目
不動産の相続や贈与、離婚に伴う財産分与で名義変更を検討する際、「どれくらいの費用がかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産名義変更にかかる費用の全体像を、登録免許税の計算方法、司法書士報酬の相場、自分で行う方法まで、2025年の最新情報を元に解説します。
費用を抑えながら確実に名義変更を完了する方法を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 登録免許税は相続0.4%、売買2.0%(軽減措置で0.3%)、贈与2.0%と税率が異なる
- 司法書士報酬の相場は相続で2〜15万円程度、通常6〜10万円程度
- 自分で名義変更を行うことも可能だが、法務局に3〜5回程度の訪問と1カ月程度の時間が必要
- 2024年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内の登記が必須(違反時10万円以下の過料)
- 贈与による名義変更は高額な贈与税が発生する可能性があるため、税務署への事前相談が重要
(1) 名義変更にかかる費用の全体像
不動産の名義変更にかかる費用は、以下の3つに分類されます。
| 費用項目 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 名義変更(登記)時に課される税金 | 固定資産評価額×税率(相続0.4%、売買2.0%、贈与2.0%) |
| 司法書士報酬 | 司法書士に依頼した場合の手数料 | 相続で2〜15万円程度、通常6〜10万円程度 |
| 必要書類取得費用 | 戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書等 | 数千円〜1万円程度 |
最も大きな費用は登録免許税で、不動産の固定資産評価額によって決まります。
(2) 主な費用項目(登録免許税・司法書士報酬・必要書類取得費用)
各費用項目の詳細は以下の通りです。
- 登録免許税: 固定資産評価額×税率で計算されます。税率は相続・売買・贈与で異なります
- 司法書士報酬: 司法書士に依頼した場合の手数料で、各事務所が自由に設定できます
- 必要書類取得費用: 戸籍謄本(450円/通)、住民票(300円/通)、固定資産評価証明書(300円/通)等
自分で名義変更を行う場合は、司法書士報酬を節約できます。
登録免許税の計算方法:相続・売買・贈与別の税率
登録免許税は、不動産の固定資産評価額に税率を乗じて計算します。
(1) 登録免許税とは(固定資産評価額×税率)
登録免許税は、不動産の名義変更(登記)時に法務局に納める税金です。
計算式は以下の通りです。
登録免許税 = 固定資産評価額 × 税率
固定資産評価額は、市町村が決定する不動産の評価額で、毎年送付される固定資産税納税通知書に記載されています。
(2) 相続の場合:固定資産評価額×0.4%
相続による名義変更の場合、登録免許税の税率は0.4%です。
例えば、固定資産評価額2,000万円の不動産を相続した場合、登録免許税は8万円です。
2,000万円 × 0.4% = 8万円
2025年3月31日まで、固定資産評価額100万円以下の土地の相続登記には登録免許税の免税措置があります。
(3) 売買の場合:標準税率2.0%(軽減措置で0.3%)
売買による名義変更の場合、登録免許税の標準税率は2.0%ですが、一定の要件を満たす住宅用家屋には軽減措置があり、0.3%に引き下げられます。
| 軽減措置の要件 | 内容 |
|---|---|
| 床面積 | 50㎡以上 |
| 築年数 | 新築または耐震基準適合証明書がある中古住宅 |
固定資産評価額2,000万円の不動産を売買する場合、登録免許税は以下の通りです。
- 標準税率2.0%の場合: 40万円
- 軽減措置0.3%の場合: 6万円
(4) 贈与の場合:2.0%
贈与による名義変更の場合、登録免許税の税率は2.0%です。
固定資産評価額2,000万円の不動産を贈与する場合、登録免許税は40万円です。
2,000万円 × 2.0% = 40万円
ただし、贈与による名義変更は高額な贈与税が発生する可能性があるため、税務署への事前相談が重要です。
(5) 具体的な計算例(固定資産評価額2,000万円の場合)
固定資産評価額2,000万円の不動産を名義変更する場合の登録免許税を比較します。
| 名義変更の理由 | 税率 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 相続 | 0.4% | 8万円 |
| 売買(軽減措置あり) | 0.3% | 6万円 |
| 売買(標準税率) | 2.0% | 40万円 |
| 贈与 | 2.0% | 40万円 |
相続と売買(軽減措置あり)の場合、登録免許税は比較的低額です。
司法書士に依頼する場合の費用:報酬相場と複数見積もりの重要性
司法書士に名義変更を依頼する場合、報酬が発生します。
(1) 司法書士報酬の相場(相続2〜15万円、通常6〜10万円)
司法書士報酬の相場は、名義変更の理由や不動産の数によって異なります。
| 名義変更の理由 | 司法書士報酬の相場 |
|---|---|
| 相続(通常の複雑でない場合) | 6〜10万円程度 |
| 相続(複雑な場合) | 10〜15万円程度 |
| 贈与 | 5〜8万円程度 |
総費用の目安は、登録免許税+司法書士報酬+必要書類取得費用です。
固定資産評価額2,000万円の不動産を相続する場合、総費用は以下の通りです。
- 登録免許税: 8万円
- 司法書士報酬: 6〜10万円
- 必要書類取得費用: 数千円〜1万円
- 総費用: 約15〜20万円
(2) 司法書士報酬は各事務所が自由に設定
司法書士報酬は、各事務所が自由に設定できます。
そのため、同じ内容の依頼でも、事務所によって報酬額が大きく異なる場合があります。
(3) 複数の事務所から見積もりを取る重要性
司法書士報酬を抑えるためには、複数の事務所から見積もりを取って比較することが重要です。
見積もり時に確認すべきポイントは以下の通りです。
- 報酬の総額(登録免許税等の実費を含むか)
- サービス内容(必要書類の取得代行を含むか)
- 追加費用の有無
(4) 総費用の目安(実費+報酬)
名義変更にかかる総費用の目安は以下の通りです。
| 名義変更の理由 | 登録免許税(固定資産評価額2,000万円) | 司法書士報酬 | 総費用 |
|---|---|---|---|
| 相続 | 8万円 | 6〜10万円 | 約15〜20万円 |
| 贈与 | 40万円 | 5〜8万円 | 約45〜50万円 |
| 売買(軽減措置あり) | 6万円 | 5〜8万円 | 約11〜15万円 |
贈与の場合は登録免許税が高額なため、総費用も高くなります。
自分で名義変更を行う方法:手続きの流れと所要期間
自分で名義変更を行うことも可能です。
(1) 法務局での相談と書類準備
法務局は個人の申請にも対応しており、相談員のアドバイスを受けながら手続きを進めることができます。
まず、管轄の法務局で相談の予約を取り、必要書類を確認してください。
主な必要書類は以下の通りです。
- 戸籍謄本(被相続人・相続人)
- 住民票(相続人)
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書)
(2) 登記申請書の作成方法(法務局のホームページで書式ダウンロード)
登記申請書は、法務局のホームページで書式をダウンロードして作成できます。
記入例も公開されているため、参考にしながら作成してください。
(3) 所要期間(審査1〜2週間、準備含めて1カ月程度)
名義変更の所要期間は以下の通りです。
| 手続き内容 | 所要期間 |
|---|---|
| 必要書類の取得 | 1〜2週間 |
| 登記申請書の作成 | 数日〜1週間 |
| 登記審査 | 1〜2週間 |
| 合計 | 約1カ月 |
時間に余裕を持って手続きを進めてください。
(4) 法務局への訪問回数(3〜5回程度)
自分で名義変更を行う場合、法務局に3〜5回程度の訪問が必要です。
| 訪問内容 | 回数 |
|---|---|
| 相談 | 1〜2回 |
| 申請 | 1回 |
| 補正(書類不備があった場合) | 0〜1回 |
| 登記完了後の回収 | 1回 |
(5) 自分で行うメリット・デメリット
自分で名義変更を行うメリット・デメリットは以下の通りです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 司法書士報酬を節約できる(6〜15万円) | 時間と労力が必要(1カ月程度) |
| 手続きの内容を理解できる | 書類不備があると却下や補正が必要 |
| 法務局の相談員のアドバイスを受けられる | 法務局に3〜5回程度の訪問が必要 |
時間に余裕があり役所の手続きに慣れている場合は、自分で行うことを検討してください。
不動産名義変更の注意点:よくある失敗例と贈与税リスク
名義変更を行う際には、以下の注意点を理解してください。
(1) 2024年4月1日からの相続登記義務化(3年以内の登記が必須、違反時10万円以下の過料)
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が課されます。
相続が発生した場合は、速やかに名義変更の手続きを開始してください。
(2) 住所変更登記を忘れると手続きが複雑化
所有者の住所が変わった際は、住所変更登記が必要です。
住所変更登記を忘れると、売買や相続時の名義変更手続きが複雑化します。
引っ越しをした場合は、速やかに住所変更登記を行ってください。
(3) 贈与による名義変更は高額な贈与税が発生する可能性(年間110万円超に課税)
贈与による名義変更は、高額な贈与税が発生する可能性があります。
贈与税は、年間110万円を超える贈与に課税されます。固定資産評価額2,000万円の不動産を贈与する場合、贈与税は数百万円に達する可能性があります。
登記所と税務署のシステムが連動しているため、贈与による名義変更を行った場合、必ず税務署に申告してください。
贈与税のシミュレーションや節税対策は、税理士に相談することを推奨します。
(4) 書類不備による却下や補正のリスク
書類不備があると、登記申請が却下されるか、補正を求められます。
よくある書類不備は以下の通りです。
- 戸籍謄本の漏れ(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要)
- 印鑑証明書の有効期限切れ(発行後3カ月以内)
- 遺産分割協議書の記載漏れ(相続人全員の実印・住所が必要)
法務局の相談員に事前確認してもらうことで、書類不備を防げます。
まとめ:費用を抑えながら確実に名義変更を完了する方法
不動産の名義変更にかかる費用は、登録免許税(相続0.4%、売買2.0%、贈与2.0%)、司法書士報酬(相続で2〜15万円程度、通常6〜10万円程度)、必要書類取得費用で構成されます。
固定資産評価額2,000万円の不動産を相続する場合、総費用は約15〜20万円が目安です。
自分で名義変更を行うことも可能ですが、法務局に3〜5回程度の訪問と1カ月程度の時間が必要です。時間に余裕があり役所の手続きに慣れている場合は、司法書士報酬を節約できます。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内の登記が必須です。贈与による名義変更は高額な贈与税が発生する可能性があるため、税務署への事前相談が重要です。
司法書士報酬は各事務所が自由に設定できるため、複数の事務所から見積もりを取って比較検討してください。
不動産の名義変更は高額な手続きであり、専門家(司法書士、税理士等)への相談も検討してください。
