不動産チラシ(マイソク)とは?基本構成を理解する
不動産チラシ、特に業界で「マイソク」と呼ばれる販売図面は、物件の所在地、価格、アクセス、面積、用途地域などの重要情報をまとめた資料です。
ポストに投函されるチラシやインターネット上の物件情報は、この販売図面をベースに作成されています。
(1) マイソク(販売図面)の役割
マイソクは、物件の基本情報を一目で把握できるように設計されています。不動産会社間で共有され、買主や借主への情報提供資料として活用されます。
国土交通省の指針により、記載すべき項目が定められており、これらの情報が正確に記載されているかが信頼性の判断基準となります。
(2) 3ブロック構成(上・中・下)と情報の配置
不動産チラシは一般的に3つのブロックで構成されます。
- 上部ブロック: 物件の外観写真、キャッチコピー
- 中部ブロック: 間取り図、室内写真、設備情報
- 下部ブロック: 物件概要(価格、面積、築年数、交通、用途地域等)、業者情報
最も重要なのは下部ブロックの「物件概要」です。ここには建築可否、建蔽率、容積率、接道状況など、購入判断に直結する情報が小さな文字で記載されています。
(3) 不動産チラシの判断時間は0.5秒
不動産業界の調査によると、チラシを手に取った人が内容を判断するまでの時間は平均0.5秒とされています。
そのため、わかりやすいデザイン、読みやすいフォント、具体的な数字(「月6万円で新築」「駅徒歩5分」等)を使ったキャッチコピーが重視されます。
この記事のポイント
- 不動産チラシには必須記載事項(物件所在地、価格、面積、宅建業免許番号等)がある
- 誇大広告の見抜き方(根拠のない最上級表現、断定表現の禁止)を知ることが重要
- チラシ情報だけで判断せず、必ず現地確認と専門家相談を行うべき
- 法規制(宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約)を理解することで自衛できる
不動産チラシで確認すべき必須記載事項
不動産チラシには、法律で記載が義務付けられている項目があります。これらが欠けている場合、信頼性に疑問符がつきます。
(1) 物件概要(所在地、価格、面積、築年数、用途地域)
以下の項目は必須記載事項です。
| 項目 | 内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 物件所在地 | 住所(地番まで) | 正確な所在地が記載されているか |
| 価格 | 売買価格 | 総額表示、消費税の有無 |
| 土地面積 | ㎡表示 | 実測か公簿か明記されているか |
| 建物面積 | 延床面積 | バルコニー面積は含まれない |
| 築年数 | 新築/中古の区別 | 「新築」は建築後1年未満かつ未入居 |
| 用途地域 | 建築可能な建物の制限 | 住居系、商業系、工業系等 |
(出典: 国土交通省)
(2) 建築制限(市街化調整区域、接道状況、建蔽率・容積率)
チラシの「物件概要」欄で最も重要なのが建築制限に関する情報です。
- 市街化調整区域: 原則として建築が制限される区域。この記載がある場合、建築できない可能性があります。
- 接道状況: 幅員4m以上の道路に2m以上接していないと、建築確認が下りません。
- 建蔽率・容積率: 敷地面積に対する建築面積・延床面積の割合上限。用途地域ごとに決まります。
これらの情報が記載されていない、または不明確な場合は、必ず不動産会社に確認してください。
(3) 権利関係(所有権/借地権)
土地・建物の権利関係も必須確認事項です。
- 所有権: 土地・建物を完全に所有する権利
- 借地権: 他人の土地を借りて建物を所有する権利(期間満了後の更新や建て替え制限あり)
借地権物件は所有権物件より価格が安い傾向にありますが、地代の支払い、契約更新、建て替え制限などの制約があります。
(4) 宅建業免許番号、取引態様(売主/仲介)、業者名・連絡先
不動産会社の情報も必須記載事項です。
- 宅建業免許番号: 国土交通大臣または都道府県知事が発行する免許番号(例:国土交通大臣(5)第○○○○号)
- 取引態様: 売主、仲介(媒介)、代理のいずれか(仲介の場合は仲介手数料が発生)
- 業者名・連絡先: 正式な会社名、住所、電話番号
宅建業免許番号は、国土交通省の検索システムで確認できます。過去に行政処分を受けていないかもチェック可能です。
誇大広告・虚偽表示の見抜き方
不動産広告は、宅地建物取引業法と景品表示法により厳しく規制されています。誇大広告や虚偽表示を見抜く方法を知っておきましょう。
(1) 宅地建物取引業法・景品表示法の規制
不動産広告には以下の法規制が適用されます。
- 宅地建物取引業法: 誇大広告の禁止、重要事項の明示、断定的判断の提供禁止
- 景品表示法: 優良誤認表示の禁止、有利誤認表示の禁止
- 不動産の表示に関する公正競争規約: 業界の自主規制ルール
違反すると、罰金・懲役、業務停止命令などの行政処分が科される可能性があります。
(2) 禁止表現(根拠のない最上級表現、断定表現)
以下の表現は禁止されています。
❌ 禁止表現の例:
- 根拠のない最上級表現: 「業界最安値」「地域No.1」「特選住宅」
- 断定表現: 「絶対に」「必ず値上がりする」「完璧な物件」
- 根拠のない形容詞: 「日当たり抜群」「公園すぐ」「駅近」(具体的な距離・時間の明示が必要)
✅ 適切な表現の例:
- 「駅徒歩5分」(不動産の表示に関する公正競争規約により、80m=徒歩1分で計算)
- 「南向き」(方角の明示は可)
- 「築浅」(築年数を明記)
(3) 具体例(「日当たり抜群」「特選住宅」「絶対に」「必ず」等)
実際のチラシで見かける問題表現の例です。
- 「日当たり抜群」→ 具体的な方角(南向き等)を明示すべき
- 「特選住宅」→ 根拠が不明確
- 「絶対に資産価値が下がらない」→ 断定表現で禁止
- 「公園すぐ」→ 「公園まで徒歩3分」等の具体的な距離表示が必要
これらの表現が多用されているチラシは、誇大広告の可能性があります。
(4) 「完売御礼」なのに販売中、「新築」なのに竣工後1年以上
特に注意すべき虚偽表示の例です。
- 「完売御礼」なのに販売中: 完売していないのに「完売御礼」と表示するのは虚偽表示です。2024年以降、竣工後2-3年も「販売中」の新築マンションが増加しており、「完売御礼」表示には注意が必要です。
- 「新築」なのに竣工後1年以上: 「新築」は建築後1年未満かつ未入居の物件のみ。竣工後1年以上経過している場合は「新築」と表示できません。
こうした表示を見つけたら、消費者庁や不動産公正取引協議会に通報することも可能です。
「不動産を売ってください」チラシの注意点
近年増加している「不動産を売ってください」というチラシ(物上げ)にも注意が必要です。
(1) 物上げ(売却物件の募集)の目的
不動産会社は、売却物件を確保するために「物上げ」を行います。売却物件を仲介できれば、売主から仲介手数料を受け取れるためです。
物上げ自体は違法ではありませんが、誇大な表現や虚偽の情報には注意が必要です。
(2) 「買いたい顧客がいる」は虚偽の可能性
「買いたい顧客がいます」「すぐに買い手が見つかります」という文言は、実際には存在しない顧客を装っている可能性が高いとされています。
契約を獲得するための餌として使われることが多く、鵜呑みにせず、複数の不動産会社に相談することを推奨します。
(3) 「どこよりも高い」は契約獲得のための餌
「どこよりも高く買い取ります」という表現も、契約獲得のための誇大広告である可能性があります。
実際には相場以上で売れることは稀であり、適正な査定額は複数の不動産会社に依頼して比較することが重要です。
信頼できる不動産業者の見分け方
チラシ情報だけで判断せず、業者の信頼性を確認することが重要です。
(1) 宅建業免許番号の確認(国土交通省の検索システム)
宅建業免許番号は、国土交通省のネガティブ情報等検索システムで確認できます。
免許番号の( )内の数字は更新回数を示し、数字が大きいほど営業年数が長いことを意味します。
(2) 過去の行政処分の有無(ネガティブ情報検索)
同じ検索システムで、過去の行政処分(業務停止命令、業務改善命令等)の有無も確認できます。
行政処分を受けている業者は、法令遵守の意識が低い可能性があるため注意が必要です。
(3) チラシ情報だけで判断せず現地確認・専門家相談
チラシやインターネット情報だけで判断せず、必ず現地を訪問し、以下を確認してください。
- 周辺環境(騒音、におい、治安等)
- 日当たり・風通し
- 接道状況(道路の幅員、接道の長さ)
- 隣地との境界
また、宅地建物取引士や建築士などの専門家に相談することで、チラシだけでは分からないリスクを把握できます。
まとめ:不動産チラシを正しく活用するためのポイント
不動産チラシは、物件情報を手軽に入手できる便利なツールですが、誇大広告や虚偽表示のリスクもあります。
必須記載事項(物件所在地、価格、面積、宅建業免許番号等)が正確に記載されているか、禁止表現(根拠のない最上級表現、断定表現等)が使われていないかを確認しましょう。
チラシ情報だけで判断せず、必ず現地を訪問し、複数の不動産会社や専門家(宅地建物取引士、建築士等)に相談することで、後悔のない不動産取引を実現できます。
信頼できる不動産会社を見つけ、正確な情報に基づいた判断を心がけてください。
