不動産買取業者を利用する前に知っておくべきこと
不動産を売却する際、「すぐに現金化したい」「訳あり物件で仲介では売りにくい」と感じている方は、不動産買取業者の利用を検討されているかもしれません。
この記事では、不動産買取と仲介の違い、買取のメリット・デメリット、信頼できる業者の選び方を、国土交通省の宅地建物取引業法ガイドラインや国民生活センターのトラブル事例を元に解説します。
不動産売却が初めての方でも、適切な売却方法を選び、悪質業者を避けられるようになります。
この記事のポイント
- 買取は不動産会社が直接買主となり、数日~1カ月で現金化できるが、売却価格は市場価格の7~8割が目安
- 仲介手数料不要で契約不適合責任も免除されることが多いため、早期売却・訳あり物件に適している
- 業者選びは宅地建物取引業免許の確認、複数社(最低3社以上)への査定依頼と比較が重要
- 悪質業者のトラブル(極端に安い査定額、不当請求、決済遅延等)を避けるため、契約書内容を専門家に確認することを推奨
不動産買取業者とは(不動産会社が直接買主となる)
不動産買取業者とは、中古物件を直接買い取り、リフォーム・リノベーションして再販売する事業(買取再販)を行う不動産会社です。
仲介と異なり、不動産会社自身が買主となるため、売主は一般個人の買主を探す必要がありません。
国土交通省によると、不動産買取業者は宅地建物取引業法に基づく免許(国土交通大臣または都道府県知事)を持つ必要があります。
不動産買取が向いているケース(早期売却希望、築年数が古い、訳あり物件等)
以下のようなケースでは、仲介よりも買取が適している場合があります。
買取が向いているケース:
- 早期売却希望: 相続税納付、離婚財産分与など期限がある
- 築年数が古い: 築30年以上で仲介では買主が見つかりにくい
- 訳あり物件: 事故物件、再建築不可、接道義務違反、擁壁問題等
- プライバシー重視: 近隣に知られずに売却したい
- 手間を減らしたい: 内覧対応や交渉の手間を省きたい
逆に、時間に余裕があり、高値で売りたい場合は仲介が適している場合が多いです。
本記事で学べること(買取と仲介の違い・業者選びのポイント・トラブル対策)
この記事では、以下の内容を詳しく解説します。
- 不動産買取と仲介の違い(買主・期間・価格・手数料・責任・プライバシー)
- 買取のメリット・デメリット
- 信頼できる業者の選び方(免許確認、複数査定、口コミ評判等)
- よくあるトラブル事例と対策
不動産買取と仲介の違いを徹底比較
買主の違い(買取:不動産会社、仲介:一般個人)
買取:
- 買主は不動産会社
- 売主と不動産会社の1対1の取引
仲介:
- 買主は一般個人
- 不動産会社は売主と買主の間に入り、契約成立を仲介
この違いにより、売却期間・価格・手数料等が大きく異なります。
売却期間の違い(買取:数日~1カ月、仲介:3~6カ月)
買取:
- 査定から決済まで数日~1カ月
- 不動産会社との合意だけで売却が成立
仲介:
- 売却まで3~6カ月が一般的
- 買主が見つかるまで時間がかかる
- 人気エリア・条件の良い物件は早く売れる場合もある
売却価格の違い(買取:市場価格の7~8割、仲介:市場価格相当)
買取:
- 市場価格の7~8割(2~3割安い)が目安
- 買取業者はリフォーム費用・転売リスク・利益を考慮して価格を設定
仲介:
- 市場価格相当で売れる可能性が高い
- 買主との交渉次第で値下げする場合もある
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の7~8割 | 市場価格相当 |
| 売却期間 | 数日~1カ月 | 3~6カ月 |
| 買主 | 不動産会社 | 一般個人 |
(出典: HOME'S)
仲介手数料の有無(買取:不要、仲介:物件価格の3%+6万円+消費税)
買取:
- 仲介手数料は不要
- 不動産会社が買主のため、仲介ではない
仲介:
- 仲介手数料が発生
- 上限: 物件価格の3%+6万円+消費税
- 例: 3,000万円の物件 → 約105万円(3%+6万円+消費税10%)
買取では仲介手数料が不要になる分、実質的な手取り額の差は小さくなる場合があります。
契約不適合責任の有無(買取:多くの場合免除、仲介:売主が負担)
契約不適合責任とは、売却後に物件の欠陥(雨漏り、シロアリ被害、設備故障等)が見つかった場合の売主の責任です。
買取:
- 多くの場合、契約不適合責任が免除される
- 不動産会社がプロとして物件を引き取るため
仲介:
- 売主が契約不適合責任を負う(一般的に引渡しから3カ月~1年)
- 欠陥が見つかった場合、修理費用や損害賠償を請求される可能性
物件の状態に不安がある場合、買取の方が安心です。
プライバシー(買取:保持しやすい、仲介:広告掲載が一般的)
買取:
- 広告掲載不要
- 近隣に知られずに売却できる
- 内覧対応も不要
仲介:
- 広告掲載が一般的(SUUMO、HOME'S等のポータルサイト、チラシ)
- 複数の買主候補が内覧に来る
- 近隣に売却活動を知られる可能性
プライバシーを重視する場合(離婚、経済的事情等)、買取が適しています。
不動産買取のメリットとデメリット
メリット①:短期間で現金化(数日~1カ月)
査定額に納得すれば、数日~1カ月で現金化できます。
具体例:
- 相続税の納付期限が迫っている
- 離婚財産分与で早期に現金を分けたい
- 転勤・引越しで早く売却したい
このような場合、買取の即時現金化は大きなメリットです。
メリット②:仲介手数料が不要
買取では仲介手数料が発生しないため、諸費用を抑えられます。
例:
- 3,000万円の物件を買取で売却 → 仲介手数料0円
- 3,000万円の物件を仲介で売却 → 仲介手数料約105万円
買取価格が市場価格の7~8割でも、仲介手数料がない分、実質的な手取り額の差は小さくなる場合があります。
メリット③:契約不適合責任が免除される
多くの買取業者は、契約不適合責任を免除する契約を結びます。
メリット:
- 売却後のトラブル(雨漏り、シロアリ被害等)に対応する必要がない
- 物件の状態に不安があっても売却できる
築年数が古い物件、設備の状態が不明な物件は、契約不適合責任の免除が大きな安心材料です。
メリット④:プライバシーを保ちながら売却できる
広告掲載・内覧対応が不要なため、近隣に知られずに売却できます。
適したケース:
- 離婚による財産分与
- 経済的事情(住宅ローン返済困難等)
- 相続物件で近隣との関係を保ちたい
デメリット①:売却価格が仲介より2~3割安い
最大のデメリットは、売却価格が市場価格の7~8割(2~3割安い)になることです。
理由:
- 買取業者はリフォーム費用を考慮
- 転売リスクを考慮
- 利益を確保する必要
対策:
- 複数業者に査定を依頼して、最も高い査定額を提示する業者を選ぶ
- 買取保証(一定期間仲介で売却活動を行い、売れなかった場合に買取)を検討
デメリット②:買取を断られる物件もある(エリア外、特殊物件等)
買取業者にも得意・不得意があり、買取を断られる場合があります。
買取を断られやすい物件:
- エリア外(業者が対応していない地域)
- 再販が困難な特殊物件(傾斜地、接道義務違反等)
- 事故物件でも内容が深刻(孤独死から長期間経過等)
複数業者に相談し、買取可能な業者を見つけることが重要です。
不動産買取業者の選び方と注意点
宅地建物取引業免許の確認(国土交通大臣または都道府県知事の免許)
国土交通省によると、不動産買取業者は宅地建物取引業法に基づく免許が必要です。
免許の種類:
- 国土交通大臣免許: 複数の都道府県に事務所がある
- 都道府県知事免許: 1つの都道府県のみに事務所がある
免許番号の確認方法:
- 業者のウェブサイト、名刺、店舗に記載
- 国土交通省の「宅地建物取引業者検索システム」で検索可能
免許番号の見方:
- (1)東京都知事免許 → 免許取得1回目(5年以内)
- (5)東京都知事免許 → 免許更新5回目(25年以上)
更新回数が多いほど、長期間営業している信頼性の目安になります。
買取実績・地域での実績の確認
買取再販の実績が高い業者ほど、適正な買取価格を提示できる傾向があります。
確認項目:
- 年間買取件数
- 物件のある地域での実績
- 買取再販の事業規模
参考: 住まいステップによると、2024年度の買取再販年間販売戸数ランキングでは、カチタスが10年連続1位を維持しています。
ただし、大手だけでなく、地域密着型の中小業者も独自の強みを持つ場合があるため、複数社を比較することが重要です。
得意とする物件種別の確認(マンション・戸建て・土地等)
業者により、得意とする物件種別が異なります。
確認方法:
- ウェブサイトの実績ページ
- 担当者に直接質問
例:
- A社: マンション買取が得意(都心エリア)
- B社: 戸建て買取が得意(郊外エリア)
- C社: 訳あり物件(再建築不可、事故物件等)が得意
自分の物件種別が得意な業者を選ぶことで、適正価格での買取が期待できます。
複数業者への査定依頼と比較(最低3社以上)
複数業者に査定を依頼して、査定額を比較することが最も重要です。
理由:
- 業者により査定額が大きく異なる(数百万円の差がある場合も)
- 適正価格の目安を把握できる
- 悪質業者(極端に安い査定額を提示)を避けられる
推奨:
- 最低3社以上に査定を依頼
- 一括査定サイト(HOME'S、SUUMO等)を活用すると効率的
担当者とのコミュニケーション・対応の確認
担当者の対応も、業者選びの重要なポイントです。
チェック項目:
- 説明が分かりやすいか
- 質問に丁寧に答えてくれるか
- 支払いスケジュールを明確に提示するか
- 契約を急がせないか(冷静な判断時間を与えてくれるか)
過度に契約を急がせる業者は、悪質業者の可能性があるため注意が必要です。
口コミ・評判の確認
実際の利用者からの口コミ・評判を確認しましょう。
確認方法:
- Google口コミ、マンションレビュー等のレビューサイト
- SNS(X、Instagram等)での評判
- 知人・不動産関係者からの紹介
注意点:
- サクラ(業者による自作自演)の口コミに注意
- 極端に良い口コミばかりの場合は疑う
- 複数のソースで確認する
支払いスケジュール・契約内容の事前確認
契約前に、支払いスケジュール・契約内容を詳細に確認しましょう。
確認項目:
- 決済日(売却金の振込日)
- 支払い方法(銀行振込、小切手等)
- 手数料・諸費用の有無
- 契約解除の条件
注意点:
- 小切手での支払いは現金化できないリスクがあるため、銀行振込を推奨
- 手数料名目での不当請求に注意
契約書の内容は、宅地建物取引士や弁護士に確認してもらうことを推奨します。
不動産買取でよくあるトラブルと対策
トラブル事例①:相場より極端に安い査定額を提示される
悪質業者は、相場より圧倒的に安い金額で査定し、安値で買い取ろうとします。
対策:
- 複数業者に査定を依頼して相場を把握
- 市場価格の7~8割が目安であることを理解
- 極端に安い査定額を提示する業者は避ける
トラブル事例②:手数料名目で不当な費用を請求される
買取では仲介手数料は不要ですが、「手数料」「事務手数料」「調査費用」等の名目で不当な費用を請求される場合があります。
対策:
- 契約前に費用の内訳を詳細に確認
- 不明瞭な費用は支払わない
- 契約書に記載のない費用の請求は拒否
トラブル事例③:決済日に売却金が振り込まれない
決済日になっても売却金が振り込まれない、または小切手で支払われるトラブルがあります。
対策:
- 支払い方法を銀行振込に限定
- 決済日・振込先を契約書に明記
- 決済日当日は、振込を確認してから物件を引き渡す
トラブル事例④:査定後に価格を下げられる
査定時は高額を提示し、契約直前に「物件の状態が悪い」と理由を付けて価格を下げる業者がいます。
対策:
- 査定時に物件の状態を正直に伝える
- 「査定額は確定額か」を確認
- 価格変更の条件を契約書に明記
トラブル対策①:複数社の査定を比較して適正価格を把握
最も効果的なトラブル対策は、複数社の査定を比較して適正価格を把握することです。
推奨:
- 最低3社以上に査定を依頼
- 査定額だけでなく、査定の根拠を確認
- 市場価格の7~8割が目安であることを理解
トラブル対策②:契約書の内容を専門家に確認してもらう
契約書の内容は、専門家(宅地建物取引士、弁護士等)に確認してもらうことを推奨します。
確認項目:
- 売却価格、決済日、支払い方法
- 手数料・諸費用の内訳
- 契約解除の条件
- 契約不適合責任の免除条項
トラブル対策③:悪質業者の見分け方(宅建業免許の確認、過度な営業)
悪質業者の特徴を知り、避けることが重要です。
悪質業者の特徴:
- 宅地建物取引業免許を持っていない
- 過度に契約を急がせる(「今日中に契約しないと価格が下がる」等)
- 査定額の根拠を説明しない
- 口コミ・評判が極端に悪い
- 事務所の所在地が不明確
このような業者は避け、信頼できる業者を選びましょう。
トラブル時の相談先(消費者ホットライン188、宅地建物取引業保証協会)
国民生活センターによると、不動産買取でトラブルが発生した場合は、以下の相談先に連絡できます。
相談先:
- 消費者ホットライン: 188(いやや!)
- 宅地建物取引業保証協会: 各都道府県に設置
- 弁護士: 契約トラブル、法的対応が必要な場合
注意: 自宅の売却契約はクーリング・オフできない(事業者の事務所で契約した場合)ため、契約前の慎重な判断が重要です。
まとめ:不動産買取業者を賢く選ぶためのポイント
不動産買取は、数日~1カ月で現金化でき、仲介手数料不要で契約不適合責任も免除されるため、早期売却・訳あり物件に適しています。ただし、売却価格は市場価格の7~8割(2~3割安い)が目安です。
業者選びは、宅地建物取引業免許の確認、複数社(最低3社以上)への査定依頼と比較、口コミ・評判の確認が重要です。悪質業者のトラブル(極端に安い査定額、不当請求、決済遅延等)を避けるため、契約書の内容を専門家に確認することを推奨します。
個別の判断は、宅地建物取引士や弁護士への相談を推奨します。
