なぜ不動産の繁忙期を知ることが重要なのか
不動産の売却や購入を検討する際、「いつ動くのがベストなのか」という疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、不動産業界の繁忙期と閑散期の特徴、時期別の市場動向、売却・購入のベストタイミングを、業界データや市場統計を元に解説します。
取引時期を理解することで、より有利な条件で売却・購入を進められるようになります。
この記事のポイント
- 不動産の繁忙期は1-3月(特に2-3月)と9-10月の年2回で、就職・転勤・進学による引越し需要が集中する
- 繁忙期は購入希望者が多く高値で売れやすいが、競合物件も多い
- 閑散期(6-8月、12月)は価格交渉がしやすく、不動産会社も時間をかけて対応してくれる
- 売却活動は繁忙期の前(12月頃)に開始すると、購入希望者が多い1-3月に売却できる可能性が高まる
不動産業界の繁忙期と閑散期の基礎知識
不動産業界には、取引が集中する「繁忙期」と取引が少ない「閑散期」があります。
(1) 繁忙期はいつ?第1繁忙期と第2繁忙期
いい生活によると、不動産業界の繁忙期は以下の2回です。
第1繁忙期: 1月~3月
- ピーク: 2月後半~3月
- 理由: 4月入社・入学に向けた引越し需要
- 特徴: 年間で最も取引が多い時期
第2繁忙期: 9月~10月
- 理由: 企業の人事異動(10月入社)、秋入学
- 特徴: 春ほど激しくないが、安定した需要がある
(2) 閑散期はいつ?夏と年末の特徴
閑散期: 6月~8月、12月
- 6-8月: 特に8月のお盆時期は取引が大きく落ちる
- 12月: 年末年始の準備で引越し需要が低下
- 特徴: 取引件数が繁忙期の3分の1程度に減少
(3) 繁忙期・閑散期が生まれる理由
繁忙期・閑散期が生まれる主な理由は以下の通りです。
- 就職・転勤・進学: 4月と10月の入社・入学時期に合わせた引越し需要
- 季節要因: 夏の暑さ、年末の忙しさで引越しを避ける傾向
- 企業の人事異動: 3月と9月に人事異動が集中する企業が多い
時期別の市場動向と取引件数の推移
時期別の市場動向を具体的に見ていきましょう。
(1) 1-3月(第1繁忙期):取引のピーク時期
市場動向:
オウチーノによると、2月後半~3月は大学合格発表と企業の転勤通知が重なり、4月入居に向けた物件探しが集中します。
- 取引件数: 年間の30-40%が集中
- 物件数: 最も多い
- 価格: 相場が上がりやすい
- 業務量: 通常の2-3倍
2024年の動向:
全国賃貸住宅新聞によると、2024年繁忙期は法人・一般顧客の契約が好調でしたが、学生契約は苦戦しました。
- 首都圏(1都3県): 法人契約が35%と特に強い
- 地方: 一般顧客が32.1%を占める
(2) 9-10月(第2繁忙期):秋の異動シーズン
市場動向:
- 取引件数: 春の繁忙期の60-70%程度
- 競争: 春ほど激しくない
- 価格: 比較的安定
- 対応: 不動産会社も余裕がある
(3) 6-8月・12月(閑散期):取引が減る理由
市場動向:
YAMADA不動産によると、8月は取引件数が大きく落ちます。
- 取引件数: 繁忙期の3分の1程度
- 物件数: 少ない
- 価格: 交渉の余地がある
- 対応: 不動産会社が時間をかけて対応
売却時のベストタイミングと戦略
売却時のベストタイミングを検討しましょう。
(1) 繁忙期に売却するメリット・デメリット
メリット:
- 購入希望者が多い: 買い手が見つかりやすい
- 高値で売れやすい: 相場より高めでも成約する可能性
- 成約スピードが速い: 決断が早い買い手が多い
デメリット:
- 競合物件が多い: 条件の良い物件に埋もれるリスク
- 価格競争になる: 競合との差別化が必要
- 不動産会社が忙しい: 丁寧な対応を受けにくい可能性
(2) 閑散期に売却するメリット・デメリット
メリット:
- 競合物件が少ない: 目立ちやすい
- 不動産会社が時間をかけて対応: 戦略的な売却が可能
デメリット:
- 買い手が少ない: 成約まで時間がかかる可能性
- 価格交渉で不利: 買い手市場になりやすい
(3) 売却活動の開始時期はいつがベストか
YAMADA不動産によると、購入希望者が1月に物件探しを始めるため、売却活動は12月中にスタートするのが理想的です。
理由:
- 繁忙期のピークに間に合う: 1-3月の購入希望者にアプローチできる
- 準備期間を確保: 物件の清掃、修繕、写真撮影を余裕を持って行える
- 競合より早く掲載: 年明けすぐに物件情報を公開できる
注意点:
3月に売却活動をスタートすると、繁忙期のピークを逃す可能性があります。
購入時のベストタイミングと戦略
購入時のベストタイミングを検討しましょう。
(1) 繁忙期に購入するメリット・デメリット
メリット:
- 物件数が豊富: 選択肢が多い
- 新着物件が多い: 希望条件に合う物件が見つかりやすい
- 比較検討しやすい: 複数物件を同時に見学できる
デメリット:
- 価格交渉が難しい: 売り手市場
- 条件の良い物件はすぐになくなる: 決断スピードが求められる
- 不動産会社が忙しい: 対応が駆け足になる可能性
(2) 閑散期に購入するメリット・デメリット
メリット:
リロケーション・ジャパンによると、閑散期は初期費用の交渉がしやすい点が魅力です。
- 価格交渉がしやすい: 買い手市場
- 初期費用を抑えられる: 敷金・礼金・仲介手数料の交渉が可能
- 不動産会社が時間をかけて対応: じっくり相談できる
デメリット:
- 物件数が少ない: 選択肢が限られる
- 希望条件に合う物件が見つかりにくい: タイミングが重要
(3) 時期別の価格交渉のコツ
| 時期 | 交渉難易度 | 交渉のコツ |
|---|---|---|
| 1-3月(繁忙期) | 難しい | 決断スピードを優先、条件を絞る |
| 9-10月(第2繁忙期) | やや難しい | 競争が春ほど激しくないため、冷静に交渉 |
| 6-8月、12月(閑散期) | しやすい | 初期費用・価格の値引き交渉を積極的に |
まとめ:自分に合った取引時期の選び方
不動産業界の繁忙期は1-3月(特に2-3月)と9-10月の年2回で、就職・転勤・進学による引越し需要が集中します。繁忙期は購入希望者が多く高値で売れやすいですが、競合物件も多くなります。
閑散期(6-8月、12月)は価格交渉がしやすく、不動産会社も時間をかけて対応してくれます。
売却活動は繁忙期の前(12月頃)に開始すると、購入希望者が多い1-3月に売却できる可能性が高まります。
繁忙期・閑散期の特徴を理解し、自分の状況に合った取引時期を選ぶことで、より有利な条件で不動産取引を進められます。信頼できる不動産会社に相談しながら、最適なタイミングを見極めましょう。
