不動産会社の選び方とは
不動産取引を検討する際、「どの不動産会社を選べばよいのか」「大手と地域密着型の違いは何か」「悪質な会社を見分ける方法は?」と悩む方は少なくありません。
この記事では、売却・購入・賃貸別の不動産会社選びのポイント、大手 vs 地域密着型の比較、トラブル事例と対策を、宅地建物取引業法等の公式情報を元に解説します。
初めて不動産取引を行う方でも、信頼できる会社を見極められるようになります。
この記事のポイント
- 不動産会社は3~5社に相談して、対応や提案内容を比較してから選ぶことが重要
- 全ての不動産会社はREINS(レインズ)にアクセスできるため、大手でも地域密着型でも物件情報量は基本的に同じ
- 宅地建物取引業免許の更新回数(括弧内の数字)を確認すると、営業歴が分かる(5年ごとに更新)
- 良い不動産会社は物件のメリットだけでなく、デメリットも詳しく説明してくれる
- 「今日だけ特別値引き」等のプレッシャーをかけてくる会社は避けるべき
不動産会社選びの基本:賃貸・購入・売却で異なる選び方
不動産会社の種類(仲介会社、管理会社、元付・客付)
不動産会社には、役割により以下のような種類があります。
| 種類 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 仲介会社 | 売主と買主(または貸主と借主)の間に立ち、契約成立をサポート | 幅広い物件を紹介可能 |
| 管理会社 | 賃貸物件の日常的な管理(入居者対応、清掃、設備保守等) | 自社管理物件に詳しく、値引き交渉しやすい |
| 元付(もとづけ) | 売主(または貸主)から直接依頼を受けて物件を預かる | 物件の詳細情報を持つ |
| 客付(きゃくづけ) | 買主(または借主)を探す業務に特化 | 買主側の利益を優先 |
賃貸・購入・売却のいずれの場合も、自分の立場(売主か買主か、貸主か借主か)により、依頼すべき会社の種類が異なります。
宅地建物取引業免許の見方(更新回数で営業歴を判断)
不動産会社が不動産の売買・賃貸の仲介を行うためには、宅地建物取引業免許が必要です。
免許番号の見方:
- 「国土交通大臣(5)第〇〇号」または「東京都知事(3)第〇〇号」等と記載されています
- 括弧内の数字が更新回数を示します(5年ごとに更新)
- 数字が大きいほど長い営業歴があります
例:
- (1): 0~5年の営業歴
- (3): 10~15年の営業歴
- (5): 20~25年の営業歴
REINS(レインズ)の仕組み:全社が同じ物件情報にアクセス可能
**REINS(レインズ)**は、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する物件情報ネットワークです。
重要なポイント:
- 全ての不動産会社がREINSにアクセスできる
- 大手でも地域密着型でも、物件情報量は基本的に同じ
- 「大手しか知らない物件がある」というのは誤解
したがって、「物件情報量」で会社を選ぶのではなく、「地域情報」「担当者の対応」「サポート内容」で選ぶことが重要です。
売却時の不動産会社選び:査定の正確性と販売力を見極める
複数社(3~5社)への査定依頼が必須
不動産売却を検討する際は、必ず複数社(3~5社)に査定を依頼してください。
理由:
- 査定額は会社により大きく異なる場合がある
- 1社のみの査定では、適正価格を判断できない
- 複数社の対応を比較することで、信頼できる会社を見極められる
査定額が異常に高い会社に注意(契約後に値下げ提案の可能性)
注意:
- 査定額が他社より明らかに高い会社は、契約を取るために意図的に高額査定を出している可能性があります
- 契約後に「この価格では売れない」と値下げを提案されるケースがあります
見極めポイント:
- 査定額の根拠を詳しく説明してくれるか
- 周辺の類似物件の成約事例を示してくれるか
- デメリット(売りにくい要因)も正直に説明してくれるか
売却実績と専門性の確認
売却を専門にしている会社は、以下のような実績を持っています。
確認項目:
- 過去の売却実績件数
- 対象エリアでの売却経験
- 売却期間の平均値
- 売却価格の成約率(査定額に対する実際の成約額の割合)
囲い込みを避けるポイント
囲い込みとは、不動産会社が売却物件の情報を他社に流さず、自社のみで買主を探す行為です。
囲い込みのデメリット:
- 売主に不利(買主候補が限られるため、売却期間が長くなる、価格が下がる)
- 不動産会社は売主・買主双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」を狙っている
回避方法:
- 「一般媒介契約」を選ぶ(複数社に同時に依頼できる)
- 定期的にREINSへの登録状況を確認する
- 希望エリア内に物件が多数あるのに、紹介される物件が極端に少ない場合は要注意
購入時の不動産会社選び:物件提案力と資金計画サポート
地域情報を持っているかが重要
全ての不動産会社がREINSで物件情報を確認できますが、地域情報の深さは会社により異なります。
地域情報の例:
- 学区・教育施設の評判
- 周辺の治安・騒音等の住環境
- 将来の開発計画(駅・道路等)
- 地域の不動産価格の推移
地域密着型の不動産会社は、こうした情報を詳しく持っている場合が多いです。
物件のメリット・デメリット両方を説明してくれるか
良い不動産会社は、物件のメリットだけでなく、デメリットも詳しく説明してくれます。
デメリットの例:
- 築年数が古い、耐震基準が旧基準
- 日当たりが悪い、周辺に嫌悪施設がある
- 修繕積立金が不足している(マンションの場合)
「デメリットを隠す会社」よりも、「デメリットを正直に説明し、対処法も提案してくれる会社」の方が信頼できます。
資金計画(住宅ローン、諸費用等)の相談ができるか
不動産購入時には、物件価格以外にも以下の費用が必要です。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 物件価格の3%+6万円+消費税(上限) | 100~150万円 |
| 登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記の司法書士費用 | 5~10万円 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額の3%(軽減措置あり) | 30~50万円 |
| 火災保険 | 10年一括払い | 20~30万円 |
良い不動産会社は、資金計画(住宅ローンの選び方、諸費用の内訳等)の相談に乗ってくれます。
「今日だけ特別値引き」等のプレッシャーをかける会社は避ける
避けるべき会社の特徴:
- 「今日だけ特別値引き」「この人気物件はすぐ埋まる」等のプレッシャーをかける
- 質問に対する回答が曖昧、説明が不明瞭
- 契約を急がせる
こうした会社は、顧客の利益よりも自社の利益を優先している可能性が高いです。
賃貸時の不動産会社選び:仲介会社と管理会社の違い
仲介会社:幅広い物件を紹介可能
仲介会社は、複数の管理会社の物件を取り扱っているため、幅広い選択肢を提示できます。
メリット:
- 希望条件に合った物件を広範囲から探せる
- 複数の管理会社の物件を比較できる
デメリット:
- 管理会社ほど物件の詳細情報を持っていない場合がある
- 値引き交渉の余地が限られる
管理会社:自社管理物件に詳しく、値引き交渉しやすい
管理会社は、自社が管理している物件を直接紹介します。
メリット:
- 物件の詳細情報(設備、過去のトラブル等)を詳しく知っている
- オーナーと直接交渉できるため、値引き交渉しやすい
- 入居後のトラブル対応もスムーズ
デメリット:
- 自社管理物件のみの紹介となるため、選択肢が限られる
おとり物件に注意(既に売れた物件を広告)
おとり物件とは、既に売れた(または実在しない)魅力的な物件を広告し、来店させて別の物件を紹介する手法です。
回避方法:
- 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)で複数社の情報を確認する
- 気になる物件を見つけたら、即座に「内見可能か」を確認する
- 「その物件はもう決まりました」と言われた場合、他社でも同じ物件が出ていないか確認する
担当者とのコミュニケーションの取りやすさ
賃貸物件は、入居後も設備トラブル等で管理会社に連絡する機会が多いため、担当者とのコミュニケーションの取りやすさが重要です。
確認項目:
- 問い合わせへの返信が速いか
- 質問に丁寧に答えてくれるか
- 入居後のトラブル対応の体制は整っているか
大手 vs 地域密着型の比較と見極めポイント
大手のメリット:広範囲の物件情報、ブランド力、安心感
大手不動産会社のメリット:
- 全国に店舗があり、広範囲の物件情報を提供できる
- ブランド力があり、安心感がある
- システム化されており、手続きがスムーズ
- 研修が充実しており、担当者の知識レベルが一定以上
大手のデメリット:担当者の異動が多い、柔軟性に欠ける場合がある
大手不動産会社のデメリット:
- 担当者の異動が多く、長期的な関係を築きにくい
- マニュアル重視で、柔軟な対応が難しい場合がある
- 仲介手数料の値引き交渉が難しい
地域密着型のメリット:地域情報に詳しい、柔軟な対応、長期的な関係
地域密着型不動産会社のメリット:
- 地域情報(学区、治安、開発計画等)に詳しい
- 地域の顔なじみが多く、オーナーとの交渉がスムーズ
- 柔軟な対応が可能(営業時間外の内見等)
- 長期的な関係を築きやすい(売却後の相談等)
地域密着型のデメリット:営業エリアが狭い、情報量が限られる場合がある
地域密着型不動産会社のデメリット:
- 営業エリアが狭く、広範囲の物件探しには不向き
- 会社の規模が小さく、システム化が進んでいない場合がある
- 担当者により知識・対応にばらつきがある
フランチャイズ型(センチュリー21等):大手と地域密着型の中間
フランチャイズ型は、大手ブランドを使いながら、地域密着型の柔軟さを併せ持つ形態です。
特徴:
- 大手ブランドの安心感
- 地域密着型の柔軟な対応
- 全国ネットワークで物件情報を共有
まとめ:信頼できる不動産会社を選ぶために
良い不動産会社の7つのチェックポイント
- 宅地建物取引業免許の更新回数が多い(長い営業歴)
- 対応が速く丁寧(問い合わせへの返信が24時間以内)
- 物件のメリット・デメリット両方を説明(デメリットを隠さない)
- 質問に明確に回答(説明が曖昧でない)
- プレッシャーをかけない(急かして契約を迫らない)
- 資金計画の相談に乗ってくれる(住宅ローン、諸費用等)
- 複数の選択肢を提示(1つの物件に固執しない)
避けるべき不動産会社の特徴(プレッシャー、説明が曖昧等)
避けるべき会社の警告サイン:
- 「今日だけ特別値引き」「この人気物件はすぐ埋まる」等のプレッシャー
- 査定額が他社より明らかに高い(契約後に値下げ提案の可能性)
- 質問に対する回答が曖昧、説明が不明瞭
- 仲介手数料の仕組みを説明しない(両手仲介狙いの可能性)
- 契約を急がせる、じっくり考える時間を与えない
3~5社に相談して比較する
重要:
- 1社だけでなく、3~5社に相談して、対応や提案内容を比較してください
- 会社の規模(大手か地域密着型か)だけでなく、担当者との相性も重要です
専門家(宅建士、FP等)への相談を推奨
不動産取引は個別の状況により最適解が異なるため、専門家(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー等)への相談を推奨します。
信頼できる不動産会社を選ぶことで、安心して不動産取引を進めることができます。
