不動産買取とは何か?なぜ注目されるのか
不動産を売却する方法には、大きく分けて「仲介」と「買取」の2種類があります。仲介が一般的ですが、近年では「買取」を選ぶ方が増えています。相続した物件や築古物件を早く現金化したい、周囲に売却を知られたくないといったニーズに応えるため、買取が注目されています。
この記事では、不動産買取の仕組み、仲介との違い、メリット・デメリット、買取価格の相場、そして買取・仲介の使い分け方を解説します。不動産売却を検討している方が、自分に合った売却方法を正しく選べるようになります。
この記事のポイント
- 買取は不動産会社が直接買主となり、最短数日〜1ヶ月で現金化可能
- 買取価格は仲介価格の70-80%が相場(例:仲介5000万円なら買取3500万〜4000万円)
- 仲介手数料不要、契約不適合責任免除、プライバシー保護がメリット
- 急いで売りたい、訳あり物件、周囲に知られたくない場合は買取が向いている
- 複数社(3社以上)に査定依頼することで、高額買取を実現できる
(1) 不動産買取の仕組み
不動産買取とは、不動産会社が直接買主となり、売主から物件を購入する売却方法です。仲介のように買主を探す必要がないため、早期売却が可能です。
買取の流れ:
- 査定依頼: 買取業者に査定を依頼
- 現地調査: 業者が物件を調査
- 買取価格提示: 業者が買取価格を提示
- 契約: 売買契約を締結
- 決済: 代金決済・物件引き渡し
最短で数日〜1ヶ月程度で完了し、仲介の3〜6ヶ月と比べて大幅に早い点が特徴です。
(2) 買取が注目される背景(相続物件、築古物件の増加)
買取が注目される背景には、以下の社会的要因があります。
- 相続物件の増加: 高齢化により相続物件が増加し、早期現金化のニーズが高まっている
- 築古物件の増加: 築30年以上の物件が増加し、仲介では買主が見つかりにくい
- 多様な売却ニーズ: 離婚・転勤・資金繰り等、急ぎの売却ニーズが増加
- プライバシー志向: 周囲に売却を知られたくない方が増えている
こうした背景から、買取は「早く」「確実に」「静かに」売却したい方の選択肢として定着しています。
買取と仲介の違い(買主・期間・価格・手数料)
(1) 買主の違い(不動産会社 vs 個人)
買取と仲介の最大の違いは、買主が誰かという点です。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社 | 個人(エンドユーザー) |
| 売買形態 | 直接取引 | 不動産会社が仲介 |
| 契約相手 | 不動産会社 | 個人(買主) |
買取では不動産会社が直接買主となるため、買主を探す必要がなく、確実に売却できます。仲介では不動産会社が買主を探し、売主と買主の間を仲介します。
(2) 売却期間の違い(最短2週間 vs 3-6ヶ月)
売却にかかる期間も大きく異なります。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 売却期間 | 最短数日〜1ヶ月 | 3〜6ヶ月(平均) |
| 買主探し | 不要 | 必要 |
| 内覧対応 | 原則不要 | 何度も対応が必要 |
買取は不動産会社が直接買主となるため、買主を探す時間が不要です。仲介は買主を探すため、広告活動・内覧対応が必要で、売却まで時間がかかります。
(3) 売却価格の違い(仲介の70-80% vs 市場価格)
価格面では、買取は仲介より低くなります。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 仲介価格の70-80% | 市場価格(100%) |
| 価格例(仲介5000万円の場合) | 3500万〜4000万円 | 5000万円 |
| 価格差 | 1000万〜1500万円安い | - |
買取価格が低い理由は、不動産会社の利益(約10%)とリフォーム費用(約10%)が差し引かれるためです。詳細は後述します。
(4) 仲介手数料の有無
仲介手数料の有無も重要な違いです。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 不要 | 必要 |
| 手数料の計算式 | - | (売却価格×3%+6万円)+消費税 |
| 手数料例(5000万円の場合) | 0円 | 約171万円 |
買取では不動産会社が直接買主となるため、仲介手数料が不要です。仲介では仲介手数料が発生し、売却価格の約3%+6万円+消費税がかかります。
不動産買取のメリット
(1) 早期現金化(最短数日〜1ヶ月)
買取の最大のメリットは、早期現金化が可能な点です。
メリット:
- 最短で数日〜1週間、通常1ヶ月以内に現金化可能
- 仲介のように買主を探す時間が不要
- 資金繰りが急ぐ場合に有効
向いているケース:
- 相続税の納税期限が迫っている
- 離婚・転勤等で早く売却したい
- 住宅ローンの返済に困っている
(2) 仲介手数料が不要
買取では仲介手数料がかからないため、売却費用を抑えられます。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 0円 | 約171万円(5000万円の場合) |
| その他費用 | 登記費用、印紙代のみ | 登記費用、印紙代、仲介手数料 |
仲介では仲介手数料が高額になるため、買取では手元に残る金額が増える場合があります。
(3) 契約不適合責任の免除
買取では、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)が免除されることが一般的です。
契約不適合責任とは:
- 売却後に物件の欠陥(雨漏り、シロアリ被害等)が見つかった場合の売主の責任
- 仲介では売主が責任を負う(修繕費用の負担、損害賠償、契約解除等)
- 買取では不動産会社が責任を負うため、売主は免責される
メリット:
- 売却後のトラブルリスクがない
- 築古物件や訳あり物件でも安心して売却できる
- 修繕費用を負担する必要がない
(4) プライバシー保護(周囲に知られない)
買取では、周囲に売却を知られずに売却できます。
仲介の場合:
- 不動産ポータルサイトに物件情報を掲載
- チラシ・看板等で広告活動
- 内覧対応で何度も人が訪れる
買取の場合:
- 広告活動は原則不要
- 内覧対応は不動産会社のみ
- 近隣に知られずに売却可能
向いているケース:
- 離婚・相続等のデリケートな事情
- 近隣に知られたくない
- 静かに売却したい
不動産買取のデメリットと注意点
(1) 売却価格が低い(仲介の70-80%)
買取の最大のデメリットは、売却価格が仲介より低い点です。
| 仲介価格 | 買取価格(70-80%) | 価格差 |
|---|---|---|
| 5000万円 | 3500万〜4000万円 | 1000万〜1500万円 |
| 3000万円 | 2100万〜2400万円 | 600万〜900万円 |
| 2000万円 | 1400万〜1600万円 | 400万〜600万円 |
価格差が大きいため、急ぎでない場合は仲介も検討することをおすすめします。
(2) 対応業者が少ない
買取に対応する業者は、仲介に対応する業者より少ない傾向があります。
理由:
- 買取は不動産会社が自己資金で物件を購入するため、資金力が必要
- リフォーム・再販のノウハウが必要
- リスクを取れる業者が限られる
対策:
- 複数の買取業者を探す
- 一括査定サイトを活用する
- 大手不動産会社も検討する(買取部門を持つ会社が増えている)
(3) 買取不可の物件がある
すべての物件が買取対象になるわけではありません。
買取不可になりやすい物件:
- 再建築不可の物件(建築基準法に適合しない)
- 接道義務を満たさない物件(道路に接していない)
- 違法建築物件(確認申請なし、建ぺい率・容積率オーバー等)
- 極端に立地が悪い物件(再販の見込みがない)
買取業者に査定を依頼し、買取可能かどうか確認することが重要です。
(4) 業者により査定額が大きく異なる
買取業者により、査定額が大きく異なる場合があります。
理由:
- 業者の得意分野が異なる(マンション、戸建て、土地等)
- リフォーム費用の見積もりが異なる
- 再販価格の見通しが異なる
対策:
- 必ず複数社(3社以上)に査定依頼する
- 査定額だけでなく、契約条件・実績・口コミも確認する
- 宅建業免許を持つ業者を選ぶ
買取価格の相場と高額買取のコツ
(1) 買取価格の相場(仲介価格の70-80%)
買取価格の相場は、仲介価格の70-80%が一般的です。
| 物件タイプ | 買取価格の相場 |
|---|---|
| マンション | 仲介価格の70-80% |
| 戸建て | 仲介価格の70-80% |
| 土地 | 仲介価格の70-80% |
| 築古物件 | 仲介価格の60-70%(リフォーム費用が高い) |
築年数が古い物件や状態が悪い物件は、リフォーム費用が高額になるため、買取価格が低くなる傾向があります。
(2) 買取価格が低い理由(利益とリフォーム費用)
買取価格が仲介価格の70-80%になる理由は、不動産会社の利益とリフォーム費用が差し引かれるためです。
価格の内訳(仲介価格5000万円の場合):
- 仲介価格: 5000万円(100%)
- 不動産会社の利益: 500万円(約10%)
- リフォーム費用: 500万円(約10%)
- 再販時の諸費用: 500万円(約10%)
- 買取価格: 3500万円(70%)
不動産会社は買い取った物件をリフォーム・リノベーションして再販売するため、これらの費用を差し引いた価格で買取ります。
(3) 高額買取のコツ(複数社査定、買取保証の活用)
高額買取を実現するためのコツは以下の通りです。
1. 複数社(3社以上)に査定依頼する
- 業者により査定額が異なるため、必ず比較する
- 一括査定サイトを活用すると効率的
2. 買取保証を活用する
- 一定期間(3〜6ヶ月)仲介で売却を試み、売れなければ事前に決めた価格で買取る方法
- 仲介で高値売却を狙いつつ、売れなければ買取で確実に売却できる
3. 物件の状態を整える
- 清掃・整理整頓で第一印象を良くする
- 軽微な修繕(壁紙の張替え、水回りの清掃等)は効果的
4. 築年数・立地の良い物件は高額買取になりやすい
- 築浅物件、駅近物件は再販しやすいため、高額買取になる
(4) 買取価格の調べ方
買取価格の目安を調べる方法は以下の通りです。
1. 仲介価格を調べる
- 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)で類似物件の価格を確認
- その価格の70-80%が買取価格の目安
2. 一括査定サイトで査定依頼
- 複数の買取業者に一括で査定依頼できる
- 無料で利用可能
3. 不動産会社に直接査定依頼
- 大手不動産会社は買取部門を持つ場合が多い
- 地域密着型の買取専門業者も検討
まとめ:買取・仲介の使い分けガイド
不動産買取は、仲介価格の70-80%の価格で、最短数日〜1ヶ月で現金化できる売却方法です。早期売却、仲介手数料不要、契約不適合責任免除、プライバシー保護がメリットですが、価格が低い点がデメリットです。
(1) 買取が向いているケース
こんな方に買取がおすすめ:
- 急いで売りたい: 相続税の納税期限、離婚・転勤等で早期売却が必要
- 訳あり物件: 築古物件、相続物件、再建築不可物件等、仲介では買主が見つかりにくい
- 周囲に知られたくない: 広告活動をせず、静かに売却したい
- 売却後のトラブルを避けたい: 契約不適合責任を負いたくない
- 仲介手数料を節約したい: 手元に残る金額を増やしたい
(2) 仲介が向いているケース
こんな方に仲介がおすすめ:
- 高値で売りたい: 時間をかけてでも市場価格で売却したい
- 売却を急いでいない: 3〜6ヶ月程度の売却期間を許容できる
- 物件の状態が良い: 築浅、駅近、人気エリア等、買主が見つかりやすい
- 広告活動に協力できる: 内覧対応、広告掲載に協力できる
(3) 買取保証という選択肢
買取と仲介のどちらを選ぶか迷う場合は、「買取保証」という選択肢もあります。
買取保証の流れ:
- 一定期間(3〜6ヶ月)仲介で売却を試みる
- 売れなければ、事前に決めた価格で不動産会社が買取る
- 高値売却を狙いつつ、確実に売却できる
メリット:
- 仲介で高値売却のチャンスを逃さない
- 売れなければ買取で確実に売却できる
- 売却期限を明確にできる
向いているケース:
- 高値で売りたいが、売却期限がある
- 仲介で売れるか不安
- 両方のメリットを享受したい
不動産買取は、状況によっては非常に有効な売却方法です。買取価格は仲介より低いですが、早期売却・確実性・手間の少なさを重視する方には最適です。複数社(3社以上)に査定依頼し、契約条件・実績・口コミを総合的に判断しながら、信頼できる買取業者を見つけましょう。買取か仲介か迷う場合は、買取保証という選択肢も検討してみてください。
